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修行が終わって……

目が覚めると俺は布団の中にいた。

寝ている際にもこの鎧を着ていた事実と見たことのない天井に一瞬思考が停止するが先日シキさんとディールさんと共に話したことを思い出してここがどこか思い至る。


「……そうか、ここはディールさんの家か」


まだ起きたばかりなのに何だか気分はスッキリしている。

あれだけ心身ともに疲れ果てていたはずなのに……


ディールさん特製の薬の効果を実感しつつも、自分のステータスを鑑定して昨日見たものが嘘ではなかったということを確認する。


ちゃんと『魔力操作』と『毒魔法』はあるな。

ただ結構スキルが増えてきたから何だかスキル欄が見辛くなってきた。


そう言えばレイスさんが帰った後ディールさんに『偽装』の使い方を教えてもらった際、「ふむ、別に『偽装』だけ特別な使い方があるわけではない、『鑑定』も君の認識次第で見方を変えられる。スキル自体が無くなったりするわけではないのだから、見辛くなったら整理してみると言い」と言っていたな。


確かに今迄必要に応じて鑑定する範囲を自分なりにいじっていたから、漠然と『鑑定』が『索敵』のように俺の認識によって効果を若干操れるということは分かっていたが……



兎に角一度、頭の中でステータスが見やすくなるよう整理して鑑定し直してみる。



名前:カイト・タニモト

種族:人族

身分:騎士

性別:男

職業:1.剣豪 2.メイジ 3.ビショップ

年齢:16歳


Lv.50

HP: 305/260(+45)

MP: 301/250(+51)

STR(筋力):90(±0) 【内訳:スキルで+30 装備で-30】

DEF(防御力):71(+82)  【内訳:スキルで+32 装備で+50】

INT(賢さ):79(+34)

AGI(素早さ):70(-13) 【内訳:スキルで+37 装備で-50】

LUK(運):1(+35)


・魔法系統:『全魔法素質解放』、『生活魔法』、『火魔法』、『水魔法』、『土魔法』、『風魔法』、『治癒魔法』、『氷魔法』、『雷魔法』、『闇魔法』、『古魔法』、『毒魔法』、『魔力操作』、『属性付与』、『無詠唱』


・戦闘・能力値:『剣術』、『装備貫通』、『能力値中上昇』


・その他(日常・ステータス関連・その他):『異世界言語(会話)』、『異世界言語(筆記)』、『パーティ恩恵(リーダー)+α』、『パーティ恩恵(メンバー)』、『契約恩恵(主人)』、『契約恩恵(従者)』、『ステータス操作』、『職業操作』、『レベルアップ時ボーナス』、『鑑定』、『偽装』、『隠密』、『索敵』、『経験値解放』、『幸運』



千変万化:習熟度100%になったとき新たなスキルに変わり、習熟度を極めた者がそのスキルを習得する。習熟度は時間の経過若しくは修練により上昇する。習熟度を上げるために要した修練の度合い・密度が高ければ高い程、時間の経過が短ければ短い程変化後のスキルの価値は上がる。一生に一度だけこのスキルの効果でスキルを習得可能。……習熟度41%




結構変わったな。

まだ改善の余地はあるが……



まず俺の身分については先日ディールさんに『偽装』の使い方を教えてもらった際に水晶で一度『騎士』と偽っ……少し見方を変えて見ることができたために、実際には異なっていたり、自分がなったことが無い身分でも『偽装』で覆い隠せるように。


今迄はただただ隠そうと意識すると、例えば俺の身分だと勝手に真実の『冒険者』とは異なった『平民』となって偽装されていた。

カノン・エフィーの種族についても『偽装』を使うと勝手にエルフになっていて、それで十分に『偽装』の価値は発揮できていたのでそれ以上追求することは無かった。


だが今、ディールさんに教えてもらったやり方、具体的には一度なったことが有るものにも偽装することができると言う方法で、俺はなったことが無いのに騎士と言う偽った……少し真実とは異なるかもしれない身分を表示できている。


一度なったことが有る、と言うのはつまりはあのディールさんの水晶の穴の潜脱法のこと。

水晶の誤りを利用して『騎士』と表示させた。


勿論真実とは異なる。俺は常に冒険者のままだ。勝手に水晶が間違っただけ。


だがそれで騎士になった、という条件をクリアしたらしい。

つまりは『なる』というのは真実なる必要は無く、そのような体裁が一度でもあったのであればいいという事だ。


鑑定したのは俺だが、その表示の際に、偽装した範囲も反映されるように認識したことなのでそこはおかしくは無いはず。



これは本当にひどいな。

ディールさん、考え付くこと本当にゲスいわ。



シア達奴隷については表示は避けておくことにした。

騎士が奴隷を何人も持っていて、ってのは何となく印象的にもおかしい気がする。

そこから冒険者としての俺に辿り着かれるのは面倒だし。



後、ステータスが大幅に上昇していた、HPが特に。

以前魔法の練習をしていたらMPが上昇するという事実自体は分かっていたがこの上昇率はハッキリ言って異常だ。


合計100は上がったな。

鎧についた『千変万化』の習熟度が41%ということからも、やはりあの猛毒の修行は相当な苦行だったんだろう。


以前の護衛依頼の際の虚無の経験と併せて、今後大抵のことなら何でも乗り越えられそうな気がしてきた。

多分両腕両足を切断される位までの拷問なら耐えられると思う。


前向きなんだか暗いんだかよく分からないが……って流石にこんな発想してしまうのはちょっとマズイか。


能力値に付いては……一応あの猛毒修行で上昇しているものの、今着ている、この重いだけしか能が無い鎧によって防御以外基本散々なものに。



あのエネルギー運用法が無かったらこの先この鎧で戦って行く自信ないわ。


ディールさんならこのエネルギーの使い方の正体分かるかな?

まあ仮に分からないとしても、早いこと習熟度を100%にすればいい話。


一先ずは今日から騎士団潜入までまた頑張りますか。




俺はスッキリしているのに鉛のように、いや鉛以上に重たい鎧の体を持ち上げて部屋を出た。





やはり俺が眠っていたのは2階にある客間だったようだ。

階を一つ降りるとエフィーが六神人形シィドゥ・オ・ドールの3体を傍に従えて読書中だった。


エフィーの周りにはここぞとばかりに高く積まれた本の山が幾つも。


恐らくディールさんが用意した物だろう。

ドールの一体、風を司るジンが俺に気付くとそれを察知したエフィーが本から顔を上げる。


「あっ、ご主人様……おはようございます。体調はいかがですか?」


立ち上がってはトテトテと俺の下に来て体調を気にしてくれる。

エフィーの反応は今迄の過剰とも言えるものから考えると普通に俺を心配してくれていて、ホッとしている、位に留まっていた。


どういう事かは良くは分からないがこの変化に嬉しいような寂しいような……まあ今はそれはいいか。


とりあえず自分の今の体調を正直に話すことにする。

ヘルム被ってるから表情からは分からないだろうし。

 

「ああ、おはようエフィー。意識を失っといてなんだがすこぶる調子はいいよ。ディールさんの薬は本当に良く効いている。……エフィーは勉強中か?」


エフィーが手に持っている本、そしてうずたかく積まれた本の山に視線をやる……と言ってもヘルム越しだからそれもヘルムが動くガシャン、という音から感じとってもらわないといけないのだが。


「はい。私に課された修行の第1段階だそうです。2週間以内にディールさんの家にある全ての本を読む、ということが」

「全部って……それは凄いな。大変じゃないか?」


何気なく聞いたのだが、エフィーはその言葉に少しの間黙り込み、顔を上げた際に映ったその瞳は以前以上にも増して決意に満ちた、揺らぎない瞳だった。


「私達は何が何でも強くならなければなりません。……もう、ご主人様にお辛い思いをさせないために……待っていて下さいね、ご主人様」

「あ、ああ」


俺はただただ圧倒されるだけだった。

普段エフィーを見てこんなにエフィーの姿が美しいと思えた時は申し訳ないが無かったのではないだろうか。


それほどまでに、エフィーが「待っていてくださいね、ご主人様」とニコッと笑って告げた時の姿は綺麗で、強くて、カッコよくて……


思わずずっと見惚れてしまった自分を慌てて引き締め直し、「頑張れよ」と一声かけてその場を去る。

どういうわけかは分からんが折角やる気になっているのに長話して引き留めるのも悪いからな。


エフィーは「はい」と言ってまた読書へと戻って行った。




「おや、起きたかい、カイト君?」

「あ!!お兄ちゃん!!」


次に俺を出迎えてくれたのは勉強中のディールさんとレンだった。

今は騎士手続法(元の世界で言う刑事訴訟法とかかな?)を勉強中だったらしい。


「はい、おはようございます。頂いた薬、本当に効きますね」


重たい鎧を動かして元気だということを示す。

簡単な動きであればちょっと力を使う位で済むようになっている。


これも修行の成果か……



「うむ、君達は若いからね、あれを飲んで寝たら体の疲れ位は簡単に吹き飛ぶさ」

「本当に冗談ではなく疲れも全て吹き飛んでしまいました」

「そうかい、それは良かった。……朝食はまだだろう。レン君、今教えたところを復習しておいてくれ」

「うん!分かった」

「うむ。―エフィー君に作ってもらおう。さあ」

「え?エフィーって今さっき会いましたけど、読書中だったんじゃ……」


さらっとエフィーに作ってもらうと言って歩き出したディールさんを引き留める。


「ふむ、確かに家の中にある本を読み尽くすことが修行の内容ではあるのだが、それには前提があるのだよ」

「はあ、前提、ですか」

「うむ、エフィー君の周りに3体メカたちがいたろう?あれは君の鎧のように魔力の糸(マジックフィル)を起きて寝るまでずっと繋げているんだよ。つまりはゴホッ……あの糸の感覚を体に覚えさせるためにやっている」

「はぁ……成程。とすると、料理というのはエフィーに作ってもらう、と言っても……」

「うむ、実際に作ってもらうのは3体の内の誰か、もしくはその全員でエフィー君には操ってもらうだけだ。ゴホッゴホッ……読書も糸に送る魔力を切らさずしなければいけないから同時に複数のことをする集中力も付く」


そこまで考えてのことだったのか……


「……そうでしたか。分かりました。それならエフィーにお願いしようかと」

「うむ」



その後、ディールさんと共にエフィーの下まで行き、食事を作ってくれるようディールさんが頼む。

特に問答もなく「分かりました」とエフィーはキッチンへと向かったので既に修行の趣旨は話してあったのだろう。


料理はエフィーが操った鉢巻、タンクトップ一枚と黒のスパッツという軽装のジン、そして青色の長髪をした、薄いブラウスを着て妖艶な雰囲気を醸し出しているお姉さんのシズクの二人が作ってくれた。


やはり料理と言う繊細な工程を要することを操ったドール達にさせたのだ、出された食事の大きさはバラバラだったり火の通りも少し悪かったりはしたが味自体は別に悪くは無かった。


エフィーは「……すいません」と申し訳なさそうにしていたがディールさんに「ふむ、私が課した修行をきちんとこなせれば美味しい料理などいとも容易く作れるようになるさ」と励まされると先程の強いエフィーが戻り「はい」と力強く頷いていた。



食べ終わった後ディールさんが二人で話す時間を設けてくれた。


「エフィー君を初め、皆君を心配はしていたよ。でも私が『大丈夫だ、カイト君はただ修行の疲労で眠ってしまっただけ。ちゃんと明日には目覚めるよ……それなのに、カイト君が眠っている間に何もしていなかった、何も成長できていなかったという方がかえって将来において君達自身を苦しめることになる』と言っておいた。それから皆ちゃんと修行に精を出しているよ」

「それはありがとうございます。エフィーが何となく変わったかな、と思っていたのですが、それもディールさんが?」


そう尋ねるとディールさんは「うーん」と肯定せずに、「私はただ考えるきっかけを与えたに過ぎないよ。彼女達自身が君のために強くなろうと決めて、それで今ああなっただけだ」と言った。


「そうですか……まあそれでもありがとうございます。きっかけだけでも皆にとっては重要なことだったと思います」

「ふむ……そうか。まあそれなら良かったよ」



それでその話は終了した。


次に、修行の話になって、最初は鎧をまともに動かせなかったが途中から正体不明のエネルギーを駆使して何とか、ということを話すと「そのことについては今から行う修行で説明しよう」とのことなので、俺達は話を切り上げて模擬戦を行ったところに向かった。


その途中、レンには「騎士団試験の過去問があるからそれを解いてみてくれ」と言って、ディールさんは本当に過去問をひっぱり出してきた。


勿論コピー技術など無いので問題の内容だけユウさんから聴いて、自分で作ったものらしい。

……ディールさんって何でもできちゃうね。


レンは意外にも理解力があり、ディールさんも「これならレン君は余裕だろう」と太鼓判を押していたが、レンに聞いてみると「え?だって受かんないとお兄ちゃんと一緒にいられないってことでしょ?それなら必死でやるよ!!」とのこと。


一緒にいたいという思いだけで頑張ってくれるのは嬉しい半面勉強って楽しいから、みたいな他の動機もあって欲しいかな、とも思ってしまったり。


まあ自主的にやる気を出してくれること自体は喜ばしいことなので勿論水を差すようなことはしない。




模擬戦をする場所に移動した。


シアとユウさんが目にもとまらぬ速さで打ち合いをしている。


何だありゃ……俺は違う世界にでも迷い込んだのだろうか……

いやここが異世界とかそういう意味じゃなくて……


シア、俺と打ち合ってたときなんかとは本当に比べものにならない程の速さだな。

別に『ワーウルフ』を使っているというわけでもなし……


やっぱり皆何かしら心境の変化でもあって一皮けたのかもしれない。


ディールさんと鎧姿の俺に気付くと手を止めて挨拶する。


「あ!おはよう、カイト君。もう大丈夫なの?」

「おはようございます、ご主人様。お体は大丈夫ですか?」


真っ先に俺の体を心配してくれる二人に感謝しつつ、軽く挨拶を返す。


「はい、おはようございます。この通りもう大丈夫です。―シアもおはよう。心配かけたけどディールさんの薬のおかげでもうバッチリだ」


「この通り」ってどの通りだよと自分でも思う。

俺は笑顔を浮かべたのだがヘルム越しなのでそれが伝わったかどうかは分からん。

それでもそう告げるとやはり安心して笑顔を返してくれる。


「ホッ、良かったぁ。やっぱりディールさんの作った薬は凄いでしょう!一日寝ただけで体の疲れ吹っ飛ぶもん!!」

「良かったです。ご主人様がお目覚めになって……本当に……」


ああ、やっぱり。


ディールさんが何かしてくれたようで、何か俺への接し方が若干変わったように感じていたんだが、心配してくれていないわけでは無いんだ。


シアはやっぱりライルさんのこともあるから早くに目覚めて本当に良かった。

あまり心配させると折角修行を頑張っているのにその邪魔をすることにもなりかねないからな。



「ふむ、邪魔して悪かったね。私達はあっちで修行をするからぶつかったりしないよう気を付けて続けてくれたまえ」


ディールさんは先程シア達が打ち合っていた場所の奥を軽く指差す。


「うん、分かった!じゃ、もう2本位いっとく、シアちゃん?」


スパーリングの本数か何かだろうか、ユウさんがシアに尋ねると、シアは数秒黙って考え込む。

そしてチラッと俺を見て……


「いえ、まだまだ私は行けます!4本にしましょう」

「え!?うーん……」


ユウさんはそれを聞いて悩む。

それを見ていたディールさんは助け船を出す。


「ふむ、シア君がいけるというのなら別に構わないだろう。但し、ゴホッゴホッ……ちゃんと自分の体と相談するんだよ?無理をしてしまっては意味が無いからね」

「うん、了解。―じゃあシアちゃん、やろっか!」

「はい!!」


そうしてユウさんとシアは高速の打ち合いを再開した。


「ふむ、では私達も」

「はい」


ディールさんについて行き、位置に付く。


そしてディールさんが今回行う修行の内容について説明してくれた。


「ふむ、ではカイト君、これからハイ・スケルトンスパーリングを行うから。―まあ要するにまた模擬戦しよう、という事だね」


ステータスの表記は別に今のもので固定ではありません。

もっと見やすい表記法があればカイトは今後も改善してくれるかと。


HPやMPについてはあの猛毒の修行の成果というのは分かっていただけると思うんですが運については大丈夫でしょうか?


レンは何気に理解力はあるようですね。

今迄空気を読みに読んで来ましたから色々と考えるとこは得意なのかもしれません。

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