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「ご主人様……」

以前申していたまあまあ重要かな、というお話です。

まあ個人的にですので皆さんがどう思われるかは私には分かりませんが……


別に何かしなければいけない訳ではありませんが、このお話をより深くご理解

頂こうと思うとライルさんがどんな方だったか復習した方がいいかもしれませんね。


※ライルさん(本名 ライル・アーグリット):主人公が異世界に来て初めて出会った異世界住人にして主人公の生まれて初めての親友でもある。親友になって初めて共に受けた依頼(シアを助け出した盗賊調査)で不幸にも、生きてはいるが目覚めない体に。



=====  シア視点  =====


ご主人様がカエンと共に孤島に戻られて1時間程経ちました。

ご主人様からは「ディールさんには別に隠し事しなくてもいいから」とお許しを貰っていますが今はディールさんからお話を受けています。


先程お二人で出て行かれた時の説明ですね。

ご主人様は騎士団に潜入して失踪したとされるSランク冒険者の方の情報を集められるようです。


その間、私達はディールさんからご指導いただく……

ご主人様がお決めになったことですし、ご指導いただけること自体は大変ありがたいことだと思っています。


ディールさんはエフィーやカノンが扱う技術の専門ということですから、きっと二人は大きな成長を遂げてくれるでしょう。


私に至っても一師団の隊長であるユウさんが相手をしてくれるのですから、そこに文句が有ろうはずがありません。


ユウさんはご主人様に助けていただいて、とてもご主人様に興味を持たれています。

何度も何度もご主人様について尋ねられました。


気になるのが助けられたと言う理由だけならまだ良かったのですが二人で話している時に「……男の人に、そ、そその、胸を触られたのも、初めてだったから……僕」と女性の顔をされてとても気になることをおっしゃっていましたね。


これは、同じ女の勘ですが、もう既に……



っと、そこは兎も角、ご指導いただけるという事自体は構わないのです。

ただ……


「ふむ、それに伴ってカイト君は1~2カ月程離れることになるね。その間に君達を強くしよう」


ディールさんが聞き捨てならない情報をおっしゃるのです。


「え?……それは、少なくとも、ということでしょうか?」


エフィーが驚いた様子でディールさんに尋ねると……


「ああ、そうだが?何かマズイことでもあるのかい?」

「マズイことって……そ、そんな、マスターってそんなに長いこと潜入しないといけないの!?」


机をたたいてカノンは立ち上がります。


「ふむ、別に今生の別れと言うわけではあるまい。出発する前に彼を強くすることを優先するから彼が危険に遭う可能性もその分減る。ゴホッゴホッ……1月位何とかなるだろう」

「で、でも……」

「ディールさん、話の途中すいません」


カノンが更に食い下がろうとすると、シキさんがおずおずと手を挙げました。

? 何か、あるのでしょうか?


「何だい、シキ君」

「その、ユウの命が狙われたばかりだからしばらくユウが身を隠すというのは理解できます。ただ、タニモトさんはわざわざ第10師団に入らなければいけないんでしょうか?騎士団に潜入すると言っても別に他の師団でも構わない、いや、むしろ他の師団の方が背後に黒い部分があるんですから、そちらの方が……」

「ふむ、言いたいことは分かるが、君達第10師団がとても危うい位置にいたことは理解しているかい?高圧的なお偉いさん方はゴホッゴホッ……ユウが何とか頑張って押さえていた部分が多分にある。騎士団長のフォオルが今回の件で無傷だとしても、必ず『女騎士ではなく、他の師団であればもっとうまいこといったのに』という論調に持って行くだろう」

「そ、それは……ですが!!―」

「別に今回の件が無くても遅かれ早かれ男騎士を一人は入れないと厳しいという空気だったのはユウが一番よく分かっているんじゃないか?」

「え?ユ、ユウ?」


今迄黙って話の行く末を見守っていたユウさんは静かに語りだします。


「……うん、ディールさんの言う通り、頑張っては来たけど結構厳しい立ち位置だったという事は確かかな。何人か入れるとしたらこの人かな、っていうのもリストアップしてる段階だった」

「そ、そんな!!」

「まあまあ落ち着きたまえ。ユウだって別に入れたくて積極的に動いていたわけでは無い。ゴホッ……

全ては君達と一緒にいられるようにと言うユウの配慮だよ。それが分からないシキ君ではあるまい」

「……は、はい。申し訳ありません。……ごめんなさい、ユウ」

「いや、気にしないで。僕もゴメンね、ずっと僕を支えてくれたシキに黙ってて」

「いえ……」


お互いに見つめ合ってユウさんがシキさんの頬に手をあてると、シキさんの頬は見る見る赤く染まって行きます。

……何でしょう、いけない感じの空気がお二人から……


「ん、んん。いいかい、二人とも」

「「は、はい!!すいません」」


ディールさんの咳払いで我に返ったようです。


「まあ確かに男性が入るという事にはなるが別に一生第10師団に居続けるというわけでもない。ゴホッ、私が何とか君達が離れずいっしょにいられる道を考える間、ユウがいない席をカイト君に埋めてもらうだけだ。カイト君はユウの力を借りてシア君の向上を図れる。お互いに利害が一致しているわけだよ。それに……」


ディールさんは二人を交互に見て……


「君達もどこの誰と分からない男性騎士に入られるよりはカイト君に入ってもらった方が安心できるんじゃないかい?」

「そ、それは……」

「確かに、そう、ですが……」


図星だったのか視線を逸らしてユウさんに至っては何やらブツブツ言っていますね。

「……そ、そりゃ……で、でも、そうなるとカイト君が1人、皆の中に入って行くってことで……ごにょごにょ……心配だな」とユウさんは違うことを心配なさっているようです。


「ふむ、ならシア君、エフィー君、カノン君、リゼル君」

「は、はい!?」

「な、何でしょう!?」

「え、えっと、な、何!?」

「は、はい、何でしょう!?」

≪な、何じゃ!?≫


いきなり話を振られて私達は焦ります。

……本当にいきなりですね。

ビックリしました。


「君達が知っているカイト君に付いてを教えて欲しい。彼に付いて教えてくれればユウとシキ君も彼がどういう人物なのかよりわかって安心できるだろうし、何より君達が何を渋っているのか分かるかもしれない」

「あ、それ僕ちゃんと聴きたいな!カイト君がどんな人なのか、今までどんなことをしてきたのか」

「……まあ、どんな方かを知らずに否定するわけにはいけませんからね。私も知ってはおきたいかな、と」


お二人は結構乗り気な様です。

私達は4人でしばらく顔を見合わせて……頷きます。

ご主人様からはお許しをいただいているので、ここはディールさん達にも……



「……分かりました」

「とは言っても何からお話すれば……」


エフィーが話のとっかかりを探っているとディールさんから質問が入ります。


「ふむ、では君達の中で彼と一番付き合いの長い者は?」

「あ、はい、それは私です」


真実ですので手をあげて名乗り出ると皆やユウさんから羨望の視線が。

フフッ……これは、私だけの……


「では、シア君から彼との出会いを話してくれ。それで順繰りに今に至るまでを話してくれればいい。……ああ、君達今更だが時間は大丈夫かい?風邪など引かせてはゴホッゴホッ……カイト君に申し訳が立たん」


(((一番ディールさんが危ないと思うんですが……)))


今の瞬間皆の考えることがシンクロしたように感じました。


この時間はいつもはリゼルは少し眠たそうにしていますがご主人様の話とあれば直ぐに起きますのでまあ大丈夫でしょう。


私達は自分達が大丈夫であることを伝え、そして私がお話させていただくことに。


ご主人様のことを……ご主人様のお優しさを、しかとお伝えしなければ……


「では……」











≪……と言うわけで≫

「はい、そして今に至る、と言うわけ、です」

「「「…………」」」


リゼルが話し終えるまで、3人は静かに私達の話を聴いてくれました。

既にリゼルの念話については説明済みでしたのでそこで話の腰が折られることも無く。


私はご主人様のお優しさが一番伝わるよう自分が助けて頂いたことは勿論ですが、とりわけやはりライル様のことをお伝えせねば、全てを理解していただくことは難しいかと考えそこを熱弁しました。


エフィーは自分がハーフエルフであるにも拘らず普通に接して下さったことを、カノンはエフィーと同じように自分が魔族であっても変わらず助けて下さったこと。

リゼルは不遇な立場にいた自分達を助け出し、『スキルキャンセル』を治してもらったこと。


それぞれがご主人様との大切な想い出を語り、ご主人様のお人柄を伝えようと奮闘しました。


そして聴いていたお三方は三者三様の反応を見せます。


「……カイト君……そんなことが……」

「……凄い、ですね。俄かには信じ難いですがまさか『スキルキャンセル』をエリクサー無しで……」

「…………」



ユウさんとシキさんは比較的好意的にとらえて下さっているようですが……

ディールさんは考え込んだまま沈黙を貫いていらっしゃいます。


……何か、おかしなことでも申してしまったのでしょうか?


「僕、カイト君なら第10師団に行ってもうまくやってくれると思う!どうだい、シキ?」

「え、ええ。私もタニモトさんなら大丈夫じゃないかな、と。勿論私も助力しますが」

「うん!お願いね?……ディールさんはどう?」

「…………」

「えーっと、ディールさん?」


話しかけられても反応が無いディールさんをユウさんは心配して覗き込みます。

彼女にとってもディールさんがこのように深く思案している姿は珍しいのでしょうか。

……本当にどうしたんでしょう?


「……おっと、すまないね。少し考え込んでいた。……確認するがそのライルと言う青年と直に会って話したことが有るのはシア君だけなのかい?」

「は、はい、そうです!!」

「ふむ……もう少し詳しくカイト君とその青年とのことについて教えて欲しい」

「え、えーっと、そ、その……」

「君にとってはカイト君が責められるところを思い出すのは辛いかもしれないが、君達のためにも、そして彼のためにも必要なんだよ」


……確かに私にとってはあの出来事を頭の中で詳細に思い起こすことはご主人様のお優しさを想い胸が苦しくなるとともに、ご主人様が町民たちに責められることを思い出すことにもなり……とても辛いです。


ですが、ディールさんは私達、そしてご主人様のためだと真摯に私達に向き合って考えて下さいます。

それなのにどうして私自身の苦痛云々で断れるでしょう?


ご主人様のためとあらば、こんなこと、何千何万……いえ、数など問題ではありません。

幾らでも思い出して語って見せます!!



「……分かりました」

「ふむ、ありがとう。ライル君について分かる情報と、できれば君達が町を出ることになったその出来事を子細に語ってもらえると助かる」

「はい……」






私がライル様と直に話せたのは本当に短い時間でしたが思い出せるだけの全てを語り、御姉妹が私に語って下さった情報、そして……あの日のことを思い出しては口に出すことを続けました。


ディールさんは時折私に質問を入れて下さり、分かることについては答え、分からないことについては正直にそう申しました。





そうして全てを話し終えた後……


「ふむ、なるほど……漠然とではあるが彼が―カイト君が今どういう状況にいるのかようやく掴めたよ」

「そうですか。……それは本当に良かったです」


私は心の底からそう思ってそのままの想いを口にします。


「……カイト君、そんなに辛い状況にいるんなら、もっと周りを頼ればいいのに。シアちゃん達だって皆強いのに……」

「うん、私達もマスターに頼って欲しい。マスターばっかり、辛いことを独りで、やっちゃって……マスター、私達のこと、いらない、のかな……」


ふとユウさんが呟いた何気ないだろう一言に、カノンが頷き……そしてそれにディールさんは自然に反応なさり―


「―それは違うよ、ユウ、カノン君」

「へ?」

「え?」

「少なくとも、カイト君は今誰かを頼ったりできる状態じゃないんだよ」

「えーっと、どういうこと、ディールさん?」


皆、ディールさんに怪訝な様子で視線を送ります。

私自身も、今の発言がどういう事か理解しかねています。


ご主人様が……


「ふむ、シア君、それとカイト君自身から聴いたことを元に話すが……彼はとても遠くの世界からここにやってきたそうだ」

「はい、それはご主人様ご自身がおっしゃってました」

≪うむ、何でも我等が知らないような遠くのところじゃと≫


エフィーとリゼルが言うように、ご主人様はそのために言語も通じないんじゃないかとの配慮から『異世界言語』セットのスキルを取得なさったようです。

そのことについても以前に話してくださいました。


「ゴホッ……本当に遠くから来たそうだから、恐らく彼にはここに来た当初、知り合い一人いなかっただろうね。彼自身も『親しい人がほとんどいなかった』と言っていた」

「それは……」

「確か……カイト君は町民たちに『最近やってきたばかりの私がライルさんと仲良くなり、私と共に今回の依頼を受けて、そしてライルさんは今目を覚まさない』と言っていたそうだね」

「はい……」

「そしてカイト君は今に至るまで、ライル君のような親しい人物を持っていない」

「「「…………」」」

「とすると、ライル君は、恐らくカイト君にとってこの世界で初めての、そしてたった一人の親しい人物だったんじゃないかな?……そして、さっきの町民に対する言葉や、シア君の記憶を元に考えると、カイト君がライル君と親しい仲になって、そしてその依頼を受けて寝たきりになった、この間というのはあまりに短い」


ディールさんは一咳挟んで更に続けます。


「カイト君とは真逆に位置する人柄―つまりライル君が明るく、人当たりもいい、そして人気者だということもあってカイト君は惹かれたのかもしれないが……その人気者が、自分と親しくなった途端に、目が覚めない状態になってしまった。……カイト君は、この事実をどう思ってるだろうね?」

「な!?マスターは何も悪くない!!マスターが助けたからこそそのライルって人は死なないで済んだんでしょ!?」

「は、はい!!勿論です!!」


カノンが放った言葉に勿論私も同調します。

当たり前です、私はその場でどういう経緯でそうなったのか知っているのですから。


「ふむ、勿論私も別にカイト君が悪いと思っているわけでは無いよ」

「な、なら、ディールさん……」

「これはカイト君自身がどういう風にその一連の事件を捉えているのかと言う問題なんだよ。……ここでは裏目に出てしまうが、彼は自分を客観視して捉えることができる。今迄親しい友がいなかった自分にできたゴホッゴホッ……友人が、自分と親しくなった途端に目を覚まさない状態になってしまった」

「で、ですが、そんなもの、何の因果関係も無いですよね!?」


シキさんが私達の心の声を代弁してくれるかのように否定の言葉を述べて下さいます。

ですが、ディールさんはそんなことでは止まってくれないようです……


「ああ、勿論直接的な繋がりなんてないよ。私だってそう言ったオカルトを信じているわけでは無い。……ここで、カイト君に親しい人が他にも複数名いたのならそんなことは無いと否定できる実例を挙げることができる。だが、今のところ、彼にそう言った人物がいるという情報は無いね」

「そ、それは、そうですが……」

「ライル君が人気者と言うのもまた困った情報だね。他の人達が仲良くしても何も起こらなかったのに、カイト君が仲良くした途端にそうなってしまったんだ。彼が理性的に考えることができる人物でも、人間と言うのはそれを残り1割、たった1割でも心では否定しきれないものなんだよ。『もしかしたら~』とね」

「「「…………」」」


私達は何も反論できませんでした。

ディールさんが話すことをただただ聴いているだけしかすることが無かったのです。


「カイト君は自分を責めているんだよ。でも……言い方は悪いが、ライル君が死んでいれば、これ程までに頭を悩ませることも無かったはずだ」

「……というのは?」


リゼルも辛いでしょうに、ディールさんに先を促しています。

その表情はとても苦しそうです……当たり前です。


「ふむ、ライル君が死んでいればゴホッ、悲しいと言うのは勿論あるだろうがてっとり早く諦めもついた。……でも、彼はまだ生きている。ただ目覚めないだけで。とするとだね……」


ディールさんは立ち上がり、私達が腰かけている周りをぐるぐるとまわり始めました。


「その状況なら、こう思ってしまうんじゃないだろうか。……『若しかしたら何か、彼を助け出せる・目を覚まさせる方法があるかもしれない』と。そして……」


コツコツ、とディールさんが腕を組んだ状態から顎に手をあてて考え込みながら歩いている音が嫌に耳に入ってきます。

とても、とても嫌な感じに……


「彼はライル君がそんな状態になったのは自分のせいだ、自分が悪いんだと思っている。その何とかする方法を見つけ出すのだとしても、そんな悪い自分が幸福な状態で・誰かの手を借りてなんて見つけ出せるはずがない、見つけ出していい訳が無い……こんな思考に行きついているんじゃないかな」

「そ、そんな!!マスターは、マスターは!!うっ―」

「ご主人様、は、そんな、お辛い状態で、今まで……全く、理解し切れて、いなかった……」

「カノンちゃん、エフィーちゃん……」


カノンとエフィーが崩れてしまって、それをユウさんとシキさんが支えて下さっています。

私もリゼルも、何とか、本当に何とか倒れそうで、泣きわめきそうなのを無理してでも抑えている状態です。


ご主人、様……


「……そして仮に今言ったことが無いとしても……彼は誰かを頼ることはしないし、出来ないだろう」

「……それは、どうして、ですか」


何とか、言葉に、出来ました。


「彼の思考にあるのは、親しくなった途端にライル君は目を覚まさない状態になってしまったということ。……つまり、もし、頼ってしまったら、同じことが起こるんじゃないのか、また大切な人を失ってしまうんじゃないか―要するにだね、君達のことが大切であればあるほど、だから彼は君達を頼れないんだよ」

「そんな……そんな、ことって……」

≪主……殿……≫

「マスター……私達を、そこ、まで……」

「ご主人……様……私達、それなのに……」


もう、我慢するなんてこと、できません……

ご主人様、ご主人、様……


「彼から君達に手を出したことも若しかしたら無いんじゃないかい、有っても一度」

「……は、い」

「ふむ、それもライル君がそうなってしまってそこまで日が経っていない時だろう。あまりそこまで考えてはいなかったが……色々と考える余裕が出来てしまって、彼もそれで理解したんだろう。このままではマズイ、と」


ぐすっ、ぐすっ、ご主人様……


「……ハッキリ言おう。寝たきりになってしまった人間を目覚めさせる方法と言うのは私ですら今は分からない。この世界にそんなものが存在するかどうかすら。ゴホッ……であるのに、このままだと、カイト君は『若しかしたら』と希望を持ち続け、どうすれば終わりが来るか、何と戦えばいいのかすら分からず、心・体共に傷だらけにしながらそれを気にも留めず、四肢引きずってでもたった独りで戦い続けるだろう」

「そんな、ことは、絶対……」

「マスターは、マスターは……」

「ああ、そうだね、エフィー君、カノン君。……そんなことを絶対にさせてはいけない。その上で重要なのは、彼に、頼るか頼らないかの選択肢がある状況を作らないことだ。そんな選択肢があれば、彼は必ず頼らない方を選ぶ。君達が十二分以上に知っているように……彼は、優しいのだから」

「「「……はい」」」

「……うん」

≪……うむ≫

「言葉で言うのは簡単だが、そうするのはハッキリ言って至難の業だ。並大抵の力では叶わない。確かに君達4人とも強いだろうさ。シア君が前衛、リゼル君が前衛よりの中衛、エフィー君・カノン君が後衛……理想的なパーティーだ。……だが4人掛かりでかかってきても今の君達なら私は勝てる自信がある。それではダメなんだよ」

「「「「…………」」」」

≪…………≫

「私は君達をカイト君の隣にいられる位に強くできる準備がある。1~2カ月間、私に師事してみないか?そうすれば、Aランク冒険者なんて目じゃない・歯が立たないレベルにまで君達を引き上げてみせる……どうだい、その間、カイト君と離れていても、イケるかい?」


……申し出に、否があろうはず、ありません。


「お願いしても、宜しいでしょうか?」

「私達は、強くなりたい、です」

「マスターのために、もっと、もっと、強く……」

≪我等は今以上に強くならねばならん≫

「ディールさん、お願いします。私達を強く、してください」


「……うむ、宜しい。……今日はもう遅い。カイト君も来るし、明日具体的にどうするかは決めよう。ユウ、シキ君もそのつもりで」

「うん!!」

「はい!!」



もう、泣いている場合じゃない。

ご主人様、待っていてください。

必ず、ご主人様のお役にたつために……



=====  シア視点終了  =====

名探偵ディールさんがズバズバと謎を解き明かすと犯人がいないのに号泣し出す人が。

普通犯人が動機を勝手に語りだして最後泣き崩れる、みたいな流れだと思うんですが。


ちなみにこれはディールさんの推理ですので。

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