侵入者……
侵入者を確認するお話です。
またこのお話で新しいキャラも出て来るんですが一番悩んだのは設定でも容姿でもなくキャラ名です。
本当に名前は考えるのが億劫になります。
かと言って適当にしたらそのキャラに合わない名前と言うのは私個人としても嫌ですし。
うーん、今後もキャラ名には悩まされそうです。
設定と言えばスキルについては定義自体は詳細にしたり変更したりもするんですが、このお話でまた出てくる新しいスキルは たくた あきひろ さんにアイデアをいただいたものです。
他にも探していただければあると思いますがとっかかりについてはとても助かっていますのでこの場を借りてお礼申し上げます。
さて、一つまたとある小話を(どうでもいいお話ですので飛ばして本編を読んでいただいても全く問題ありません)~
探偵「……だから、犯人はあなたしかいないんだよ、Mさん!!(ズビシッ)!!」
皆「「「えっ!?M、が!?」」」
M「……フフ、フフフ、フハハハハハ!!」
P「な、何がおかしい!」
M「いやー、探偵さん、大したもんだぜ。凄い想像力だな。アンタ、推理小説でも書けるんじゃないのかい?」
T「な、何を言ってやがるんだ!お前が、お前がやったんだろ!」
K「そ、そうよそうよ、アンタがやったんでしょう!?この裏切り者!!」
M「……テメェら、何言ってやがるんだ?証拠は?俺がやったって言う証拠はあんのかよ、あん?」
T「う……」
K「そ、それは……」
M「はん!証拠も無いくせに偉そうに喚きやがって……どうだい、探偵さん、アンタだって証拠も何もないんだろう?だったら俺はもう家に帰らせてもらうぜ。ここは暑くて敵わねえや。あ~、ダリ~……(スタスタ)」
探偵「……ありますよ」
M「……(ピタ)……何か、言ったか?」
探偵「あると言ったんですよ、あなたが出せよ出せよとおっしゃる“証拠”が、ね」
M「う、嘘をつくな!!全て混ざって、色だって、匂いも……だからそんなものがあるはず……」
探偵「……これを、ご覧ください。私が3時間悩みに悩んで、探しに探して、見つけたものです」
皆「「「これは……フタ?」」」
M「こ、こんなものが証拠だと!?ふ、ふざけやがって、何を根拠に……!?」
探偵「どうやらもう気づかれたようですね。そうです……(BGM~♪)……賞味期限が、1年と半年、過ぎてるんですよ、Mさん!!」
T「……お前、どうして……」
M「……誰にも、気づかれなかったから、イケると……イケると思ったんだよ……チキショーー!!」
探偵「…………」
~後書きへ
≪主殿!≫
「あそこに、人が!!」
リゼルが指差す先を見つめると……姿が2つ。
シアが破壊したガーゴイルの石像と出会う前に人と遭遇してしまう辺りやっぱり侵入者……いや、ちょっと待て。
年格好、は……何となく俺と近いのかな?
特に着飾るでもなく動きやすい服装。普通に機能性重視なんだろう。
そのためかところどころ破けて肌がさらけ出されている。
……別にダメージを与えたらそれに応じて衣服がブレイクするようないやらしい仕様がこの世界にあるわけでは無い。
純粋に刃物とか魔法の攻撃での影響だろう。
そんなものがあったら男の衣服だってブレイクしてしまう……やめよう、気持ち悪くなる。
一人は特徴的なケモ耳と尻尾を持ち、それだけで獣人だということが窺える。しなやかで黄金色の髪を首の後ろ辺りで几帳面に結っている。
が、シュッとしたその体のあちこちからは出血や傷、痣なんかも散見され、とても辛そうな表情をしている。
見ているこちらが痛々しくなってくるくらいだ。
もう一方はと言うと、黒紫―ともすれば烏を想起させる漆黒にも近い長い髪を腰辺りまで伸ばしている。片方の子のように束ねてもいないのに整っている辺り、綺麗だなという印象を受ける。この子については体型は前者の子より更に華奢で顔立ちも一応中性的だ。
……確かに息は上がっているが見た目肩を貸してもらう程の外傷は見受けられない。
足を怪我して引きずっている、と言うわけでもなさそうだ。
そんな中体のあちこち傷だらけの女の子がもう一方を支えている理由は本人たちから聴き出さなくても一目で分かった。
後者の子の瞳に力が―光が宿っていないのだ。
死んでいる、と言うわけでは無く、前者の子が何か口にするとその時々に明滅しているかのように戻る時があるのだが、実際には消えている割合の方が大きい。
つまり、会話は成立する……時もあるんだろう。
……どういうことだ?
侵入者……とは違うのかな?
いや中に入ってきたって意味では侵入者なんだろうけど。
「こっちで、合って、いるのでしょうか?言っていた、石像を越えたという事は、もう少し、なんでしょうが、これ以上、は、もう――っ!」
「……はぁ、はぁ……」
肩を貸している方の女の子が俺達に気付く。
「くっ、新手、ですか!?どうして、前方、から――」
支えていた一人を素早く床に寝かせて庇うようにして剣を抜く。
俺達も自分の武器に手を掛け―
「うっ――」
―ようとするも、剣を抜いた女の子が膝から崩れてしまう。
「ここまで、来て――体が、くっ!!」
「こ、これはどういう……ことでしょう」
≪な、なんじゃ?≫
リゼルもこの状況に少なからず混乱している。
俺もよく分からん。
どうしよう……ん?
女の子が抜いた剣をよく見てみると、何やらカッコいい紋章が。
これは……騎士?え!?
「リゼル、あの子達、若しかしたら騎士かもしれない。ほら、良く見てみろ、あの剣」
「騎士、ですか?……あ、本当です」
≪うぅむ……じゃがどうしてこんなところに騎士が?≫
俺もそこは気になる。
こんな森の中、しかも怪我をした騎士が来る用事なんて……
まあこの先にはディールさんの家しかないから迷ってここまで来たか、ディールさん目当てでここまで来たかのどっちかだとは思う。
俺としてはどっちでもいいんだが、どっちにしても対応が困ることには変わりない。
本当にどうしたものか……――っ!!
「気をつけろ、まだ二人いる」
≪!!……分かった≫
「『索敵』……です?」
「ああ……」
まだ音も気配もしないからリゼルにとっては分かり辛いだろうが二人の女の子の40m程奥、つまり俺達が目指していたガーゴイルの石像があるであろう所に二人。
この二人の子と違って引っかかった奴等の動きは素早い。
どんどんこちらに近づいて来る。
それでいて動作に無駄が無い。
くっ、まだ状況を把握し切れてないのに新手か!
ザザッ
黒い服を纏った見るからに怪しい、だが正体自体は分からないようになっている―そんな不審者の中の不審者が2人。
ガスマスクのようなものまでつけている。
……別に顔を見られたくないだけなら仮面とか覆面でいいだろうが。
シュコー、シュコー言っててうるせぇんだよ。
お前等はライトなセーバーを使うどっかの暗黒卿か!
「!!――どう、して!?囮を、使ったのにこんなに早く……」
剣を抜いた方の―獣人の方の女の子がダースベ〇ダー共の出現に愕然としている。
彼女もどこかの惑星の命運を託された騎士なのだろうか?
ふむ、とすると、俺に求められる役割は…………ヨー〇?
――っと、そんなバカは言ってられないな。
確かにあのマスク単体は見たことないが、あの黒い衣装……
以前、ヴォルタルカに入る前に俺とベルを尾行してきた奴等とそっくりだ。
あの時はキモ男野郎の団員だとばかり思っていたが今ではそう考えると、その説にはかなり違和感がある。
「――シュコー――」
「っ、ここまで、来て――っ!!」
不審者は小太刀を抜いて動けないでいる女の子二人に近づいていく。
俺とリゼルの存在を認めてかそれとも目標を追い詰めるときはこれ位慎重なのかは知らんが足音一つ立てずじわりじわりと距離を詰める。
女の子も何とか剣を握り直すが体が言うことを利かないのか、表情を歪める以外に何もできないでいる。
「……シ……キ」
「!?――っ!!」
獣人では無い方の女の子の目にまた生気が宿り、獣人の子に向けて何かを告げた。
獣人の子はそれに反応してもう一人の子に覆いかぶさるようにして庇う。
当たり前だが不審者は尚も動きを止めない。
ちっ、考える時間は無いか。
≪主殿!!≫
「どうしましょう!?」
リゼルも俺に判断を仰いでくる。
なら……
「あの不審者共が俺達にとって味方じゃないってことは確かだ!!あれは倒しても多分怒られないからあっちをやるぞ、リゼルは俺の取りこぼした攻撃を防いでくれ!!」
「分かりました、です!!」
≪了解じゃ!!≫
俺の指示に応え、女の子二人の前へ出るため駆ける。
「!?――コ、コシュシュコー!!」
だからシュコー、シュコーうるせぇんだよ、それで会話すんじゃねえ!
先ほどの疑問だが、どうやら俺達の存在には気付いていなかったようだ。
リゼルの乱入に驚き、焦って懐から何かを投擲してきた。
だが、それが本当に焦って投げたのか疑問に思える程に正確にそれはリゼルを襲う。
≪む!?ファルよ!!≫
「分かってます――はぁっ!!」
キンキンキンッ
リゼルは自分の背丈ほどもあろう戟を回転させて壁を作り、投げられたそれらをはじき落としていく。
「すぅっ――」
そして、走り始めていた俺をチラッと見た後、大気を魔力と共に自己へと吸収していく。
―ブレスか!―
俺は直ぐさま先の戦況を組み立て、剣を抜いて不審者二人に肉薄する。
相手も混乱から立て直っていて手に持つ小太刀で応戦してくる。
「やめろ、俺達は敵じゃない!!悪いのはそいつ等なんだ!!」みたいなことを言って止めてこないんだし迎撃してもいいだろう。
女の子二人を守ることにもなるんだから元の世界で言う正当防衛だ。
何よりシュコー、シュコー言ってて俺達と対話する気が無い宇宙人共に俺は容赦するつもりは一切無い。
あのガスマスク見てて腹立ってくる!
あれを取って「わ~れ~わ~れ~は~、う~ちゅ~う~じ~ん」ってやるのなら……いや、そもそも宇宙人って言うのは俺達地球人からした分類の仕方だから相手が俺達を見下してない限りそんな言い方しないか。
ならもういいや。
「ふん!はっ、らぁ!」
俺は簡単な魔法を使いながら二人相手に立ち回る。
ちょこまかと小賢しい動きを見せて来るがさっきハイ・スケルトン50体を相手にしたところなので比較すると相当楽だ。
あれを経験したら多分大抵の集団は独りでも何とかできるようになるな。
「シュ、シュッコー!!」
「コシュー、シュココシュー!!」
……普通にしゃべれや、鬱陶しい。
とは言え、一人相手に押しきれないことに段々イライラしてきたのか、攻撃パターンも単純になってきたし、集中力も欠いている。
このまま一人ででも倒せそうだが逆にさっきのハイ・スケルトン戦での疲れだって多少なりとも残っているのも事実。
油断はせず、ここは立てた戦略通りリゼルのブレスを頼らせてもらおう。
そうして何回か切り合いを続けると……
≪主殿!!いいぞ!!≫
「よし、分かった!」
リゼルの『念話』で俺に準備が整ったことが告げられる。
俺は力を入れて不審者共を押し返し、リゼルの下まで飛び退く。
≪ファルよ!!≫
「やっちまえ!!」
「(はい、行きます!!)――ダークブレス!!」
凡そ人の体から放たれるものとは思えない量の闇が渦となりうねりとなって、不審者二人を一気に飲み込む。
「シュコーーーーー!?」
「シュコ、コシュコーーーーー!?」
最早人の体を視認することは出来ず、奴等の近くにあった木々ですら全て闇に飲まれてしまった。
流石にドラゴンの状態よりかは威力は落ちるものの、人二人を吹き飛ばすには十二分なものだ。
どうなっているか分からないので鑑定を使ってHPの残りを確認しているととんでもない速さでHPを削り取って行く。
毒対策か何か知らないけど……これじゃあガスマスク本当にシュコー、シュコーうるさいだけだったな。
「リゼル、もういいぞ」
「(はい)――ふぅ」
HPが0になる前にブレスを止めさせる。
闇が収束していった跡を見る。
ヒクヒクと痙攣してそれ以上動かない宇宙人二人。
俺は近づいて今のうちに土魔法で拘束しておく。
ついでにガスマスクもはずしてその面を拝んでやることに。
外したガスマスクはちゃっかりアイテムボックスに。
これ、本当に宇宙人だったら大発見なんだけどな……
≪……何じゃこ奴等。気持ち悪い顔をしとるのう≫
「そうだな」
「すいません、やり過ぎたでしょうか?」
「いや、気にするな。多分元々こんな気持ち悪い顔なんだ、この男達は」
ふむ、気持ち悪い顔を見るだけで済むなら十分だ。
機械やタコ型エイリアンが出てこないだけまだマシだろう。
さて……
俺達は一先ず似非宇宙人共を置いておいて件の女の子達の下へ。
「……あの、すいません」
「…………」
女の子二人に話しかけても反応が無い。
覆いかぶさっている獣人の子はどうやら気絶しているようだ。
どうしよう……困った。
「……うっ……あっ」
ん?
起きたのだろうか。
「あ……うっ、君、達は?」
あ、違った。
長い髪の子の方だ。
「大丈夫ですか、話、できますか?」
俺は獣人の子を抱き上げて仰向けに寝かせ、その後長い髪の子の背中に手を回して介抱するように優しく抱き起す。
≪ええのう、あの女子ども。我も主殿にああして欲しいのじゃ≫
「姉じゃ、確かに羨ましいですが我慢してください。主様も善意でなさっていることですから。さ、私達は周囲の見張りを」
≪うむぅ~、まぁ、仕方ないのぉ≫
リゼルはとぼとぼと歩いて似非宇宙人の下へ。
スマンな、後で何か気遣ってやるか。
「うっ、ん、僕、は……」
あれ、さっきより何だか顔色が……
「大丈夫なんですか、顔色が優れませんが」
「ゴメン、ね……バジリスクの、毒を、浴びちゃって、だから……」
その言葉を聞いていたのか、リゼルが振り返る。
「“バジリスク”ですか!?普通の毒と違って“猛毒”なんです!直ぐに治療しないと……」
「はは、ははは……だい、じょう……」
女の子は笑顔を浮かべるも、無理しているのが丸わかりだ。
「リゼル、“猛毒”も確か状態異常だったはずだよな!?」
「はい、ただ治療には普通の毒薬や薬草では……」
「心配するな、俺はそんなもん使わん!!」
直ぐに回復魔法を使って治療する。
優しい光が彼女を包む。
「あぁ、気持ち、いい……温か、い」
……うん、癒されてくれてるのは嬉しいけどそう言う声出すのは避けてほしいかな。
ちらりと獣人の子を見る。
確かに“猛毒”なんだったら早急に対処する必要もあったろうが、この子の傷も見過ごすべきではないよな……
一応獣人の子のステータスを鑑定する。
…………うん、これを放置はマズイな。
この子も毒受けてるじゃん。
MPも0だし、HPだって放っとくと命に関わるレベルだ。
ゴチャゴチャ考えるのは後だ。
後で問題になるんだったらそれはその時に対応すればいい。死んでしまったら事情も何も聴けない。
俺は同じように回復魔法をかける。
「……うぅ……ん、んふぅ……」
……悪いことはしていない。むしろ立派な人命救助をしているはず。
なのに何だろう……何だかいけないことをしている気分だ。
≪落ち着けぇ、落ち着くんじゃ、我よぉ~≫
「自分で言っているように落ち着いてください、姉じゃ」
≪ええい、止めるな、ファルよ!!女にはやらねばならない時があるんじゃ!!≫
「そうだったとしてもそれは今では無い、です。怪我人、しかも意識の無い相手にどうこうするのはみっともない、です」
≪ぐぬぬぅ……我は、我はこの憤りをどうすればいいんじゃぁ!?≫
「ですからとりあえず落ち着いてください。これ以上は流石に面倒くさい、です」
リゼルは頭が痛そうに顔を抑えている。
……あとで何かフォローしてやらんとマズいかもしれんな。
「ん……あ、れ?ここ……は?」
「ん?ああ、お目覚めですか?ここは……」
獣人の子が起きたようなので状況を説明しようとし――
「!?――ユウ、ユウは!?」
――たところ、女の子は凄い剣幕で辺りを見回す。
「ユウ!!」
そして、連れていた女の子の姿を認め、抱きしめる。
「……は、はは。……シ、キ。ゴメンね、心配、かけた?」
抱きしめられた長髪の子はさっきのように空元気で笑顔を浮かべる。
先程よりかは幾分マシな顔色になっているものの未だにその笑顔に力は無い。
「当たり前です!!怪我は、毒は大丈夫なんですか!?」
「うん、そこの、人が、回復、してくれたんだ、よ?だから――」
「良かった!!本当に、本当に……」
「……ゴメン、ね」
「ぐすっ……ぐすっ……」
獣人の子のすすり泣く声だけが静かな森の中に響く。
ふむ。
とりあえずは一段落、ってことで、いいのかな?
じゃあ――
「うっ、がっ、あぁ!!」
この騒ぎに結論付けるにはまだ早かったようだ。
長髪の子が途端に苦しみだした。
……え!?
「あっ!ぐぁあ!い、いやっ――」
かと思ったらさっきのように目の光が明滅して、いきなり女の子はうなだれる。
「え!?ユウ、どうしたんですか、ユウ!?」
獣人の子にも何が起こっているか分からないらしい。
くそっ、何がどうなってんだ!?
今迄のことは“猛毒”の影響じゃなかったのか、ちっ!
回復魔法をかけた以上状態異常は治癒してないとおかしい。
……うん、状態異常はない。
鑑定した結果状態異常はない。
となると……カリンさんのパターンか!?
状態異常では無く病気、とか。
なら――ん?
鑑定をし終える直前、この子のスキル欄にとても違和感のあるスキルが視界に入った。
『寄生虫(闇)』
……普通こんなスキル望んで取得したりしないよな。
いや、若しかしたら攻撃用のスキル……
「ユウ、しっかりして下さい、ユウったら!!」
獣人の子が長髪の子の名を呼びながら揺らす。
しかし反応は無い。
「回復したんでは無かったんですか!?ユウは、ユウは……」
こっちに飛び火してきた。
俺だって何が何だかまだよく分かんないのに……
「はい、回復して確認もしました。“猛毒”自体はちゃんと消えています。ただ……」
「うっ、うう……」
「ユウ!!」
ユウと呼ばれる女の子の意識がまた戻る。
せわしないな……
「シキ、ゴメ、ン……僕、が、僕じゃ、無くなるようで――うっ、あっ、がぁ!!」
「ユウ!!」
酷い頭痛でもするのだろうか、両腕で頭を抱え込む。
獣人の子も何もできずただ彼女を心配そうに見つめている。
「バジリスクの毒が、治ったんだったら、どうして、ユウはこんなに、苦しんでいるの……」
「すいません、このユウさん、ですか?この方は『寄生虫(闇)』というスキルを持っていますか?」
「……そんな、おかしなスキル、ユウが……――!?、まさか、あの時――」
「……多分、3日、前、のあの、時だよ」
「ユウ!!ユウ!!」
頭痛が弱まったのか、ユウさんが答える。
寄生虫(闇):侵入後、48時間または侵食率30%以上になった後にスキルとして顕在化する(顕在化後で侵食率が40%以下の場合、聖水・光魔法を受けるとスキル・寄生虫は消失する)。対象の体内に侵入、寄生(寄生された対象は寄生虫の装備となる)して対象の自我を徐々に侵食して奪っていく。侵食の速度は体調・精神状態により変化し、触手の侵食率が100%に達すると対象を乗っ取る。乗っ取った後は『寄生虫(闇)・済』に変化する。……87%
うん、原因はコイツで決まりだな。
心当たりもあるらしいし。
でも、これ、一体どうすればいいんだ……
こんなスキル初めて見る。
これだと上級ポーション作っても――
「うっ、ぐゎ!あぁぁぁ!!」
「ユウ、しっかりして下さい、ユウ!!」
ユウさんは今度は胸を両手で押さえつける。
さっきは頭を押さえていたのに今度は胸か?
正確には心臓……いやそこはどっちでもいい。
「はぁはぁ……ゴメ、ン。僕はもう、ダメかも、しれない」
痛みが治まったのか彼女は力なく笑い、獣人の子にそう告げる。
「ユウ、しっかりして下さい!!ユウが、皆の太陽であるあなたがこんなところで死んでは、私達は、第10師団の皆はどうすれば……」
え?第10師団……まさか!?
「ゴメ、ンね。シキ、今迄、僕を支えて、くれて、ありが……とう」
「そんな謝罪が聴きたいんじゃありません、諦めないで下さい、ユウ!!」
「第10師団のユウさんって……貴方はディールさんの、娘さん、ですか!?」
「ディールさんの……お知り合い、だったの、かな?じゃあ、僕、またディールさんに、迷惑を掛けちゃっ――ぐ、ぐぁぁあ!!」
「ユウ、ユウ!!」
やっぱりディールさんの娘さんだったのか!!
手紙で『元気だ』とか書いてたし、それを貰ったのが本当につい最近ってことだったから全くもって意識の外だった。
今度は頭と胸を抑える。
更に目からは光が消え、また意識を失いかける。
これは……ヤバい!!
でも、マジでどうすればいいか分からない。
こんなケース初めてだから、くそっ!!
俺は慌てながらももう一度根源であるスキルの定義に立ち返る。
寄生虫(闇):侵入後、48時間または侵食率30%以上になった後にスキルとして顕在化する(顕在化後で侵食率が40%以下の場合、聖水・光魔法を受けるとスキル・寄生虫は消失する)。対象の体内に侵入、寄生(寄生された対象は寄生虫の装備となる)して対象の自我を徐々に侵食して奪っていく。侵食の速度は体調・精神状態により変化し、触手の侵食率が100%に達すると対象を乗っ取る。乗っ取った後は『寄生虫(闇)・済』に変化する。……88%
くっ、触手……侵食……ダメだ。
思い浮かばない。
くそっ、騎士とは言え、ディールさんの娘さんなんだったら助けた方が……でも、何も、思い、浮かば――
「絶対助けるって、皆にそう約束したんです!第10師団の皆もあなたが帰って来るのを待っています!だから、だから……」
半ばあきらめかけていたその時、獣人の子の言葉が響く。
そして、先程の言葉がまた繰り返される。
「皆の太陽であるユウが、こんなところで死んだら、私達は、私達第10師団はどうすれば……」
スキルの定義からすると、乗っ取られるだけで身体的に“死ぬ”ってわけではないが、獣人の子にとってはそれは分からないことだ。
それに、精神的に乗っ取られる、自我を失うってことはほとんど“死”と同義ではないだろうか。
そして……
俺は獣人の子が溢した“皆の太陽”という言葉に引っかかった。
……ライルさん……
この子が死んだら、ディールさんが悲しむだろうことはもちろん、この子を慕っている人は……
もしかしたら過去のライルさんと同じようなことが起こるかもしれない。
あんなことは、もう、2度と……
「ディールさん、に、伝えて、くれませんか?ディールさん、に拾ってもらって、とっても幸せだった……何にも恩返し、出来なくって、ごめん、なさい。……あなたの、娘でいれて、本当に、良かった――」
ユウさんは再度獣人の子の声に反応して意識を取り戻す。
侵食率は……89%。
そうか……『侵食の速度は体調・精神状態により変化し』この定義の部分か!
明らかに進行速度が速かったと思ったが、今迄は“猛毒”が『体調』に、この子の“諦め”が『精神』に影響してしまってるんだ。
くっそ、このままじゃ……この子は……
俺の頭の中にまた、過去のあの出来事が流れ込んでくる。
――あんなことは、もう、2度と……2度と起こさせない!!――
「……嫌です」
「……え?」
「伝えたい想いが有るんなら、生きて自分の口で伝えて下さい!!簡単に諦めないで!!」
「で……も……」
「あんなおかしな人でも、貴方のことを本当の娘と思ってとても嬉しそうに話していたんですよ!?それはもう嬉しそうに」
「ディールさん、が?」
実際に俺が感じたことだ、嘘は言っていない。
仮に間違っていたとしても多少の脚色は目を瞑ってもらおう。
今はそれどころじゃないんだから。
「……僕、だって、生き、たい、に決まってるじゃない、でも、もう、何となく、分かるん、だよね……うっ」
また痛みで表情が歪む。
「今迄色んな、修羅場をくぐってきて、けど……今度のは、もう、どうしようも――」
「だったら、私を信じて下さい!!」
「――ない……え?」
「貴方の経験上で駄目なんだったら、貴方の経験上にいない、私を信じて下さい!!必ず貴方を助け出して見せます!!貴方を絶対にディールさんと生きて再会させて見せます!!――だから、貴方も私を信じて下さい!!」
「……そ、その、えっと………………はい」
よし!
最後の返事の際目は合わせてくれなかったがそこはもう信じるしかない。
「貴方も、ユウさんを励まし続けて下さい!!意志を強く持つことが重要になってきます!!彼女を助けたいんだったらしっかり!!」
「は、はい!!」
獣人の子にもお願いする。
“猛毒”を何とかできた以上、後はこの子の精神状態をしっかりと保てたら侵食ペースは速くはならないはず。
「リゼル、ディールさんを連れて来てくれ!!――来い、カエン!!」
リゼルに頼むと同時にカエンを召喚する。
カエンにベルと同じ役割、つまり犬のように臭いでどうこうを期待するのは難しいだろうが今はリゼルにドラゴンに変身させて空から探すよりはカエンに乗って陸から探させた方が恐らく早いだろう。
ディールさんを見つけたら後はディールさんが使っているだろう方法でこちらを見つけてもらえばいい。
「分かりました。カエン、お願いします!!」
≪うむ!!分かったぞい、行くぞ、ファルよ!!≫
リゼルは直ぐさま俺の意図を理解してカエンに乗る。
「アオーン!!」
相変わらずカエンの吠え方は何か違うような気もするが、一応カエンも走り出す。
よし、後は、宣言通り、俺が何とかするだけ!!
さっき見直した時は何も、解決の糸口すら見つけられなかったが、こうやって自分を追い込むと集中力も増す。
もう一度だ!
……寄生“虫”って言う位だから、形あるものがこの子を苦しめているんだろう。
とすると『触手の』という言葉が引っかかる。
触手自体もまた有形である可能性が高い。
だとしたら……
俺は『索敵』で捕捉する対象を、周りを警戒するために使っていた概念をいじって変えることに。
…………な!?
把握出来たのは出来たんだが……
俺はユウさんのくびれまで窺える細い体のために強調される胸―正確には心臓のある左胸を見やる。
……寄生虫はユウさんの心臓を包み込むように触手を広げていた。
心臓を何本もの指で直に鷲掴みにしているような感じだ。
虫って言っといて想像以上の大きさに驚愕するも、直ぐに冷静になり状況を把握する。
幽霊とか思念体とか、そういう目に見えない相手だったら本当に絶望的だったが、これならまだ希望はある。
どうする、どうやってコイツを……
「うぅ、あぁ!!シキ……」
「ユウ、頑張って下さい、私はここにいますよ!?」
獣人の子はユウさんの手を両手で握り、励ます。
侵食率は……89%。
くっ、上がってはいないが時間が無いことには変わりない。
俺は一言一句逃さず何度も何度も定義を反芻する。
このスキルが顕在化した後は、この子が“装備”になる。
まあ寄生虫自体がこの子の体内にいるんだからとどのつまり攻撃しようと思ったらユウさんを攻撃してしまうことになる。
ユウさんを攻撃して寄生虫に攻撃が届かない訳では無いだろうがそっちで攻めて行くのは流石にギャンブル性が高い。
『幸運』があったとしてもそれは最終手段。
賭けるならもっと可能性の高い説を考えてからだ。
『幸運』……装備……あ!
『装備貫通』!!
装備貫通:このスキルを使用すると、相手の装備を貫通してダメージを与えることができるようになる。
うーん、これで、イケると思ったんだが、これを使っても装備を『貫通』ってことは『無視』してくれるわけじゃないから攻撃をしてしまうとダメージを与えてしまうことには変わりない。
それだとさっきまでと何ら状況は変わってない。
この子を助けるためにはそれじゃあ足りない。
くっそ。
定義を何度も見直すとともに頭を休ませず回転させ続ける。
何か、何か……ん?
さっきの話……エフィーがディールさんに質問したこと……
そこで何かが引っかかった。
何だっけ……確か、あのディールさんの糸……あ!!
そうだ、“魔力の糸”を使えば!!
触手の侵食率で%を表しているんなら、逆に触手が戻って行けば侵食率も下がる。
ディールさんの話じゃ糸は人には使えないだろうということだったが、糸の対象を寄生虫にすればいい。
そうしてユウさんを装備として、『装備貫通』を使えば、ユウさんを貫通して、糸を寄生虫に繋げることができる。
そうすれば、侵食率を40%以下にして、マジックボックスにある聖水を掛ければ寄生虫も消える。
よし、理屈としてはこれでイケるはずだ!!
後は……“魔力の糸”を実際に作れるかどうか。
「はぁ……はぁ……信じて、る、から」
恐らく難しい顔をしていた俺にユウさんは辛いだろうに笑顔でそう言ってくれる。
……もうここまで来たら作れるかどうかじゃない、作らなきゃダメだ!
「……はい、私を信じて下さい」
「助ける」「信じろ」って言ったんだ、そして、それを「信じる」と言って信じてくれてるこの子のために、今も必死にこの子を励まし続けている獣人の子のためにもやるしかない!!
俺は『パーティ恩恵(リーダー)+α』でエフィーの『魔力操作』を用いる。
さっきのディールさんとの話を、戦いを思い出せ……
別にあそこまで精緻に作れなくてもいい、何本かで一体を操れるレベルでいいんだ。
俺は超能力でも使うかのように手をかざして念じる。
イメージしろ、魔力を、糸に……はぁ!
魔力を込めると、五指からニョロニョロと麺程の太さとなって魔力が出てくる。
初めてでディールさんレベルを再現、みたいにはいかないか。
まあそこはいい。
魔力がこの状態になって出てきただけでも御の字……と言いたいところだが、如何せん長さが足りない。
獣人の子も一部始終見ていたようで、長さの部分を気にしているようだ。
いや、もちろん立ったまま試してたんだからしゃがめば丁度良くなるかもしれないんだが。
俺は直ぐにしゃがんで長さを目測する。
…………微妙だ。
胸の大きさのせいで……
ええい、緊急避難的措置だ!!
考えてる余裕はない!!
俺は『装備貫通』を使い、衣服が破けてしまって少し露出気味の左胸にタッチする。
「ん……あぅ」
「!?――あ、貴方何を――」
非難したいという気持ちは分かるが、その非難が最後まで俺に浴びせられることは無かった。
獣人の子は魔力の麺がユウさんを通して体内に侵入していったのを目撃したのだ。
こっちだって今は他のこと考えてる余裕はないんだ、勘弁してくれ。
第1段階が成功して、俺は意識を研ぎ澄ませ『索敵』から得られる感覚と照らし合わせながら麺を操って行く。
ニョロ、ニョロニョロ
くっ、やっぱり操作が難しい。
思った通りに進まない。
「うっ、んふぅ、あ、あぁ……」
麺を操っているとユウさんがそれに伴って体をよじる。
しまった、痛いのかな!?
……そうか、麻酔無しで素人が執刀医やってるようなものだし。
「ユウ!!――くっ(キッ)!!」
え!?獣人の子に睨まれた!
いや、俺だって痛み無くやってあげたいのは山々なんだよ、でも魔力の糸なんて作ったことすらないんだからそこは大目に見て欲しい。
……よし。
麺が何かにぶつかった。
感覚が手に伝わってくる。
俺は麺を全てそれに結合する。
これもまた一苦労だったがここは単なる通過点に過ぎない。
問題はここからだ。
神経を研ぎ澄ませ、意識を指先に集中させる。
指先をミリ単位で動かし、緻密な作業――伸びてしまっている触手を元に戻させる。
普段は汗かきと言うほどでもないのに額から汗の雫がたらたらと零れて行く。
俺が良く知る医者が行う手術と違って手元が狂っても臓器を傷つけるとかそんな心配はいらないものの、ミスったらミスったで魔力の麺が寄生虫から外れてしまったり、触手が心臓を締め付けてしまうかもしれない。
だからミスを避けられるよう慎重を期すことに越したことは無い。
一方でちんたらしていたら寄生虫の侵食にこの子が無用に苦しむことになる。
助けられたとしてもそのことで後遺症なんて残ったら――それこそ……過去の……ライルさんのように寝たきりになんてなったら――何の意味も無い。
だから両立しない、排斥しあう精密さと迅速さを極限まで追求しなければならない。
医者ってのはこんなことを毎回毎回していたのか……
5本それぞれの指先の先端一つ一つに意識を注ぎ込み必要に応じて動かす。
ちょっとずつ、ちょっとずつだが伸びた触手が縮まっていくのが併用している『索敵』の効果で分かる。
侵食率は……63%。
よし、もう少しだ。
自分のやっていることが正しいのだと視認できたことも助けて、俺はどんどん処置を進めて行く。
「あっ、うっ、はぁぁっ」
ユウさんはさっきのように悲鳴めいた声を上げることは無くなってきたが、それでも体を捻ったりして声を漏らす。
やはり痛いものは痛いのか。
そしてその度にギロリと人を射殺せそうなほど冷たい視線を向けて来る獣人の女の子。
分かってるって、俺だって必死でやってんだよ、これが限界なんだって!
そして……何時間とも思えるような長い時が過ぎ……
侵食率は……39%。
よし!!
俺は右手を維持しつつ左手でアイテムボックスから聖水を1本取り出し、ユウさんに飲ませる。
かけてもいいのだがかけるよりは飲ませる方が動作にブレが少ない。
ユウさんが聖水を飲んだ後、『索敵』で確認できていた虫が細々と分解していき最後には完全に霧散しきって『索敵』でも、『鑑定』でも確認できなくなった。
だが、彼女の穏やかな――素敵な笑顔を見ればそれは別にスキルというもので確認する必要も無い。
良かった……本当に……
ライルさん、俺……
「アォーン!アンアン!!」
「主様!!」
「ユウ!!」
≪主殿!!≫
測ったようなタイミングでリゼルとカエンがディールさんを連れて戻ってきた。
ディールさんは全身黒い骨をした犬型のモンスターであるヘルハウンドに乗っている。
元々が青紫色だったが別れる前以上に顔色が悪そうに見えるのは気のせいではないと思う。
そこから降りて、獣人の子に抱かれているユウさんを険しい顔をして見下ろすディールさん。
「えーっと……ディールさ――」
「――はぁ、全く……」
「あっ……」
何か言いかけたユウさんをため息で制し、ディールさんは彼女の頬に優しく触れる。
「だからあれ程注意しただろう。君は危ういところにいるんだ、と」
「ごめん……なさい……」
「はぁ…………体は?そこの竜人君に生死を彷徨っていると聞いたが?」
俺はリゼルの方をチラ見する。
フルフルとリゼルは首を横に振る。
じゃあ姉の方か。
若干誇張があるかもしれんがまあいいか。
「そこの、ディールさんのお知り合いの人に……助けてもらいました」
支えられたまま首だけを俺に向ける。
「そうかい……」
「今回ばっかりは、もう、ダメだと、死んじゃうって、僕、思って、もう、ディールさんとも、皆とも、会えないと、思って……」
ディールさんも来て、助かったことを、もう安心だということを実感したら急にさっきまで自分が死の淵にいたことを思い出したのだろう、矢継ぎ早に言葉を告げては嗚咽を漏らす。
「そうかい……」
ディールさんはそれだけ述べて後は静かに彼女の言葉に耳を傾ける。
そしてひとしきりユウさんが言い切ると、ディールさんは優しく髪を撫でてフワッとした笑みを浮かべる。
「色々と君に言いたい小言はあるがまあ兎に角――生きていてよかった。ユウ」
その一言でユウさんの目にあるダムが決壊した。
俺は邪魔しないようにリゼルに近づき、今回のことを労う。
「お疲れさん。ディールさんのこともだが、戦闘でも助かったよ」
いつもエフィーにしているように頭を撫でてみる。
リゼルは皆の中でも背が高い方なので感覚的には少し異なるが。
「いえ、主様のお役にたてたのでしたら良かったです」
少しくすぐったそうだが嬉しそうにしてくれる。
差別するつもりは無いが妹が表だと大人しめな美人だから、こんな表情をしてくれると俺も嬉しくなる。
≪う、うぅ~む~≫
良かった。
姉も満足しているようだ。
数分後……
ディールさんがシア達にもヘルハウンドやハイ・スケルトンを派遣していたらしく、合流できた。
侵入者については全てあの黒い衣装を纏った不審者だった。
一先ずハイ・スケルトンが拘束してディールさんの家に先に連れて行ってくれた。
来た時のように、落ち着いたユウさんを獣人の子が肩を貸して立ち上がらせる。
ディールさんはそれを確認し、一言獣人の子に告げる。
「ふむ、またゴホッ……色々と話さなければならないことが増えたようだね。――第10師団3番隊隊長“幻影のシキ”君」
「…………はい」
二人の間に一瞬重たい空気が漂ったが、それはディールさん自身の咳払いで霧散する。
そしてディールさんは俺達に向き直り……
「ふむ、君にも話さなければならないことがゴホッゴホッ……増えてしまったが済まないね、一先ず家に戻ろうと思うんだが」
チラッとユウさんを見る。
「はい、勿論問題無いですよ、私達は。彼女達を休ませることを優先させた方がいいでしょうし」
「ああ。助かるよ。後、娘を助けてくれたようだね。――本当にありがとう。感謝してるよ」
ディールさんが頭を下げたのを見て、ユウさんも慌てて同じく頭を下げる。
シキさんも右に同じく。
「いえ、私もあの時自分にできる精一杯のことをしただけで、その結果がこうだったというだけです。お気に為さらず」
「ふむ、今すぐにでも礼をしたいんだがまあ一先ずは戻ろうか。ゴホッ……ハイ・スケルトンにする方法も含めてここじゃあ何だしね」
「はい」
そうしてディールさんはユウさんとシキさんを1体ずつヘルハウンドに乗せてゆっくりと歩き出す。
俺達もそれについてディールさんの家に戻って行った。
はい、またやらかしました。
食材自体は全て検証したんですが調味料については見落としていましたね。
これのせいで最近食材恐怖症予備軍です。
皆さんも舐めてかからずお気を付け下さい。
はい、そんなことはどうでもいいですね。
本編では普通にディールさんの娘さん登場です。
騎士である彼女が襲われたっぽいようですね。
何かが裏で動き出しているのかも……
まあ侵入者の正体やディールさんの娘さん達に何があったかについては恐らく次話で言及しますので。
個人的にはもう少し前話でディールさんと娘さんとの繋がりの深さを書いておけば良かったかな、と思ってます。
もし話のスピードに余裕が出てきたらExtraの位置づけ位になるだろうな、と思っていたディールさんと娘さんとの出会いを書くかもしれません。




