ち、違う!!
「ご、ご主人様!?」
≪主殿!何をしておるんじゃ!!≫
シアとリゼルから非難の声が飛んでくる。
状況をすぐさま理解して手を離し、弁明に努める。
「いや、ち、違う!!これはそう言う事じゃ……」
「まあまあ、趣味は人それぞれさ。恥じることはないよ」
「いや、違いますから!!そんな趣味はありませんからね!?」
ディールさんは「大丈夫、私は分かっている」と言わんばかりの顔で俺を諭してくる。
ややこしくなるからアンタは黙っててくれ!!
「……ご主人様が私達にあまり手を出して下さらないのは、もしかして……」
≪ぐぬぅ~、主殿がそういう趣味では、我等には……≫
「姉じゃ、一応私達はシアさんやカノンさん程大きくありません。まだ希望を捨てては……」
シアやリゼルも邪推して勝手に話を進めていく。
「いや、だからな、そういうことじゃないんだって!!少しは話を……」
「……旦那様はあんな申し訳程度すら感じ取れない胸がよろしいのでしょうか?だとすると、私には希望は……それは兎も角として、エフィー姉様、やりましたね!」
「ユーリ、あなたは私の胸を見て……ま、まあ私もご主人様が好いて下さるのなら、小さくても……」
エフィーは自分の胸に視線を落としては頬を緩ませる。
表情とその小ぶりな胸は年相応で可愛らしいのだが、別にそう思うことに他意はないのだ!
本当だぞ!!
『カイト殿、あんなにお美しいカノン様に手を出さないのにはそんな深い理由が……』
「あのなぁ、だから何度も……」
そう言いかけた時、ベルの周りに魔法陣が拡がる。
これは……
『む!カノン様に呼ばれたようだ。行ってくる』
そう言えばそうだったな、ユーリを呼んだ以上カノンがベルを呼ぶのは当然か。
「カノンには特に問題は無いって言っといてくれよ?あ!それとこのことは……」
『ああ、ちゃんと……』
最後まで言い切る前にベルは召喚陣が放つ光の中へと消えて行った。
くそっ、きちんと口止めできなかったか。
カノンに変なこと吹き込まなければいいが……
「……ほう、今のは召喚か……これはさっき言っていた君の仲間の召喚士かい?」
ディールさんが今の召喚について興味を持ったようだ。
よし、話題を逸らすなら今だ!
「ええ、正確には召喚士では無いんですがね」
「召喚士では無い……ほう、ということは魔族かい?」
それだけの情報で魔族と言う答えにたどり着けるのか!?
「それ、は……」
「まあ、ハイ・スケルトンにする方法も教えたいし、それも含めて一度戻って落ち着ける場所で話そうか。ここで立ち話も何だしね」
ディールさんはそう言い放って一人で家へと行ってしまった。
自由な人だな……
「……とりあえず俺達も戻ろうか」
「はい……ところでご主人様、ご主人様は胸は小さい方がお好きなんでしょうか……」
シアが俯き加減で不安そうな顔をする。
まだ言うか……
『ワーウルフ』の効果が切れ、スキルキャンセル状態になってしまったので俺はこの世界の言語を話せなくなった。なので事前に話しておいた通り純日本語でユーリに頼んで回復魔法をかけてもらう。
勿論ユーリにとっては日本語の意味は分からないだろうが意味が分からないことこそ俺がスキルキャンセルに罹患した証拠であるので回復してもらうことに時間は要さなかった。
俺がこの世界の言語をスキルを介して話していることについては「遠い国から来てこの国の言語が分からないだろうと事前にとっておいたんだ。勉強自体は嫌いではないがこっちの方が早いから」という趣旨の話をしてとりあえず納得してもらった。
いつか皆にもちゃんと俺のことについて話さないとな……
その後、シアとリゼルの追及をかいくぐってディールさんの家へと戻って来た。
今度は話の途中で「戦闘してみる?」なんてことにしないためにもゆっくりと話し合える場所がいい。
その想いを婉曲的に伝えると、「では3階に行こうか。応接間が確かあったはずだ」とのこと。
自分の家なのに、「確かあったはず」と言う表現はどうなんだろう。
研究に必要な書類や器具なんかの位置は把握してるのに。
それはそうと、階段には木造ではあるがきちんと手すりもついている。
ふーむ、中々凝ってますな。
家の造りに感心していると、直ぐに3階へ。
進んで行くディールさんについて行けばいいのだが、そこで一つの部屋に目が止まった。
部屋の中は女の子が好みそうなピンク色の内装で、可愛らしい動物を模した人形や木の玩具、それに幼児向けに描かれた絵本が見受けられる。
どう見てもディールさん本人の部屋とは思えない。
いや、それが偏見であって「み、見ないでよ、恥ずかしい……」なんて乙女な一面があっても(俺が吐き気を催すことは別として)ダメだとは言わないが……
「……可愛らしいお部屋ですね」
「どなたか他に住んでいらしたんでしょうか?」
シアとエフィーがそれぞれ感想を漏らす。
俺も同意見だが怖くて聞けない。
俺達が立ち止まっていることに気付いてディールさんが戻ってくる。
「……その部屋は、私の部屋じゃない」
あ、良かった。
「では、どなたか他の住人の方の?」
ユーリが後ろから顔をのぞかせて尋ねる。
尋ねられたディールさんの表情は変わらないのだがどこか、寂しそうなものに映った。
「……私には一人、娘がいてね」
「え!?娘さんがいらっしゃったんですか!?」
俺は驚いていつものツッコミのテンションのままに声を上げてしまう。
他の皆も俺までとは言わないが大なり小なり驚いている。
「ああ、まあ娘と言っても私と血のつながった娘じゃなくて、ただの養子なんだが」
あ、何だ養子か。
養子なら別におかしくは……
……いや、養子でも事と場合によっては俺が壁に頭を打ちつけたくなる位には違和感があることに。
「ウフフフ、アハハハ、やっぱり〇〇は可愛いわね~、んちゅ♡」なんて言ってるディールさん見たくねえわ。
「ふっふっふ、養子なら合法的に人体実験ができる。私と人類の進化のための贄になれるんだ。有りがたく感謝するんだな」位の方がまだ……うん、どっちも偏見だね。
「今はその娘さんは……」
「…………」
ディールさんに娘さんのことを尋ねると、沈鬱そうな表情を浮かべて黙ってしてしまった。
えっ、聴いちゃいけないことだったの!?
もしかして、最初はさっきの妄想みたいに人体実験に使う位の勢いで養子に迎えたけど、段々愛着がわいてきて、それで本当の娘として育てようと決意したその矢先、研究に使う実験が暴走して失敗し、取り返しがつかないことに……位のことが有ったのだろうか!?
……それは、申し訳ないことをしたな。
「すいませんでした。無神経に尋ねてしまって」
「いや、気にしないでくれ。……私も年だね。些細なことで動揺してしまって……行こうか」
そこで会話は一度途切れ、応接間へと着いた。
「ここで待っててくれ。何か飲み物でも入れよう」と言って下へと降りて行くディールさんを後に、俺達は言われたとおり椅子へと着席して待つことに。
先程の話の影響か、誰も積極的に話そうとはせず、ディールさんが人数分の飲み物を持って戻ってくるまで無言で過ごした。
ディールさんは自分の分の木のコップを手に取って口に運ぶ。
「……ふぅ、さて、では一段落ついたところで、話を進めようか。ああ、遠慮せず飲んでくれ」
俺達に出された分を顎でクイッと指す。
こういう他人から出された飲み物はいつも毒か何か入ってんじゃないかと疑うのだが、まあ毒が入っていても今はユーリもいるし、遠慮せず貰うことにする。
ズズッ……うん、苦い。
「それで、話とおっしゃいますが、私は何をお話すればいいんでしょう?」
「そうだね……色々と聴きたいことは有るんだが、ゴホッ……私だけが君たちに聴いてばかりではつまらないだろう。何か君たちから質問はあるかい?」
いきなりそんなこと言われても……
さっきのこともあって何が地雷か分からないから質問するのは躊躇われる。
うーん……あ!
「では、ディールさん、ディールさんは先ほどの戦いではハイ・スケルトンを用いて戦っていらっしゃいましたが、他に何か使っているモンスターとかはいるんですか?例えばゾンビとか」
死霊魔術師って言う位だし色んな種類のモンスターを使役してそうだ。
何かカノンに役立つ情報でも教えてもらえればと思ってのことなんだが……どうだろう?
「ふむ、確かに私はハイ・スケルトン以外のゴホッ……モンスターも使役できるし、実際しているが、ゾンビは駄目だ。あれは腐敗臭が凄いし、それにスケルトンよりもトロくてバカだ。体だけでなく脳味噌が完全に腐ってるからだろうね。あれの使い道は私にも測りかねるよ」
うわっ、すっごい批判。
辛辣過ぎてゾンビがかわいそうになるわ。
ゴメンよ、ゾンビ、例えに出しちゃって。
「すいません、私も質問していいでしょうか?」
エフィーが挙手する。
「ああ、構わないよ」
「ありがとうございます。私がお尋ねしたいのは先程の模擬戦で使っていらした魔力を用いた糸についてなんですが」
ほう、エフィーは勉強熱心だな。
向上心があるのはいいことだ、うん。
「ん、あれかい?ゴホッゴホッ……確かに考え出したのは私だが、今は別に西のフェールジア王国にある魔法学園でも習える技だよ?」
「そうなんですか?ですが、あそこは貴族や大商人の子息等、一部の上流階級の人のみが通える場所だと伺っているんですが」
「10数年前位まではそうだったが、ゴホッ、今は一般の者でも推薦状はいるが、魔術が優れていれば入れるさ」
へ~、そうなんだ。
俺にとってはどうでもいい情報だけど。
異世界にきてまで学校なんてつまらない牢獄には通いたくないし。
まあエフィーが望むんなら何とかしてやりたいとは思うが……
「あそこは国同士の諍いには興味が無い方だから政治的な問題も比較的少ない。だから差別や偏見なんかもあそこが一番ましだろう。ゴホッゴホッ……とまあ色々と言ったが、興味があるのなら私が教えても全然差支えないよ。あそこで習うよりかは私が教えた方が速いし正確だ」
何だかんだ言っても教えてくれる辺り、ディールさんは相当親切な方だと思う。
まあ普通自分の能力をホイホイと教えてくれる人なんてそうはいないだろうからおかしい人だという事には違いないだろうが。
「あれはスキルの『魔力操作』を使って作りだしているんだよ。作りだしたゴホッ……糸をモンスターなんかに繋げて操る。操るんだから操られている対象が状態異常だろうが関係ない、大雑把にいえばさっきの戦闘のからくりはそういう事さ」
「ああ、なるほど、だから麻痺させても動いたんですね」
あれにはそういったタネがあったのか。
ディールさんは何ともないかのように言っているが実際は相当難しいことじゃないんだろうか?
だって50体ものハイ・スケルトンを一度に操らなければならないんだ。
それに俺が戦闘中に見た限りではアイツ等を動かすとき左手の指しか使っていなかった。
ということはディールさんは左手の指だけで操っていたという事になる。
それはまたなんとも凄まじいことだ。
「それで、その糸というのは『魔力操作』が使えれば誰にでも使えるのでしょうか?」
「ん?その“誰にでも”というのはどういう趣旨かな?対象の話かい、それとも……」
「一応両方です。私でも使えるのか、それとどういうものにでも糸は繋げることができるのか」
「ふむ。1つ目については、『魔力操作』があればハーフエルフだろうと問題は無いはずだよ。訓練する必要はあるだろうけどね。2つ目はそうだね……」
ディールさんは一つ咳を挟んで答える。
「人間は無理だろうね。それと魔力を用いて操るわけだからゴホッ……当然魔力を多少なりとも体の内に持っている必要がある。基本、この糸を用いることを想定しているのはゴホッゴホッ……私が使っているようにモンスターなんだが、今じゃ人形使いなんかもこの技術を使っているね。ああ、後、さっき話に出た西のフェールジアの王立魔法学園では魔法人形使いもこれを使っている」
「ということは、少しは可能性も……」
エフィーはディールさんの回答を聴いて何か呟いている。
考え込んでいるようなので今は話しかけないようにしておこう。
≪その人形と魔法人形の違いは何なのじゃ?≫
「ん?今のは……ああ、『念話』かい?」
「え?あ、はい。そうです。すいません、この子が少し訳アリでして」
リゼルについて黙っていたのは申し訳なかったが、それにしてもディールさん凄いな。
たったあれだけでスキルを言い当てて、それでいて全く動揺してもない。
大人の貫録だな。
「ふむ、まあそれはいいとして、ゴホッ……人形と魔法人形の違い、だったね」
≪う、うむ≫
「すいません、姉じゃが無知なもので」
ん?リゼルが何だか緊張している……
良くは分からんがどうやらディールさんが苦手らしい。
「いや、気にしなくていいよ。ゴホッ……先ず戦闘面だが、人形は作る際に必要最小限の魔力しか注入されていない。だから魔法を使うことは予定されていず、基本的には前衛での戦闘をすることになる。対して魔法人形はその名の通り、ゴホッゴホッ……作る際にも動かす際にも相当の魔力を注入しなければならない。だがその分魔法も使えるし、基本的なステータスも高い」
≪そんなもの、普通に考えれば魔法人形を選ぶのではないかえ?≫
「ふむ、まあ能力面で言えば普通はそうだね。ゴホッ……だが能力が高い分作るのも操るのも難しい。だからその分1体の値段でもかなり高いんだ。それだけで高価な人形を7体買える位には。だから経済的な理由で人形使いになる者も多いんだよ」
「はぁ……成程、です」
表の妹もそこについては知らなかったようで、感心したような声を上げている。
うん、勉強になるよな。
「能力面でも大きな違いがあるんだがゴホッ……一番大きな違いはやはり自立的に動くかどうかだろう。魔法人形は基本的な動きであれば操られることを要せず自分で動いてくれる。だからあれは必ずしも操ることは要求されない。一方で、人形は自分の力で動くことはできないから魔力の糸を用い操って初めて戦力としての意味が出てくる」
へ~、ということは魔法人形はサクヤやカエン、『六神人形』に近いことになるのか。
……あ、だからエフィーは……
≪勝手に動けるのなら操る必要はないのではないのか?≫
「いや、姉じゃ、さっきの主様の戦闘をちゃんと見ていたのですか?」
≪ほへ?当たり前ではないか!!主殿のカッコいい姿を我が見逃すはずなかろう!!それに……≫
リゼルの左目だけがちらっと自分の胸に行ったように見えた。
あ、この流れは面倒くさい奴だ。
「だな、操られたからこそ俺が麻痺させても動けたんだし、操ることには意味があるよ」
「うむ、そうだね。ハイ・スケルトン達もただのスケルトンとは違って知識があり、ゴホッゴホッ……自分達で考えて動くことができる、また本当に簡単な闇魔法なら彼等も使えるようになるんだよ」
「それは凄いですね。あんなどこにも取り柄が無い、死んだ方がましな……あら」
ユーリが相槌を打つ。
その後に何か言ったような気もするが気にしない。
「確かに彼等が自分達で動いてくれるのは私としては楽で有りがたいが私は彼等の行動・範囲全てを把握している、から、ゴホッ、操った方が強いんだよ。それに、死んでも糸を通して魔力を直接流し込める。だから蘇生させるのも圧倒的に早いしね」
聴けば聴くほど糸を使った操作というのはメリットだらけのようにも思えるが、それだけ1体を操ることだけでも難しいのではないだろうか?
だとすると……
ディールさん、50体操ってたよな、しかも左手の指だけで……
≪ほへ~、凄いのじゃのぅ……≫
リゼルがそんなバカみたいに感心するのもうなずける。
挙句あれで2割の力だって言ってたし……
改めてSランクの冒険者という物凄い存在を思い知らされる。
「……ふむ、では私からも聴いていいかい?ああ、勿論答えたくないことについては答えなくてもいいよ?」
俺達の質問がある程度終ったのを見計らってディールさんが裁判長が告げるように尋ねる。
ディールさんは何でもポンポン答えてくれたが俺達にはきちんと黙秘権が保障されているらしい。
黙秘することも含めて俺達を見定めているのかもしれない。
「はい、どうぞ」
「さっき召喚されたあのモンスター、あれはケルベロスだろう?」
「ええ、そうですね」
「あの大きさからするに、ケルベロスの上位種、しかもかなりの実力だろう。覇気が違った。ゴホッ……それを使役するとなると、君の連れという魔族自身も相当の実力者なんじゃないかい?」
……そう言ってもらえると少し来るものがあるな。
最初こそ、カノンはベル以外と契約することすらできなかったが、こうしてSランクの人に実力を認めてもらえる位にカノンは成長したんだ。
別にそれが俺自身の成果・功績だなんて思っちゃいない。
カノンを筆頭にみんな、機会さえあればちゃんと……
それ位皆いい子で、凄い子で……
身内の贔屓目なのかもしれないが少なくとも俺はそう思っている。
「そうですね、契約しているモンスターも勿論あのケルベロスだけではありません」
「ふーむ、それほどの魔族との繋がりもあってゴホッゴホッ……尚且つ王国では忌避されているハーフエルフを連れている……君は相当なもの好きだね」
「えっ、そうですか?私は至って普通のことをしているという認識しかないんですが」
「普通じゃないよ。魔族やハーフエルフと積極的につながっていることをゴホッ……肯定している時点でもう既に異常だ。そこのハーフエルフの子を見る限りとても君のことを信頼している。さっきのケルベロスも主人ではない君の指示すら聞いていた」
「……私には勿体ない、有りがたいことです」
「王国でハーフエルフを望んで連れるのなんて懲罰だったり見せしめの意味しかない。だから連れられているハーフエルフも連れている者に対して好意など向けることは無いに等しいんだよ。ゴホッゴホッ……そして従者は契約した主人にしか従う必要が無い。他の者に従うなんてことは無駄にしかならないからそれも普通はしない。……さて、そんな中君は自分が普通だと言えるのかい?」
「それ、は……」
「それが、ご主人様のお優しさであり、ご主人様の凄さ、素晴らしさなんです」
「シア……」
「シアさんの言う通りです。ご主人様は他の人ができないことを当たり前だとして行って下さるとても、言葉では表せない位凄いお方なんです」
「エフィー……」
二人はディールさんを前にしても何も臆することなく前に出て淀みなく言い切る。
二人とも……
「はい、主様は諦めなければならないと思っていた私達姉妹の人生を救ってくださいました。これからも私は、いえ……」
≪うむ!我等二人でこれからも主殿を支えようぞ!≫
「リゼル……」
「私も旦那様の下でお仕えさせていただき、大変ありがたいことだと思っております。旦那様に刃向う下種共の処理もですし、勿論旦那様のお体の、殊下のお世話もん、んん。……旦那様、私も旦那様を死ぬまでお守りいたします!」
「ユーリ……っておい!」
「……ふむ、なるほど。君が仲間に大変慕われているのは分かった。まあ君がおかしいかどうかは置いておいてもいい。ゴホッ……重要なのは私が興味を惹かれた、そこなんだからね」
「まあ、そう、なんですかね……」
「いや、私は本当に君は凄いとゴホッゴホッ、思うよ?私が操らなくても、私のハイ・スケルトン50体だと戦闘専門のAランクの冒険者が50人いても苦労するんだけどね」
確かにディールさんが召喚したハイ・スケルトンは本当に厄介だったが、操らない、と言ってもディールさんが回復・蘇生させることは前提としているんだろう。
それでもAランク冒険者50人がいても苦労するのを何とかできたのはまあ良かった、のかな?
「だから私は君自身について色々と聴きたいんだが……もしかすると、君自身も何かあるんじゃないかい?ハーフエルフや、魔族とは言わないが……」
……流石に、この世界の住人じゃない、ということは言うべきじゃないだろう。
とすると、黙秘でもいいんだが、馬鹿正直に「話せません」と言うよりは誤魔化す方が良いかもしれんな、俺の経験上。
と、すると……
「まあ、最近のことで他の人と違うって言ったら、騎士団と一悶着あった、位ですかね?」
「ほう、騎士団と……良ければ詳しく聴かせてもらえないかい?」
おおう、食いついてきちゃった!
誤魔化せればいいな、位にしか思ってなかったんだが……
「まあ、話しても構いませんが……」
「ああ、是非聴かせてくれ」
……そんなに面白い話じゃないと思うんだけどな……
まあしゃあないな。
アイリさん・エンリさんのお母さん、それとあの偽父については伏せて話していったのだが……
「……どうにも要領を得ないね。何か大事な部分が抜けている、と言う感じかな。ヴォルタルカでの騒動は一応私の耳にも届いているが全てを知っているわけでは無い……まあ君が話したくないと言うんなら無理には聴かないけれど」
上手いこと話したつもりだったんだが……
エフィーも俺と同じように見透かされているみたいに感じて驚いているようだ。
ということは、一応話方に抜かりはなかったんだろう。
ディールさんがただ単に一枚上手なだけだ。
さて、それはそうとどうしようか?
本当に全部話すとなるとアイリさん・エンリさん達のことについても話さなければならない。
俺がやったことだけを話すのならまだしも、彼女達のことをポンポン話すのはどうも躊躇われる。
一方で、神様の助言もある。
『Sランク』……
現状ではもちろんSランクの知り合いなんてディールさんしかいないんだから当てはまるのは彼女だろう。
今のこの状況を打破したいのなら……
「私は……」
俺はアイリさん・エンリさんの名前は出さずに自分の知っていることを話した。
結局は話の内容から推測できてしまうんだから、彼女達のことを慮って、なんて言い訳をしても自分の罪悪感を減らすことにしか繋がらない。
どうせ俺も汚い人間の内の一人だ。
どんなに足掻いたってそれは変わらないんだ。
なら、俺が良い人ぶるなんてことよりも、この子達が良い子に育ってくれるよう……
「ふふ、はははは!!」
……え?ディールさん!?
「はははは、はははは……ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ……」
壊れたかと思ったら本当に体が壊れそうだよこの人!
「ゴホッ……いや、すまない、年甲斐も無く少しはしゃぎ過ぎたね。あまりに愉快だったから。……いや、やはり聴いてみて良かったよ」
「そうですか」
「そうか……成程。騎士と、それにエモル……」
「…………」
「…………」
先ほどの高笑いなどまるでなかったかのように静かになる。
ディールさんにもなにか思うところがあったのだろう、少し遠い目をしている。
そして、徐に懐から一枚の手紙を取り出し、それを俺へと手渡してくる。
「これは?」
「君の話を聴いて……色々と思い出したんだ。読んでくれ。騎士に奪われた娘からの……最後の手紙だ」
「え!?そんな大切なもの、読んでも……」
「ああ、君に読んで、もらいたくて……」
ディールさん……
この人もどこかおかしいところはあるものの、とても人間らしい一面もあるんだな。
やっぱり先入観や偏見だけで人を測れた気持ちになるなんて、チャンチャラおかしな話だ。
別にカッコつけてるとかそう言う話じゃなくて、純粋に、人の外面だけでなく、内面もやっぱり重要なんだよ。
俺は大切なことをしかと胸に刻んでそっと手紙を取りだし、読むことにした。
『~親愛なるディールさんへ~ ディールさん、お元気ですか?僕はとっても元気だよ!元気過ぎてとっても目立っちゃうくらい!だから心配しないで。
最近はディールさんが心配していたようなことも起こらず、第10師団の隊長として頑張っています。
……最初は騎士としてやっていけるかどうか、とても不安だった。ディールさんが言っていたように直ぐに偉い人(?)から潰されちゃうんじゃないか、女だからって舐められるんじゃないか。色んなことが僕を雁字搦めに……でも、僕は独りじゃないって知ってるから。第10師団の皆が僕を支えてくれていることも……それに、ディールさんが僕のために陰ながら色々としてくれていることも、ね?
……
いつもこうして手紙でディールさんへの感謝を言っても、全然足りないって思ってるから、鬱陶しいかもしれないけれどそれはゴメンね?
後はいつも通り、もう一通の中に、最近の王国や騎士団の動きについて書いておきます。
……それじゃあまた、近いうちに手紙を書くから。僕は本当に元気一杯だからディールさんもあまり無茶をしないでね?
~拾ってもらってから13年、今もずっとあなたの娘、ユウより~』
………………。
「……ディールさん、2,3いいですか?」
「……ああ、ゴホッゴホッ……構わないよ」
「娘さんって、いつ頃拾われましたか?」
「ゴホッ……確か、13年程前だね」
「この手紙はいつ頃?」
「うーん、正確には覚えていないが……4日前いや、5日前だったか……」
「どういうことですか!?娘さんバリバリ生きてるじゃないですか!自分で『元気一杯だから』とか書いちゃってますし!!」
「おや、どうやらそのようだね。私とは違って健康な体で何よりじゃないか」
「そういうことじゃないでしょ!?さっきのあの暗ーい雰囲気何なんです、滅茶苦茶悪い方に考えちゃったじゃないですか!!」
「ん?そんな感じだったかい?それは済まなかったね。ゴホッゴホッ……私も色んな研究を同時にしていて、違う研究をしてしまうこともある。君にもあるだろ?まあそういうことだと思って勘弁してくれ」
そういう事ってどういう事だよ!
ねえよ、んなこと!!
さっきのシリアスになった気分を返せ!
はぁ……確かに嘘は吐いていない。
これが最後の手紙だってのも間違っていないし、“騎士に奪われた”ってのも、大切な娘が騎士になってしまったということでならそういう使い方もしないでもないから頭ごなしに否定することもできない。
俺もこういう手は良く使うだけに上手いことあしらわれた様で……くそっ、やられた。
「娘さん、とってもディールさんのことを大切に想っていらっしゃいますね、手紙の文面の端々にそれが読み取れました」
「そうかい?ゴホッ……こんな老いぼれ、気にせず自分の道を歩んでくれればそれでいいんだが」
くっ、全く照れない。
少しでも仕返ししたかったんだが……
「最初は本当に興味本位だった。出来心だったんだよ。反省はしていない」
「いや、その言い方なんだったら反省しといてくださいよ!興味本位や出来心で子供一人拾おうとしないで!」
全くなんなんだこの人は。
……でも、冗談を言って笑うその顔はさっきの滅茶苦茶な行動からは想像もできないような穏やかなものだ。
それは研究者とか、Sランクの冒険者ではなく、一人の母親としての……って、これも引っかけの可能性もあるから油断ならないんだけどね、この人は。
「ゴホッゴホッ……まあそれは兎も角、騎士については安心すると良い。ゴホッゴホッ……君一人をネチネチと追いかける暇なんて第4と第7師団を除いて、それこそ娘がいる第10師団にもないからね」
「……それも娘さんからの情報ですか?大丈夫なんですか、騎士団員なんでしょ?」
「心配は無いさ。騎士はあくまであの子が自分の正義を貫くための手段であって目的では無い。それに仮に私に漏らしたと知られても王国は私にそう強くは出れないからね」
どういう根拠があるかは分からないが、それだけの自信があるらしい。
まあ当人達がいいんなら別に俺がとやかく言う事ではないんだけどね。
「第1と第6、第9師団は駐在して王都を警備している。まあ近隣の町村なんかに派遣されたりもするが本体は常に王都にいるね。第5師団は確かゴホッゴホッ……半分に分かれて北の帝国・西の王国へと派遣されていたはずだ。そして、第2と第3、第8師団はと言うとだね……」
そこまで細かい情報を得られるのか!?
凄いな……
「内容自体はまだ私も知らされていないが、ゴホッ、極秘の任務を受けているそうだ」
「極秘の、任務……」
「ああ。一方で、あの子がいる、第10師団はと言うと……特に命を受けていない」
「え?それじゃあ……」
「いや、それは第10師団の特異性とも関係するんだが、『余計なことはするな』という上からの圧力だよ。だから手柄をたてられるくらい大きなこと、ゴホッゴホッ……つまり君をわざわざ捕まえるようなことは命令の中には無いはずだ。あの子達は小さな村や町での慈善活動とかしょぼい犯罪者の取り締まり、治安維持なんかに努めてるんじゃないのかな?」
うーん、それは喜んでいいのだろうか?
極秘の任務と言うのが俺の……それは無いか。
流石に自意識過剰だなそれは。
「そして、件の第4師団。あそこはクラン、ゴホッ、殊七大クランとのいざこざについてを任されている。第7は第4の補佐。だからやろうと思えば君を捕まえに来ることができるのは実質的に第4と第7師団ってことになるかな」
「ふむ、なるほど……」
「やはり、第4、ですか……」
エフィーが話を聴いて理解を示すと、それに応えるかのようにユーリも反応する。
「まあそれも私に言わせればゴホッゴホッ……かなり怪しいけどね」
「と、言いますと?」
「ふむ、七大クランの動きが最近かなり活発だから、ゴホッ、それらを全て把握するだけでも一苦労だと、私は思うんだよ。……それらも含めて知り得る限りを説明しようとは思うんだが、その前提として、君に知っておいてもらわなければならないことが有る。これを知らないと、ゴホッ、この王国、いや、この世界各地の世情について正確に理解できないだろうからね」
ディールさんが話す雰囲気は次第に真剣みを帯びて行く。
「……リューミラル王国の政治、軍事、財務……ありとあらゆることを代々裏で支えてきた、ゴホッ、そんな一家がある。王が王国の行く先を照らす“光”だとすれば、彼等は常に“影”。だから主立って動くことは無く、あくまで彼等の役目は国政を補佐すること」
「それは……聞いたことが有りませんね」
「はい、私も、です」
エフィーとリゼルが知らないんなら知っている人は本当に限られた知識なんだと思う。
そもそも一般知識だったら“影”なんて表現しないだろうし。
「そんなわけで彼等は万能だ。そうでなければ代々国王から直々に信頼なんて得られないだろうからね。……そんな中でも、特に秀でた能力、人柄、知識……ゴホッ、そんな全てに恵まれたとんでも人間のような奴が私の師である“クベル・クラウン”だった」
「え!?“師”って……師弟関係ってことですか!?」
≪そんなことまでそ奴等はしておったのか?≫
「まああの爺さんが特別だっただけだよ。ゴホッ、弟子なんて取って教えていたのは。他のクラウン家の者はただ純粋に国王の補佐に尽力していた」
……どうしてそんなことを知っているのか、は聴かない方が良いんだろうな。
「まあ兎も角、その爺さんが色々とやっていたんだが、ゴホッ……一応私の娘も全部で10人いるうちの弟子の一人だ。まあ、勿論、私の方が姉弟子、ということになるが」
「その、10人の弟子、と言うのが色々とこの世界各地の情勢を理解するのに重要になってくるんですか?」
「うむ。そこを理解しないことには世情を知るのにはゴホッゴホッ……不十分だろう。まあ爺さん自身はとある事件で死んだんだが、それはまあいいとして……」
「え!?そこはいいんですか、置いといて!?その方が亡くなったって結構重大な事件なんじゃ……」
「今あの爺さん自身の生死については重要じゃないんでね。ゴホッ、だからそこは今はスルーしてくれたまえ」
「はぁ……分かりました」
「でだ、その他の弟子についてだが、一つ前の騎士団長、そして今の騎士団長もあの爺さんの弟子だ」
「え!?騎士団長まで、ですか!?」
「ああ、後は東の国の出が4人、ゴホッ……その内、同じ期間弟子として一緒にいたのは……確か東の極致の国の“ショウグン”なる職に就いていたと聞いている」
「えっ、“ショウグン”!?ショウグンって……あの“将軍”ですか!?」
「どの“ショウグン”を言っているかはよく分からん。ゴホッ、何しろ東の極致にあるところだしね」
「ご主人様、何か気になることでも?」
「え、あ、いや……大丈夫だ。今は関係ないことだから気にしないでくれ」
「?……そうですか?それならいいのですが……」
シアに尋ねられ咄嗟にそう答える。
まだ全然情報が無い今の段階で“将軍”という単語だけで何かを決めてしまうのは早計だ。
“将軍”なんて別に日本じゃなくてもあったはずだ。
とりあえず今はディールさんの話においてそこは重要じゃない。
話を理解することに努めないと……
「後の2人もその“ショウグン”の奴と、私と共に弟子をしていたんだ……ゴホッ、その内一人はこの国の出なんだが、そいつは音信不通。つまりは行方・生死が一切わからん」
「はぁ。そうなんですか。心配ですね」
「まあ……そう、だね」
「ん?どうか、しましたか?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ。それで……」
今一瞬ディールさんが顔をしかめた……ように見えたんだがこれまた一瞬のうちに戻ってしまった。
うーん、何かあるのか聞きそびれたが仕方ないか。
「……最後の一人はゴホッゴホッ……今の魔王の一人だ」
「ああ、そうなんですか。今の魔王のお一人……」
ふーん、今の魔王の一人なんだー。
凄いねー!魔王の一人なんだってー。
魔王の一人かー。
へー。
…………
……
・
へ?
「ふむ、これでやっと下地の部分の説明を……」
「いやいやいや!そこまでスルーします!?これこそツッコミどころ満載のように思うんですけど!!」
「ん、そうかい?別にこれと言って取り上げることは……」
「いや、“魔王”!“魔王”重要でしょ!何で国のために影で頑張る人が魔王の師匠なんですか!?」
「そんなこと私に聴かれても、ゴホッ……困るんだが。事実なんだし」
いや、そうだよ、ディールさんが言うんなら事実だしそうなんだけどさ!
「まあそれは……おっと、話は一端ここまでのようだ」
「え?どうしたんですか、ディールさん」
ディールさんのいきなりにはもう驚かないが、それでもこの打ち切り方はいきなりだと思う。
何かあったのだろうか?
「どうやらお客さんみたいだね。ゴホッ……君たちのようにガーゴイルに引っかかった者がいるようだ」
「ああ、あの石像の?あそこ以外にも設置していたんですか?」
「ああ。あそこ以外にも2つ、あるんだが……両方に、ね。ゴホッ、まあ君たちのように私が辿り着く前にガーゴイルがやられるということは無いようだが。……どれ、お出迎えでもしに行こうか」
ディールさんは何でもないように立ち上がる。
凄いな……
どういう仕掛けでガーゴイルが探知したことをディールさんに知らせているのかも全く分からなかったし、侵入者が来たと分かっても何一つ動揺することなく堂々としている。
俺も、こんなふうに余裕を持って動けたら……
「ディールさん、私も手伝います」
「ん、そうかい?それは有りがたい。若しかしたら君たちが壊したガーゴイルのところにもいる可能性があるから人手はいるんだが、如何せんハイ・スケルトンのみだと少し不安だからね。ゴホッ……手を貸してくれると助かるよ。君の実力も見ているから安心して任せられる」
全く遠慮することなくディールさんは俺の手伝いの申し出を受け入れてくれる。
人としての信頼は特に築いていないはずなんだがな……
「それじゃあ私達で二つ担当します。いいか、皆?」
「はい、人数的にもそれが妥当かと」
「そうですね」
「旦那様の仰せのままに」
≪うむ、我等の方が人数は多いからな≫
「それで問題ないかと」
皆からの承認も得られたところで、俺達は組み分けして侵入者の調査をすることに。
俺とリゼルは二人で俺達が来た、つまりシアがバッサバッサとガーゴイルの石像をぶった切った跡のある南東へ。
シアとエフィー、ユーリは3人でこの家の北に当たるところに。
ディールさんは一人で南西に。
まあ彼女は一人でも大丈夫だろう。
エフィーについては俺がアイテムボックスにしまっていた『六神人形』を某青狸え〇んのように取り出したところ、ディールさんの関心をひいて一騒動起こりそうになったが何とか抑える。
その際シア達は赤い水晶玉ようなものを渡されたが、それが近づくにつれ光って可視的にガーゴイルの場所を知ることができる道具らしい。これもディールさんお手製だとか。
この人は本当に何でもするんだな……
侵入者なんて本当に間の悪い。
話の続きを聴きたいから早いこと済ませよう……
そうして俺とリゼルは来た道を戻って行った。
今回は情報沢山だったと思います。
ディールさん意外とお茶目です。
冗談も言えます。
人形とか魔法人形については説明をした以上今後出てくる可能性がありますが動く理屈なんかは別に覚えて頂かなくても全然問題ないかと思います。
感覚で何となくでも違いは分かるかと思いますので。
魔法学園については主人公が、入学して学園編ということは予定していませんのであしからず。
以前に国名が出ていないという趣旨のご感想をいただいたかと思いますが、やっとこのお話で登場です。
“リューミラル”王国。
……まあ特に深い理由は無いです。
何か弟子が10人云々という話もあったと思いますが、今すぐ全部覚えるのは多分無理だと思います。
まあ何度も今後出てくると思いますので、これも今覚えていただく必要は全くありません。
とりあえずは次話の侵入者をどうこう……ということを気にしていただければ。
【元:『ワーウルフ』の効果が切れ、スキルキャンセル状態になってしまったのでユーリに頼んで回復魔法をかけてもらう。】
という記述を
【新:『ワーウルフ』の効果が切れ、スキルキャンセル状態になってしまったので俺はこの世界の言語を話せなくなった。なので事前に話しておいた通り純日本語でユーリに頼んで回復魔法をかけてもらう。
勿論ユーリにとっては日本語の意味は分からないだろうが意味が分からないことこそ俺がスキルキャンセルに罹患した証拠であるので回復してもらうことに時間は要さなかった。
俺がこの世界の言語をスキルを介して話していることについては「遠い国から来てこの国の言語が分からないだろうと事前にとっておいたんだ。勉強自体は嫌いではないがこっちの方が早いから」という趣旨の話をしてとりあえず納得してもらった。
いつか皆にもちゃんと俺のことについて話さないとな……】
に改めました。




