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模擬戦だって!!

今回は戦闘オンリーのお話ですね。

ですから物語の進行としては遅くなります。

申しわけないです。

「ゴホッ……いいかい?」


ディールさんは戦闘のために剣を構えている俺とは対称的に、模擬戦とはいえ今から戦闘するというのに特に武器を出すでもなく、詠唱を唱える準備をすると言った素振りも無く、ただただぶらりと立ったままでいる。


あれが……普通なのだろうか?


舐められているわけでは無い、と思うのだが。


「ご主人様、お気をつけて」

≪主殿、ケガ、せんようにの≫


シアと姉は離れた位置から俺のことを気遣ってくれる。

模擬戦とは言え相手はSランクの冒険者なんだろ?

流石にケガ一切無し……とはいかないだろう。


「ああ。こっちの実力が試されるんだろうけど、皆もSランクの冒険者がどれ位の実力なのかを見るいい機会だ、良く見といてくれ」

「はい、かしこまりました、ご主人様」

「分かりました、主様」

『了解した』


二人に返事をした後戦闘を良く見ておくように言いつけるとエフィーとリゼル、ベルがそう答える。


俺は新たに手に入れたあの妖刀ではなく、使い慣れているいつもの安ーい剣で挑む。


「はい。いつでも」

「ふむ。……では、始めようか。いつでもいいよ、かかって来てくれ」


審判みたいなものがいるわけでもないので明確な始まりの合図は無い。

いつでもかかって来い、とのことだから俺が戦闘を始めた時が始まりだと。


まあ別に仮に舐められてるのだとしてもそれはそれでいいと思うけどね。




……さて、それじゃあお言葉通り、行かせてもらいますか!


「では……行きます!」


俺はそう告げてから一気にディールさん目がけて駆け出す。


とは言いつつも、これで終るなんてことは無いだろう、きっとディールさんは何かしてくる。

だから見せかけ全力で走っているようにして、内心はちょっとゆるく。


ちょうどテストや運動会のかけっこの時「やる気でねぇわぁ、こんなん本気でやるやつとかいないっしょ。お前等もそうだよな?」と周りに俺全然勉強してません、本気出しませんアピールしといて本心では頑張ってる奴の反対だな。


……うん、そんなこと気に掛ける相手もいなかったけどね。

さて、それはどうでもいいとし……


「ゴホッ……ふむ、良いダッシュだ。さて……」


ディールさんが何かを呟いた後、やっと右手を挙げ、何かの動作を始める。


「……ふむ、“50体”、と言ったところか……」

「?……一体何を」


何かをすることは確実だが、その何かを始める前に触れられれば勝ちであることには変わりない。

俺はそのために駆け抜ける……けど多分無理だろうなぁ……


これで終るんならこんな模擬戦なんて意味ないだろうし、ディールさんも俺が走ってくるのにそれほど驚いているようには見えない。


「……では、私も行こうか。……来たまえ、ハイ・スケルトン」


ディールさんがそう告げると、彼女の周りに灰色をした魔法陣が浮かび上がり、それは俺が駆けていたところまで一瞬にして拡がってきた。


俺は急いでその陣から飛び退く。


そこから、俺の召喚と同じように次々と人型の物体が浮かび上がる。


え!?何だ、この数は……これを一度で……


出てきた物体の光が収まるとその姿にも驚きはしたが、やはり一瞬にしてこの数を呼び出したことの方が俺には衝撃的だった。


さっきも言ったが彼女はそれまで何一つ動いていなかった。

詠唱だってそう。

どれだけ小声で言ったって詠唱したら普通気づく。


彼女はそれらを一切せず、コイツ等を……


全体として今の目測だけでも30以上はいる。


カノンが使役するスケルトンとは異なり、その両手に武器としてであろう鋭い剣を握っている。


呼び出されたものが何なのかはさっきのディールさんの言ったことからだけでも分かるのだが、うじゃうじゃといるこの骨共を見て純粋に考察する。


スケルトンよりも一回り程大きく、ガタイのいい大人位の大きさとなっているが、一番目を見張る変化は何と言ってもその骨の色。


スケルトンは普通に白。

『白骨化した遺体』とかの言葉にも表れているのと同じで、その骨は真っ白をしている。


一方で目の前に現れたコイツ等の骨の色はとても薄気味の悪い青黒いもの。

しかもその上骨には元の世界で言う古代文字みたいな紋様まで浮かんでいる。


見ていて気持ち悪く、よく女の子が夜の校舎でいもしないお化けに怯えている時に感じるような畏怖の念……そんなものを直に感じているかのようだ。


まあジョーカーの時に相当無茶な威圧を経験したし、ディールさん自身が放つものも相当のものだ、そこまでコイツ等を怖く思うなんてことは無くて済んでいる。


とは言え、初見でこれは……


改めて呼び出されたハイ・スケルトンの群を見る。


レベル平均は……45。


割合がハイ・スケルトン:スケルトン=1:30とかならまだ分かる。

でも今目の前でディールさんと俺との間を断つかのように立ち塞がっているのは全てがハイ・スケルトン。


2度見しようと、目を一度瞑ってもう一度見開こうと、夢オチを疑ってみようと、変わらず全部ハイ・スケルトン。


ゲームで言えばスケルトンの上位であるハイ・スケルトンならたとえ1体だったとしてもボス格だ。

それにそんなハイ・スケルトンだ、普通にこれだけ集めるのも容易ならざることだというのは疑いのないところだろう。


だからこそ、それを一瞬のうちにこれだけそろえてしまった彼女ディールさんが異常だということが窺える。


これに勝った時に教えてもらえるというスケルトンをハイ・スケルトンにする方法、というのもあながち嘘では無いかもしれない。




呼び出されたのち、前の方、つまり俺の近くにいたハイ・スケルトン複数がその身を屈めていきなり駆け出し、俺に迫ってくる。

ディールさんが指示を出して動かしたというようなことは無い。


その動きはスケルトンとは比べものにならない位滑らかで尚且つ速い。



くっ!


「ストーンウォール!!」


魔法を放ちながら俺はバックステップを踏んで下がる。


そして取り立てほやほやの『属性付与』を用いて俺は回復魔法を用意……な!?


武器に魔法を施そうとしたら、俺が作り上げた2m程の石の壁が目の前で乗り越えられる。

そうして壁から乗り越えたハイ・スケルトンはそのまま俺に襲い掛かり、他も遅れて横から壁を無視して現れる。


嘘!?

壁は無視!?


しかもどうやってその壁を乗り越えた!?


「ちっ!しゃあない、ヒール・ターボ!!」


武器の属性にと準備していた魔法をやむなく壁を乗り越え一番に俺に迫ったハイ・スケルトンに直にぶつけてやる。


「ほう、あの石の壁も見事だが、どうやら回復魔法を使ったのか彼は。ゴホッゴホッ、剣を使っているし肉付きも悪くないからてっきり前衛専門とばかり思ったが……ふむ、面白い。……だが……」


真正面から回復魔法を浴びたはずのハイ・スケルトンは一切ダメージを負った様子は無く、むしろ普通に回復してしまっている。


「な!?き、効いてない!?」

「ふふ、まあ普通その手は鉄板だろうが、私のハイ・スケルトンにその手は通用しないよ」

「くっそ!!」


どうして効かなかったかの考察をさせてもらえる余裕もなく、目と鼻の先まで迫っている二本の剣の対応を余儀なくされる。


「ちっ、らぁっ!!こな、くそっ……」


ハイ・スケルトンの二本の剣捌きもスケルトンのようなぎこちない、どこかゆっくりとしたものでは無く、純粋に速い。


1体の対応で、これかよ!?


回復魔法が効かなかったことの虚を突かれたこともあるが目の前を捌いているだけで今は一杯一杯になりつつある。


もう壁の横からも次のハイ・スケルトンが来る。

ちっ、これは、やべぇ……


とりあえず今目の前の奴を何とかしないことには……


「食らえ、ライトニング!!」

「……!!」


俺は自分の魔法の中で最速の雷魔法を選択してそれを放つ。


俺の攻撃を察知してか、ハイ・スケルトンはさっきの俺のようにバックステップを踏んで距離を取るも、雷魔法に対してその対応は少しお粗末であったようだ、下がったハイ・スケルトンを追いかけるように雷は縦に伸びて行く。


そして、それは直撃し、骨だけの相手とは言っても同じように焦げたような臭いが漂ってくる。


「……!!……!!」


ハイ・スケルトンはライトニングの直撃後尚も動こうとする。

流石に一撃で倒すまでにはいかなかったようだ。


だが、体に微弱の電気でも残っているのか、体を動かせないでいる。


即座に鑑定してみると状態異常の『麻痺』にかかっていた。


おおう!?

リンとの契約の恩恵があるとは言え一発で麻痺になるって……

おおっと!!


そのことについての考察もさせてはくれないようだ、他のスケルトンが俺に襲い掛かってくる。


ふぅ、でも一体封じ込めれたことでかなり心に余裕ができた。

……まだ沢山いるんだけどね。

確かに、一体一体はスケルトンとは比べものにならないスペックだ。

これが何十体もいて、それを1人で何とかしないといけないってのもとても苦しいという状況も事実だ。


……でも、それは“スケルトン”と比較したら、だ。

今迄戦ったクレイや、ジョーカーみたいな奴等と比べたら1体1体のスペックはもちろん圧倒的に劣るし、相手が何体いても1対1に持ち込めればどうとでもなる。


よし、行ける!!


「はぁー!!」



そうして、ちょっとずつではあるがハイ・スケルトンの数を減らしていった。

その度に自分の力も着実に上がっていることを実感できて、勝ちも近づいていく。


俺は剣と雷魔法を主体としてどんどんハイ・スケルトンを蹴散らしていった。



……そうして、残りがディールさんの周りで彼女の護衛役を務めていると思われるハイ・スケルトン5体となった。


「……ほう、これは、凄いね。ゴホッ、君には驚かされるばかりだよ。彼らを行動不能にした魔法もそうだが、戦い方の幅が相当広い。ここまで攻められるとは」

「はぁ、はぁ……それは、どうも」


荒い息遣いの中、俺は素直に答える。

これで、後は……


そんなことを思った矢先であった。


「……ふぅ、お互い準備運動も終わったことだろう、そろそろ本番と行こうか」

「……は?」


あなたそこから一歩も動いてないでしょ、という気づいた時相手の凄さに驚かされるツッコミは抑え、彼女の行動を注視する。


ディールさんはそんなことを告げては手からモヤモヤとした黒い魔力を作りだし、それを俺が倒したハイ・スケルトンに対して放つ。


これは!!


多少感覚としては異なるところがあったが、俺は経験的にこの黒い魔力がマズイものだと判断し、さっきとは違って本気でディールさん目がけて走り出す。


さっきまで動きっぱなしで内心へろへろだったがその体に鞭打ってまでも止める必要があると感じた。


「くっ、そっ、スパーク、ウェーブ!!」


走りながら一気に全部倒せるほどに魔力を練って放つ。

だが……


「ほう、あれだけ魔法を放っていたのに、容量も多い、か。では……」


ディールさんは黒い魔力を放っている右手とは逆の手を、いや、逆の手の指を動かす。

そこから同じように魔法か何かが放たれるという事は無く、特に何も起こら……えっ……糸?


一瞬光の反射が良い角度になったおかげもあって、更に、それは目をよく凝らしていないと見落としていたであろう、ディールさんの指から微細な糸のようなものが瞬時に伸びてハイ・スケルトンにくっ付くと、それは消えた……と言う言い方が正しいのか分からんが、俺の眼では捉えられなくなった。



そして、その直後俺の放った雷の波がディールさんを守るようにして構えていたハイ・スケルトン達を飲み込んだ。


波が去った後、さっきまでハイ・スケルトンを倒してきた時のように微弱な電流がその後も体表を走っていて、鑑定からも彼等の内4体が『麻痺』してくれたことが確認できた。


なのに……


「ふむ、また麻痺、させられたか。この頻度の訳は色々と考察できるが……兎も角、繋いでおいて正解だったな」


ディールさんがごく僅かながらも左手の指を動かすと、麻痺したことを今現在も確認できているハイ・スケルトンが動きだし、また彼女を守るようにして俺を牽制する。


そのせいで俺は止めをかけることができず、さっきディールさんの放った黒いモヤモヤとした魔力も俺が倒したハイ・スケルトンたちに到達して、そして……のっそりと立ち上がりだす。


……復活、しちゃった。


嘘やん!!


麻痺して動けないものを除いて、全てのハイ・スケルトンが再び活動を始める。


くっそ、本当にやべえよこれ!


俺は焦りながらも何か打開策が無いかを必死に模索する。


『回復魔法』は……ああ!ダメだ、一番最初に無理だったんだ。

えーっと……雷……って、麻痺してもよく分からんが動かしちゃうんだよね。

ヤバい、思考がテンパってる。


クソ野郎、碌なスキルねえな俺!


「はっ、うらぁ!!」


俺は再び襲いかかってくるハイ・スケルトンを何とか捌きながらも思考し続ける。

……いや、落ち着け、スキル自体は良いものが揃ってるはず。


ただこの人に通用しないだけだ。


今は落ち着いて打開策を見つけ……お?


『契約恩恵(主人)』、【従者一覧】のカエンの欄に目が止まる。


『獣王の雄叫び』……


必死に戦闘を続け、ない余裕を振り絞りこれを鑑定する。


獣王の雄叫び:自分よりレベルの低い相手に対し、レベル×1.5倍のMPを使って獣王の咆哮を浴びせ、レベル差の秒数だけ恐怖・萎縮状態にすることができる。

咆哮は複数にも及ぶ。


俺はそれを読んだだけで深くは考えず、もう何でもいいやという精神もあって使うことにする。



「すぅ……がぁ!!」



発動した瞬間、自分の声とは思えないものが腹の底から溢れてきて、それを一気に吐き出す。


大気が震え、波動としてディールさん以外のハイ・スケルトンをのみこみ、一瞬にしてハイ・スケルトン達は竦み上がって動かなくなる。


よし、これなら……


「ほう、まだそんなものを残していたのかい。……ふむ、50体全部を操るのは少々疲れるんだが……仕方あるまい」

「え!?」


ディールさんはさっき同様また指から見えない・あるいは見えたとしても細すぎる糸を放って今度は麻痺して動けないものも含めてこの場にいるスケルトン全部に繋げてしまった。


そして……


「ふぅ、ゴホッ……50体全部はやはりしんどいね」


彼女は左手の指しか動かしていないのに、ハイ・スケルトンがそれに応じて動いてしまう。


『獣王の雄叫び』の効果も虚しく、短い秒数は過ぎ去っていった。




倒しても倒しても蘇るし、状態異常にしても関係なく動いちゃうし…………何これ?

…………もう、嫌だ。




「2割の中でとは言え、私の奥の手まで出させたんだ、立派だよ、凄いよ、君は。……それで、どうだい、まだやるかい?」


ディールさんは俺にもう用件は済んだというようにそう言い放つ。

何となくその言い方は冷たいようにも感じた。





「……ですか……」

「ん?何だい?そろそろ終わる……」

「そうですか、そっちがその気ならもういいです!!こっちだってもう遠慮しませんから!!」

「……え?何を……」



“俺の”実力を試すということだったからできるだけ召喚や皆のスキルを『パーティ恩恵(リーダー)+α』を介して使うことは避けていたが……もう知らん!!


こんなでたらめ使うんならこっちだって暴れてやる!!


「ユーリ、来い!!」


俺は即座にユーリを召喚する。


「……旦那様、お呼びで……っ!?、な、何ですか、この状況は……」


召喚陣から現れたユーリは周りにハイ・スケルトンだらけの状態に驚いているようだが今はそこに構っている暇はない。


「お前の力は後で借りる!後ろで待ってろ!!」

「は、はい!!」

「な!?召喚まで使うのか!?なぜ今まで……」

「おらっ、ダークミスト!!」

「果ては闇魔法か!だがハイ・スケルトン達に闇は……」


エフィーの『MPチャージ』を使ってダークミストの広がる範囲を拡大する。

俺だけでなくディールさんやハイ・スケルトンとそこにいた全ての者を包み込むように闇の霧が広がって行く。

もちろんダークミストの闇の効果を狙って放っているわけでは無い。


「……むっ、成程、闇魔法本来の効果と言うよりこれは……目くらましか。確かに、これでは見えんな。だが、そこまで持続するわけでもあるまい。それに彼だって……」


時間が経てば消えてしまうというのは精神汚染を狙って放つ場合と変わらない。

そして、中に入ってしまえば俺も視覚を奪われることも。


だからその両方をクリアしなければダークミストはただの時間稼ぎになってしまう。





俺はシアの『ワーウルフ』を使う。


……おおう、これは!?


『ワーウルフ』が固有ユニークスキルのような定義になっていたから使えるかどうかがそもそも怪しかったが、そこはクリアし、今は使用した感覚に驚いている。


体から力がどんどん漲ってくるという言い方がすっぽり当てはまる。

まるで、今までの自分では無いかのようで……これは力加減が難しいな。

何しろ3倍だし……


シアはさっきあれをたった2回目で的確に使っているように俺の目には映った。

本当にシアは戦闘のセンス抜群だな……

そういう言い方をしたらそれ以外はどうなんだって話にもなりそうだが、別にシアはそんなことは無いし、それに今はそこを考えるべき時じゃないだろう。



俺はエネルギッシュな体を思う存分使って、目標の人へと駆けだす。


途中偶然にも俺の進路に立ち塞がったと思われるハイ・スケルトンも一薙ぎにし、一直線に猛進する。

攻撃力ももちろん上がっているんだろう、一撃で片が付くな。


「む?2体やられたか……うぅむ、彼は、どこだ?」


倒してそれを後にした途端後ろの方でハイ・スケルトンが蘇生するように感じたが気にせず走る。


そして……


呼吸を数回しない間に、恐らく目的の人の下に。


またハイ・スケルトンが偶然俺に辿り着いたり、ダークミストが消えないうちに左手を伸ばし、この模擬戦を終わらせることにする。



……ん?触ったのは多分……肩、かな?


「ディールさんに今私の手が触れています。……私の、勝ちですね、ディールさん」


俺は勝利条件を満たしていることを確信してそう告げる。

これ、ダークミスト消えた後ハイ・スケルトンとかだったらダサいなぁ……


「……ああ、そのようだね、しっかりと君の手の感覚が伝わってくるよ。……温かい」


目の前からしっかりとディールさんの声が聞こえてくる。

良かった……間違ってなかったようだ。


「それにしても、良く私の居場所が分かったね。どういうからくりなんだい?この黒い霧、実際には見えないのは私やハイ・スケルトンだけで、君は見えていた、とか」

「いえ、私だってこの中では視界は真っ暗ですよ。今も、ディールさんのお声を聞いていて初めて本当にディールさんを触っているってことが確信できる位です」

「では、どうやって私の居場所を……」

「“糸”ですよ」

「“糸”?……ああ、なるほど、そう言う事か。確かにこの中でも糸だけは見える。私は使っている側だから全く気にしなかったよ」



俺はただこの中でも唯一見える糸を辿っていっただけ。

糸は確かに微細で、肉眼では見えない物も中には含まれていたかもしれないが、魔力が流れていたこともあってその糸が少しだけ光っているかのように感じて、この闇の中でも見えた。


それは、色々と錯綜・交差していてぐちゃぐちゃなようにも見えるが、最後には一点に収束する。


見つけ出さなければいけないのが鍵とか小さな物、もしくはハイ・スケルトンの中の1体とかだったら区別はできなかっただろうが、今回見つけ出すべき人はその術者本人だ。


ブチッ


糸を切る音が聞こえた。

それと同時に、ここまで辿り着く頼りにしていた糸は消失し、彼女を触っている温かさだけがそれを知れる頼りとなった。


「ふむ。私がハイ・スケルトン達につけている糸は魔力を練って作る特殊なものだ。見えないようにできるだけ小さなものにする努力もしたんだが……この中ではそれは意味の無い物だったか。面白い、勉強になるよ」

「それは良かったです。……これは、私の勝ちで、いいんですよね?」


何だかディールさんは俺がどうして場所が分かったかの考察ばかりでそこについてはあまり触れてくれないので少し心配になった。


「ん?ああ、いや、悪いね。気になったら他のことはそっちのけになってしまった。……君の勝ちに間違いはないよ。私の完敗だ」


ふぅ、それを聴いて一安心だ、これにまたとんでもないものが出てきたらもう……


「やりました!!流石ご主人様です!!ね、エフィー!」

「あの糸……え?あ、はい!そうですね、相手の方の能力が異常でしたが、それに対処なさったご主人様の凄さは最早そこが知れません!!」

「はい!!主様、凄い、です!!」

≪うひょー!!主殿凄すぎじゃ!!カッコ良すぎじゃぞ!!≫

『カイト殿は本当に何でもできるんだな』



外から皆の喜ぶ声が聞こえてくる。

その声にかき消されるかのように、ダークミストも徐々に消えて行って、そうして、目の前も段々明るく……



「え?……え!?ご、ご主人様!?」

≪あ、あ、あ、主殿、ど、どこを触っておるんじゃ!?≫



シアとリゼルが若干パニックになった様子でいる。

ん?ディールさんを触っていることは分かっているが、確かにどこを触っているかまでは分からないな。


でも多分肩あたりじゃないのか?

ちょっと骨っぽいし。

だからそんなに騒ぐことじゃ……


そうして明るくなった視界を頼りに、視線を、落と、す……


「ふむ、さっきも言ったが私の体なんて貧相で君のような多感な男性には刺激が無いと思っていたんだが……君は肋骨を感じることができる位の小ささの方が興奮するのかい?」


わーお。


……ワタシ、ヒダリテ、ムネ、サワル……



ディールさん……骨……


ディールさんの能力はどうだったでしょうか?

一応本気を出しているわけでは無いんですが彼女の基本的な戦闘スタイルはあんな感じです。


これ主人公かシア、もしくはクレイ以外だと結構キツイと思うんですけどね(リゼルは微妙)……


ハイ・スケルトンの“知性”という意味ではスケルトンとの差はあまり分からなかったかもしれません。

補足は……まだするかどうか分かりませんね。


ユーリを召喚した意味は分かっていただけるでしょうか?

カイトが言っている通り後で分かることになりますがこのお話までの情報だけでも理由は推測していただけるかと思います。

まあ別にこれがストーリーの核心に触れる、とかいう深い理由では全くありませんが……


エフィーは戦闘中に見た魔力で作った糸を何だか気にしているようですね。


まあ兎も角、今回のお話は戦闘だけでストーリー的にあまり進展が無かった分、次話は色んな情報が分かるかと思います。


次回予告:①カイト、貧乳好き疑惑!?②エフィー、ポッ///③シア、リゼル、主人のために……の、3本です!


……すいません、冗談です。

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