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ただいま……

うーん、またまた長くなってしまいました。

ご覧になる際はご注意ください。

俺達はワープ地点の前まで戻ってきた。

この先に進めば孤島に帰れる。



……ふぅ、やっとか。

安心からか、どっと疲れが出てくる。

東のワープ先を調べるだけで1日費やしたと考えるか、1日で済んだと考えるか……


色んなことが有って心理的に疲れはしたが得たものも少なくない。


隣でピョンピョン跳ねてはしゃいでいるレン、それをあわあわと心配そうに見ているサクヤ。

昨日今日会ったばかりの二人が俺について来てくれるのを見て少し安心する。


……ま、疲れに見合った収穫はあったか。



レンはワープの光を見て不思議そうな顔をする。

一応ここに着く前にワープや、孤島の説明自体はしといたが……


そりゃそうか。

説明されただけでワープについて納得できるものではないだろう。


そして可愛くくるっと振り返ってレンは俺に尋ねてくる。


「へ~……お兄ちゃん、お兄ちゃん、この先がボク達の愛の巣になるところなの?」


うん、違うな。


「……ちゃんと説明しただろう。この先に進めば俺達が拠点としてるところに着くって」

「うん、だからそれがボクとお兄ちゃんが愛を育むところなんだよね?」

「お前の頭はどうなってんだ?何か特殊な翻訳機でもついてんのか!?」

「お兄ちゃんへの『愛』ならいつでも頭の中いっぱいです」


……誰がうまいこと言えと言った。


「……えへへ、これからはずーっとお兄ちゃんと一緒だ……ボク、先に行くね!」

「あ、ちょっ、待っ……」


興奮しているからか、レンは俺が静止する間もなくいきなり駆け出してワープへと向かって行く。


「ほ~ら、お兄ちゃん、逃げるボクを捕まえてごら……ギャフッ!」

「えっ!?だ、大丈夫か、レン!!」


ワープする直前で見えない壁のようなものに阻まれ、レンはそれに直にぶつかってしまった。

俺達は慌ててレンに駆け寄る。


「痛たた……」


本人も言っている通り痛そうに額を擦る。


「あーあー、赤くなってるな。ほれ……」


回復魔法をかけてやる。


「ありがとう、お兄ちゃん。滅茶苦茶痛かったよ……でも何あれ!?ボク聞いてないよ!」

≪いきなりどうしたんじゃろうな、あんな壁我等も……≫

「……あれは、『入島制限』と何か関係が?」

「あ、そう言えば」


リゼルの呟きに俺はハッとする。

直ぐに俺はアイテムボックスから石板を取りだして確認する。


……あっ、やっぱり入島制限解いてなかった。

でも入島制限をかけたら、レン程の実力者でさえ痛いと感じる程の壁で守ってもらえるのか……

そう思うとレンには申し訳ないことをしたと思うがかなりいい実験にはなったのではないだろうか。


レンとサクヤの入島制限を解いてからレンに話しかけ……あれ?


「レン、お前背中に……」

「え?……あ、本当だ。何だか羽がついてるね」

≪さっきの衝撃で生えたのかえ!?≫

「え!?ソレは凄いデス!!」



レンには『守護天使ガーディアン+α』のスキルと職業の守護天使ガーディアンがついたから、そこの関係だろう。

今の衝撃で生えたかどうかは怪しいが……まあ気付くきっかけではあったのは確かだ。

服の上からでも羽の形がこんもりと浮かび上がっている。


レンが羽織っている服を脱いでみると、その背中には俺達全員が目を見張るほどの美しい純白の羽が4枚。


なんて綺麗なんだ……この子は天使だ……いや普通に天使か。


「うーん、羽なんてあってもなぁ……」

「そんなこと言うな。とっても綺麗だぞ?その羽」

「お兄ちゃん……」


ん?なんかおかしなこと言ったか?

別に綺麗だということは嘘じゃないし。


「……綺麗なのは、『羽』だけなの?」


そんなことを尋ねてくるレン。


え?

他に何かあるのか?


少し考え込んでいるとレンがその水色をした瞳をうるうるとさせて俺を見る。

その時に髪がふんわりと……


……あ、そういうことか。


「そうだな、ちゃんと綺麗だぞ、そのオレンジ色の『髪』も」


うん、女の子は髪が命って言うからな。

ここを褒めとけばまず間違いない。

髪が綺麗だってのもまた嘘ではないしな。


さて、レンの反応は……


「…………(ぷいっ)」


あれ?

頬を膨らませてそっぽ向いてる。

え、何で!?


「レン、どうしたんだ、子供っぽくて可愛らしいお前にもちゃんと似合って……」

「子供っぽい!?……もう知らない、お兄ちゃんのバカ!!」

「あ、レン……」



よく分からないがレンは何だか怒って先に行ってしまった。

今度はちゃんと入島制限も解除してあるので壁に阻まれるなんてことも無く。

だからもちろん俺が止める間なんて無くって……



何故だ……

兄としてはちゃんとレンのことを気遣って踏み込むべきでないところはちゃんと引いてかけてやったセリフだったんだが。

分からん。


これならまだクレイの方が……

いやあっちはあっちで分かり辛いところも多分にあるか。

はぁ……ままならんなぁ。







「あ、マスター!」

「ご主人様!お帰りなさいませ」


立ち直った俺がワープを抜けると直ぐにカノンとエフィーが出迎えてくれた。


「おう、ただいま二人とも。……他はどうした?」

「シアさんは少し外されているようです。シーナさんはベルから仲間が増えるという報告を聞いて急遽部屋を増やしていますね。クレイさんは……」


エフィーが首を向けた先に俺達も目をやる。


するとそこには……


「キャハハハハ!面白ーい!」

「コラ、ダメでしょ、クレイしゃんの上に乗ったら!」

「……ズルいであります」

「クレイお姉ちゃん大丈夫?」

「……うー」


……あ、れ?

クレイを気遣うようにして大丈夫か、と尋ねているレンは分かる。

いや、あの短い時間でどんだけ馴染んでんだよ、っていうツッコみも無くは無いが……

それよりも気になることが……





知らない女の子が3人いる……


1人目は最初に声を発した、クレイに肩車してもらっている活発そうな女の子。

2人目はそれを腰に手をあてて咎めている、中心的な立ち位置の女の子。

3人目はそれを少し離れた位置から羨ましそうに指を咥えて見ている大人しそうな女の子。


クレイは遊んであげているのか、単に突っ立っているのを子供達に捕まったのか……よく分からん。


まあ一番よく分からんのはもちろん謎の女の子達なんだが……


「クレイはやっぱり人気だね……」

「そうですね、クレイさんですから」

「……二人とも、俺がいない間に何があったんだ?何で女の子が3人も増えて……」

「え?マスター、分からないの?あんなに特徴的なのに」

「俺の知ってる人なのか?特徴的って……」


俺はカノンの言葉を聴いてもう一度女の子をしっかり頭からつま先まで観察する。

……決していやらしい意味じゃないからな。


「クレイさん、もっと高く高く!!」

「もう!早くクレイしゃんから降りなしゃい!!」

「……いいなぁ」


うーん、1人目の女の子はどこか髪色がカノンに似ている。

一見無邪気にはしゃいでいるかのようにも思えるが笑っている姿はどこか小悪魔的なカノンを想起させる。


2人目の子の髪はエフィー似かな?

ちょっと怒っている姿なんかはよーく見てみるとエフィーの顔がだぶるようで何だかドキッとする。


となると……最後の子は……うん、シア似だな。

あんまり表情の変化が無いから、そこの点で比較することは難しいがまあ凡そ似ていると言ってもいいだろう。


「あんなに私達そっくりなんだからいくらなんでも……」

「そうですね、外見はかなり私達と似ていますから……」


3人に似ている……ハッ、まさか!?


「えっ、嘘、本当に!?」

「やっと分かったの、マスター。もう……」

「まあ流石に初見ですからね。私も最初は驚きました」

「そりゃ驚くだろ!って言うか、あれ!?俺が離れてたのって1日だよね!?」

「はい。そうですが……」

「エフィー、カノン、二人とも大丈夫なのか!?」

「……は?何が、ですか?」

「そうだよマスター、いきなり……あの子達のこと以外は特に何ともないけど」

「だってお前、1日で子供産んだんだろ!?しかもあんなに大きな……」

「……ご主人様、何をおっしゃってるんですか?」

「子供って……って違うわよ!!あの子達は聖獣!!リン(キリン)とユーリ(ユニコーン)とフェリア(フェンリル)!!」

「……へ?」


聖獣…………え?


「……俺と、3人との子供じゃなくて?」

「マ、マスターのバ、バカ!!そんなはずないでしょ!!全くもう……ま、まだ、中に……てくれたことないくせに……(ゴニョゴニョ)」

「ご主人様、流石にそれはないですよ。こことワープ先の時間の進行の速度がズレているとかなら兎も角、たったの1日で妊娠して出産、更にあんなに大きな子になるなんてことはありません」


……そうか、そうだよな。

冷静に考えたら当たり前のことだ。

どうかしてたわ、俺。


カノンやエフィーの説明で納得する。

常識のことでもそうだがそもそも俺と似ているところが全くないし。



でも本当に焦ったわー。

生涯子供なんて絶対できないし作ろうとも思わなかったのにいきなり目の前に客観的にそう思える状況を見せられたらこうなるよね。


「でもじゃあ聖獣達は何でカノン達に似ているんだ?そもそも人の姿ってどういう……」

「それは……」

「あーー!!お兄だぁ!!」

「「え!?」」



エフィーが何かを答えようとした時、向こうで遊んでいた聖獣達がようやく俺の存在に気付く。

途端にリンとユーリはこちらに駆けてきて、クレイとレンもそれに続いて近寄ってきた。



「お兄だお兄だー!」

「コラ、リン、旦那しゃまに失礼でしょう、先ずはあいしゃつを……」

「うるさいなぁ、ユーリは。そんなんじゃお兄に嫌われるよ?」

「しょんなことありましぇん!!旦那しゃまは私を慈しんで愛してくだしゃいましゅ!!」

「はいはい、分かった分かった。面白いねぇー」

「コラ、話を……」

「……二人とも、ケンカは、ダメ」

「……はーい、ごめんなさい、クレイさん」

「……申し訳ごじゃいましぇん、クレイしゃん」


二人の口喧嘩を仲裁するクレイ。

そして素直に謝るリンとユーリ。


……スゴイな、聖獣に謝らせたぞ。


「…………(じー)」


何だかすごい視線を感じる。

離れた位置からフェリアが俺達をじっと見ていた。

……とりわけ俺を見ているような気が。


何を考えているのか、離れていることもあるがその表情からは全く窺えない。


俺はフェリアに近づいて声をかけることにする。


「フェリア」

「……お帰りなさいであります、兄さん」

「ああ、ただいま。でもビックリしたよ。お前達聖獣が人の女の子の姿になってるなんて」

「……フェリアもビックリであります。死んでなかったんですね、兄さん」

「おい、どうしてそうなる」

「てっきりどこかハエが溜まるようなところでのたれ死んでいるとばかり思っていたであります。そんな死にぞこないの兄さんがフェリアに何か用ですか?」

「…………いや、特に用と言うわけでは無いんだが……」

「用も無いのに話しかけて来るなんて、何が目的ですか?体ですか?フェリアのこの幼い体が目的なんですか?死にぞこないなだけでなく変態だなんて……兄さんはどうしようもないであります」

「いやいや、そんなことは断じて無いから。俺はただ……」

「フェリアは体ですら目的にならないどうでもいい存在だと?そんなどうでもいい奴にわざわざ話しかけてやったんだから感謝して靴でも舐めろと。兄さんはそうおっしゃるでありますか?兄さんはいわゆる『おに畜』であります!」

「どんだけ俺のイメージ悪いんだよお前!勝手にどんどん被害妄想膨らませてんじゃねえよ!あと『おに畜』じゃなくて『鬼畜』な!」

「コラ、フェリア、旦那しゃまになんてことを!!」

「(ぷい)」


俺が何か言う前にユーリがフェリアの言葉を聞きつけてこちらに駆けてきた。



あっれー?フェリアってこんなに乱暴なことを言う子なの?

他の人とは普通にコミュニケーションとってたのに俺にはメッチャクールに毒づくじゃん。

聖獣の容姿の際の行動からもっと恥じらい多い女の子だと思ってたんだけど。


「もうフェリアったら!……申しわけごじゃいましぇん、旦那しゃま」

「いや、別にいい。気にするな。それで、どうしてお前達聖獣が……」


俺がユーリに尋ねると、フェリアは俺から離れて行った。

うーん、もしかして俺、フェリアには嫌われてんのかな?


クレイとレンがフェリアの方へと近寄って行ったのでとりあえずフェリアの方はクレイとレンに任せよう。

レンがいてどうこうなるかは分からんが流石にクレイを嫌いだという事は無いだろうからな。


さて、それじゃあ俺はユーリとリン、エフィー達からこれまでの経緯でも聴くか……



=====  レン視点  =====


「フェリア……さっきのは……」

「やってしまったであります!!兄さんに悪態をついてしまったでありますよ!!折角、折角兄さんがこんな愚図なフェリアに話しかけてくれたのに……」

「……よしよし、フェリア、良い子良い子」

「クレイさん、どうすればいいであります!?フェリアはもう兄さんに、兄さんに嫌われてしまったでありますか!?」

「……大丈夫。カイトは嫌ったりしない」

「ほんとでありますか?フェリアは、フェリアは……兄さんに嫌われてしまったらもう生きて行けないであります」

「……大丈夫」

「ぐすん……」


手と膝を地について落ち込んでいるフェリアの肩にポンポンと手をあて慰めているクレイお姉ちゃん。




……面倒くさい性格しているんだね、フェリアって。

さっきまでは普通にボク達と一緒に遊んでたのに。

お兄ちゃんを目の前にするとあがっちゃうのかな?


あんまりそう言う気持ちはよく分からないけれど別にお兄ちゃんが嫌いでああいう態度を取ったってわけじゃないんだよね。

ボクと一緒でお兄ちゃんのことが大好きで、大切で、嫌われたくなくって……


その気持ちはボクにもよく分かる。

だからフェリアを嫌いになんてならないし、むしろお兄ちゃんを好きなもの同士仲良くできたらって思う。


……でも、お兄ちゃんはボクだけの『お兄ちゃん』だから、『兄さん』と呼んでいたりさっきリンが『お兄』と呼んでいたのも何だかモヤッとするなぁ。


これからはお兄ちゃんと一緒に戦って行くんだから、こんなことでお兄ちゃんを困らせるのもダメだし……


後でリゼルンかサクヤお姉ちゃんにでも相談してみようかな?


それはそうと、とりあえず今はそこまで落ち込むかと言う位落ち込んでいるフェリアを慰めないと……


=====  レン視点終了  =====



「ふむ……なるほど、大体の事情は把握した」


主にユーリとエフィーからの話を聴き終え自分で整理する。

ユーリは体の小ささから来るものだろう、多少言葉に拙いところがあったもののエフィーが的確に補足してくれて理解に至った。


聖獣3体のレベル上げをしていたら3匹は突然光出し、そして人間の小さな女の子の姿に。

ユーリ曰く成長に必要なレベルを満たし、その後聖獣達は自分達で凡その姿(大きさではなく容姿)を決められるので、自分達の世話・姉を務めてくれているそれぞれの姿に似せて人間の姿へと。


ちなみに今のレベルを鑑定してみると皆18だった。

流石にこのまんまの大きさというわけではないだろうからやっぱり後一回くらいは成長すんのかね?

仮にあと一回成長するとしたら今度は30~40の間だろうか?

一度どこかで試してみる必要があるな……


対象が聖獣ということや、ベルの成長する姿を見ているということもあるのでエフィー達は特に気にすることも無く俺の言いつけをちゃんと守って3体の育成に励んでいた。


でもベルと聖獣達の成長って全く内容が異なってると思うんだが……


話を聴き終える頃にはシアや離れて行ったフェリア達も合流した。

ベルが話を通しておいてくれたのもあってサクヤやレンのことは驚かれはしたもののすんなり受け入れてくれた。


「まあ、ご主人様ですしね、天使が仲間になっても……」

「ええ、ご主人様ですし」

「うん、マスターだもん」


それだけで済ませてくれた。


特に種族間での軋轢なんかもないようだ。

カノンが魔族、レンが天使ということもあって何か起こるんじゃないかと勝手に妄想していたが、それは俺の想い過ごしだったようだ。


直ぐに仲良くなってくれて……

この子達は本当にいい子達だな。

こんないい子達を守るためにも、俺は……



そんな感傷に浸っているとリンが話しかけてくる。


「どうどう、お兄、私の姿。お兄が好きそうな小さめの体だよ?」

「悪くは無いかもな、ちゃんと可愛らしいと思う。……でも何で俺が小さめの体を好きだと思ってるんだ?」

「えー?だってお姉やシア姉みたいな色気むんむんな女性に囲まれてるのにお兄ってエッチなこと全然しないんだもん。もうそれだと私みたいなロリっ子か男でも好きなんじゃないかって」


……それは酷い誤解だな。

俺は至って普通の趣味しかないんだが……


「それにレンだってお兄のこと『お兄ちゃん』って言ってるし。小さい女の子にそういう事言わせて興奮するんだよね、お兄って?」

「んな訳あるか!あれはレンが勝手に……」

「……カイト、『お兄ちゃん』って呼ばれたら……興奮する?」

「な!?クレイ、今の聞いてたのか!?」


いきなり背後からクレイの声がかかってかなり驚く。


「そうだよ、クレイさん、そうじゃないとお兄は興奮しないし襲ってこないんだよ?」

「いやいや、そんなことは無いぞ、クレイ!そんな特殊な性癖は持ってない。俺は至って健全な趣味嗜好を……」

「……にぃにぃ」



かっはっ!?

必死に弁解しようとするも、クレイが俺を呼ぶあまりの可愛い仕草に吐血寸前まで追い込まれる。

な、何だこの可愛い生き物は!?


これはマズイ!

このまま放置すると俺はクレイに呼ばれる度に萌え死にそうになる。


「クレイ、お前は俺の名前が好きか!?」

「……うん、クレイ、カイトの名前、好き」


自分で聞いといて名前だけを強調されるのもくるものがあるが今はそれどころじゃない。


「そうか、俺はクレイには名前で呼んでほしいんだ、いいか、『マスター』や『にぃにぃ』なんて敬称じゃない、『名前』で呼んで欲しいんだ、分かるか!?」

「……うー……」


くそっ、感覚的にまだ迷っているっぽい!

この方向から行けば説得できると思ったんだが……


「あれ~?お兄、いつもとは違って大胆だね~。お姉やシア姉達にもいつもこれ位積極的だといいのに」

「うるせぇ、テメェは黙ってろ……クレイ、どうだ?俺はやっぱりクレイからは名前で呼んで欲しいんだが」

「…………うー、わかった。……クレイ、『にぃにぃ』のこと、これからちゃんと、カイトって呼ぶ」


ぐはっ!!

分かってくれたのはいいが一々『にぃにぃ』と言わないでくれ!!


「キャハハ、お兄、面白ーい!」


腹を抱えて笑っているリン。

コイツ、さてはワザと……


「おいリン、お前……」

「そんな怖い顔しないの、折角の顔が……ゴメン、これは触れない方が良かったね」

「おいコラ、俺の努力でどうこうならないところディスってくんな」

「やっぱりお兄といると本当に楽しいね!だからお兄だーい好き!キャハハ」

「あ、おい、コラ……」


リンは走ってどこかへと行ってしまった。

掴みどころがないというか何というか……




「ス、スゴイです!!サクヤ、とってもスゴイです!!」

「スゴイですね、本当にこれは……」

≪えっへん!どうじゃ、スゴイじゃろ≫

「どうして姉じゃが威張っているですか。一度先に見たことが有るだけで……」


ん?何だかあっちはあっちで盛り上がっているようだ。


「どうしたんだ?そんなに盛り上がって……ん?これは……」


シア達の周りに置かれている武器の数々が目に入る。


「あ、ご主人様!!それが凄いんですよ、サクヤって武器が一杯出せるんです!!」

「いや~、ソレほどデモありまセン」

「謙遜なさる必要は無いですよ、サクヤさん。かなりすごい力ですよ、これは」


シアとエフィーがべた褒めするのでサクヤもかなり照れている模様。


サクヤが『武器創出ウェポンクリエイト』で武器を出したようだ。


ん?これは……



「サクヤ、この武器は?」


俺は一つ、とりわけ他とは質が段違いの武器を手に取りサクヤに尋ねる。


「へ?……ああ、ソレハ『六神人形シィドゥ・オ・ドール』用の武器の一つデス。デスからかなり強力な武器だと思いますよ?」

「え?『六神人形シィドゥ・オ・ドール』?ご主人様、それは一体……」


シアに尋ねられて初めて気づいたが、ベルはそこまでは話していないのか。

そう言えば『六神人形シィドゥ・オ・ドール』を入手したはいいがどうするか決めてなかったな。


俺はエフィーを見る。

エフィーも知らないようで、俺に見つめられて若干顔を赤めながらも首を傾げている。




……エフィーに、使わせたらどうだろうか?

サクヤには勝てないとしても『六神人形シィドゥ・オ・ドール』は恐らくかなりの力を有している。

俺自身は『無詠唱』もあるし詠唱時間を稼ぐことには困らない。

一方でエフィーに、カノンにおけるベルのような詠唱時間を稼ぐための盾役がつけば、エフィーも単独で動くことができるようになる。


今手に取っているのは恐らく太刀。

つまり少なくとも6体の内1体は前衛で戦えることになる。


エフィーはハーフエルフだというメカ達を起動させる条件も満たしている。


俺はもう既にサクヤとカエンの2体を再起動させているから、俺が持つよりも、エフィーが持つ方がメリットが大きいように思う。


後は、これを提案することで、エフィーに、自分がハーフエルフだという事をまた思い起こさせて辛い思いをさせないか、ということだが……


俺はとりあえずエフィーに使ってみないか、ということは除いて『六神人形シィドゥ・オ・ドール』の説明をする。


すると……


「……ご主人様、その『六神人形シィドゥ・オ・ドール』、私に使わせていただけませんか?」


とエフィー自身から提案があった。


「え!?でも、エフィー、いいのか?それだと……」

「……もう、私は迷いません。ご主人様や皆さんと一緒にいられるこの居場所を守れるのなら、私は何でも利用します。もちろん私自身の種族でさえも」

「エフィー……」

「大切な方々にだけ認めてもらえればそれでいいんです。他の有象無象にどう思われようと私の関知するところではありません。……なんて大きなことを言いましたがもちろんご主人様のものですのでお決めになるのはご主人様ですが」

「……いや、エフィーの覚悟を聴いてもう決めた。『六神人形シィドゥ・オ・ドール』はエフィーに任せるよ。俺もエフィーが持っていた方がメリットが大きいと思うしな。……じゃあさっきの説明通り、魔力を流して再起動させてやってくれ。俺はその間にサクヤと後5つの武器を出しておくよ」


俺はアイテムボックスから『六神人形シィドゥ・オ・ドール』を出してエフィーに預ける。


「ありがとうございます。……これが……では、ハッ!!」


……どうやら始まったようだ。


ではこちらも……


俺はサクヤに他の5つの武器を出すように頼むも、そうすぐにはいかないとのこと。


「どういうことだ?」

「武器はMPを使って創出シマス。デスが私達メカはご主人サマ方のように MPを自然に回復スルことができまセン。なので定期的にMPは補給していただく必要が」


ああ、なるほど。

そりゃそうか。


俺の『アイテム創造』と違ってMPだけで作り出せる『武器創出ウェポンクリエイト』はかなり便利だが本当に無限に創り出せるとなるとそんなもん無敵だもんな。

何かしらの制限はかかってくるだろう。


「なるほど、いい機会だから他に何かそのスキルについてあったら言っといてくれ」

「ハイ。えーっと、『武器創出ウェポンクリエイト』ですが、私の脳内にインプットされている武器しか創り出すことはできまセン」

「それはつまり、見たことが有ったり、実際に持ったことが有ったりしないとダメで、想像や妄想から創るのは出来ないってことか?」

「ハイ、その通りデス。私が創れる殆どの武器は私を作る際に私の中にデータでインプットされているようデスが」


なるほどな……

ということは今サクヤが創れる武器は製作者の知識頼りってことで、俺がゲームや漫画で知ってるからって聖剣エクスカリバーやデュランダルをどんなものか説明して創ってもらうのはできないってことになるな。


まあ俺の『アイテム創造』よりかは遥かに使い勝手がいい分そこら辺は甘受せねばなるまい。



さて、じゃあまずは武器を創るためにも、MPを供給してやらんとな。


MPが切れたら止まってしまうしこれからは武器を創らなくても定期的に入れてやらんと……


「ありがとう、大体分かったよ。……じゃあ、MPを供給するぞ?」

「……ソ、ソノ、まだ心の準備が」


ん?

俺がサクヤに近づくとその体が少しビクッとする。

どうしてMPを入れるのに心の準備がいるんだ?

定期的に入れないといけないんだから食事程度の認識じゃないのか?


「まあそう身構えんでも。直ぐに終わるさ。……じゃあ行くぞ?」


あんまりゆっくりしてエフィーを待たせすぎるのもマズイしな。


俺は早々に済ませるためにも、サクヤへのMP供給を始める。


「あ!そんな、ご主人サマ、大胆……」



俺がMPを供給するにつれ、サクヤはその身を激しくよじらせる。

その様子はどこか色っぽく、頬も紅潮しているように見える。


「あ~ん!いや、そこは、あん!!」


……ヤバい、サクヤがエロい声しか出さない。



マジか!?

MP供給してるだけだよ!?


何でこうなんだよ、製作者作り方絶対おかしいって!

変なところで凝るんじゃねえよ!このクソ野郎!!


ああ、くそっ、その情熱をもっと違うところに活かせなかったのか甚だ疑問だ。


これは色んな意味でマズイな……


サクヤの異様な変化に気付いた俺はその後『古魔法』を調整して緩やかに供給できるようにした。


供給が終わった後サクヤが、


「……もっと、激シクして頂いても……イ、イエ、何でもありまセン!」


と言って胸に手を当てながら深呼吸していた。


MP供給すんのに激しくも何も無いはずなんだが……


どうしてMP送るだけでこんなことに……




「ご主人様、成功しました。『六神人形シィドゥ・オ・ドール』は全体再起動しましたよ……ってどうしてサクヤさんはそんな息遣い荒く上気した顔を?」


……そこはツッコまんでくれ、エフィー。


「さあ、俺にもよく分からん……こっちも武器は創り出せたぞ。一人ずつ持たせてやれ」

「?……はい、わかりました」



その後再起動した『六神人形シィドゥ・オ・ドール』一体ずつに創りだした武器を持たせてやる。


紅蓮の瞳とロングな髪をした子には巨大な斧を。

……これ斧じゃなくて太刀や剣とかだったら灼眼炎髪の女の子と区別つかなくなるな。


藍色の女の子は青い宝石が取り付けられている杖を。

この子はゆったりしていてお姉さんタイプかな。


エルフのように長い金髪をした女の子は弓矢と短刀を。

こっちもきれいな顔をしているがどっちかというと俺はシーナの方が好みかな?


俺が最初に手に取った太刀は緑色のショートヘアーに鉢巻をした女の子が持つことに。

一目見て感じたのは体育会系だな、うん。スパッツ履いてるし……


黒装束に身を包んだTHE忍者と言った女の子には大き目の苦無を2本。

くノ一か……何だかその響きだけでちょっとエロいな。


最後の白を基調とした髪の女の子はオーソドックスに剣と盾。

この子だけあんまり捉えどころがないな。可愛くない訳じゃないんだが……どちらかと言うと無個性。


6体全員が武器を装備したところを見ると……ものすごい絵力がある。

味方にこんな子達がいるととても頼もしいな。


「よし、じゃあとりあえずその6体はエフィーに任せる。頼んだぞ」

「はい、お任せ下さい」


エフィーはそう言って6体を引き連れて戻って行った。


さて、俺はどうしよう……


ん?


またまたサクヤが出したであろう武器に目がいく。


幾つも同じ物があり、それを一つ手に取って俺は……


「ふむ、これは……」







「あれ?マスター、それ何?」


俺と、俺が持っている物に気付いたカノンが尋ねてくる。


「ああ、もしこれをうまいこと使えたら、革命でも起こせるかもしれん」

「え!?何それ、凄いじゃん!!」


俺の言葉に興奮して飛び上がるカノン。


「それにはお前の協力が不可欠だ、カノン」


真剣な眼差しで訴えかける。


「え?マ、マスター、ダメだよ、ま、まだ明るいし、こんな、皆に見つかる……」

「別に見られても一向に構わん。というより見てもらった方がいいかもしれん」

「マスターにそんな趣味が!?」


ん?趣味?

別に趣味というわけではないんだが……


「カノン、頼めるか?」

「……う、うん、私、嬉しい。マスターが私を頼ってくれて。私、マスターのために頑張るね!!」

「ああ、ありがとう。じゃあ……」

「やっぱり服は重要だよね、着たまま?それとも脱ぐ?」

「ん?いや、別にカノンはそのままでいい」

「……なるほど、やっぱりマスターは着衣のままの方が興奮してくれるんだ……」


何だかさっきからブツブツとよく分からんことを言ってるな。


「とりあえず早く試してみたい。頼めるか?」

「え!?…あ…うん。……じゃあ……」







「とりあえずスケルトンを召喚してくれ」

「うん、スケルトンを……って、へ?」

「ああ、だからスケルトンを出してくれ。俺もカノンを介して召喚はできるがカノンの方が指揮がうまいだろうからな。だから……」

「…………」

「ん?カノン?」

「……の、バカ」

「へ?今、なんて……」

「マスターのバカバカバカ!!期待しちゃったじゃない!!」

「な、何でだよ!?この火縄銃使ってスケルトン達に長篠の戦いよろしく鉄砲隊組織できないかって……」

「何よそれ、『じゅう』!?『てっぽう』!?わけわかんないよ!!」

「いやいや、お前なぁ、これ武器だぞ!?これ使って何をしようと思ってたんだよ!?」

「え?そ、それは……」

「それは?」

「……し、知らない!!もう、マスターのバカ!!」


んな理不尽な……


本当に最近の若い女の子は難しい。



その後何とかカノンのご機嫌をとり戻してスケルトンを出して指揮してもらう。


他にもマスケットなり簡単なピストルもあったが最初はこれで試してみよう。

あまり文明を飛躍させ過ぎたものを使わせてもかえって色々と不便だろう。




俺が一発カノンやスケルトン達の前で使い方を実演してみせる。

的もちなみにスケルトン。




……さーて、今回の目玉商品は、コチラ!!

どこから見ても骨骨骨。骨を体現化したかのような骨の戦士、『スケルトン』だ!!


死んでも魔力で蘇生してくれるとはなんて経済的!

洗濯機に間違って入れてくちゃくちゃになっちゃった、なんて悲しいこともこれならなくて安心!

ワーオ、これは凄い!!

これなら友達にも自慢できちゃう!

コイツがいれば、ホームパーティーでの主役はきっとあなただ!

どうだい、テレビの前の奥さん、一家に一体スケルトンを……



……スマン。

今から本物の銃を使うってなって俺も興奮しちゃってるんだよ。


さて、それじゃあっと……


俺は点火して、的のスケルトンに向けて構える。


そして……


バコッ


おぅ!?


スケルトンの首が飛んじゃった!


「え!?何それマスター、スゴイ!!」


カノンも驚いている様子。

見ていたスケルトンは当たり前だがあんまり変化はない。

ま、初めてにしては上出来か。


さて、後はスケルトン達がこれを使えるかどうかだが……

実践して見せたものの、この世界では見ない物だからな。


どうだろうなぁ……



その後、10体のスケルトン達にそれぞれ火縄銃を使えるかどうか試してみた。



30分後……



「……ダメだね、マスター。やっぱりスケルトン達に複雑な動作は無理なんだよ」


結果的に言って失敗だった。

行けると思ったんだがな……


一体も火縄銃を使いこなせるスケルトンはいなかった。

それから試しに他の簡単そうな銃も持たせて試してみたが、誰も使えなかった。


くそっ、そんなに簡単にうまくはいかないか。


「……マスター、元気出して」

「ああ、まあ、これはダメ元だったからな。また何か考えてみるよ」

「うん、じゃあ……」

「ご主人様ぁー……って、あれ?ご主人様、カノンさん、どうなさったんですか?」


カノンが何か言いかけたちょうどその時にエフィーが俺に話しかけてきた。

今はちゃんと6体を引き連れている。

……何だか物凄い貫録が出てるな、エフィーの奴。


……そうだ、エフィーなら何かいいアドバイスをくれるかも。

そう思ってエフィーに今迄試していたことを話してみる。


「ああ、それがな……」






「……結論から申しますと、試された通りスケルトンでは恐らくその『火縄銃』という武器は使えないと思います」

「ああ、やっぱりか……」


エフィーに言われるとダメ押しされたようで……

少し凹むな。


「うーん、バカにするわけではありませんが類型的にスケルトンは知性が低いモンスターです。やはり新規の武器を装備させるとなると……あっ、でも」

「ん!?何か思いついたか!?」

「えーっと、確かにスケルトンは賢くは無いですが、その上位である『ハイ・スケルトン』でしたらスケルトンと違って知性を幾らか備えている、と聞きます。ですから、『ハイ・スケルトン』でしたらもしかすると……」


おお!

流石エフィー!

我等が参謀は知性が豊富でいらっしゃる!


となると普通に今目の前にいるスケルトン達に銃を使わせることに悩むよりは聖獣達やベルの経験を生かしてスケルトンが成長しないかを探った方が効率的かもしれん。



「助かった。やっぱりエフィーは頼りになるな」

「は、はい、ありがとうございます……あ、あの」

「ん?どうした?」

「あの、私、ご主人様をお呼びしに伺ったんでした」

「あ、そうなの?何かあったのか?」

「いえ、大事ではないんですが、ご主人様のご意見を伺いたくて」

「分かった、じゃあ行くか」

「はい、お願いします」


そうしてカノンと共にエフィーについて行くことに。

人が多くなると問題も増えるな。

さて、今度はどうしたんだろう……





「お兄ちゃんと二人っきりの寝床を要求します!!」

≪我も我も!!≫

「いやいや、姉じゃ、二人が作ってしまったらどちらかはその目的を達成できないです。……ここは食堂辺りが妥当では」

「フェリアは兄さんと一緒に遊べるところが欲しいであります!」

「フェリア、アンタそんな施設あってもお兄にツンケンして絶対無駄になるでしょ。やっぱり……」

「み、皆さん落ち着いて下サイ」


俺達が寝床にしている建物に辿り着くと皆がそろって何かの議論をしているようだ。


「エフィー、これは?」

「サクヤさんがスキルで、と言うわけではありませんが、色んな建物や施設の造り方を知っているとのことで、それで皆さんがそれぞれ造りたいところを挙げているんです。ですから収拾がつかなくて」


ほう。

スゴイな、サクヤは。

何でもできちゃう。

これこそ一家に一体欲しいってもんだろ。



「う、うぅ……」


……ん?

シアは何だか議論に参加しているようには見えんな。

少し体調が悪そうにも見える。

いつもならこの場を仕切って皆をまとめていてもおかしくは無いんだが……


俺は皆が座り込んでいるのに倣ってシアの横に腰を下ろす。


「……シア、どうしたんだ?何だか調子が悪そうだが」

「あ、ご主人様……だ、大丈夫です。ただ、こういうのはご主人様のご意向を確かめずしてやるものではないと思いまして、エフィーがご主人様をお連れするまでは、と」


んー、別に嘘をついているわけではなさそうだが……

少し顔は赤い、かな。

でもまあ、シアが積極的に参加したいというような議論の内容でもないか。


「つ、造れると言っても造り方を知っているだけデス。こればかりは材料も必要になってキマスシ」

「材料ならボクがお父さんに相談してみるよ!だから……」


ふむ、議論はもう何かを造ることは前提になっているようだが……


「スマン、ちょっといいか?」

「あ、ハイ、何でしょうご主人サマ?」

「お兄ちゃん、やっぱり造るなら二人の寝床だよ!」

≪我も主殿と一緒に寝たいぞ!!≫

「はいはい、分かった分かった。で、一つ質問なんだが、サクヤが知ってるってのは例えばどんな施設・建物なんだ?それによっては造れるものと造れないものが変わってくるだろう」

「そうですね。必要になってくるものもそれで変わってきますからね、でどうです、サクヤさん?」


エフィーからも補足が出る。


「えーっと、そうですね……マズ大抵の居住用建物なら可能デス。5階建て位までは余裕かと」

≪な!?5階じゃと!?凄い、凄いぞ!≫

「姉じゃ、確かにスゴイことですが高さばかりに反応するとバカが目立つですよ?」

≪よいではないか、ファルよ、5階じゃぞ5階!?≫


まあ確かに姉の方が興奮するのも分からんでもない。

5階建を余裕と言い切るか……


「他には……そうですね、施設でしたらお風呂や地下室なんかも造れるかと」


おおう!

どうしてその二つを対置させたのかは分からんが風呂が造れるのか、それは凄い!!

……あ!


「サクヤ、ちなみに湯を供給する部分も造れるか!?お湯自体は多分何とかなるんだが……」


水はゴウさん達からもらった『水神の青玉』なるもので、それを温めるのは……

まだ試してないが『カエン』が使えないかな……

百獣の王をそんなことに使うのはどうかとも思うが、使えるものは使わないとね。

まあ、まだ使えるとは限らないけど。


「ハイ、大丈夫デス。お湯自体を何とかできれば施設は何とかなるかと」


おおー!!

お風呂設置が現実的になってきたぞ!!

この孤島で暮らすことが長くなりそうだからな、風呂があった方がいいに決まっている。




お風呂以外にもサクヤは色んな施設を挙げて行く。


スゴイな、かなりの数を造れるようだ。

やっぱりデータで記憶できるってのが強みだな。


「後は……そうデスね……さっきの地下室から派生シテ、『お仕置き部屋』なんてものも造れマスヨ?まあこれは流石に必要性が無いかな、と……」


何じゃそりゃ。

SM好きでもない限りこの世界でそんなもん役に立つのか?

サクヤの言う通り誰が……



「造りましょう!!是非!!」



……え!?

嘘っ、シア!?


他の皆もビックリしてるよ!?

……あーっと、エフィーだけは何だか考え込んでいるが。


どうしたんだろう、さっきまでは様子もあまり良く無かったし我関せずを貫いていたのに……


「えーっと、シア、どうして『お仕置き部屋』なんてものを……」

「ご主人様、シアさんのご提案ももっともかと。これは私からご説明を」


さっきまで顎に手をあてて考え込む素振りを見せていたのに、エフィーがそんなことを。


……何だか嫌な予感がする。


このパターンは……


「これから先、騎士団と戦闘することは避け得ないでしょう。相手は組織として動いています。一方で私達は少数精鋭です。情報収集力にはやはり大きな差が出てしまいます。そんな時、相手の騎士を掴まえて拷問する専門の場があれば相手から聴き出せる情報もまた多くなるかと」

「そ、そうです、その通りです、ご主人様、やはり『お仕置き部屋』は必要です!!是非とも」


……ん?

意外と内容は普通だな。


シアの焦りようが少し気になるが……


今回はコンビで動いているわけでは無いのか?


うーん、それなら、エフィーの言う事にも理解はできるが……


「まあ今すぐってわけではないだろう?造るにしても優先順位は下げても構わないか?」

「まあそうですね、今すぐに必要というわけでは無いでしょうから、お風呂を建築してからでも遅くは無いかと」

「え、え!?」

「シア、そんなに急務なのか?その『お仕置き部屋』は」

「……い、いえ、造っていただけるのでしたら、それで」


シアもそれで納得してくれた。

少し残念そうにはしていたけれど、まあ造るには造るんだし、それで勘弁してもらおう。

お仕置き部屋なんて造っても直ぐに役立つかどうか分からない。一方で、風呂は入って皆が気持ちいいものだ。


シア自身も風呂を造ることには賛成してくれたし、まあそれで良しとしようじゃないか。






その後、再び聖獣達やシア達自身、更にスケルトンのレベル上げをするために天使の里付近のメカを倒そうという方向に。

倒せば、それを天使達が必要とする機械を創るための材料にもなるし一石二鳥だ。


……機械をただの道具のようにしていて気が引けなくもない。


だがそもそも俺達人間は自分達の欲求を満たすために動物園なり水族館、もしくはペットなんかの形で動物たちを束縛している。


食べ物にすらしているんだから、真に彼らとの共存を目指すのならそれら全てを排斥しなければ達成できない。


それらに目を背け形だけ可哀想だ、とか彼等にも権利を、とか謳う奴等はただの偽善だ。


結局は誰もが価値判断をしてある程度は他の生き物を支配することを許容しているんだ。

だからこんなところで良い人ぶるなんてことはしない。

それが機械であっても。


……だから有りがたく利用させてもらうよ、製作者。



メンバーはシア、エフィー、カノン、聖獣3体。


まだ聖獣達は幼児体型で、リンの雷が有ると言っても心配する要素はあるが、シアの魔法剣を雷属性にすれば大丈夫だろう。


レンはもう『守護天使ガーディアン』を持っているんだから連れて行けば、とも思ったが、レンはまだ俺の仲間として顔が割れていない。

サクヤも別に直ぐにお風呂の建築に取り掛かるという事でもないので二人には外の情報収集を頼むことにした。


サクヤはどこからどう見ても人と変わりないしそもそも機械と言う概念を知っていなければ疑われすらしないだろう。

レンにはちゃんと羽を隠すよう言ってある。


この二人の能力なら大丈夫……だろう。


一つだけ心配事があるとしたらサクヤのドジだが……ああ、ダメだ。

考え出したら本当に心配になってきた。

一応カエンもつけようかな?



皆に色々任せてその間俺はのんびりと言うわけではもちろん無い。


次は北のワープポイント。

今回のお供はリゼル、クレイ、それにベル。


戦力的には申し分ないが……

他の面ではかなり心配になる面子だな。


……大丈夫か、これで?


「……クレイ、カイトと行くー」

「ああ、そうだな、頼むぞ、クレイ」

「……うー、分かったー」

「主殿、我も、我もいるぞ!」

「分かった分かった。リゼルも頼むな」

≪はい。お任せください、です≫

「あ!!ファル、それは我が答えようとしたのに……」

≪こういうものは早い者勝ちと相場が決まっているです≫

「ズルいぞファルよ、我も……」

「ほら、しゃべってないで。……そろそろ行くぞ?」



リゼルに声をかけてから俺はワープの光に足を進める。

さて、今度はどこに繋がっているのか……



聖獣3体が人化しました。

後『六神人形シィドゥ・オ・ドール』はエフィーにお願いすることに。

クレイの呼び名は一周回ってやっぱりカイトが一番しっくりきますかね。

『にぃにぃ』とか以前ご感想でいただいた『お兄ちゃん』も個人的にはくるものがあるんですがね。

優柔不断ですいません。


一気にキャラが増えたかと思いますがそもそも『六神人形シィドゥ・オ・ドール』はエフィーにお任せしますからサブに、とすら考えていません。

ただ単に周りに女の子が増えれば、位の気持ちです。

どういう風に彼女達とエフィーとの戦闘スタイルが確立するかは4章の終わりまでには分かるかと思います。


聖獣3体はどうでしょうね……

ユーリについては彼女の本質をまだ全く描けていないと思っていますのでそこの辺りはもう少し先で。


後スケルトン鉄砲隊の組織は今回は無理でしたね。

何でもかんでもうまく行ったらご都合主義との区別が全くつかなくなりますし、人生こういうことも……って普通に生きてたらこんな経験は無いでしょうが。


お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが第4章は概して3部構成、つまりは東、北、西のワープ地点を調べることを主眼としています。


東だけで今何かしら推測を立てることは困難かと思いますが、北、西と行くと色々と考えることもできるようになってくるかと思います。


さて、北のワープ先には何が……

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