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天使の住む里って……ここが? 

少し間が空いてしまいましたね。

申し訳ありません。


ちょっとおさらいでもしますか。


~第4章のこれまでのあらすじ~

主人公達、有事に備えて仲間、殊奴隷を増やそうという結論に

主人公、リゼル、ベルで孤島にあったワープ(東)の調査へと向かうと、自分が天使だという一人の少女を助けることに

お花摘みの際、他にも転生した人がいた可能性を見つけ、その者が作ったサクヤをお供に加える

少女、レンの住む里にまで来た(←今ここ)



「ここが……ラクナ・アンジェ、か?」


俺は誰に尋ねるでもなくただただ目の前の光景に対して思った言葉を漏らす。

『天使の住むところ』というには別に不足があるわけではない。

里は、古代遺跡の外にそのまま文明の発達した民族が居を構えたような造りになっている。

むしろ思っていた以上に荘厳で、神聖で、近寄りがたい雰囲気なんかが感じられる。


想像以上と言えば確かに想像以上ではある。

だが、特段俺が自分の目を疑いたくなる位特異な光景かと聞かれたら別にそうではない。


なら、俺が何に対して驚愕しているのか。

それは……


「お兄ちゃん、ようこそ、天使の住む里、ラクナ・アンジェへ!」


レンが目いっぱい手を広げて元気よく俺達を歓迎してくれる。


「おおぅ!?ここがラクナ・アンジェかえ!?」

≪確かに、姉じゃが驚く気持ちも分からなくはない、です≫

『ああ、何とも言えん雰囲気だな。身がしまるというか、何と言うか……』

「こ、ここは、ス、スゴイところデスね、ご主人サマ!!」


リゼル姉妹とベル、サクヤは里を見てやはり驚いているようだ。

だが、コイツ等が驚いている理由は恐らく俺とは全く違う。

雰囲気や里の建物の構造なんかが中々見慣れないことだったからコイツ等は今驚いているんだ。


まあその気持ちも分からんではない。

分からんではないんだが、どうしてこんなにも俺達の間で驚くべきものの認識に食い違いが生じてしまって……


……いや、なんとなく俺だって心の中ではもう気付いている。

ただそれを理解してしまったら、認識してしまったら……

そう思うととても怖かった。

俺の中で何かが壊れてしまうんじゃないか。

何かが狂ってしまうんじゃないか。

自分を見失うことの怖さを知っている俺としてはどうしても分かりたくなかったんだ。



もう、俺は……



「……お兄ちゃん、どう?見た感想は?」


レンが俺に外から見た里の感想を求めて来る。

その顔は期待を含んだ、その中にはどこか少し不安を感じさせる表情が窺えた。


「……里自体の外観は別におかしいとは全然思わない」

「そう!?良かったぁ~、お兄ちゃんに気に入ってもらえて!!やっぱりお兄ちゃんと今後暮らしていくところだからどうせなら気に入ってもらったうえで一緒に暮らしたいもんね!!」


レンは俺の言葉を自分の都合のいい方いい方へと組み替えて受け取りやがる。

……一々訂正していくのも面倒だし、それになにより今論ずべきところはそこじゃない。


「……レン、ここは、『天使の住む里』、なんだよな?」

「え?うん、そうだけど……もう、お兄ちゃん、それは今言ったよ!最愛の妹の言葉を聞き逃すなんて、酷いよ!!それに今も見えるでしょ!?天使が何人も歩いているところだって。全く、お兄ちゃんは……」


レンは膨れて俺をポコポコと叩いてくる。

抗議の意を示したいのだろう、それ自体は痛くも無いし可愛らしいものであるが今はそれどころではない。


「主殿、どうしたのじゃ?さっきから難しい顔ばっかりしておるぞ?」


リゼルが俺の顔を横から覗き込んでくる。

それと同時に長い髪がフワッと宙を舞い、女性特有のいい香りが鼻をかすめる。

……こんな時でもなければいつもとは違ったリゼルのこのような仕草にドキッとしてしまったのかもしれない。


俺は自分を心配そうに見つめている女の子をまじまじと見つめる。


「な、なんじゃ!?主殿、そんなに情熱的な目で我を見んでくれ!!」


リゼルはその顔を瞬時にリンゴのように赤く染めて俺から顔を逸らしてしまう。


≪あ、姉じゃ……もう、折角主様が私達を見て下さっていたのに。姉じゃはここぞと言うとき意気地が無い、です≫

「え、ええい、うるさいうるさい!!あんな男前な顔をして我を見る主殿が悪いんじゃ!!我が悪いわけじゃないわ!!」


俺はじっと見つめていたリゼルからその視線を里の中の方へと戻す。

そうして、中を改めてみた後……ついに、今回の核心に、触れることに……

いや、やっぱりダメだ!!

そこには触れてはいけないんだ!!

触れてしまったら、もう、後戻りは……



『それにしても、ここの天使と言うものは何だか見たことが有るような無いような……』

≪え?そうですか……私はあまり見覚えが……≫


くそっ、ベルの奴め!!

お前が踏み込んでしまったから、俺ももう、触れずには……

そうして俺は……たった一つの真実に辿り着くべく、意を決してこの話を切り出す。




「……リゼル、あれ等の天使は皆お前の親戚か何かか?」

「は?何を言うておるのじゃ、主殿は。我があんな筋骨隆々で顔もいかつく人とは到底思えないような天使と親戚だ、等と……ああ!我も種族は一応天竜族じゃからな!!そこで誤解してしもうたんじゃろう。天竜族と言っても我とファルは『竜人』じゃ!『天使』とは違うぞ、主殿。これからは、間違えんで欲しいものじゃ……」

≪まあ主様が間違われることも分かる、です。やはり種族の名前で同族だと間違われることも少なくないですから。ただやはりあの独特の体型・顔つきの人々と私達とでは根本的に異なるところが……≫

『カイト殿、あんまり女性に対してそういうことで間違えるものではないぞ?女性はそういうことを気にするものだからな。これからは覚えておいた方が……』












ふざけんな、ちきしょーーーーー!!身体つき融合する前の元のお前等そっくりだろうが、あの天使共!!

何で俺だけなの!?俺だけおかしい子扱いなの!?

ベル、お前だってさっき見覚えがどうとか言ってたじゃねえか!!

何で一瞬のうちに忘れんだよ!!

あれか!?お前は都合の悪いことは直ぐに「記憶にございません」って言うどこかの政治家か何かか!?


しかも姉妹そろってとぼけたことをぬかしやがる!!

お前等今まで自分達の姿お互いに見てきたんじゃねえのかよ!?



ああ、くそっ、ここでもか!

ここでも俺はこの呪縛に苦しめられるのか!!



俺は運命の悪戯に辟易しつつも件の天使たちに目をやる。

数人の天使たちがこちらをチラチラ見てはこそこそと何か話している。

その仕草は俺達と何も変わりない普通の人間のものだ。

確かに知らない人間を見かけたら不気味がったり不思議に思ったりしてそうしてしまうということも分からんでもないんだが……


体が本当にもう同じ人間のものと思えない。

……恐らく彼らの半分はやさしさではなく筋肉でできているんだろう。

翼・羽なんかもやはり天使と言うだけあってキチンと背中に生えているのだが……

俺のイメージする純白で、広げたら美しいなんて感嘆が漏れるような、そんなものではない。

色と大きさこそ違うもののその翼はカノンの背中にあるものや、ワイバーンが体に生やしているものと殆ど大差ない。


そこから彼等が天使だと想像することは恐らく俺の元いた世界の人間ではできないだろう。

それ位に彼等の体格・特徴が俺の知る天使とはかけ離れていた。

逆に嫌と言うほど目に焼き付いている融合前のリゼルの姿とは顔を除いては本当に親戚かその類かと思える程良く似ていた。


顔では無く身体つき等で親戚と言うのもおかしな話ではあるのだが……


なら顔はどんなものなのかと言うとこれはこれでまた違う意味でトラウマになりそうだ。

元のリゼルのあれは人間の顔がモンスターや他の生き物に似ている、というものだった。

いうなれば彼等は逆にモンスターや他の生き物の顔が人間に似ているのだ。

……厳密にどう違うかは言葉では表現できない、いや、できてもしたくない。


あえて、本当にあえて例えるならそう、『類人猿』と『猿人類』のような違い……ゴメン、俺もこれじゃあ全然分からんわ。


兎に角大体の天使達の顔は生き物、多いのは犬やキツネかな?をモチーフにしているものが多い。



……ふーむ、まだ里の天使全員を見たわけでは無いが、こうなってくるとレンが本当の意味で天使に思えてくる。

今見た天使の中で容姿の上では一番天使に近い。

実際レンは可愛らしい容姿をしているし、その少しまだ残されている幼さも天使らしさを……


「お兄ちゃん!!また何か失礼なこと考えなかった!?もう、そんなことばっかりだと毎朝抱き着いてキスもして起こしてあげないんだから。フン!!」


……何故だろう、また思考を読まれてしまった。

しかも何か意味の分からないことを告げられたような気が……


まだ出会って本当に間もないのだが、うーむ……

……っと、俺達が里の入り口辺りでたむろしていると、数人の天使が近寄ってきた。



「あれ?『堕天使』レンがいる~!」

「あ、ほんとだ!『堕天使』レンだ!!」

「何でアンタがこんなところいんのよ。『堕天使』がうつるじゃない、さっさと家に戻って生まれたことでも後悔してなさいよ」

「うわ、サッちゃん、それは流石にきっついわー……いややっぱりそれぐらいがちょうどいいか!!」

「うんうん!!やっぱり『堕天使』レンにはそれ位がいいんじゃん!!」

「「「ハハハ」」」


そんなことをバカみたいに口を開けて笑いながらレンに言い放つ天使達。

顔や体格からは判断できないが恐らく声や話し方なんかからすると若い女の子と言ったところか。


一応鑑定してみる。


…………うん。

一応性別は女性らしい。

もちろんしっかり顔・体は人間のそれとは思えないものだが。


こんな頭の悪そうなのが天使だなんて、ただでさえ一度外見で裏切られているのに、また裏切られた気分になる。

天使の全員が全員こうでないことを切に祈るばかりだ。



それはさて置き。

コイツ等がレンに言っている『堕天使』って言うのが、レンが気にしていたことと一致すると見ていいと思う。

今もコイツ等にそれを言われてレンはとても辛そうにしながらも無理に笑顔を作ってはアイツ等に応えてやっている。


「え、えへへ、そ、そうだよね、ボクなんかがうろうろと外を出歩いたら皆の邪魔になるよね。……ゴメン、直ぐに家に戻るから」

「なんだ、分かってんなら外に出てくんなよ!アンタが外に出ていたらこっちが迷惑すんのよ!」

「そうだそうだ!!里で始まって以来の異端め!!」

「全くよ!!アンタみたいな『守護天使ガーディアン』でも何でも無い奴が私達と一緒の天使なんて、本当に吐き気がするわ!」

「全くよ、こんな奴が里で一番強いなんて、きっと何かの間違いよ」

「本当におかしなことよね~!」

「……ゴメンね、ボクが……悪いんだ」


レンは俯いて、謝り続ける。



コイツ等の言ったこと、それからレンやコイツ等を鑑定した結果分かったのは……レン以外の天使達は皆職業とスキルに『守護天使ガーディアン』というものがあった。


これらから判断すると、十中八九この里の当たり前は職業が守護天使ガーディアンであって、スキルに『守護天使ガーディアン』があること。


それらがそろって初めて天使だとするならば、それの無いレンは天使ではない……そういうことか。

実際の意味での『堕天使』はそうではないだろうが、レンを揶揄する言葉として使われているのかもしれない。


レンのようにかわいい子が、その一事を持ってこんな仕打ちを受けるなんて……

何だかどこかで聞いたことのあるような話だと思ったら……レンはどうやらシアと似た境遇にいるみたいだ。

シアがこの場にいないのは……ある意味幸いだったのかもしれないし、逆に不運なことだったのかもしれない。


もうシアは里のことについては一区切りついて一回りも二回りも成長したんだ、そんなシアならレンのことを想って色々と頑張ってくれたかも……そう考えるのならシアがいないことをしまったな、と思う。


とは言えシアもそれで辛い目にあったんだから、レンを見れば過去の自分を思い出してしまう、また辛い思いをさせてしまう……と言う風に考えるのならシアがいないのは良かった、ということになるだろう。


要するにシアに対してどう思っているかだ。


そりゃシアには辛い思いをして欲しくはないから、過保護になって後者の考え方をすることもできる。が、しかし……俺は今までシアの成長する姿を一番近くで見てきたんだ。

そこに関してはもう大丈夫だと思っている。


だからシアがここにいないことはある意味では残念なことだったのかもしれない。


まあどっちにしても今ここにシアはいないんだ。

目の前のことに集中しよう。



「……レン、お前はこの里の人間で、一人だけその『守護天使ガーディアン』じゃないのか?」

「え!?お兄ちゃん……ち、違うよ!そんなはずない、ボクはちゃんとした『守護天使ガーディアン』だよ!?安心してよ、お兄ちゃん」


……レンは必死な様子で嘘を吐く。

その顔はどこか青ざめても見える。

俺には鑑定があるからそこは嘘だと直ぐに分かってしまう。

仮に鑑定が無かったとしても、これ位は分かっていただろう。


あんなどうでもよさそうな似非えせ天使共には何も言い返さないのに、俺にはこんなに頑張って嘘を述べる。


少し申し訳ない気もするが、レンに、嘘をついてまでも見放されたくない存在だと思われていることに多少なりとも嬉しくなる。

本当にどうでもいい相手ならこんな蒼白な顔で嘘なんてつかないだろう。

……とは言うがこれが単なる勘違いなら自殺もんだな。


「あぁ?何言ってんのよ、アンタ!アンタはただの『堕天使』でしょうが!?アンタが『守護天使ガーディアン』名乗んのなんておこがましいにも程があるわ!!」

「まあ、アンタが私達みたいに優れた『守護天使ガーディアン』を羨んで嘘吐きたくなるのも分からなくはないわよ?でも、アンタが私達みたいな姿になるのは一生かかっても無理じゃない?」

「はは!!そりゃそうよ!こんな美しい私達と比べること自体がおかしいわよ。まあくやしかったら、アンタも『守護天使ガーディアン』になってみなさいよ!」

「え~?それこそ無理でしょ、アンタ!」

「「「ハハハ」」」



…………え?

今すぐこの耳障りな雑音を消し去ってやりたいんだが、捨て置けない会話もあったんじゃ……

もしかして、天使達のこの容姿はその『守護天使ガーディアン』と関係があって……

って嘘!?じゃあ『守護天使ガーディアン』=『この容姿』なわけ!?

レンを何とかしてやりたい、って思ってたんだがこりゃ何とかなったらマズイ!!

リゼル(化物→人間)の逆(人間→化物)になっちまうのか!?

くそっ、それだけはなんとしても阻止せねば!!



「ち、違うんだよ、お兄ちゃん!ボ、ボクは……」

「レン、お前は今のままでも十分魅力的だ!!」


俺はレンの肩を両手でガシッと掴んで真剣な目をして告げる。


「え!?お、お兄ちゃん!?い、いきなりどう……」


いきなりのことに戸惑うレンを無視して俺はまくし立てる。


「レンはスゴイんだな!里の皆とは違う、たった一人の存在なんだろ!?スゴイ個性を持ってるじゃないか!!いやー、感心したよ、あれだけ強いんだから、お前は別にこれ以上どうこうなる必要は無いじゃないか!何よりこんなに可愛いらしい上に世界に二つとない個性を持ってるんだ。本当にレンはスゴイな~!」


これで納得してくれ!!

元の姿を知ってしまった以上後で変化なんてされたら俺の精神的ダメージが計り知れない。

レンの様子は……



「……お兄、ぐすっ、ちゃん、ぐすっ」



あれ!?泣かしちゃった!?

キツイこと言った覚えないんだけど!?

……ってもしかして天使にとってはアイツ等の容姿が綺麗・可愛いっていう認識なの!?


そうだとしたら……確かにレンにとったら嫌な言葉を言ってしまった感が無くは無い……

悪いこと……したか。


「レン、そのな……」

「あり、ぐすっ、がとう、ぐすっ、お兄ちゃん、ぐすっ、あり、がとう……」


え!?『ありがとう』って言われた!!


どうしてこうなったんだ!?

さっぱりわからん……



「な、なんなのアンタ!!」

「さっきから偉そうに。見ない顔よね……さてはよそ者!?」



ああ、くそっ!

レンがまだ泣いているのに似非天使共が突っかかってきやがる。

他にも俺達を珍しがって近寄ってくる野次馬や何も知らないのに似非天使共を後押しして来る者まで現れる始末。

面倒くさいな……


「お前らなぁ、いい加減に……」




「これは一体何の騒ぎだ?」



騒ぎの外から一際大きな声が響いてきた。

あんまりストーリーが進みません。

思った以上に時間が空いたため、書き方を忘れた部分もあって、中々手間取りました。


こういうものはやっぱり継続させないと弊害が多いですね。


他の作者様は本当にスゴイですよね。

概して続けるということは難しいものです。

私も頑張らせていただきます。

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