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サクヤ、ってお前……

2つ目です。

これは申し上げていた通り来週の分になります。


来週はとても忙しくて書くことが出来そうにないので本日上げさせていただきます。


申し訳ありませんがご理解いただければと思います。

声は少し機械音がするものの、ほとんど違和感がない。

さっきまでの機械達と同じように外見はどこからどう見ても人だ。

……何であのメカメカしいドラゴンが変形したらこうなるのかは分からん。

クレイの時とは違って変形シーンはバッチリ見ているのだが途中からはもう何が何だか……


『サクヤ』と名乗ったこの女性は白い巫女装束のような服に白いガントレット、白いミニスカート、白いニーハイソックスに白いメタルブーツ、髪には白いリボンと衣装を全て白で固めている。もちろん服やスカートに黒や赤、黄色など、他の色も所々見受けられるが、基調としているのは間違いなく白だ。

……そこから推測すると下着なんかも……いや、そこはいいか。

だったら髪の毛もそうしろよ、とは思うがそこは普通にどこにでもありそうな栗色をした綺麗な長い髪だ。


体型は背があるからか、かなり痩せ形に見える。

一方で女性の象徴的な物はそれに反比例して……ん、んん、まあそこもいいか。

顔立ちは整っていて間違いなく美人の部類に入るのだが何より驚かされるのはその表情だろう。


さっきまで見てきた機械共は確かに見た目も動きもそのまんま人間だったが、どこか人間らしさに欠けるところがあるとは感覚的に思っていた。

サクヤを見て今ようやくその正体に気づいたが、やはり表情に乏しかったのだろう。

だが今目の前にいるサクヤはニッコリと微笑んで俺を見ている。

その笑顔はどこも不自然さは無く、顔が真正面に来たとしても人間のそれだと思ってしまうだろう。


透き通った水色の瞳、キリッとした眉毛。


名前もそうだが、声、顔や衣装等全体的に見てハッキリとしたことがある。




……これを作ったのは恐らく『日本人』だ。

それか日本に相当の興味・関心が有る者。


そこからまた導き出せる推論が1つ。


……俺以外にも『この世界への転生者』がいる。


もしかしたら、とこの世界に転生した時可能性の一つとして考えてはいたが……



「わぁー!!凄い、凄いよ!お兄ちゃん、ドラゴンが綺麗な女の人に変形したよ!!しかもドラゴンの時は着てなかった服まで着てる!!」

「ほんとじゃ!!凄いぞ、主殿!!さっきはあんな可愛らしい服もヒラヒラしたズボンも着ておらんかったはずじゃ!?」

「やめろ、お前等!!そこはツッコむんじゃねえ!!」


レンとリゼルは興奮して二人で騒いでいる。



……恐らく製作者がそういう風に作ったんだろう。

とすると、あの白尽くしの衣装もそいつの趣味か。

……まあ、悪い趣味じゃ……ねえな。


サクヤは少し大人びた雰囲気があるから、ああいう可愛らしい衣装を着せてやると美人の中にも幾らか可愛さが出てくる。

そう言った意味では短めの袖やスカートなんかも可愛いんじゃないのかな?

また白巫女が清楚な感じを醸し出して不潔だという反論を完全に抑え込んでいる。

更にはガントレットやメタリックなブーツを履かせることでカッコよさまで兼ね備えている。


……相当凝って作りやがったな。



それにしてもリゼルもレンもサクヤの登場に全く動揺してないな。

この世界ではロボットの変形なんて想像すらできないものだろうに。

……むしろ興奮しているな。

精神的にまだまだ未成熟なのかも……


「むむ!?今何か失礼なことを想像しなかったか、主殿!?我は一応主殿より年は上じゃ!!……そ、その、じゃな、主殿を人生においても、ベ、ベベ、ベッドの上でもリードする関係を……(ゴニョゴニョ)」

「お兄ちゃん、ボクはお兄ちゃんの妹として悲しいよ!!グスン……心の底から愛し合っている仲なのに、まだボクを大人の女として認めてくれないの!?あの日の夜のことは何だったのさ!?単なる遊びだったの!?ボクの心を弄んだの!?」

「お前等俺の心の中を読むな。それぞれ面倒くさい反応すんじゃねえ」

≪……主様、お疲れ様、です≫

『……確かにこれは面倒くさいな』



「……ご主人サマ。ご主人サマニ見て欲シイ物が」

「うぉ!?」

「ご主人、サマ?」


いきなりサクヤに話しかけられたから少しビックリした。


「いや、何でもない。分かった。見せてくれるか?」


俺が尋ねるとサクヤは少し頬を染めてからそのスカートに手をかける。

そして少しずつそれを上に……

って、え!?ちょ、ちょっと!!


「ま、待て待て待て待て!!」


俺はその手を掴んでそれから先を止める。


「……で、でも、ご主人サマは見せてくれって」

「いや、言ったけど、確かにそう言ったけどさ!」

「……お兄ちゃん、言ってくれればパンツ位ボクのを幾らでも……ハッ、まさか、その中まで!?お兄ちゃん、いつになく、大胆 (ポッ)……」

「あ、主殿!!我は、我は別にその先の事も主殿となら!!」

「お前等本当に面倒くさいな!!それにリゼル、妹の意思も確認しないで勝手なことを言うな!!」

≪主様、私も姉じゃ同様いつでもそちらの準備はできておりますが……≫

「ああ、もう、ファル、お前もか!!」


ファル、お前だけは味方だと思っていたのに!!

くそっ、ここにはブルータス以外いないのか!?


「そ、その、な、サクヤ、一回スカートちゃんと戻そう。俺は別に従者だからってそういうことを強要するような趣味はないから、な?」

「……ご主人サマニ私の下着ヲ見せることになって、と、とっても恥ずかシイ、けど、こうしないと見せれなくて……」


サクヤは顔を真っ赤にしながら答える。


「ん?それは主殿にぬしのパンツを見せたい、と言うわけでは無いのか?」


……リゼルは何一つ包むことなく率直に聴く。


サクヤはその真っ赤になった顔で一度だけ頷く。


……その通りらしい。


「じゃあ見せたいものは別ってことか。なら……」

「お兄ちゃん、いやらしい目で見ていいのは妹だけなんだからね!!他の女の人の絶対領域なんて見て興奮したらダメなんだからね!!」


何だ!?この世界にも『絶対領域』なんて言葉があんのか!?

それともそれに類する言葉が……

……いや、冷静になって考えたらそんなもんどっちでもいいわ。


「……大丈夫だ。目的が分かってるんなら興奮なんてしないさ」

「……興奮シテ、くれないんですか……」

「ん?サクヤ、何か言った……」

「じゃあお兄ちゃんは目的が分かってなかったら興奮しちゃうんだ、ボクと言う妹がいながら!!それってどういうこと!?ちゃんと説明してよ!!」

「そうじゃそうじゃ!!我も詳しい説明を要求するぞ!!」

「揚げ足をとるな!くそっ、何でお前等はそこまで面倒くさいんだ!?」



その後追及してくるリゼルとレンを黙らせて、サクヤに先を促すことに。

大丈夫、俺はもうこの程度で動揺するような軟な男ではない。

幾つも修羅場をくぐってきたのだ。

この程度……ってえ!?やっぱり、し、白……おい製作者!!



俺が製作者の意図を図り損ねている間に、サクヤの体が突如として輝きだし、目からいきなり光が飛び出す。

そして壁にはプロジェクターを使った時の様に映像が映し出される。



え!?うそっ!?

何でスカートを捲り上げると映像映し出されんの!?

どういう発動条件してんだよ!!

製作者頭おかしいんじゃねえのか!?



……ビビ……ビビ……ブオン……



この空間の壁に大きく映し出されたのは、一人の人だった。

フードを深く被っていて性別や年齢等誰かを特定する情報は全くない。


そいつが話し始める。


『……この映像を見ているということは、一度活動を停止したサクヤを誰かが再起動させたのだろう。もしかしたら違うのかもしれないが、俺の都合上そうだとみなして話を進めさせてもらう』


声はボイスチェンジャーなんかは使われていなかったので、それが男の声だという事が分かった。

年は結構いっている、かな。


『……ハーフエルフとして俺は生まれ育った。新しい環境での新しい生活。俺はどんなワクワクした出来事が自分を待っているのかと年甲斐も無く興奮が止まらなかった。期待に胸を膨らませて俺は新たな世界に足を踏み外した』


……いきなり自分の身の上話か。

端々に転生者だと窺わせる言葉が散りばめられているかと思えば最後の『踏み外した』って何だよ。『踏み入れた』じゃないのか?

……コイツ、ちょっと抜けてるのか?


『……そして俺は失望させられた。迫害を受ける定番のハーフエルフでも、俺が直ぐに何とかしてやろう、差別なんて俺が無くしてやる、そう意気込んで臨んだこの世界はあまりにも不条理だった。どこに行っても人間は人間だった。同じ屑だった。こんなことならまだ魔族にでもなって全てを破壊し尽くせた方が良かったのかもしれない……多分』


結構重い話なのにどうにも感情移入できん。

最後何なんだ!?


……リゼル達には何のことか分からないだろう。

ただハーフエルフの辛い過去を語っているようにしか見えていないのではないだろうか。


『……もう、何をするのも疲れた。街に行くのに自分の素性を隠してこそこそとしないといけないのも、ハーフエルフだと分かった途端襲ってきた奴等に命乞いするのも、宿屋で家畜同前の扱いをされるのも……もう、何もかもが疲れた。……あっちで犯罪者として刑務所にいた時の方がまだマシだった……』


おい!一応あっちでも犯罪者だったのかよ!!

どっちにしたって素性こそこそ隠さないといけないことは変わらないじゃねえか!

何なんだコイツは……


『……俺は何もできずに死んでいく。そう思って日々のつまらない時間を浪費して行った。……そんなある日、元の俺の研究成果をこの世界でとても有意義に発揮できる方法が見つかって、いや、見つけて、違うな……見つけ、見つけられ、見つけたて……見つけられたのだった』


……うん、コイツ、ただ単に言葉の使い方が下手なんだな。


『俺は残り少ない人生をそれに費やすことに決めた。幸い必要な物はモンスターや盗賊を倒せば手に入ったし、制作に関してはどこだろうとできる自信があった。……そうして俺はついに完成させた。……機械人形メカ・ドールを』


……ふむ、ここは普通だな。

なるほど、コイツがやはり製作者らしい。


『ヒューマン型が完成して調子に乗った俺はすぐさまモンスター型のマシンも作った。……そうしてどんどんマシンの数を増やし、戦力も日増しに拡大していった。そして六神人形シィドゥ・オ・ドールまでもを作り上げた。これで、この腐った世界に、俺にあんなことやこんなことをしてくれた世界に復讐できる……そう思っていたんだが……』


やっぱり言葉の使い方に少々危うい所が見受けられるな。

『調子に』じゃなくて恐らく『勢いに』と言いたかったんだろう。

……それにしても何だかカッコいい単語が出てきた。

六神人形シィドゥ・オ・ドール』だって!!

名前からして何だか強そうだ。

……中二病臭いけど。



『……マシンを作り始めるのが遅すぎたんだ。普通の人間よりも寿命の長いハーフエルフである俺でも、もう年だった。この有り余る憎しみをぶつけたいのに体が言う事を聞かない。俺の復讐は完成一歩手前で終わりを告げるのか?世界は俺にあること無いことしやがったのに、俺はそれに対してやり返せずに終わるのか?……そこで俺は恐らく同じように世界に対しての憎き思いを募らせているだろう後世の同族達に俺の思いを託すことにした。この“サクヤ”は六神人形シィドゥ・オ・ドールの上を行く、俺の最高傑作だ。少しでも同族の皆の役に立ってくれれば……これが全部終わったら、俺、アイツに会いに行くんだ』



な!?

サクヤはその強そうな6体の上位に当たるのか!?

……何だか物凄い奴と契約してしまった……って、あれ?

俺は別にハーフエルフじゃないんだけどこれ貰っちゃっていいのかな?

ハーフエルフの復讐に手を貸すつもりなんて全くないんだが。


……それにしても最後またいらないものを。

こいつは本当に……


『……気づいているかもしれないが、マシン達は自分を再起動させてくれた者に忠誠を誓うようにできている。同性であろうと異性であろうと、絶対だ。もしそれが異性だったら……まあそれは自分で確かめてくれ』



何だか意味深だな。

まあ反抗されるよりはやりやすいが……


「マシン達の意思は?」みたいな疑問は今はやめておこう。

そういうものは今考えても答えが出るものじゃないからな。


『……マシン達は我等同族にしか再起動させれないようにできている。じゃないと意味が無いからな。もちろんマシン達を倒して剥ぎ取り……なんてことから技術が漏れないようマシン達の硬度はとても頑丈にできている。俺の生きている時代では傷一つつけることはできなかったから安心してくれ。……まあ技術が進んで俺の知らない方法で、ということはあり得るかもしれんが』


……え!?

ハーフエルフしか再起動できないのか!?

サクヤは俺が起動させたんだぞ!?

俺って実はハーフエルフだったの!?


『……もし、これを聞いてくれているのが、アイツ以外での俺の“同類”なら、サクヤを起動させることができたことに驚いているかもしれない』


……なるほど。

そこまで想定していたのか。

こんなマシンを作れるだけあって基本頭は賢い方なんだろう。

理系の研究一筋な人だったのかな?

それにしてもまた『アイツ』って言ってる。

さっきのはただのギャグじゃなかったのか?


『俺も最後までこれを再起動させられるのはハーフエルフのみに設定しようとしていたんだが……自分でも良く分からない。何で同類にも再起動させられるようにしたのか……もしかしたら俺の最後の良心がそうさせたのかもしれないが……まあ今となってはアイツを守れた、それだけで良かったのかもしれない。本当に、自分でもそこら辺はもう良くわからないが』


「主殿が……こやつと同類!?」

「お兄ちゃん……」


二人が俺を見て驚いている。

……そりゃそうか。


「大丈夫じゃ、主殿!!主殿は主殿じゃ!!あ奴とは違う!!」

「そうだよ!!お兄ちゃんはとっても優しいボクのお兄ちゃんだもん!!」

≪主様、お気になさらず。私達はどんなことがあっても主様について行く、です≫

『ああ、カイト殿。あまり気にするな』


別に俺はそこまで気にしてないんだが……


「……ありがとうな、お前達」


俺は皆の気遣いに素直に感謝することにした。


『まあその場合はどうするかは自分で決めてくれ。……一つアドバイスをしておくと、この世界ではマシン自体や、そいつ等が使うような銃や機械みたいな破壊兵器は存在しない。そこにこいつ等マシンが現れるんだ……戦力になるということは間違いない。俺が保証する。とは言っても銃器類を使える位戦闘力があるのはサクヤに六神人形シィドゥ・オ・ドール、後はその一つ下位に位置するマシンたちだけだがな……それで、話を進めるが……』



その後はサクヤ達マシンについての説明が続いた。

製作者は死ぬ前には魔族側とやり取りがあったらしくそこから魔族側の者に少し配慮して『闇耐性』のスキルはつけなかった。


六神人形シィドゥ・オ・ドールはサクヤの下位に位置するものの、マシンの中でその能力は6体全てが最高クラス。

サクヤ以外で倒せるマシンは恐らく無い。

それらがどこにいるかは話さなかった。


マシンには全部で5つのランクがある。

サクヤがそのトップ。

六神人形シィドゥ・オ・ドールはその次のランク4。

銃器類を使えるマシンはランク3以上ということだからサクヤは当然ながら使え、さっき契約したカエンも口から炎をはいていたからランク3なんだろう。


銃器が使えないランク1と2でもこの世界では十分に通用するだろう。

あの硬さと身体能力はかなりのものだったからな。


サクヤはモンスター型とヒューマン型の両方を兼ね備えたマシンらしい。

六神人形シィドゥ・オ・ドールもそうらしいが実物を見ていないのでそこは良くわからない。


そもそも動かないサクヤに魔力を込めて動かそうという発想がこの世界の殆どの人間にはできないだろう。

だから製作者がハーフエルフのためにコイツ等を残したと言っても心のどこかでは自分の作品を復讐に用いられるよりかは俺達転生者に使ってほしかったのかもしれない。

そこは製作者の言う『アイツ』と何か関係しているのかも……


どうやって転生者とこの世界の住人を判別したのかは製作者が何も話さなかったので一概に判断することはできない。

俺が使った雷魔法はもしかしたらその判別方法の一つだったのかもしれないし、そうではなく魔力や血液等DNA鑑定みたいに正確に判断できる方法が製作者にはあったのかもしれない。

……最早知りようのないことだが。


製作者としては複数人のハーフエルフがそれぞれ何体かずつのマシンを駆使する、ということを想定していたので俺が一人で何十何百のマシンを用いる、契約することは恐らく出来ないらしい。

一人で限界数以上のマシンを再起動させると他のマシン達にそいつ用のロックみたいなものがかかるんだと。

つまりマシンを仲間として率いる場合は慎重に選ぶ必要があるのだろう。


まあそう考えると中々考えられている造りだと思う。

ハーフエルフ全体を巻き込んで復讐することができるような設計だな。

より多くの戦力、つまりマシンたちを取り込むためにはそれに応じてハーフエルフの数も増やさなければならない。


……ただ、ハーフエルフが虐げられている理由は恐らく今と過去とでは全く違う。

過去においてはもっと根が深い物だったのかもしれない。

ハーフエルフが復讐に奔ると考える理由も十分にあったのかもしれない……

復讐したくて燻っているハーフエルフに対して「お前が必要だ」と言ってやったらホイホイついて行ったんじゃないだろうか。



サクヤについては『デジー・フラワー』の守護者として置いておいたらしい。

透明な壁はサクヤが起動している間は消える仕掛けになっていた。

なので、サクヤが再起動した今、『デジー・フラワー』を守るものは何も無くなっていた。


なるほど……ということはレンのお父さんはサクヤが停止する前にここに来たことがあったのか。

まあ壁が透明だったからサクヤが停止してても花自体を見ることは可能だったろうが。


サクヤはマシンの中で最強に位置するので他のマシンの強制停止なる術を持っているらしい。

……ただ一つ気になることが有る。


恐らく製作者の思考過程としては、『①ハーフエルフ達、サクヤを再起動させる→②サクヤの強制停止を使って他のマシンを停止させる→③その後、再起動させ仲間をどんどん増やしていき、ハーフエルフの戦力拡大→④ハーフエルフ、世界に復讐を』という過程を辿っていたんだろうと推測する。


だが、そもそも①の時点で成り立つかどうか怪しい。

というのも、サクヤが停止していたここに来るまでに多くのマシン達と遭遇した。そしてサクヤに出会う前のハーフエルフ達には奴等を無力化する術があるのか、と思うのだ。

そこである、というのなら製作者の思惑通り進むことになるが恐らくそんなものは無いんじゃないだろうか?


とするとそもそも戦力を拡大させるために必要なサクヤを手に入れることが叶わない帰結としてマシンたちがハーフエルフ達の復讐には役立つことは無いという事になってしまう。


しかもさっきの推測からするとサクヤが停止したのはそんなに昔、過去ではない。

停止していないサクヤをどうやって再起動させるんだ?

サクヤがマシンの中で一番強いんだから、サクヤを倒して再起動させられる力があれば別にサクヤの強制停止に頼らなくてもそれまでの雑魚を実力で捻じ伏せることも可能だということになる。

労力としてはもちろん強制停止の方が楽だが……


そこのところを製作者がどう思っていたのか、というのは大いに気になるところではあるが、これもまた今はもうどうしようもない。



……ちなみにサクヤの服装……下着も全てが創作者の趣味らしい。

まあどうでもいいか。


花が高い所にあったので俺がワイバーンを召喚して採ろうとするとサクヤが制止する。


「どうした?何かマズイことでもあるのか?」

「ご主人サマ、私ニ任せて下サイ!!」

「え!?任せろって……あ!!なるほど、竜に変形して……」

「『武器創出ウェポンクリエイト』。……ソード」


サクヤがそう告げるといきなりサクヤの両手に剣が出現……いや、サクヤの言葉が正しいなら、今創り出したのか。


「対象を採取シテ来ます。予想必要本数、11本。……行きます!」


サクヤはそう言って崖の様になっているところに走っていく。


「ハ!!ハッ、ヤァ!!」


サクヤは崖を蹴っては剣を突き刺し、そこを足場にしてどんどん崖を上っていく。

剣は片手が空いたら直ぐにまた創り出す、を繰り返している。

……何だあれは?


サクヤは直ぐに頂上に到達して花を3本摘みとる。

そして……


「ハ!!」


サクヤは何の躊躇いも無く上から飛び降りる。


「あ!しま……フギャ!!」


……え!?自分で突き刺した剣に引っかかって落ちていく方向が変わっただと!?

あの高さ……って俺の上に落ちて来てる!!


アイツ、今「しまった!!」って言いかけたよね!?

何!?大和撫子風の淑女だと思ってたのに実はドジっ子だったの!?


ぬわっと!!


俺は両手を使ってサクヤを抱きとめる。

……痛ぇーー!!


両手がジンジンする。

流石にあの高さから落ちてきた人を受け止めるのはキツイ物がある。

クレイと契約したおかげでダメージはほとんどないが……


「ご、ごめんなサイ、ご、ご主人サマ!……受け止めてもらって。重かった、デスか?」


そりゃ落下してきたんだからその分重く感じたんだけど……

サクヤ単体の重さは普通の女性と恐らく変わらない。

サクヤは少し申し訳なさそうな表情の中にもなんだか嬉しそう。

……なんでだ?

それにしても良い表情するな……って変な意味じゃなくてだな、これがマシンだなんて一体誰が想像できるだろうか。


「別に大丈夫だ。それにしてもお前背の割には少し軽いんじゃないか?」

「……ソ、ソノ、ありがとうございマス。……ご主人サマニそう言ってもらって、とっても嬉シイ」

「……いつまでお兄ちゃんの腕の中にいるのかな?自分でミスッといてお兄ちゃんにお姫様のように助けてもらって……ってまさか!?狙ってやったんじゃ!!」

「全くじゃ。主殿の腕に抱かれているなんて、我でも滅多にないことじゃ。なんともうらやまけしからん!!」


二人が怖い顔をしている。


「あ!!す、すいまセン」


サクヤは慌てて俺の腕から降りる。

申し訳ないとは言いつつも少し名残惜しいそうにしている。


……これがアイツの言っていたことなのか?

再起動させた主人に忠誠を誓い、それが異性だと……

まあ今はいいか。


サクヤは花を全て俺に手渡す。


「お疲れさん。途中ハプニングもあったが……まあサクヤが凄いのは分かった。あれはスキルか?」


サクヤを褒めながら花を受け取る。


「はい!『武器創出ウェポンクリエイト』デス!私の任意の武器を任意の数だけ創り出せマス!!」


へえ、便利な能力だな。

流石、マシン中最強なだけはある。


俺はそのまま皆に振り返り尋ねる。


「……皆、いいか?」

「フフ、我らに聞かんでも良かろう」

≪ええ、最初からそのつもりでした、です≫

『カイト殿の思うようにすればいい』

「……ありがとう」


俺はレンに近づいて行き、花を全部手渡す。


「へ?お兄ちゃん、こ、これ……」

「ほら。子供が遠慮すんな。こういう時は素直に全部貰っとけ」

「で、でも、ボク……」

「こんな効果が本当にあるのかどうか分からない花なんて俺達が持ってても意味が無いんだよ。捨てる以外俺達に用途は無いんだ。だったらこの花に意味を見出している奴が持っていた方が花も喜ぶ」

「お、お兄ちゃん……」

「……まあ何より俺みたいなガサツな男が花なんて持っててもキモいだけだ。レンみたいな可愛い女の子が持っていた方が似合うだろう」

「グスッ、お兄、ちゃん、お兄ちゃん!!」

「おおっと」


レンは号泣して俺に抱き着く。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」

「……だからレンがこの花を貰ってくれ」

「うん、ありがとう……」


その後、数分間レンが泣き止むまで待ってから、俺達は遺跡を出て、レンの里までついて行くことに。


色々とここまで頑張ってくれたリゼルとベルを撫でて労ってやりながらも、レンと一緒に騒がしい帰り道となった。



……そして天使の住む里、ラクナ・アンジェに到着した時、俺は想像を絶する程の光景を見ることになった。


3つ目の次は100話記念です。


さて、活動報告に上げさせていただいたどのお話なのか、もしかしたら①の可能性も……それは無いですね。



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