これからどうする?
やっと描き終わりました。
一応これが100話目ですかね。
とりあえず3つの内の1つ目です。
どうぞ。
俺はその後、倒した男とウルフを解体して中身を調べてみることに。
だが外壁というのか、普通に体と言うのかは分からないが、それが滅茶苦茶固くて解体自体ができずに断念。
男の方はどういう訳かアイテムボックスに仕舞えたので、仕舞って持っていくことに。
普通はモンスターの方がアイテムボックスに仕舞えると思うんだが……
こっちの人型の機械は討伐部位と同じ扱いなのか?
「……さて、これからどうしようか」
「そうですね……まずここはどこなんでしょう?」
「お兄ちゃん達はどこから来たの?」
「あー、そうだな、ここからは恐らくは遠いところだ。ここがどこだか分かるか?」
「えーっとね、ここはラクナ・アンジェの東に少し行ったところにある『試練の荒野』だよ」
「『ラクナ・アンジェ』?どこだ、そこは?」
「え!?ラクナ・アンジェ、です!?まさか……」
「リゼル、心当たりがあるのか?」
「……そ、その、ですね、ラクナ・アンジェは……」
『聞いたことがあるぞ、確か『天使の住むところ』とか何とか』
「て、天使!?嘘!?」
「……はい、その通り、です」
「うん、そうだよ、お兄ちゃん。ラクナ・アンジェに住んでいるのは皆天竜族の『天使』なんだ!」
「……ラクナ・アンジェは王国の遥か東、ガウラルーク山の最奥にあると言われている幻の里、です。以前エフィーに教えてもらったことがあったのですが、それがまさか……」
天使ってどういうことだよ!?
目の前のこの子は羽や輪っかなんてついてないぞ!?
それがこの世界の天使の主流、なのか?
俺がこの子を鑑定してみたら、確かに種族が『天竜族(天使)』となっていた。
……マジか。
それに何でそんな聖域みたいな所とあの孤島が繋がっているんだよ。
しかも山奥にあるのにここは『荒野』なのか。
……これはまた謎が更に深まってしまったな。
「……とりあえず、一旦戻るか?ここに繋がっているって分かっただけでも収穫だろう。お前はどうするんだ?えーっと……」
「『お前』じゃないよ、お兄ちゃん!ボクはヨウ・スイレン。『レン』って呼んでね、お兄ちゃん」
「……そうか。俺はカイトだ。こっちがリゼル。んでこっちの黒い犬がベルだ」
「うん、分かった、それじゃあ、『レン』って呼んでね、お兄ちゃん」
「……ヨウ」
「『レン』って呼んでね、お兄ちゃん」
「……スイレン」
「『レン』って呼んでね、お兄ちゃん」
……ダメだ、ゲームのNPC並みに同じ言葉しか繰り返しやがらねえ。
「……レンはどうするんだ?」
「いきなり名前で呼んでくれるなんて、大胆過ぎるよ~、お兄ちゃん!」
「……レンはどうするんだ?」
……面倒くさい。
俺はレンの反応をスルーして同じことを繰り返してやる。
「んもう、照れてるお兄ちゃんもカッコいいね!……ボクはこのまま目的の地まで進むつもりかな」
「お前、一人で行くつもりか?」
「うん……どうしても行かなきゃいけないところがあるんだ」
「レンがかなり強いってことはさっきの戦闘で分かったが……まあさっきのような奴が出ることももう……」
「あれは本当にビックリしたよ。里の中でも一番強いからって油断した、かな。まさかあんな奴等だったなんて。どうやって今度からは逃げればいいか……」
「……ん?ちょっと待て、レン。その言い方だと……さっきのあれがまだ他にも複数体いるように聞こえるんだが」
「え?うん、里ではそう教えられてるよ?だから他にもいっぱいいるんじゃないかな?」
……嘘だろ!?
アレが複数いることが普通、だと!?
アレはイレギュラーな犯罪者とかじゃなくて、俺達で言うモンスター扱いなのか!?
「……レン、それを知ってても一人で行くのか?お前が強くてもあれは……。悪いことは言わん。里に帰れ」
「……それは、できないよ。ボクはどうしても行きたいところがあるんだ。それで、持って帰らなきゃいけない花が……」
そう言ったレンの顔にさっきまでの笑顔は無く、これから先起こるであろう苦難に怯えているように映った。
この子は恐らくこれ以上言っても聞かずに一人で行くと言うだろう。
こんなにも体を震わせているのに。
……はぁ。
「……主様、私も賛成、です」
「リゼル……ってまだ何も言ってないぞ?」
「レンに、ついて行ってあげるんですよね?」
「……まあそうだが、二人の意見を聞いてからそう……」
「ですから、私は賛成、です。主様でしたらそうおっしゃると思っていた、です。ここは王国からは離れた山奥。まだ主様のことが知れ渡っていない可能性が高い……ですから、主様の思うままに」
「リゼル……」
『俺もカイト殿ならそう言うと思ったぞ。まあカイト殿の能力があればあの敵に苦戦することもないだろう。リゼルの言うことも的を射ている。俺はカイト殿について行く』
「ベル……お前達」
≪ぬわー!!二人とも、何を主殿と通じ合っておるんじゃ!!我だって主殿がそう言うと思っておったぞ!?だから我も……≫
「……ああ、ありがとな、皆」
≪また主殿がスルーする……って、へ?……主殿、今、なんて≫
「だから、ありがとう、って」
≪……き、き、キターー!!ついに主殿が、主殿が我にデレたぞ!!≫
「姉じゃ、どこでそんな言葉を……」
≪うしゃー!!やっと、やっと我の時代が……≫
「……放っとけ。とりあえず今は喜ばしておけばいい」
「……はい、です」
俺達は面倒な姉は放置して話を進める。
「……ということだ、レン。お前の行きたいところってのはどこだ?距離や時間次第ではついて行ってやらんことも無いぞ」
「え!?ええっと、多分ここから歩いて30分位したところなんだけど……で、でもいいの?お兄ちゃんとボクはさっき会ったばっかりだし、ボクについてきてもいいことなんて……」
また同じように不安そうな顔をして今度は俯いてしまう。
「……はぁ、さっきまでの積極性はどうした?」
「だ、だって、折角妹になれたんだから、お兄ちゃんに、嫌われたくないし……」
「なんだ、その『折角友達になれたんだから嫌われたくない』みたいな言い方は。……天使は皆こんなに憶病なのか?」
「ううん、……ボク、友達いないし、お父さんとも仲良くないし、お母さんは病気だし。だから……」
さっき言っていたのは別に冗談でも俺を説得するための嘘でもなかったのか。
お母さんが天使で病気だってのもどうかと思うが。
……それはそうと、レンの気持ちは少しは分かってやれるかもしれん。
ずっと孤独を味わってきて、それで初めて親しい人ができたんならそれはやっぱり嫌われたくないだろう。
そんな気持ちを隠して気丈に振る舞っていたこの子の想いに俺は気付いてやれなかった……
……って出会ったばかりだからそこまで感情の機微を察してやることも難しいんだが。
まあそれならそれでやりようはあるか。
それじゃあ……
「……俺はレンの兄貴なんだろ?兄が妹を守るのは当たり前のことだ。出会って直ぐだろうが時間が経ってようが関係ない。……だからそんな不安そうな顔するな。俺が守ってやるから」
「お、お兄ちゃん……」
「主様、とてもカッコいい、です……」
『……申し訳ありません、カノン様。カイト殿を慕う女性がまた一人増えそうです……』
リゼルとベルがそれぞれ独り言を呟いているが聞こえてるぞ。
……反応はしない。
「……あり、がとう。お兄ちゃん、ありがとう、ボク、とっても、とってもうれ、しいよ」
レンは泣いて俺に礼を言い続ける。
≪……主殿は本当に女子泣かせじゃの。今後一体何人の女子が主殿に泣かされることか≫
「おい、人聞きの悪いことを言うな。……誰がやったって同じ結果になったさ。いや、むしろ俺以外の男がやったらもっと今迄のこともうまく……」
「主様……私達がついている、です」
≪そうじゃ。主殿、あまり自分を責めずとも良い。主殿が我らの味方でいてくれるように我等はいつだって主殿の味方じゃからな≫
「……スマン、気を使わせた」
「いえ」
≪気にするな≫
「えへへへ、お兄ちゃん、大好き!」
≪こら、お主、主殿から離れよ!!≫
「やだよーだ、お兄ちゃんはボクのお兄ちゃんだもん。ボクがくっついてもおかしくないよ!」
≪ぐぬぬぅ、ええい、ファルよ、チェンジじゃ!!≫
「え、え!?あ、姉じゃ!?」
ブオン
「このぉ、離、れるん、じゃ!!」
「いーやーだー、お兄ちゃんと一緒にいるーのー!!」
「ダメ、じゃ!主殿も何とか言わんか!!」
……面倒くさい。
俺の胴辺りにしがみ着いているレンを引き剥がそうとリゼルが頑張っているがとりあえず放置する。
今俺達はレンの目的地、『裁きの常庭』内を捜索している。
名前が何とも神々しいものとなっているが……一方で中は遺跡なんかと特に変わりは無い。
レンもここを普通に『遺跡』と呼んでるし。
ここまで来る間にさっき戦闘したような機械と何度も遭遇して戦うことになった。
耐性のスキルに無かった氷魔法も一応試してみると、他の属性よりかはダメージを与えることができたがやはり雷魔法が一番効果的だった。
……今後ここはいい狩場になるかもな。
それと、レベルの上がり方が今迄の比では無かった。
機械共のレベルがレベルだったからまあこうなるのは当然だろうが。
俺だけでももう4上がって、リゼルは6上がった。
ベルにも何度か止めを刺させてみたら、かなり強くなっているのが自分でも実感できるらしい。ベルは33まで成長した。
また進化でもしないかな……
名前:カイト・タニモト
種族:人族
身分:冒険者 所有者(奴隷:シア エフィー カノン・ファーミュラス リゼル)
性別:男
職業:1.剣士 2.魔導師 3.クレリック
年齢:16歳
Lv.39
HP:157/134(+23)
MP:112/139(+37)
STR(筋力):67(+20)
DEF(防御力):54(+27)
INT(賢さ):59(+29)
AGI(素早さ):53(+32)
LUK(運):1(+5)
名前:リゼル (リーゼ ファル)
人種:天竜族(竜人)
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
職業:1.戦士 2.格闘家
性別:女
年齢:18歳
Lv36
HP:196/172(+24)
MP:38/70(+16)
STR(筋力):87(+20)
DEF(防御力):65(+17)
INT(賢さ):35(+15)
AGI(素早さ):65(+17)
LUK(運):21(+5)
敵もあの機械共しか出てこないし楽なもんだ。
「……お兄ちゃんは本当に凄いね!ここは里の皆でも相当に強い人じゃないと来れないって言われてるのに」
「ん?でも里ではレンが一番強いんだろう?そのレンが厳しいんだったら他の奴だって来れないんじゃ……」
「……ボクは、皆とは違ってるから」
……あ、ヤバい、何か地雷踏んだ感じだ。
何か他の話を振らないと!
他の話題、他の話題……
「そうか。それで、レンはどうしてここの奥に行きたいんだ?俺達と会わなければ一人で行ってたんだろう?こんな危険なところ」
「お兄ちゃん……えへへ、やっぱりお兄ちゃんは優しいね。ボクのことを気遣ってくれて」
……バレてる。
俺は……お前の思っているような奴じゃ……
「……で、どうしてお前はこの遺跡の奥に行きたいんだ?何か探し物が何とかって言ってたが……」
「うん。……この遺跡の最奥にしか咲かない、『デジー・フラワー』って言う花が欲しくて」
「何だそれは?語感からして願いか望みでも叶えてくれんのか?」
「言い伝えとしてはそんなところ、かな?『人の強い願いに応えてくれる花』って言われてるよ」
……あれ?適当に言ったのに当たっちゃった!
しかも7つ揃えなくてもいいんだ!
何それ!メッチャお得じゃん!
「……まあボクは本当に願いが叶うかどうかはどっちでもいいんだ」
「ん?ならどうしてそんな花を……」
「……お父さんがその花が好きだって、お母さんに聞いたことがあるんだ。願いを叶えたいとかそんなことは関係無しに。だからそれを持って帰ったら少しはお父さんと仲良くなれるかな、と思って」
「レン……」
「……お主も健気じゃのう」
「えへへ、ボクがダメなのが悪いんだ。だからボクが頑張らないと、お父さんはボクを見てくれないと思うから」
「……まあどんな理由があって親父さんと不仲なのかは知らないが、花を手に入れる手伝いはきちんとしてやる。だから安心しろ」
「お兄ちゃん……うん!!お兄ちゃん、大好き!(ガバッ)」
「あ!また!!この、離れよ!!」
「えへへ……」
そうして騒がしいながらも4人で遺跡を順調に進んでいく。
最初こそあの機械共には驚かされたが、弱点が分かってしまえばどうという事は無い。
困難らしい困難も無く俺達は奥までの道程を消化してとうとう最奥までたどり着いた。
この遺跡の外からは想像できない様な緑で溢れるとても美しいところだ。
至る所に木や花が見受けられ、自然豊かなところとなっている。
遺跡の中にこんな空間が……
そこにはレンの言っていた通り赤や青、その他色んな色があって綺麗に染まっている『デジー・フラワー』なるものが確かにあった。しかも3本……あるにはあったのだが……
「……滅茶苦茶高いところにあるな」
「しかもその目の前には透明な壁が」
透明とは言いながらもその存在が分かる位に壁はあからさまにおいてある。
「どういうことじゃ!?あの壁は人工かぇ!?」
≪皆さん……もう一つの事には触れない、です?≫
『……皆現実から目を逸らしたいんだろう。流石にあれは、なぁ』
ファルとベルが現実逃避している俺達にそんなことを言いやがる。
あんなもんがいるんだからしょうがないでしょ、だって……
「……『ドラゴン』がいる」
「……うん、そうだね、お兄ちゃん、いるね、『ドラゴン』が」
「ああ、あれは、紛れもない『ドラゴン』、じゃな」
≪あ、やっと皆さん現実と向き合い始めました、です≫
『逸らそうと思っても目に入ってしまう大きさだからな』
「……麒麟さんが好きです!でもドラゴンさんの方がもーっと好きです!」
「お兄ちゃんいきなりどうしたの!?」
「主殿が壊れてしもうた!?」
≪主様、戻ってきてください!!≫
うがー!!やっぱりこうなるんじゃないか!!今までが楽過ぎたんだよ!!
こういう何かキーアイテムっぽいの取るのにボス戦がつきものだからって……
「……て、あれ?なんかあのドラゴン、様子おかしくないか?」
「うん、そうだね。何だかちっとも動かないよ」
「ああ、そう言われてみればそうじゃな。ピクリともしよらんぞ?」
俺達は恐る恐る近づいてみる。
……遠目で見ると完全にドラゴンだったが、こうして見てみると少し違和感を覚え始めた。
これは……機械、か?
目の前にそびえ立っている大きなドラゴンは、さっきまで見ていた人間そっくりの物とは異なり、俺がマンガやアニメ等で見て知っているようなメカメカしいものだった。
翼や腕、足なんかも全部機械でできていることが一目で分かる作りではあったが、だからと言ってよくある安っぽいというものでもない。
良く見ると爪なんかも金属性の物でできていることまで窺える。
……何かビームとかレーザーとか出てきそうな発射口まで所々つけてあるし。
まあそうは言っても総合的に見るとだ……非常にカッコよくて大変よろしい!!
これだよこれ!!
ロボットとかマシーンとか言ったらやっぱりこれでしょ!!
あんな人間と区別のつかない奴等なんて俺は知らん!!
……でもなぁ、これ動かないんだよね。
更に、動かないボスっぽい奴の後ろに花があるんだよ……
……ああ、何か読めてきた。
まだ動かせるか分からないけど嫌だなぁ~、雷魔法あるからってあれと戦うの。
でもなぁ、あれ倒さないと多分花取れないし。
そうなると横で不安そうにしているレンがここまで来ておいて可哀想だしなぁ。
レンのお父さんはどういう経緯でこの花のことを知ったんだ?
……はぁ、やるしか、無いのかね?
「……心配すんな、俺が何とかしてやる」
「お兄ちゃん……」
「とは言っても恐らくあのドラゴンを起動させて倒さないといけないだろう。それに伴って先ずはドラゴンを起こさないと……」
「主殿、先に『特性吸収』を試しても良いか?」
「ああ、そうだな。先に試してみろ」
俺はレンを安心させるように頭を撫でた後、静止したままのドラゴンに近づく。
一緒にリゼルもドラゴンに近づいていき、以前のワイバーンの様に『特性吸収』を使う。
「おお、こやつからも吸収できるようじゃ!!」
……マジか。
ってことは今後メカになったリゼルとかもできんのかね?
……それは嫌だな。
俺はリゼルと交代にドラゴンに接触しに行く。
足に触れてみると、生き物特有の温かさが感じられず、ひんやりとした感じが手に伝わってきた。
ふーむ、機械だからな、こういうのは大抵エネルギー切れが原因だったりするんだが……
……となると、雷魔法、か?
でも大丈夫か?
さっきまで機械共をこれでボコボコにして来たんだが……
取りあえず初めは最少の威力でやってみるか。
俺は威力を極力抑えるよう、さらに、ゲームや携帯に充電する位の弱い電力をイメージしてドラゴンに雷の魔力を流して行った。
すると……
「……(グゥィーン)……」
何かの起動音が聞こえた……って言ってもここで起動したのが何かなんてそんなの、一つしかない。
俺はドラゴンの目を見てみる。
目には光がともり、微かにだドラゴンの体も動いたように……
ギュイーン
瞬間、俺の体から一気に魔力が吸い取られていった。
……な!?ヤバい、これは!
俺はすぐさまアイテムボックスからMPポーションを取出し一気に飲み干す。
……はぁ、はぁ、ヤバかった。
普通は少しずつ減っていくから空っぽになっても何とかなるんだが、今のは一度で根こそぎ持っていきやがった。
まだ体に倦怠感が残っている。
……マズイな、この後の展開って……
「主殿、無事か!?」
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
『カイト殿、怪我は!?』
皆が焦って俺の方へと駆けてきた。
「とりあえず魔力を吸われただけだ。外傷は無い。ただこれで恐らく……」
俺が見上げると、そこには本物のドラゴンの様に呼吸をして肩を上下させ、翼を動かしていたドラゴンが。
……やっぱり、こうなる、のか。
「……(グィーン)……」
……って、あれ?襲って、来ない?
「……どういう、ことじゃ?」
「……何だかお兄ちゃんに懐いてる、感じ?」
『……カイト殿は何でもありなのか』
ドラゴンが首を下げて俺の前に頭を差し出してくる。
……何で?
あれ?ここは戦闘じゃないの!?
ボス戦は!?
血肉湧き踊る熱き戦いは!?
いや、戦いたかったわけじゃないけどさぁ、ここはそういう流れでしょ!
そこで何とか俺が知恵や勇気を振り絞って……ってそれは無いか。
うん無いわ、ごめん。俺にそんな熱い展開誰も、俺自身ですら望んでないわ。
……ま、いっか。
戦闘しないで済んだし。
俺はホッとしてさっき吸い取られた分心配だったステータスを確認することに。
すると、MP自体はポーションで幾らか回復していたのだが、スキルの中に見慣れないものがあった。
『古魔法』と言うものだった。
……これまでの経緯を踏まえて推察すると、このドラゴンを動かしたことで使えるようになったってところか。
古魔法を使おうと意識しても、ドラゴンに魔力を送ることしか出来なかった。
しかしその魔力は普段俺が使っているようなものと性質がかなり違っていたことが感覚的に直ぐにわかった。
これは……もしかしたら!!
俺はこの空間に来るまでに倒して、アイテムボックスには入れられなかったモンスター型の機械を思い出し、一体リゼルに連れて来てもらう。
リゼルが連れてきたのは所々ショートして煙を上げている、普通より少し大きめの、赤い色をしたライオンだった。
俺はそいつに『古魔法』を使って魔力を送り込んでみる。
……特に変化は起きない。
あれ?
うーん、思っていたのと違う。
これでドラゴンみたいに起動してくれるもんだと思ったんだが……
先にこの怪我を何とかした方がいいのかも。
俺は回復魔法を、使ってみる。
……うーむ、回復はしているが、やっぱり人に使うよりは遅い。
俺はイメージを『治癒』、というより、『修理する』風にイメージを修正してもう一度回復魔法を使う。
……うん、やっぱりこっちの方が回復が早いな。
さて、ある程度目に見える傷が治せてきた。
俺はもう一度古魔法を使う。
……すると、さっきのドラゴンの様にまたライオンが稼働し始める。
ライオンは伏せのポーズをとり、尻尾を振る。
よし!!
≪流石主様、です!!≫
「当たり前だよ~!だってボクのお兄ちゃんだもん!!」
「主殿、このままこやつも契約できないのか?」
≪え?契約、です?必要あるのでしょうか?ドラゴンも、このライオン(?)も主様に好意的、です≫
「じゃが、契約できると召喚で呼び出せるのじゃろ?その方が便利ではないか?」
「……リゼル、ナイスだ」
「ほへ?」
≪……姉じゃが珍しく冴えてる、です≫
「な、何じゃ!?二人して……」
……確かにそうだな、まだできるか分からんが、できたらこれはかなりのメリットになる。
俺は古魔法を元に、ライオンと契約を試みることに。
結果的に言って……できた。
しかも契約内容も決めずにただただ一方的に契約することができた。
少し申し訳ない気もするが、別にブラック会社みたいに酷使するつもりは無いからそこは許してもらおう。
固有の名前は『ライエン』と言うらしい。
『ライオン』の『オン』を『エン』として、見た目の赤色から『炎』とかけているのか。
なら……
「よし、お前は今日から『カエン』だ!よろしく頼むぞ、カエン」
「アオーン!!」
うむ!!元気でよろしい!!
なんか吠え方が違うような気もするが……まあいいや。
百獣の王を従えるというのも気分がいいな。
俺は続いてドラゴンとも契約することにした。
そして何事も無く、契約が終わった……と思ったら……
キュイーン
な、何だ!?
契約を終えた後、いきなりドラゴンの体が輝きだした。
こ、これは……
「……ドラゴンモード、解除。ヒューマンモードニ移行」
長い栗色をした髪をなびかせている女性がそこに立っていた。
袖や膝丈の短い巫女装束のようなものを着ている。
「お前は……」
「初めまして、ご主人サマ。私ハ『源司サクヤ』。これから、ヨロシクお願いシマス」
2つ目も直ぐにあげさせていただきます。
あ、3つ目は本編のストーリー進行とは関係ありませんのであしからず。




