とりあえず異世界住人と初対面
近づくと、相手も俺に気づいたようでこっちに寄ってくる。
どうやら男性のようだ。
盗賊とかだったらいやなので話す前に鑑定しておく。
名前:ライル・アーグリット
人種:人族
身分:冒険者
職業:戦士
性別:男
年齢:23歳
Lv.8
HP:60
MP:22
STR(筋力):36(+5)
DEF(防御力):22
INT(賢さ):13
AGI(素早さ):20
LUK(運):21
『斧術』、『筋力小上昇』
となっていた。
よかった、盗賊じゃなくて。
鑑定が人に使えることも確認できた。
とりあえず情報が欲しい。
さしあたって俺の立ち位置をどうしようか。
とりあえず1.田舎から出てきたので世間知らず。
2.記憶をなくしていて自分のこと以外何も思い出せない。
3.知ったかぶって相槌打ちながら話を合わせる。
のどれかかな。
うーん、3は相手によっては聞き上手ととられてどんどんあっちから話してくれそう。
でも相手次第ってのは危険か。こんなことでギャンブルしたくない。
1は一見無難そうだが田舎ってどこらへん?って突っ込まれるとめんどくさい。
最初から「名前も載ってないようなど田舎だ。」と言えばそれ以上聞かれないかもしれんが
後になって何かすり合わせが必要になった時に足を引っ張らんとも限らん。
その点2なら「記憶があやふやで」のごり押しで行ける。
よし、2で行こう。
「すいません、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが。」
先ずは無難な聞き方から入る。
「おお、どうした、見たところ森から出てきたようだが。」
「私もよくわからないのですが、目覚めたら森の中にいまして。
ここはいったいどこに位置するんでしょう。」
「ここはリンカの町を出て2~3キロ程したところだが。目が覚めたら、
ってどういうことだ?」
いま重要なことを言ったよなこの人!
「キロ」っていうのは確実に地球上の単位だ。
ここが地球でない限り、距離の単位の名称が被るなんて偶然はほぼ皆無に等しい。
そしてここが異世界である以上、導き出される結論は一つ。
異世界言語のスキルが俺用に話をすり合わせてくれてるんだ。
恐らくあっちとしては俺の知らないような名称で「キロ」を
表現しているが、それをスキルが勝手に俺が知っている中で
いちばん近い意味の「キロ」へと変換している、
といった作業が人知れず行われているんだろう。
それだけわかればとりあえずは十分か。
後の細かいことはまとまった時間が取れる時に考えよう。
「はい、とは言いましても私もよく覚えていないんです。
森に入る前に私が何をしていたのか、また私自身どこから来たのか。
要するに記憶がないんです。
森に入る前後に強い衝撃を受けたことは何となく覚えてるんですが。」
「そうか、記憶喪失か。お前も災難だな、名前もわからないか?」
「ああ、いえ名前だけは覚えています。申し遅れました。
私はカイト・タニモトと言います。」
「そうか、カイトか。俺はライル。ライル・アーグリットだ。よろしく。」
「はい、よろしくお願いします。」
「で、カイト。森に放り出されてたってことだったよな?
もしかしたら最近活発的になってる盗賊集団が何か関係してるかもしれん。
何か思い出せないか?」
「盗賊ですか、すいません、何も。」
「いや、大丈夫だ。気にすんな。もしかしたらその線かもしれん。
とりあえず町に戻って何か思い出せないか確かめたらいい。
ギルドには俺から確認しといてやる。」
ライルさんはニコッと笑って親指を立てる。
なんていい人だ!こちらは嘘しかついてないダメ人間なのに。
ごめんよ、ステータス見たときに脳筋かもとか思ったりして(泣)。
「ありがとうございます。とても心細かったのでとてもうれしいです。
でもいいんですか、ライルさんも何か用事があったんじゃ。」
「ああ、もう依頼が終わって後始末してただけだったから、
帰るってのはちょうどいいんだよ。気にすんな、さあ行くぞ。」
そういってライルさんは歩き出した。
俺も遅れないようについていく。
ふう、何とかぼろを出さずに乗り切れた。
予めステータスのぞけるのは得だが、それを話に出しちゃうと何で知ってんだ、
ってことになってまずいもんな。
鑑定スキルもってんのを隠すんなら今後も気を付けないと。
30分くらい歩いたころだろうか、町の外観が目に入ってきた。
あれがリンカの町か。
やっと町に到着です。これからギルドとか出てくるわけですが正直いちばん困っていますのがお金のことです。めんどくさがりなので計算とかも煩わしいことこの上なく、辻褄合わせも大変です。
間違いが起こりうるかもしれないと予め申し上げさせてください。
できればそれを見つけられた際ご指摘いただければ幸いです。




