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世界を救いし聖女は、聖女を止め、普通の村娘になり、普通の生活をし、普通の恋愛をし、普通に生きていく事を望みます!  作者: 光子


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レナルドが川に来て早1時間ーーー。

不機嫌オーラ全開のレナルドを怖がり、口を閉ざすサクヤに、そんな2人の空気を読んで黙るイマル。ただただ無言のまま、時間が過ぎたーー



「………ルドはん、魚引っかかってるから、もう釣り上げなあかんで」

ーーが、遂に我慢が出来ず、イマルは口を開いた。

あれなら1時間。イマル、サクヤは問題無く魚を釣り上げているが、レナルドはまだ1匹も釣れていなかった。それもそのはず、レナルドは釣り糸を垂らしてはいるが、魚が掛かっても、釣り上げないのだ。


「あぁ?」

「糸見てみぃ。引っ張られてるやろ?魚が掛かってる証拠や」

先程から何度もヒットしているのだが、一向に引き上げない。引き上げなければ、当然、魚は釣れない。

この川は普段、人が立ち寄らない穴場の釣りスポットで、面白いほど魚が釣れる、最高の場所。

「……どうやって?」

「釣りの仕方も知らんとよう来たな…」

イマル達も初心者だが、一応、釣りに行く前に経験者であるゲンとイマル父にレクチャーして貰っていた。


*****


簡単に釣りの仕方を教わると、飲み込みの早いレナルドは順調に魚を釣り始めた。

「サクヤはん、そろそろ飯にせーへん?」

時間的にはもうお昼。お腹も空いて来たので、イマル、サクヤは一旦釣りを休憩し、取れたばかりの魚を簡単に塩で味を付けてから、焼いて食べようと、用意を始めた。


「ルドはーん!ルドはんも食べる?腹減ってないか?」

少し離れた場所にいるレナルドにも聞こえるように、気持ち大きめに声を出す。

「うるせぇ!俺に構うな!」

「ええの?新鮮な魚は美味しいでー」


「ーーちっ!」

少しの間の後、舌打ちをし、渋々そうに、レナルドは立ち上がり、イマル達の方に歩いた。


「イマル兄ちゃん……構うなって言われたんだから、ほっといたらいいのに……僕、あの人、嫌い」

初めて会った時から、口調や態度が悪く、今も、料理を作れず、食事の事など考えていないであろうレナルドの為に声を掛けたイマルの好意を、怒鳴りつけた。

「まー構って欲しく無い人もおるやろ。俺がお節介なだけや。てか、同じ魔法使いやねんから、仲良ーしーや」

怒鳴れた当のイマルは何も気にしていないらしく、ヘラヘラと笑っている。


「ーーー魔法使い?誰がだ?」

「!」

頭上から急に声をかけられ、サクヤは体をビクッと揺らすと、急いでイマルの背中に隠れた。

「サクヤはんやで」

背中に隠れたサクヤを紹介すると、サクヤはほんの少しだけ顔を出した。

「お前……魔法使いなのか」

「…っ、べ、別に、ルドさんに比べたら全然だよ……ついこの間、魔力の制御に成功して、魔法が使えたくらいだし……その前は、魔力を暴走させちゃって、皆に……迷惑かけちゃってたし……僕、駄目駄目なんだ…」


目の前にいるレナルドは、どー見ても、一生頑張っても、追い付きそうにないくらい、優秀な魔法使い。

比べてしまえば、自分はなんて弱い存在なんだと、自覚する。


「魔力の…暴走…」

「……」

(きっとこの人は、魔力の暴走なんてした事無いんだろうな)

それどころか、そんな事も出来ねぇのか!なんて、罵倒されてしまうじゃないかと思い、目を伏せた。


「……おい、そこのお喋り男」

「俺?!俺、イマルな!そろそろ覚えといてや!」

「五月蝿い!で、今から焚き火をするのか?」

「せやで。んで、魚を丸焼きにすんねん」


イマルは魚に串を刺し、持参した塩を振りかけた。


「……お前が火をつけろ」

「え?」

「早くしろ!」

「う、うん」


初めから火の魔法が使える自分がするつもりだったが、レナルドに名指しされ、戸惑う。考えてみれば、レナルドだって魔法使いなのだから、レナルドがすれば良いと思ったが、口には出せない。

サクヤは神経をいつも以上に集中させ、手を、焚き火の為にセットした木に向けた。


「炎よ…!」

ぼうっと、火が上がり、木に燃え移る。

上手く成功した事に、サクヤはホッと安堵の息を吐いた。


「……悪くねぇ」

「え?」

「悪くねぇ。魔力の制御も出来てるし、繊細な力加減が上手い。俺には、こんな炎は出せない」

レナルドはそう言うと、自分の周りに、龍と化した炎を具現化させた。

「俺は爆発的な強い魔法を得意とするが、弱いもんは出来ねぇ。加減が難しい。する気もねぇけど」

森で見た雷の魔法の威力も、凄まじかった。昔の話では、狩りをする際、オーバーキルし過ぎて、肉体その物を消滅させていたと聞く。


「……サクヤは、駄目なんかじゃねぇ!誰に言われた?今からそいつ等全員根絶やしにして来てやる…!」

「待て待て待て!極端過ぎるやろ!何の話や!」

「そうだよ?!それに僕、誰にも何も言われて無いよ?ただ、僕が勝手に自分を駄目だと思ってただけだから!」


何故か急に烈火のごとく怒り狂うレナルドを、イマルもサクヤも必死に止めた。


「言われてねーのか?」

「う、うん」

正確に言うと、村で唯一のトラブルメーカーであるカリンには似た様な事を言われた事はあるが、ややこしくなりそうなので口を(つぐ)んだ。







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