村娘生活3ヶ月目、城ーー59
少し遡り、村娘生活3ヶ月目ーーー王都カナン、城、王の間にてーーー。
ガッシャァァアアアアアンッッッツ!!!!!
大きな、破壊される音が、王の間に響き渡った。
真っ白な壁は削れ、窓ガラスは全てが散り散りに割られ、床はえぐられ、置いてあった高そうな装飾品達も、容赦無く破壊されている。
「お!落ち着くのだ!魔法使いレナルド!」
豪華な王の椅子から転がり落ちたまま、王は、この惨劇を引き起こした張本人である、魔法使いレナルドを呼んだ。
綺麗な顔立ちの青年は、紫の髪に、真っ赤な瞳を携えていて、今はその瞳を、鋭く変化させ、王を睨み付けた。
「落ち着く…?俺の聖女を奪っておいて…?俺がいない間に、そこの木偶の坊の王子との婚姻も画策しておいて?」
王の隣で、泡を吹いて倒れている王子を指す。
「何故それをーー?!誰だ!お前に話したのはー?!?」
「五月蝿い」
レナルドは、鋭い氷の塊を魔法で出すと、そのまま、王に向け放った。
「うわぁぁぁあ!!」
王の直ぐ隣の床に、めり込むように突き刺さる氷の刃。
「聖女ーーリーシャはどこにいる?」
「辺境の村だ!確か名前はっっ!ヘーゼルとか言う、小さなド田舎の村だ!!」
命の危険を感じたのか、王はスラスラとレナルドの問いに答えた。
「ヘーゼル…その村に、リーシャがいるんだな」
「言っておくが、我等が聖女を追い出した訳じゃ無い!聖女が!自ら望んでここから出て行ったのだ!我とて、聖女を手放す気等無かったーーー!!!」
「知ってるよ。あんた等は、リーシャをただの道具としてしか扱ってなかったもんな。有能で便利な道具を、手放す気が無かっただけだろ?」
「なっ!」
レナルドは魔法を唱え、自身の体を宙に浮かすと、バラバラに割れた窓の1つまで飛んだ。
「俺が城に仕えていたのは、リーシャがいたからだ。こんなクソみてーなとこ、今すぐ辞めてやるよ」
「ちょっ!待て!お前は我が国の誇る大!魔法使いでーー!」
大魔法使いレナルド。
聖女と共に魔王を倒した仲間の1人ーーー。
「知るか。さっさとくたばれ」
そう言い残すと、レナルドは窓の外に一瞬で消えた。
「何と言う事だーー!聖女に続いて、大魔法使いまでー!」
頭を抱える王の周りには、身を案じ駆け寄る臣下達の姿。
「レナルド様は超問題児じゃないですかー!聖女様の言う事しか基本聞き入れないし、そんな奴別にいなくなってもーー!」
「馬鹿者!!あいつは我が国で1番の魔法使いだぞ?!天才と称された、稀代の魔法使いだ…!聖女に続いて、そんな特別な存在が王家からいなくなったと知れたら、国民の信頼を失いかねんーー!!」
魔王を打ち倒し、平和へと導いたパーティは、国民から英雄として称えられ、人気が高く、信頼が強い。
3ヶ月前、魔王を討伐した際の祝いのお披露目の席で、聖女に願いを尋ねたのも、本来、王子との結婚を望ませ、王家と聖女を深く結び付ける為のものだった。
「今まではあんなに従順で、聖女としての役割を完璧にこなしていたのにーー!」
全ては、あれからおかしくなった。
聖女ーーリーシャが、聖女の地位を捨て、ただの村娘としての生活を望んでから。
「しかし、聖女様を無理に連れ戻すのはーー」
「分かっておる!」
お披露目の席には、沢山の人がいて、聖女の願いを直に聞いているし、それを反故にする事は、国への信頼や、威信に関わる。そして、第一に、聖女に対しては皆が一様に、親愛を抱いている!!!
魔法使いレナルドは見ての通り、以前、聖女を連れ戻すと辺境の村ヘーゼルに行ったノルゼスも、『聖女様はとても幸せそうに暮らしておいででしたので、城へ戻る必要はありません!』と、声高らかなに報告して来た。
そんな聖女を無理矢理連れ戻せば、反感を買うのは目に見えている。
「ああっ!絶対に直ぐに根を上げて戻ってくると思っていたのにーー!!!」
王の目論見は見事に外れ、聖女、リーシャはとても楽しく、村娘としての生活を満喫していたーーー。




