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傷1つ付ける事は許さないといった気迫すら、ノルゼスから感じた。
大切に、守ってくれているのは分かるし、有り難い事なのだが、どうしても、受け入れられない自分がいる。
「それは嫌だよ。僕だったら絶対嫌だもん」
サクヤはハッキリと答えた。
「じいちゃんとこの前狩りに行ったら、魔法使おうとする度に体の心配されて、結局使わせてくんなくて、自分が倒しちゃうし……」
魔力の暴走でついこの間まで引きこもっていた孫を心配しての事だろうが、魔法の練習にもならず、結局何もしないまま帰る事になって、ゲンとはもう二度と狩りに行かないと宣言したらしい。
「それがただ山道歩くだけであんな対応されたら……僕なら暫く口聞かなくなる」
ゲンにされた場合を想定し、サクヤはバツをした。
「そうですか……良かった。私の我儘だったらどうしようかと思いました」
「まー守られて喜ぶ女性もいるやろーけどな」
ノルゼスは外面、中々のイケメンなので、そんな男性に、慣れない山道のエスコートや、恐ろしい魔物から守って貰えるとなれば、キャーキャーと喜ぶ女性はいる。
いるが、リーシャには当てはまらない。
(何でもして貰って当たり前ってより、どっちかって言うと何でも自分でしたい。ってタイプやもんな)
才能があるかないかは置いといて、何でもまずはやってみよう!とする気持ちがリーシャにはある。
「僕、先に帰って料理作ってるから、お姉ちゃん達は肉屋に行ってきてよ」
酒屋に行く?と言う案もあったが、カリンが苦手なサクヤの意向で、サクヤの家で美味しい物を食べる事にし、サクヤを家まで送り届けると、自分達で食べる分の肉を除いて、お金に換金する為に、イマルとリーシャは2人で肉屋に向かった。
サクヤはまだ8歳だが、引きこもっている間に料理の腕前を上げており、料理の腕は確か。
「楽しみですね、サクヤの料理」
リーシャは暇を見付けては、時折、サクヤに料理を教わっており、リーシャにとっては、料理の先生でもあった。
「私もお手伝いした方が…」
「いや、サクヤはんに任せて、俺等は素直に肉屋に行こ」
料理練習中だが、まだまだ壊滅的らしく、付きっきりで見ていないと駄目なレベルなので、教える!っと決めた時以外は、食材は無駄になってしまう確率が高い。
それもあって、サクヤは1人で料理作りを申し出た。
イマルもそれなりに作れるのだが、サクヤの、「イマル兄ちゃんは、ノルゼスさんからお姉ちゃんを守って!」との要望により、リーシャに付き添う事になった。
「だいぶ懐かれたな」
初期、リーシャを警戒していた頃とは比べ物にならないくらい、べったりされている。
「嬉しいです。可愛くて可愛くて……とても幸せです」
胸の重みが、サクヤのお陰で、少し取れた気がした。
「ふーん。良かったな」
「イマルも、落ち込んだ時は、こうして、友達とご飯を食べたりするんですか?」
「俺?俺はなぁー。んー、1人で酒飲んだりするんが多いな。機嫌悪い時も、大概酒に逃げる」
「お酒、飲んだ事無いです」
「ほな、今度飲みにでも行きまっか?」
「はい。嬉しいです」
リーシャは笑顔で、イマルの誘いを受けた。
「いらっしゃい!って、リーシャにイマルかい」
「こんにちはマルシェ」
朝にもマルシェに会ったので、本日2回目の再開。
リーシャは、マルシェに今日狩りで取った肉を手渡すと、対価のお金を受け取った。
「ありがとうございます」
「……リーシャちゃん、何かあったん?まさか、あんた、何か余計な事したんちゃうやろね?」
ギロリと、マルシェはイマルを睨み付けた。
「ちゃうわ!俺は何もしてへんわ!」
「ほんまか?リーシャちゃんの気持ちを断ったんちゃうの?」
「何で知ってんねん!」
「ほんまに断ったんか!あんた!何でこんな良い子やのに!」
「カマかけんなや!」
リーシャの恋心はマルシェには丸分かりらしく、まさかと思いカマをかけたら、ビンゴだったらしい。
「ま、マルシェ。違います!イマルは何も悪くありません!振られたのは確かですけど、それは大分前の話ですし、何も余計な事はされていません!出会って2日目に告白して即、振られましたけど、今はこうして一緒にいれるだけで満足です!」
「リーシャはん?!ちょっと黙ってよか!」
イマルを庇おうとしたのだが、何故か勢い良く止められる。
チラリとイマルとマルシェを見ると、イマルは頭を抱えていて、マルシェは口をあんぐりと開けていた。
「出会って2日で告白は驚きやけど……一緒にいれるだけで満足ってあんた……めっちゃ良い子やない!この子であかんかったら、あんたは誰やったら付き合うの?!」
「大きなお世話や!」




