村娘生活25日目19
村娘生活25日目ーーー。
「あれ?リーシャはん?」
「イマル!」
ゲンの家に訪れたイマルは、思いもしない人物の遭遇に驚いた。
「何でこんなとこおんの?」
ここはゲンの家。
その台所で、何故かお玉片手に、エプロン姿でいるリーシャ。
「特訓してます」
「特訓って……料理なんは何や分かるけど、何でここで?」
自分の家なら分かるが、ゲンの家で行っている意味が、変わらずわかない。
「お姉ちゃん?ちゃんとかき混ぜてる?火から目を離してない?ーーあ!駄目だってば!目を離さない!火事になったらどうするの?!」
パタパタと奥の部屋から出て来たサクヤは、鍋から目を離しているリーシャを見て、口調を強め、詰め寄った。
「サクヤはん?」
「あ!イマル兄ちゃん」
声をかけられて初めてイマルの姿を認識し、サクヤは振り返った。
「何や何や。暫くこーへん内に、えらいオモロい事になってんねん
なー」
昨日の出来事にー何故、リーシャがここで料理をする事になったのかを、かいつまんて説明すると、イマルはケタケタと笑った。
8歳のサクヤが、16歳のリーシャに対し、しっかりと注意をして、料理を教えている姿も、面白い。
「笑い事じゃないよ…」
「でも、サクヤはん何か楽しそーやん」
口では勝手に一緒に特訓する事になった。大変。等言っているが、表情を見れば、本当に嫌がっているようには見えなかった。
「楽しーーくーー」
楽しくない。
そう言いかけて、サクヤは口を閉ざし、俯くと、イマルにだけ聞こえるように、小さな声で話し始めた。
「僕……初めてお姉ちゃんに会った時、お姉ちゃんを傷付けちゃったんだ」
魔法を上手く使えていない所を見せれば、皆みたいに、僕から怖がって離れていくと思った。
だけど、お姉ちゃんは逆に、僕を助けようと手を伸ばした。
「それからも……ほんとに、僕の事全然怖がってなくて……じいちゃんや、イマル兄ちゃんみたいに、普通に僕とお喋りしてくれるんだ」
サクヤは、一生懸命、鍋をかき混ぜているリーシャの姿を見ながら、そう話した。
「…そーか。そら、良かったやんか」
「……うん」
魔法を上手くコントロール出来ないサクヤは、感情の起伏で、魔力が暴走する事があった。
今よりももっと幼い頃は、特に。
その時に人を傷付けてしまった事を、サクヤは今も気にしていて、あまり外に出ず、家の中で引きこもるようになってしまった。
「サクヤ!見て下さい、出来ました!」
2人で話し込んでいると、今まで調理をしていたリーシャが、意気揚々と鍋を片手にやって来て、2人に中身を見せた。
中に入っているのは、野菜スープーーと言う名の、紫色の液体。
ギリギリ野菜だと認識出来るが、大きさ形は疎らで、色は元の色と異なるものに変化していた。
「ーー何なん?これ?」
「野菜スープです」
「野菜スープ?!これがーー?!」
どう見ても野菜スープには見えない液体を指差しながら、イマルは信じられない物を見た気持ちになった。
「はい。野菜スープです」
決して揺るがないリーシャの答え。
「よーこれを野菜スープって言えたな!」
「凄いよお姉ちゃん!黒焦げじゃなくて、ちゃんとスープになってる!野菜が認識出来るよ!」
ツッコミをいれるイマルのすぐ隣で、正反対に大袈裟に感動しているサクヤ。
初日の全てが真っ黒に焦がされた、ほんの水滴の水分しから残っていない野菜スープ?を知っているサクヤからすれば、例えスープの色が紫でも、野菜の大きさや形が歪であろうとも、色が変化していようとも、進化である。
「はい。サクヤのお陰です!」
「包丁も、ちゃんと手を添えれるようになったもんね!凄いよ!」
「ーーあれ?俺がおかしいんかな…」
自分を置いてけぼりに、野菜スープ?の出来に盛り上がる2人を見て、何故かイマルは疎外感を感じた。
その後、帰宅したゲンのお土産の魚を焼き、野菜スープをサクヤが作り直し、イマル、リーシャを含め、4人で昼食を頂いた。
「ふぅ。腹いっぱいやで」
「とっても美味しかったですね。やっぱり、サクヤは天才です」
縁側で2人並んでお茶を飲みながら、庭で魔法の練習をしているサクヤを見た。
頂いたサクヤ手作りのスープは、それはもうリーシャが作った物とは違い、格段に美味しかった。
「リーシャはんにしてみれば、皆天才になってまうな」
「はい。皆さん、本当に凄いです」
自分には出来ない事を平然とやってのけるのだから、リーシャにとっては、尊敬の念しか無い。
「私もいっぱい特訓して、いつかイマルに美味しいって言って貰えるように、頑張りますね」
「……ま、楽しみにしとくわ」




