50 誕生日の夜④
「このまま、どうする? 僕の部屋で眠っていく?」
「えっ!?」
唇が離れたあと、リアムが私の頬を指で優しく撫でながら尋ねてきたので、首を横に振る。
「いえ、でも、今日は、その」
「ダメ?」
目をそらした私に、リアムがもう一度口づけてきた。
深いキスは初めてで、力が抜けて崩れ落ちそうになったけれど、リアムが腰と背中を支えてくれた。
「ん……っ」
「アイリス、ダメかな?」
唇がはなれて、強く閉じていた目をゆっくり開けて、苦しくなった息を整えてから答える。
「……は、早すぎますよ!」
「何が?」
「一緒に眠るということは、その」
頭に浮かんだ言葉を口に出そうとしただけで、頬がどんどん熱くなってくる。
「その、何?」
私が何を言おうとしているかわかっているくせに聞いてくるのだから、リアムは本当に意地悪だと思う。
「えっちなことをしようとしてます?」
「……そうかも」
「じゃあダメです。今日は友人も来てるんですよ」
「そう言われてみればそうだよね。明日が寝不足になったらあからさますぎるか」
リアムがぎゅうと私を抱きしめて、私の頭に頬を寄せてくる。
「さすがに恥ずかしいです」
「わかるよ。だから今日は我慢する」
「今日だけじゃなくて、もう少し待ってほしいんです」
「どうして?」
この質問の答えに関しては、私が答えないとリアムは本当にわからない気がしたから、小さな声で答える。
「太ったからです」
「ん?」
「この家に来てから、食べるものが美味しすぎて太っちゃったんです! だから、もう少し痩せてからでお願いします!」
「……アイリス、君はまだ痩せているし、もっと太ったほうがいいと思うよ? 何より、みんながみんな、痩せている人がいいとは限らないだろ?」
「リアムはぽっちゃりさんが好きなんですか?」
「アイリスだったらどんな体型でもいいよ」
見上げて聞くと、リアムはそう答えて、私の顎を上げてまたキスをする。
「……こういうの免疫ないんです」
「僕もあるわけじゃないよ。アイリスを見ていたら、したくなったからしただけ。キスも嫌?」
「それは、その、嫌では、ないですけど」
「じゃあ、今日はそれで我慢するよ」
そう言って、リアムはまた口付けてくる。
「そ、そんなキスばっかり恥ずかしいです」
「キスしかダメなんだろ? じゃあ、他のところに触れてもいいの?」
「だだだ、ダメです!」
ぺちんとリアムの手を叩くと、彼は楽しそうに笑う。
「まずは寝室を一緒にすることから始めようか」
「そ、そんな、私は別々でいいと思います……」
「アイリス。僕は君と一緒に寝たい」
「リアム! 元々、そんな契約じゃなかったじゃないですか! 人を愛せない的なことを言ってらしたのに!」
「しょうがないだろ。僕をこんな風にしたのはアイリスなんだから、君が責任を取ってよ」
「無茶苦茶なことを言われている気がします!」
私が文句を言うと、リアムは微笑して頷く。
「そうだね。でも、僕の気持ちもわかってくれる?」
「善処します」
「出来れば早くに頼むよ。我慢できなくなりそうだから」
そう言うなり、リアムは深く口付けてきた。
恥ずかしさはまだあるし、大変な一日だったけれど、18歳の誕生日は本当に、幸せな日になった。




