表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せなお飾りの妻になります!  作者: 風見ゆうみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/51

45 最悪なプレゼント

「そんなの無効だ! 納得できない!」

 

 お父様は叫んで紙を細かく破っていき、勝ち誇った顔で私を見る。


「無効になったぞ! 本当に生意気な!」

「残念。もう1枚あるから無効じゃないね」


 すかさず、リアムが私の代わりにお父さまに答え、トーイが補足する。


「こちらが保管している書類が本書で、あなたが破ったのは控えです」


「くそっ! どうしてだ! こんな娘に育てた覚えはなかったのに! なんて恩知らずな娘、いや、女だ! お前との縁なんてこちらから切ってやる!」


 お父さまは悔しそうな顔をして私を見て言った。


「育てていただいたことは有り難く思っています。ですが、お父様とお母様が私に教えてくれたのは、人を不快にさせる悪戯と、それをされた人がどんな気持ちになるかという苦しみや悲しみ、怒りの感情だけよ!」

「アイリス!」


 感情がおさえられなくなり、喚くようにして叫んだからか、リアムが近くに来て優しく私を抱きしめてくれた。


「落ち着いてくれ、アイリス」

「……申し訳ございません」

「謝ることじゃない」


 リアムは私の背中を優しく撫でながら、お父さま達に厳しい口調で話しかける。


「アイリスとの縁が切れたのなら、僕にとってもあなた達は赤の他人だ。今、この瞬間も屋敷内にいる事すら本当は許されない」


 抱きしめられている私には見えなかったけれど、どうやら、リアムが合図を送ったらしく、騎士が数人、部屋の中に入ってきた。

 様子を見たくて、リアムから体をはなすと、騎士がお父様やお母様、そして、ココルの腕をつかみ、ダイニングルームの外へ引きずり出そうとしていた。


「や、やっぱり嘘だ! 縁なんて切らない!」


 お父様は自分が言葉の選択肢を間違えたことに気付いたのか、首を横に振り、騎士に抵抗しながら叫ぶ。


「俺はまだ納得していない! はめられたんだ! アイリス! こんな悪戯、面白くもなんともないんだぞ! もっとユーモアのあるイタズラをしろ!」


 お父さまが最後までそんなことを叫び続けていたけれど、リアムが私の背中を優しく撫でてくれていたおかげで、興奮してどうにかなりそうな心を何とか落ち着けることが出来た。


 そうこうしている内にお父様達は連れて行かれ、ダイニングルームの中は急に静かになった。


 私が落ち着くのを待ってから、私とサマンサ、リアムにトーイ、屋敷で働いてくれている皆と一緒に、私の誕生日パーティーが開始された。


 やり切ったという解放感と高揚感からか、お酒を飲みすぎてしまった。

 そのため、酔いを覚まそうとサマンサと一緒に中庭に出た。

 あっという間に時間が過ぎて、もう夕方近いせいか、薄暗くなり始めた小道を歩きながら、最初に見つけたベンチに二人で並んで座った。


「あー! ハラハラしたけれど、上手くいったみたいで良かったわ。でも、炙り出しの紙のサインって正式に効力があるのかしら?」

 

 サマンサに聞かれて、私は苦笑しながら首を傾げる。


「わからないわ。だけど、そんなことを言われた場合、それこそ、リアムに何とかしてもらうつもり」

「ふふ。アイリスのためだって言って頑張ってくれそうね。マオニール公爵閣下って、肌の色は真っ白だし、服装は真っ黒で、なんだか怖いイメージがあったのだけど、両親と言い合っているアイリスを見つめている閣下の顔を見たら、ガラッとイメージが変わってしまったわ」

「え? そうなの?」

「やっぱり、アイリスは閣下に大事にされてるんだなぁって思ったわよ?」


 サマンサはニヤニヤしながら、私を見たあと立ち上がる。


「私もちょっと飲みすぎたみたいだし、水をもらってくるわ」

「それなら私も一緒に行くわよ?」

「いいのいいの。今日はあなたは主役なんだから! すぐに水をお持ちしますので、こちらでお待ち下さい、マオニール公爵夫人」


 サマンサはおどけて言うと、早足で、屋敷に向かっていく。


 今日は本当に疲れた。

 でも、これで終わったのよね……?


 安堵感と疲れが押し寄せてきて、ベンチにもたれかかって大きく息を吐いた時だった。


「アイリス」


 屋敷内で私に敬称をつけない男性はリアムだけ。

 だけど、リアムの声じゃなかった。

 夜から来ることになっている、お義父様の声とも違った。


 でも、聞き覚えのある声だった。

 もたれかかっていたベンチから、ゆっくりと身体を起こして、声のした方向に振り返る。

 少し離れた低木の隙間から現れたのは……。


「ロバート……?」


 どうして?

 という疑問符と共に、ココルの言葉を思い出した。


『今日はスペシャルなプレゼントを持ってきたわ!』


 もしかして、プレゼントって……。

 ココルが忍び込ませたの……?


「会いたかったよ、アイリス」


 現れたのは、元婚約者のロバートだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ