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王都で何をする?

 女性陣二人は裏庭に面した部屋を、男性陣は表通りの部屋を使うことにした。

 「作戦会議をしよう!」というももちゃんの掛け声で、男性陣の部屋に4人が集まった。

 ももちゃんとめりるどんは男性部屋にある2つの内のドア側のベッドに並んで座っている。

 みぃ君は、窓側のベッドに座っており、ごんさんは壁に背を預けて立っている。

 この部屋にはテーブルがないのだ。


 「とりあえず、掃除はそこそこされているみたいだし、オマルじゃなくってトイレがあるなら、ここで正解だね。」とめりるどんからもこの宿でOKのサインが出た。

 「風呂はないけどな。」とごんさんがぼそっと言った。


 「まぁ、それは自分たちの住居兼店舗を購入するまではお湯で体を拭くことで我慢しましょう。」とももちゃんが宥める様に言う。そして、徐に頭を上げて、「それよりも、この王都でどんな商売をするかについて、もう一度話し合おう。」と議題を決める。


 「やっぱり食堂か宿屋?またはその両方?」

 めりるどんがみんなの顔を見回しながら今まで何度も挙がった案を言った。

 「うん、やっぱりそれが現実的だと思うぞ。」とは、日本でも自分の店舗を持ってるごんさんが徐に頷く。


 「みぃ君は何か案がある?」とももちゃんがみぃ君を指名する。

 「宿屋の一択やなぁ。」といたずらっぽく笑うみぃ君。


 「宿屋や食堂は薄利多売系の商売だから、大きな儲けにはならないかもしないねぇ。」とめりるどんがみぃ君を見ながら思案顔で言う。「でも、それは、何かを売るお店でも、濡れ手に粟とはいかないと思う。砂糖を売るのならかなり有利だとは思うけど、そうなると既存の販売ルートを調べたり、そこと調整しながらとかになるから鬱陶しいねぇ。」と、続けた。


 「う~~ん、めりるどんの言う通りやね。石鹸を売るっていうのも一つの案ではあるけど、私たちが作っているものだけでは商品のラインナップが貧弱だしねぇ。石鹸となると顧客のほとんどは貴族になって、面倒でしょうしね。お酒は需要があるでしょうが、今以上の量を生産するのは難しいしねぇ。」

 ももちゃんも、最初から商店というのは考えてないらしく、かなり宿屋に拘っているらしい。王都で何をするかの話しになると、中立的な立場で話しを進めようとはしているのだが、個人の意見となるとかならず宿屋を推してくる。


 「店をするにしても、売れる物は塩や砂糖の調味料か、出汁の粉や酒か、石鹸かなぁ。って俺らが作ってるもんばっかりだけどなっ。」とごんさんは、一人ボケ突っ込みをしながらも、お店であるケースも考えている様だ。「どっちにしても、宿屋でも酒はいるだろうし、森でいろいろ作らないと足りない物がたくさんあるので、森での生産活動は王都でもやる必要はあると思うぞ。幸い、王都のすぐ横に森がある事だしな。」

 王都では肉などは冒険者ギルドを通じて、王都内の商店で販売されているが、鮮度の問題などもあるし、ごんさんには王都での生活が落ち着いたら、森での狩猟活動もしてもらうつもりでいる。鮮度と言っても、きちんと血抜きをし、数日涼しいところで熟成させる処理のために必要な指標の事を指している。

 確保した肉の一部はギルドでの信用を勝ち取るためにも、納品しなければならないとは思うが・・・。

 王都を北、東、南を囲う様な形で森が広がっているのは4人にとってありがたい事だった。


 「ごんさんの言うことも一理あるね。宿屋とか食堂にしても、他のお店との差別化を図るには、目玉商品はいるしね。森での生産活動は必要だね。」とももちゃんがベッドの上に上体を後ろ向きに倒して天井を見ながらつぶやく。他人様のベッドでもおかまいなしだ。


 「まずね、私たちが持っている現金で買える物件でなければならないわけで、買える物件の大きさによっては、お店しかできないでしょうし、大きな建物ならそれこそここの様な宿屋兼食堂もできるでしょうし・・・。まずは不動産屋さんにどんな物件がどこ地区にあって、買えるのか、買えないのかをはっきりさせたらいいんじゃないのかな?」とめりるどんが纏めてくれる。


 「そうだね。不動産屋さんで、最低でも寝室が4部屋、小さくてもいいので店舗がある物件か宿屋として使える物件で、予算内で買えるものを聞いてみよう!みんなもそれでいいよね?」と、倒していた上体を起こして、ももちゃんは全員の顔を見回す。

 結局、不動産屋さんへ行くことを最優先にして、物件を見て回ることになった。


 翌朝、冒険者たちのラッシュ時間が終わるのを待って4人で冒険者ギルドに行き、信用できる不動産屋さんを2軒紹介してもらった。

 一つ目の不動産屋さんは、門から中央広間までの目抜き通りの物件を多く持っていて、4人の予算からはかけ離れた値段の物件ばかりだった。

 払えない訳ではないが、不動産の取得のためにそこまで多くを支払うと、商売を始めるための資金が大きく減らされる形になるのだ。


 営業担当の人もでっぷりと太った、油でテカテカした顔のいかにも良い物を食べてます感満載の男性だった。彼は、四人を王都の目ぬき通りの物件3軒を紹介してくれた。


 「そりゃ、物件は綺麗だし、人通りの多い地区だから、商売もそこそこ上手く行きそうだけど、値段がねぇ・・・・。」とめりるどんがため息をつく。

 この不動産屋さんが提示した金額は4人の想像していた金額と桁が一つ違った。

 「もう一つの不動産屋さんもあるから、そっちへ行ってみよう。」と切り替えの早いごんさんが、もう一つの不動産屋さん目指して移動し始める。


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