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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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そうだ王都、行こう!

 会社を立ち上げて1年が過ぎた。

 今では、会社の生産活動及び生産管理は現地の人たちだけで回せる様になった。

 まぁ、そこまでの筋道を立てるまでには、人員の配置換えや、工程の見直しの連続であったのだが・・・・。


 雇った人たちを首にすることはなかったが、従業員の昼食を作るために雇ったカリンカの方が火の作業担当のサリスより火の扱いが上手だと分かったので、二人の配置を交換したり、農作業要員の内一人が、農作業よりも果実を圧搾して作るジュースづくりの方が他の従業員に比べ短時間に大量に作れるなどという事が判明したので、彼をジュース専用にしてみたり、グリュッグの工場での完成品の品質が良くなる様に各材料等の入れ物の大きさを微妙に調整したりといった事だ。

 ちゃんと美味しいお酒になる様に、ジュースの樽の大きさを決定し、態々その大きさの樽をグリュッグの職人に作成してもらっている。

 もちろん天然酵母を入れる壺の大きさも決定し、同じくグリュッグの窯元に同じ大きさの壺を大量に作ってもらった。


 ただ手作りなので、まったく同じ大きさの樽や壺というのは厳密に言えば違うのだが、一見して同じ大きさの様に感じる程度には大きさが揃えてある。


 また、ザンダル村では1年を通じ雨期と乾期しか季節がない。

 雨期の作物と乾期の作物は味が違うので、酒のベースとなるジュースを夏仕様と冬使用で整えることや、火を使う作業でも火加減が変わってるなど、様々な調整が必要だった。


 この様に紆余曲折を得て、なんとか全ての作業手順が確立できたのだ。

そうなると4人の関心はいよいよ首都へ行き、そこで生活することになった。


 「で、どうする?首都でも何か事業をするでしょ?」と何の脈絡もなく、めりるどんがみんなに話を振る。

 口にあった食べ物を飲み込んだみぃ君が、「そやな、何もせぇへんのは、もったいないなぁ。お金は足りんようになることはあっても、余ることはあらへんからなあ。」と相槌を打つ。


 4人は村の居間で食事をしているところだった。

 「で、首都では何をするの?」とめりるどんが促すと、「私ね、宿屋はどうかなって思ってるんだよね~。」とももちゃんが間髪入れずにに答えて来た。

 「自分たちの寝床にもなるし、同時にお客様を泊めてお金も入ってくるし、食堂も併設したら、家のお酒も売り出せるし、石鹸も小さくカットしてアメニティとして付けれればちょっとした高級な宿屋になるしね~。いいことづくめじゃん。」


 ごんさんは少し思案する顔になってしばらく黙っていたが、「でも、宿屋ってことは、自分たちの部屋に知らない人が入って来やすくなるから治安の面でもちょっと不安だし、夜中に出入りする人たちもいるだろうから24時間の仕事になるんじゃないか?」と懸念材料をテーブルに並べた。


 「う~ん。それもそうなんだけど、例えばお酒や石鹸を売るお店を作るにしても、商品の種類が少ないのと、4人も人手はいらない気がするしねぇ。商店をするとして商品の種類を増やすとなると、どこから仕入れたらいいのか分かんないしねぇ。やっぱ、商店なら家の商品だけを扱うことになるのかなぁ?そうなると品物の種類不足っていう問題にまた戻っちゃうねぇ。」とめるどんがこれまた少し時間を掛けて考えた上で発言をした。


 「たださぁ。全員で毎日仕事しなくてもいいと思うぞ。だって、この村やグリュッグのでの事業も継続してやるんだろ?なら定期的に巡回して様子を見ないといけないから、ほぼほぼ常に1人は不在になるだろうし、元々自分たちがずっと働かなくていい様にするために、従業員雇ったり、シミンを教育したりしたんだから、また全員でいろいろやるってなったら本末転倒じゃないか?」とごんさんが鋭い突っ込みを入れた。


 「ごんさんの言う事も分かるんだけどねぇ。ただ、あんまりやる事がなかったり、毎日同じ事ばっかりやってたら飽きちゃうじゃん?だから、新しい事業部門の設立みたいな?そんな感じかなぁ。事業が順調になったらまた人雇って、任せてって感じになるんじゃないかなぁ。」とめりるどんが楽しそうな表情で若干身を乗り出して熱弁する。


 それを聞いてごんさんはぶっ!と飲んでたお茶を吹いた。「娯楽かよ~。」

 めりるどんはいたずらっぽく「ふふふ。」と笑った。


 「どっちにしても首都へ行って、自分たちの持ってるお金で買える物件がなければどうしようもないんだけど、お店と宿屋を候補にして物件を探して、手ごろな方でっていうのはどう?それすらもダメなら、家だけ買って、屋台っていう手もあるしね~。」2人とは反対に、あまり考えず、ぱぱっと思った事を言うのは、ももちゃんの通常運転なので誰も驚かない。


 「ほんで、宿屋も候補へ入れてかまわへんの?」とみぃ君が残りの二人の顔を見ながら確認する。


 「私的には宿屋が一押しなんだよ~。これぞ異世界だよね。」とももちゃんが言うと、「それな!」とみぃ君も響く様に答える。

 この二人は、前からラノベとかを読んでいたので、異世界の宿屋になんらかの浪漫を感じている様だった。


 「24時間営業の問題は、現地で人を雇えばいいだけだし、自分たちの部屋には鍵のかかった柵や戸を設けて、且つ各自の部屋も鍵をつければ2重の意味で安全だし、そもそもお客が私たちのプライベートエリアを通らなくても自分たちの部屋へ行ける設計にすればいいんじゃない?」とこれまたあまり考えずにももちゃんが発言するが、そんなに的が外れた事も言ってない。


 「う~~ん。それなら宿屋はありかなぁ~。お店をするにしたって、私たちだけで回していく訳じゃなく、店員を雇うことになると思うから、宿屋も商店も条件的にはあまり変わらないかなぁ~。」

 「そうなのよ、めりるどん。それにね、ほら、グリュッグとかガクジンリンとかへ行った時、泊まるのに良い宿ってないじゃん。女性だけでも安心して泊まれる宿とか。だからね、ちょっと日本というか地球のエッセンスがまじった宿屋やってみたいなぁ~って。」

 なんだか、ももちゃんに変なスイッチが入った様だ。目がキラキラしている。


 「じゃあ、店と宿屋を候補に探しに行くか。」とごんさんが食べ終わったお皿を持って炊事場へ向かった。

 残りの3人もそれぞれのお皿を台所へ持って行く。

 「んで、いつ頃行くのん?」というみぃ君の問いに、「会社の方はシミンがいるからいつでもOKだよ。」とももちゃんがすかさず答えた。

 「んじゃぁね、今度のグリュッグへの移動を4人でして、グリュッグの後、その足で王都へ行ってみる?」とめるどんが自家製の石鹸で泡立てたココナッツもどきのファイバーを簡単に纏めたなんちゃってタワシで、皿を洗い始めた。


 横に立って皿などを濯ぎはじめたみぃ君は大きく頷き、テーブルを布巾で拭いていたももちゃんからは「だね~。」と回答が返って来た。

 みぃ君が沸かしてくれているお茶のためのカップを両手に持ってテーブルに戻って来たごんさんが「りょ~。」と言い、4人全員のコンセンサスは得られた。


 その日から、グリュッグへ水車小屋の様子見とアンジャの店で商品を卸すのと、水車小屋の顧客への集金作業、出汁の元の干し終わった原料を用意するのとは別に、首都で約1週間過ごすための準備も始まった。


 宿屋で必要となるシーツなど、昔ももちゃんが四苦八苦して真ん中を縫い合わせた今では使ってない古いシーツを人数分荷物に入れた。お金もどれだけ持って行くかなど、着替えについても、4人の不在中会社の方をどうするか等、毎晩の様に話し合われた。


 シミンは通常の管理の仕事以外にも、4人がいないときにトラブルが起きたらどう対処するかなどを体系的に纏めた薄っぺらいマニュアルを4人と一緒に作ったり、万が一4人の首都滞在が長くなった時の、従業員への給与の支払いなどを任せるために、細々とした事を取り決めたり、結構忙しくなった。


 同じ事をグリュッグでドブレにも行わなければならない。

 グリュッグの水車小屋以外の2つの工場は、ザンダル村関係者を工場長として雇っているのだが、その中でもドブレが一番古くから4人との付き合いがあり、信頼も高い事から、グリュッグ全般の事業の大まかな管理を任せているのだ。


 もちろん生産に関する管理などは各工場の長が行うので、ドブレがやっていることは緊急の時4人に連絡する事なのだが、ありがたい事に、今までそんな緊急事態は起こっていない。


 業務連絡は、その工場にのみ関するものは、各工場長と4人の誰かが直に行っており、月一の確認以外にも連絡を取りたければアンジャの店に伝言を各自が残しているので、ドブレが特段何をするということではないが、水車小屋と2つの工場に共通して知らせねばならない事は、ドブレを介して2つの工場長へ伝えてもらう事もあるのだ。

 そして今までは一度もないが、どうしても緊急で4人に伝える事がある場合は、ドブレが代表してザンダル村へ来てもらう様にしている。

 これは、ドブレに信用があるのと同時に、水車小屋の作業は故障さえなければポンフィ一人でも回せるということがある。


 出身地ではない町で暮らしていても、やっぱり親の出身地が同じだと、子供同士も自然と一緒にいる事が多くなる様で、石鹸工場の工場長はドブレが推薦したザンダル村関係の幼馴染なのだ。工場長クラスと副長クラスは、グリュッグに住むザンダル村出身者で固められている。


 そんな関係で、4人が王都に移り住む場合は、グリュッグのまとめはドブレの肩にかかってくることになる。


 ポンフィも大人しくなったし、水車小屋ではあれ以来大きな事件は起こってない。

 ザンダル村だけでなく、グリュッグの方も至って順調。

 4人の懐もそこそこ膨れているし、王都へ行くにはちょうど良いタイミングだ。

 いざ!鎌倉ならぬ、いざ!王都な4人であった。


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