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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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新たな日常 その2

 一旦、畑の開拓が終了した後、もっとお酒を売れば安定した収入が見込まれ、従業員への支払いの心配もなくなるだろうというごんさんの意見を尊重し、畑の開拓を海まで広げた。

 そうなってくると、作業小屋の場所をどうするかで4人は話し合った。


 「海と川がクロスする所に作業場があると、今みたいに筏に荷物を載せて川を下らなくても良くなるからいいんじゃない?」

 「でも、ももちゃん。石鹸とかは真水がいいから、海と交わるところはダメだと思うよ。」

 「そうかぁ。めりるどんの言う通りだね。でも、あの重たい樽を筏に乗せた後、海辺で舟に積み替えるのも二度手間な気がするんだよね。」


 「それって、作業小屋をもう一つ作ったらええんやないか。」

 「「おおお!」」と女性陣が頷いた。

 「今なら人手もあるんだし、塩づくりの窯と海藻の乾燥、ジュースを作って樽詰めし、舟に乗せるのは海と川のクロスする場所でいいんじゃないかな。」

 「でも、ごんさん、ジュースを作る時、真水がいるんじゃない?」

 「う~ん。ももちゃんが言うのも一理あるね。井戸があればいいのかな?」めりるどんがももちゃんに頭を横に傾げながら話しかけた。

 「でも、井戸が掘れるか?ここ?」とごんさんはめりるどんの方を向いた。


 「ジュース作りそのものは水が無くても作業できるよね?要はフルーツを洗ったり、樽を洗ったり、手が汚れた時に海水で洗ったら塩味がジュースに付いちゃうじゃないかっていうのが問題なんだよね?」とももちゃんがめりるどんに同意を求める様に聞いた。

 「そうだね。とすると、そんなに大量に水が必要な訳じゃないよね。」

 「それなら、川の水を利用してフルーツを流して、それでフルーツを洗ったことになるし、そのまま川下へ流して海側の作業小屋でジュース作りの作業が出来るよな。」

 「え?ごんさん、どういうこと?川に流しちゃうと拾い上げるのが大変じゃない?河口にネットか何かを貼って、フルーツを回収するの?河口の水は塩水混ざってないの?」

 「あ!めりるどん、多分だけど、ごんさんが言いたいのは、竹を利用して、上流の川に繋いで、その水の流れでフルーツを川下へって事じゃない?」

 「おお!」

 「ほなら、その竹の配管の水を使って、手も洗えるしええな。」

 

 そんなこんなで、川上の作業場から川下の作業場までの竹配管設置と、川上の作業場を以前のものよりしっかりとした建物にし、川下にも新しく作業場を作るため、余剰人員であった2名の男性の契約を数日伸ばして対応した。

 特にジャングルでは人数も増えた事から、ごんさんたち4人の家の横に作った様な、移動式ぼっとん便所も作ってもらったため、この余剰人員の契約は当初考えていたものよりも、かなり長くなった。


 作業小屋が川上側だけでなく河口付近にもできたのだが、従業員の昼食は今まで通り川上側の小屋で作ることにしたので、河口で作業している従業員は1日1回は川上に向かって移動しなければならないが、荷物を持たずに移動できるのでそこまで苦にはならなさそうだ。


 結局、シミンともう一人のおとなしい茶髪の男性は、今回の契約延長後、一旦は契約を終了することとなった。

 シミンは、いろいろと気が付き、みんなを代表して質問をしたりする事が出来るが、肝心の農作業が苦手の様で、契約続行組みの3人に比べればかなり見劣りがしたのだ。

 従業員をまとめる役にどうかという話もあったが、読み書き計算ができないので、管理職として雇うには能力が足りないということで、残念ながら雇用を見送ることとなった。


 もう一人の茶髪の男は、見た目はがっしりとしていたが、体が弱い様で、元々農作業の様な体力命の仕事には向いていない様だった。それにも増して、時々、収穫物であるフルーツを盗み食いしている所も見掛けていたので、この男性は4人の中では早い時期から雇用対象から外されていた。

 こんなにたくさんあるのだから、お腹が空いた時にちょっとくらいは食べてもいいだろうという感じだったので、盗むといった感じではなかったこともあり、途中で解雇することはしなかったのだが・・・、やはり商品や材料を勝手に消費する様な者は従業員として雇うには躊躇してしまうのは当たり前の事だった。


 「今回の農作業については契約終了になりましたが、今後もいろんな事業を始めると思うので、その時はまた声を掛けさせてもらうこともあるかもしれません。その時はよろしくお願いしますね。」とももちゃんがシミンには説明し、シミンに関しては細い糸ではあるが、今後も雇用する可能性を示した。

 シミンにしても、本来ならもっと前に契約が終了しているところ、2つの作業小屋建築など仕事を増やしてくれ、できるだけ長い時間雇ってくれた事が分かっていたので、残念には思いながらも、特に文句などは言わなかった。


 従業員を雇う事で、4人の作業量はかなり減ったが、それでも従業員の監督や作業に対する疑問に答えたり、改善を行ったりでやっぱり忙しかった。

 最低月1回はジャイブに舟でグリュッグまで送ってもらい、水車小屋のメンテと、ドブレたちの監督と、顧客への集金をし、石鹸と出汁の粉をアンジャの店に卸していた。


 猿酒の方だが、畑も広がり、ジャングル特有の気候のお陰で思ったより早く育ったフルーツも数か月後には収穫できる量がかなり増えた。

 移植した木が全て順調という訳ではなく、移植後すぐには実をつけなかった木もあったのでその様な木は最初の頃の収穫には間に合わなかったが、その後は順調に収穫量が増えた。


 フルーツの量が増えた事で、ガクゼン領主に約束した5樽の酒を無事献上することが出来、4人はホッと胸を撫で下ろした。

 それ以外の増産で増えた酒はグリュッグで売るのか、ガクジンリンで売るのかを4人で話し合った結果、販路も既に確立していることと、移動時間が短くて済むグリュッグの方が理想的だということで落ち着いた。

 グリュッグでの販路とは、アンジャの店を指している。


 猿酒は、天然酵母作りは今まで通りももちゃんが一人でやっている。

 フルーツの収穫や砂糖作りまでは従業員の方で作ってくれるので、砂糖を加えて1日に1回振るのが仕事だ。

 作らなければならない天然酵母の量が爆発的に増えたので、液体を振って作る酵母作りはそれなりに辛いが、それでも以前に比べれば作業量がぐーーーんと減っているので、ももちゃんも嬉しそうだ。


 ジャイブが舟で村まで運んでくれたジュース樽は、新たに作った村の外れの倉庫に置かれており、ももちゃんが天然酵母を混ぜ、再び蓋をして寝かせて、猿酒としている。


 石鹸も、最後に材料を混ぜるのは、めりるどんが作業している。

 その時はめりるどんが作業小屋まで移動しているが、数日に1回なので、以前に比べればとても楽だ。

 ももちゃんと一緒にソープバスケットを作る事もあるが、それも毎日ではない。

 アンジャの店で取り扱ってもらうので、作れば作っただけ売れるのだが、気が向いた時だけ作業している様だ。

 まぁ、高級品ということもあり、市場に回る数が少ないくらいの方がプレミアム感が出て良いだろうと4人の中で意見は一致しているので問題はない。


 みぃ君は出汁の粉に集中できる様になり、作業小屋へはあんまり行かなくなった。

 材料の乾燥具合などは、石窯のお陰で安心できる。

 石窯に使う薪などは、採集係の男の子2人が担当してくれているので、みぃ君がジャングルに 入って木を切ってくる必要もなくなった。


 配合はみぃ君自身が一人で行っているが、配合割合を秘匿する為にその作業は家でやっている。

 みぃ君が配合した物は、袋詰めされ、4人の誰かがグリュッグへ行く時舟に乗せ、水車小屋まで運び、その日の内に水車小屋の営業時間外に1時間くらいを掛けて粉に挽いている。

 1時間くらいなら近所の騒音としても我慢してもらえる時間なので、それ以上作業時間が伸びる時は、2日以上に分けて作業している。

 挽かれた出汁は、元々配合されたものが入っていた袋にそのまま入れられ、アンジャの店に運ばれる。

 アンジャの店で量り売りされているのだ。


 ごんさんだけは、動物の罠があるので、毎日ジャイブが操作する舟に乗ってジャングルまで通っており、従業員の作業状況や、畑へのジャングルの侵略具合などのチェックを行っており、あまり作業量が減っていない。

 それでも貴重な肉を入手するためには、ごんさんが割を食う事になっても今まで通り罠を仕掛けるのを続けてもらうしかない。

 ごんさん自身も毎日魚料理になるよりはと、肉の入手には力を入れているので、否はない。


 会社として秘匿しなければならない配合などの情報に関しては、依然4人が担当しているが、それまでに至る材料の下準備などは従業員に任せている。

 そんなこんなで半年経って、随分と楽になったし、収入もぐんと増えた。

 石鹸に加え、猿酒もグリュッグでは売れ筋商品の一つだ。

 猿酒の納品のため、ジャイブの舟もグリュッグへ行く機会は、月一回から週一回に増えた。

 そんな中、水車小屋で新たな問題が持ち上がった。

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