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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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従業員

 モリンタが集めてくれたザンダル村の人手は、火を使う仕事に女性3人、農地の開拓に男性5人、採集の仕事に子供2人、いずれも男の子を紹介してくれた。

 農地担当に関しては、元々予定していた人数より多めに集めてくれたのは、4人がちゃんと面接をして決めたいとモリンタに話していたからだった。


 魚介類の加工には、現在雇っているロミーたち3人で間に合っているし、他の人と配置を変える事は考えていない。

 舟の操作についてはジャイブがルンバたちと問題にならずチームから抜ける事ができたので、そのままお願いすることにした。

 ジャイブの舟は、ルンバが言っていた通り、ジャイブの甥が譲り受け、そのままルンバのチームに入る事になった。


 ただ、ジャイブがグリュッグなど泊りがけの移動の時、従業員や商品の移動がどうしても必要な時は、ジャイブの甥がサポートしてくれると約束してくれた。

 「分かりました。ルンバさんたちがOKなら、僕は伯父さんの舟で村の中での移動を手伝う事にします。ただ、まだ舟の操作には慣れていないので、伯父さんほど上手く操作できるかは分かりませんが・・・。」とまだ10代後半で初々しいジャイブの甥は、ルンバの顔色を見ながらも協力してくれることに同意してくれた。


 「前もって言ってくれれば、問題ないぞ。」とルンバも快く同意してくれた。「まぁ、二人ともが手に余る場合は、俺に声を掛けてくれてもいいがな。」と、相変わらず猿酒が欲しいルンバがニカっと笑ってアピールを忘れない。

 「そん時は、よろしく頼むよ。」というごんさんの言質を得て、ルンバが再びニカっと笑った。


 火を使う仕事を考えてモリンタが声をかけてくれた女性3人は、ザンダル村でも中年に差し掛かった主婦たちで、毎日のおさんどんで火を扱うのに慣れた者たちだ。内1人は、ももちゃんの言葉の先生、ダンガだった。

 「もう、子供にそんなに手がかからなくなったからねぇ、暇なんだよ。」とにっこり笑う。

 ももちゃんにしても気ごころが知れているダンガさんが作業小屋で働いてくれると、とても安心なので一も二もなく雇った。

 火を使う作業には、元々2名と考えていたが、昼ご飯を作る1名分を含むと考えるとこのままこの3人を雇う事は難しくない。

 従業員の食事を作るのは、カリンカというロミーの家の隣に住んでいる主婦にお願いする事にした。

 ダンガともう一人のサリスという主婦に火の作業を主にお願いすることにした。

 もちろんカリンカも食事を用意する時と酒場に卸す肴を作る時以外は、石鹸づくりなどの火の作業をしてもらう。


 畑の開拓や、作物を育てるのは、男性ばかり3名を考えていたので、モリンタが紹介してきた5名というのはかなり人数が多い。

 いずれも農家の出で、3男や4男で、体はそこそこがっしりとしている者が多く、麦だけだが、農作物を作るのに慣れた者たちが多かった。

 面接は、ももちゃんとみぃ君で行ったのだが、5名同時に面接をした。

 

 「畑の作業は、今のところ3名を雇う予定です。最初に農地を広げる作業は人数が多い方が良いので、このままこの5人で作業してもらいますが、開拓が終わったら3名だけ続けて雇います。みなさん、それでもこのお仕事をしてくれますか?」とももちゃんが口火を切った。


 ももちゃんの説明を聞いて、5人の村人はザワザワと村人だけで話し合ったが、その内の1人、30代に見える比較的しっかりとした雰囲気の男性がみぃ君の目を見て「それは今いる5人の内、2人は数日で仕事が終わるということですか。」と聞いて来た。


 「はい。」とみぃ君が答えると、「村長から、3名しか募集がない事は聞いていました。ということは、数日間であっても5人全員に仕事があるということですね。」と先ほどの男が聞いてきた。


 「そうです。」とみぃ君が頷くと、続けて同じ男性が「俺は、シミンと言います。たくさん質問してすみません。開拓の後、残れるかどうかはどうやって決めるのですか。」と5人を代表して質問を続けた。


 「仕事が合っているかどうかを開拓の間に見極めるつもりです。」とももちゃんが答えた。

 「それは、農作業ができるかどうかということですか?」

 「はい、シミンさん。私たちの農業は、もしかしたら皆さんが今までやってきた農業とは違うかもしれません。その上で、私たちのやり方で農作業ができるかどうか、そういったところを見極めたいと思っています。後、収穫物を絞ってもらう作業もあります。」

 「絞る?」

 「はい、今、ジョビにフルーツを絞るためのからくりをいくつか作ってもらっています。今すぐ使えるのは1つしかないのですが、最終的には3つになる様に用意しますね。」

 「わかりました。絞って汁を集めるってことですね。」とシミンが答えると、

「そうです。かなりの量が必要なので、この絞る作業にも時間を割いてもらうことになります。」とももちゃんが説明すると、「分かりました。」とシミンが代表して答え、残り4人も軽く頷き、この条件であっても働きたいと全員が意思表示をしてきた。


 ジャングルでの採集だが、最初は大人1名を考えていたが、モリンタが紹介してきたのは男の子2人だ。

 10歳くらいのラインズ。黒い髪で、痩せているが、はきはきと会話が出来る印象だ。

ラインズと同じ年か、少しだけ幼く見えるアルボンは、金髪で同じく痩せているが、答える前にしばらく考えてから答えるという慎重さを持った子だ。

最初、アルボンはのんびり屋さんかと思ったが、失礼な受け答えを避けようと、自分なりに一生懸命考えて答えているのが分かり、ももちゃんとみぃ君の中でもアルボンに対する評価は高い。

 二人とも漁師の父親が事故で亡くなった家の子供たちで、少しでも苦しい家計を助けたいという彼らの気持ちを汲んでモリンタが4人に紹介したのだ。


 子供だから大人に比べて安い人件費で済む。

 それを考えたら2人を雇う事は可能だ。

 ただ、農作業に5人が応募し、最終的には3人しか雇わないということで、本来なら採集にあぶれた内の1人を雇うこともできた。

 ましてや採集物の中には重たい薪なども含まれているので、子供よりは大人の方が、都合が良い。


 しかし、働き手を失い、母親が細々と農業をしながら家族を養っている状態の2家については、4人としても手を差し伸べたいと思った。

 ラインズもアルボンもノコノコたちと遊んでるところを見たことがなかったので、今までも遊ぶ事なく、母親を助けて働いていたのだろうと想像がついた。


 子供なので、大人とは違う給料になる事を説明したが、どんな金額でもいいので働かせてくれと必死に頼む二人に4人に否はなかった。


 これで一旦は全員を雇う事になった。

 当初考えていたベッグ村からの雇用は実現せず、全員ザンダル村の村民で事業を動かす事になった。


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