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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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報告 その2

 夕食のテーブルを見て、そして匂いからもパンがある事に気づいたみぃ君とごんさんは歓声を上げた。

 「どないしたん、これ。パンやん。」

 「うむ。パンだな。」

 「壊れかけた石窯を買って裏庭に据えたの。だからパンも作れるの~。」とももちゃんが少し誇らしげに答えた。


 「石窯?おお!よく手に入ったな。」ごんさんは、まだ石窯について誰からも説明を受けていなかったので、初耳だったのだ。

 「うん、ももちゃんがねモリンタに聞いて、酒場にあるって教えてくれたから、買ってしまいました~。」とめりるどんが付け加えた。

 「パンが焼けたってことは、ジョビのところから扉が届いたの?」

 めりるどんが嬉しそうにももちゃんを見た。

 「うんうん。」

 「一人で取り付けてくれたんだぁ。ありがとう。」とパンを見つつめりどんがごめんという様に片手を顔の前に持って行った。

 「簡単だったからね。さぁさぁ、ご飯を食べよう~。」と、ももちゃんが焼き立ての内に食べようと一旦会話を切って、みんなをテーブルへ促した。


 「おお!今日はごちそうやね。」パン以外の皿も見て、みぃ君は嬉しそうだ。

 「うんうん。」とめりるどんも頷く。

 焼き立てのパンの香りは香ばしく、全員おかずより先にパンに手が伸びる。

 卵も牛乳もバターもないので、少々皮がパリっとした中身はふんわりした丸いパンが蔦で編んだ籠に盛られていた。

 メニュー的には不要だが、一応フルーツで作ったジャムも食卓にはのぼっていた。


 一通り食事が済むと、みぃ君がみんなに「出汁の粉、めっちゃ順調や。煮干しも黴が生えん様になっとるし、めりるどんには感謝感謝や。」と、口火を切った。

 みぃ君は、今日浜辺で実際にロミーたちが働くのを確認し、作業手順も危なげなく熟していることや、浜辺の小屋が出来上がっている事などを嬉しそうに言い、めりるどんに再度感謝した

 「ロミーたちも作業に慣れて来たみたいで、危なげなく処理しよる。後、フルーツを運ぶのに筏はええなぁ。2つ追加で作っといたので、明日から使えるでぇ。」

 「おお!仕事が早い。」とめりるどん。


 「俺の方も、罠は全部新しく仕掛けておいた。畑は、みぃ君と二人でジャングルの木を伐採しておいた。結構畑に迫ってたな。」

 「畑の雑草くらいなら抜けるけど、ジャングルの木の侵略はさすがに私たちが斧で切り倒すのは難しいよね。」とももちゃん。

 「うん。それ以前に石鹸つくりにも追われていたし、お酒用のフルーツ収穫するのとで、結構手を取られてたから、畑は収穫物取りに行くくらいしかできなかった~。」とめりるどんが軽く頭を下げながら言う。

 「いやいや、二人がいない間、めりるどんは作業小屋での仕事だけじゃなく、みぃ君の出汁事業についてもちゃんと毎日記録取ったり、ロミー達に指示だしたりしてたからね。めっちゃ忙しかったと思うよ。」

 「そういうももちゃんだって、お酒作りながら作業小屋までフルーツ取りに来たりしてたし、私だけが大変だったわけじゃないよ~。それに、ごんさんとみぃ君も水車を2台作って、新しい人雇って、めっちゃ大変だったはず。」

 「みんなが大変やったってことやね。」とみぃ君がしみじみ言うものだから、みんなで笑った。


 食後のお茶を入れながらめりるどんが、「実はね、新しいプロジェクトを考えているの。ももちゃんと二人で考えたんだけど、説明が長くなる予定なの。今夜は二人とも体力的に長い話、大丈夫?」と、帰宅したばかりで今日一日ハードに動いていたみぃ君とごんさんの顔を心配そうに見た。

 疲れているだろうが、二人とも当然とばかりに頷いてくれた。


 ももちゃんは以前プロジェクトについて、いろんな事を書きだした紙を棚から取り出した。でも、説明はめりるどんがする様だ。

 「あのね、まず、今私たちが作ってるもの、経営してるものって結構多岐にわたってて、私たち休みなく働いているよね?」

 「そうだな。」

 「石鹸やお酒なんか、作れば作っただけ売れるもので、結構いいお金になるものもあるよね。水車小屋や出汁の粉なんかもこれから安定した事業になると思うんだ。利益も増えるしね。」

 「そやな。」


 「でもね、お金がいくら手元に入ってきても、私たちが全然休み取れないのなら、それって良い生活なの?って思ったの。」

 「それに作れば作っただけ儲かっても、4人だけじゃ作れる量に限りがあるものね。」と、横からももちゃんが援護射撃をした。

 男性陣二人も頷首した。


 「そこでね、会社みたいなのを作って、ザンダル村の人や、近隣の村から人を雇っていろんな作業をしてもらうっていうのはどうかなって思って。」

 「「おおーーー!」」

 男性陣二人が口をOの字にして目を大きく開けた。

 「いいアイデアでしょ?」とももちゃん。


 「一応ね、私たちの方で、作業別に必要な人数を割り出したの。これ見て。」と、めりるどんはももちゃんが差し出した紙を受け取り、男性陣の方へ向けた。

 「技術を盗まれるのは嫌なので、火を使う担当は石鹸も、ココナッツオイルやラード作り、酒場に卸すフライ関係とかやってもらって、何が何と作業的に繋がっているのか、わかりづらくしようと思っているの。」

 「「ふむふむ。」」

 「で、こういう風に事業を展開していくと、グリュッグの水車小屋の経営も含めて、材料を運んだり、人を運んだりする事が絶対に必要になると思うんだ。」

 「お!それは自前の船を用意するってことかいな?」

 「そう!そうしたら隣町からも人を雇えて、毎日船で送り迎えできるしね。」


 「それだけじゃなくって、ベッグ村の人を雇うと、お迎えの際に牛乳やヨーグルト買って来やすくなるよね。」と、ここでも援護射撃をするももちゃん。

 「お!それいいね。」とごんさんも身を乗り出して来た。


 「船がね、どれくらいのお金が掛かるか分からないけど、購入する方向で話を進めてみたいんだ~。一応はルンバに船の購入については話を聞いてみたんだけどね。どっちにしてもこの村で私たちが考えている様な大き目の船は買えないみたい。」

 「大き目ってどれくらいを考えているの。」

 「人なら10人くらい乗っても大丈夫なくらい。あと、物を運ぶ事を考えたら、酒樽なら10個乗せれたらお酒をグリュッグにも卸せる様になるかなぁって。」

 「壮大な話やな。今の手持ちの資金で回せるかどうかが鍵やな。」

 「船さえ購入できたらそこまで難しい話じゃないと思う。出汁の粉だって売る先は、もう開拓してるんだし。石鹸とお酒は作れば作っただけ売れるんだし。グリュッグへの移動も簡単になるので、水車小屋の管理も簡単になると思うよ。」


 「正直、水車小屋はまだ土地代や設備代で利益が出てないからなぁ。出汁の粉もこれからだから、どこまで売れるかは未知数って言えば未知数なんだよなぁ。」と、ごんさんが腕を組んで椅子を少し後ろへ反らしながらポツリと言った。

 「それはそうだね。でも、こっちの人の人件費ってめちゃくちゃ安いじゃない?特に農村部は。畑の開墾も含めてるから、収穫物は徐々に増えていくしね。だから開墾する男性の数を多めに雇う様計算してあるのよ。」

 ジャングルなだけあって、植物の育つスピードは日本に比べると早いのだ。

 「めりるどんの話を聞く限り、船が手に入って、雇える人を確保できたら、そないに非現実的な話でもないなぁ。出来る様な気がしてきたわぁ。」

 「そうだな。まずは船がいくらくらいするのかをちゃんと調べないとな。後、十分な人手を用意できるかどうかもちゃんと確認しないとな。」


 めりるどんは目をランランと輝かせてテーブルの上に身を乗り出した。

 「わかった。じゃあ、そこの確認からまずやってみるね。ももちゃん、手分けして調べよう!」

 「りょ~。」


 その夜は遅くまで、めりるどんとももちゃんで練り上げたプロジェクトの説明が続いた。


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