表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
64/143

酒場の裏庭

「「おじゃましま~す。」」

 めりるどんとももちゃんが村の酒場へ入って行った。


 「おお、いつものだな。二人で来るとはめずらしいな。」とオヤジが言うと、女将さんが「この皿に入れとくれ。」と大きな皿を2つカウンターに置いた。

 フライドポテトとエビのフライをそれぞれの皿に入れた。


 酒場は、雑貨屋も兼ねているので昼間は女性も客としてちらほら見掛けるのだが、夜は男性専用の様になる。そんなこともあって必要な物がなければ夕方以降は女性はあまり酒場へは来ない。

 めりるどんとももちゃんも酒の肴を卸す時くらいしかここへは来ないのだが、二人一緒に来ることはめずらしい。

 重たい物があれば二人で運ぶことになるのだろうが、酒樽は男性陣がいれば家から酒場まで運んでくれる。みぃ君もごんさんもいない今は、家の前に樽を置いておけば、酒場のオヤジが運んでくれるのだ。

 なのでめりるどんとももちゃんが二人揃って酒場へ来ることはめったにない。


 フライドポテトとエビのフライの料金を女将さんから貰いつつ、ももちゃんが、「昨日お願いしていたアレを見せてもらいたいんですが。」と言うと、女将さんが「アレなら裏だから、外から裏へ回ってくれるかい。」と指で裏庭の方角を指した。

 「「わかりました~。」」めりるどんとももちゃんの声は弾んでいる。


 さっそく酒場のスイングドアを潜って一度外へ出て、酒場と隣の家の間を伝って裏庭の方へ出た。

 背の低い柵で囲ってあるので、裏口側の戸を探すために、結局、反対側の家との間までぐるっと回って戸口で女将が来るのを待った。


 「今、開けるねぇ。」と女将が内側から閂を外し、戸を開けてくれた。

 「忙しい時にすみません。」とめりるどんが軽く頭を下げる。

 それに倣いももちゃんも「すみませ~ん。」と同じ様に頭を下げる。


 裏庭の奥には2つの石窯があった。

 一つは大きなカマクラ型の石窯で地面の上にドーンという感じで作られていて、鉄の扉が付いている。もう一つは、土台が壊れて横に転がされた家庭用のオーブンくらいの大きさの半円形の石窯。土台はレンガを使っていた様で1m弱くらいの高さに積み上げられていた様だった。

 二人は女将を通り越して石窯に駆け寄った。


 事の始まりは、昨日ももちゃんがモリンタに聞いたところ、石窯はこの村でパン屋も兼ねる酒場にしかなく、昔使っていた石窯が壊れたので数年前に新しいのを作ったらしいという情報を仕入れて来たことだ。

 ももちゃんがモリンタに石窯について相談したところ「もしかすると、前の壊れた石窯もまだ酒場にあるかもしれんのぉ。」と二人にとって福音とも言える情報をポロっと教えてくれた。


 その話を聞いてさっそくその日の揚げ物の納品時、ももちゃんが女将に昔使っていた石窯について聞いたら、まだ裏庭に転がってるとのことだった。

 購入を考えていることと、めりるどんと一緒に見せて欲しい事を説明し、翌日にても現物を見せて欲しいと話を進めた結果が、今日の納品時に現物を見せてもらえるということになった。


 「わぁ~。」思わずめりるどんの口から声が漏れた。

 「これって、オーブン部分は壊れていないのでは?」とももちゃんがめりるどんにつぶやいた。


 にんまりと笑っためりるどんが女将を振り返った。

 「これって、土台だけが壊れてるんですか。」

 「そうだよ。まだ修理したら使えたんだけどねぇ、大きい石窯が欲しかったから結局新しいのを作ってもらったんだよ。小さい方も、大きい方が壊れた時に使えるかと思って転がしておいたんだよね~。」と、女将が説明してくれた。


 「それで、これ、売ってもらえるんですか。」と普段慎重なめりるどんにしては単刀直入に尋ねた。

 「いいけどねぇ。値段によるねぇ。」とおっとりと女将が答える。


 「いくらぐらいなら」と話を続けようとするめりるどんの肩を、ももちゃんが軽く掴んだ。

 「状態の確認とかいろいろさせてもらった後に値段を聞かないと、言い値になるよ。」とももちゃんが日本語で、且つ小さな声でめりるどんに囁いた。

 前のめりになっていた事に気づいためりるどんは、ぐっと姿勢を正した。

 「石窯を触ってもいいですか?」

 女将が頷くのを見て、めりるどんは石窯に近づく。

 石で出来ているだけあって重たく、石窯を左右に少し転がすことしか出来なかったが、隙間なく目地の様な物で塞がれていることと、割れたりヒビが入った石がないのだけは確認できた。


 「石窯部分は問題なさそうだけど、土台が崩れたということですね。」

 「そうだねぇ。」

 今回の商談はめりるどんが進めることになったので、値段の交渉などもめりるどんがやる。


 「いくらぐらいですか?」

 「そうさねぇ。今使ってはないけど、直すのは土台だけだしねぇ・・・・。あんたたち、その石窯は自分たちの家に備え付けるんだよね?ここで直して、ここで使うって訳じゃないよね?」

 話しながら、石窯の設置場所という問題に思いあったったのだろう、突然女将は土地の使用代も頭に入れないといけないのかを気にし始めた。


 「私たちの家か、作業する場所に持っていくつもりです。」

 「そうかい、なら、石窯だけの料金になるねぇ・・・。土台は使えないから石窯部分だけだとすると・・・・金貨1枚と銀貨3枚くらいかねぇ。」


 言われた値段は安くはないけど、使える石窯ということを考えると妥当な値段にも思えた。

 ただ、値段交渉する方が良いのか、お酒やおつまみのお客でもある酒場に値段交渉するのは不味い事なのか判断がつかずめりるどんが唸った。

 「う~~ん。」


 その様子を見た女将は「わかった。わかった。切りの良いところで金貨1枚でいいよ。でも、それ以上は負からないよ。」とにっこり笑って値下げをしてくれた。

 「「ありがとう。」」めりるどんとももちゃんが同時にお礼を言った。

 「それじゃあ、金貨1枚で売って下さい。」言いながら、めりるどんの顔には自然と笑みが浮かんだ。それは内側から溢れ出てきた様な良い笑みだった。

 その本当にうれしそうな表情を見て、女将さんもにっこりと笑った。

 「あんたたちにはお酒やおつまみなんかで、家の酒場も儲けさせてもらってるからねぇ~。これくらいお安い御用だ。これからもどんどんお酒を持って来ておくれよ。」

 実際に、ももちゃんの猿酒を店で出す様になってから、売り上げは倍以上になっていた。

 村の男衆だけではなく近隣の村からもわざわざこのお酒を飲みに来る者も少なくはなかった。

 猿酒は、この店にとってなくてはならない品物なのだ。


 「はいっ。」と今度はももちゃんが女将に答えた。

 ももちゃんとしては、村人を雇って大規模に酒造りをすることを女将に話して納品量の確保について安心してもらいたかったが、まだ男性2人に相談していないので触れる事は避けたのだ。


長い間アップがなく、すみませんでした。

ようやく4台目のPCでなんとか問題解決しました。

これからもどうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ