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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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会社つくりプロジェクト その3

 翌日、ももちゃんは畑に直行し、薪拾いをしたり、フルーツの収穫をした。

 めりるどんは、午前中は浜辺で出汁作りの音頭を取りつつ、前日従業員たちが作ってくれた壁素材をチェックしたりして、午後はももちゃんのいる畑まで行き、石鹸つくりにいそしんだ。

 もちろん村へ帰る時は二人とも背負子と蔦で引く筏にいっぱいのフルーツを持ち帰った。


 帰宅後すぐ、ももちゃんはカットして持って帰ったフルーツからジュースを作る作業に入った。これは量があるだけに結構な重労働なのだ。

 めりるどんはぱぱっと海老と芋の揚げ物を作り、酒場へ持って行いき、すぐ帰宅してごんさんが狩って来てくれた肉で作っていた干し肉を使って夕食を作った。


 「昨日は、会社設立に必要な土地や、機材、人員について詰めるのは、みぃ君たちが帰ってくるまでにじっくりって言ったけど、もしよかったら今夜少し意見交換してみない?」とももちゃんが食事が始まったと同時に言い出した。

 「うん、そうしよう。でも、その前に一つ相談させてもらってもいい?」と、めりるどんが遠慮がちに切り出した。


 「なになに?」

 「えっとね、出汁の粉なんだけどね、どうしても素材が完璧に乾かないのね。」

 「重さを測ってるんだよね?」

 「うん、毎日全ての素材や加工品の重さを測ってちゃんと記録しているんだけどね、確かに天日干しをすると最初4日間くらいで結構軽くなってるから水分は抜けていっているんだと思うのね。でも、その後は2週間経ってもほとんど重さが変わらないのね。」

 「ほうほう。」


 「前回、みぃ君が作ってくれた煮干しと同じ感じで、見た目は乾燥できてる様に思えるんだけど、1匹取って折ってみると中身に少し湿りが残ってる感じなの。」

 「となると自然乾燥のみだと難しいってことかぁ~。」

 「だね。これは本格的にオーブン的な物を作った方がいいと思う。それもできるだけ早く。」

 「え?ごんさんやみぃ君を待たずに?」

 「うん。だって、今放っておくと、最初に作った煮干しとかがカビると思う~。」

 「そっかぁ~。」


 ももちゃんは、思いっきり悩んでるらしく夕食を食べる手を止めて下を向いてる。

 「ねぇ、ももちゃん。何か問題になりそうなの?」

 そう尋ねて来ためりるどんを見て、ももちゃんが「う~~~ん。」と唸る。


 「私、3年間だけど、練炭製造の研修コースの通訳をしていたのね。で、練炭を作れば当然それを燃やす器具も必要になってくるじゃん?」

 「うんうん。しかし練炭とはニッチな物で研修をするんだねぇ。」

 「それが、海外、特に第三世界では薪が必要なので、貧乏な人たちは、どんな所のどんな木でもさくさく切って、違法でも何でも焚き付けにするもんだから、はげ山が多いらしい。で、ペルーでもアルガロボっていう木が無暗に伐採されて、大変だったらしい。んで、無煙炭っていう煙が出づらい石炭ならたくさんあるからっていうことで、日本の二酸化炭素中毒になりづらい練炭の製造方法を教えて欲しいってことになったのが経緯だったなぁ。」


 「通訳っていっても本当に仕事の範囲はとっても広いんだねぇ。」

 「そうだねぇ。前にも言ったかもだけど、英語とかの通訳さんは、専門分野がないと通訳できないけど、スペイン語の様な英語以外の言語になると、幅広い内容の仕事を熟せないと生き残れないねぇ~。」

 「へぇぇぇ。あっ!ももちゃん、ごめん。私の一言で横道に反れちゃったねぇ。」


 「あっ、そうだったね。でね、その研修で七輪の事も少し齧ったのね。で、diatomáceas・・・えっと、日本語で何て言うんだったっけ・・・。やばい!日本語が出てこない!」ももちゃんはめっちゃ焦った顔になり、うんうん言っている。

 「七輪ってことは、もしかして珪藻土の事?」とめりるどんがその博識ぶりを発揮して、ももちゃんに助け舟を出す。

 「そうそう!それだ!珪藻土だ。で、珪藻土で七輪を形成して焼きの工程を経て~っていう説明があった時、研修員がその窯の材質は何かって質問をしたんだ。」

 「ほうほう。」

 「で、それが耐熱レンガだったんだよね。その時他の材質と混ぜる時の配合まで教えてもらってたんだけど、私は配合えは覚えてないんだぁ。」


 「じゃあ、耐火レンガを作ればいいのね?」とめりるどんは頷きながら言った。

 「いやいや、めりるどん、耐火レンガってそうそう作れるもんじゃないみたいだったよ。」

 「え?」

 「確かシリカが含まれた粘土で作らなくっちゃいけなかった様な気がする・・・。それか、ラノベとかで書かれている事を信じるとしたら、既存のオーブンのレンガとかが耐火レンガっぽくなってるから、それを土台にして作るとかだった様な・・・。」と、ももちゃんは空を見つめながら一生懸命耐火レンガについての知識を思い出そうとしていた。


 「まぁ、とにかくどの土にシリカが含まれているか分からなければ、古いオーブンをどこかで買って来るのが一番じゃないかなぁ~。」とももちゃんが締めくくった。

 「じゃあ、ももちゃん。申し訳ないけど、早めにモリンタに相談して、この村にもう使ってないオーブンはないかどうか聞いてみて~。」

 「りょ~。」


 そんな話をしている内に、夕食が終わってしまった。

 今夜も二人でパパっと片付けて、テーブルの上に紙を乗せ、会社についての話し合いに入った。


 「昨日さぁ、作業場別にリストアップした作業項目が書いてある紙はどれ?」と、めりるどんが、ももちゃんの手元にある紙を指して言った。

 「う~~んと。これだね!」と、言いつつ、ももちゃんが、数枚ある紙をわしゃわしゃと捲ってその中の一枚を取り出し、テーブルの真ん中に置いた。


 「これってさぁ、別の物を作る場合でも、火を使う作業に何人って感じでいいんだよね?」

 「うんうん、めりるどんの言う方法だと人員も少なく済みそうだし、自分がやってる作業が何になるのかが分からない方が技術を盗まれなくていいかも?」とももちゃんが同意する。

 「あっ、でも、自分が作ってる物が何なのかわからないと、結局どんな物を作っていいのか分からず、いい加減な仕事にならないかなぁ?」めりるどんが、テーブルを軽くトントンと指で叩いて、考えに集中しているらしく、半分独り言の様に言葉が零れた。

 「そっか~。確かに自分が作業すると思ったらそうだね。後工程の事を考えて作業するね~。」


 「畑仕事は開拓も含むから、男性ばかり3人くらいいてくれたらいいんじゃない?」とももちゃんがめりるどんの顔を見て言った。

 「そうだね。開拓中も畑の作業はいるしね。一度開拓しても、みぃ君がしょっちゅう浸食してくるジャングルの植物を引き抜いてくれてるから畑の形が保ててるんだから、従業員だけで作業してもらうとしたら、ジャングルからの植物の浸食も防いでもらわないとだね。3人で足りるかな?」

 「それは、畑の大きさによるかぁ~。」

 「そうだね。だとしたら先に畑の広さを決めたらいいんじゃない?」


 「畑で作る物は、フルーツと、さとうきびもどきと芋だけど、もしかしたらココナッツや花も育てた方がいいかな?」

 「ももちゃん、ココナッツや花は植えたとしてもそんなに量はいらないと思うから、やっぱりお酒を造る量を考えて、それに見合った果樹園の大きさを考えた方が早いと思うよ~。」

 「そっか。」と言って、ももちゃんはお酒をどれくらい作るかを計算し始めた。


 「人を雇ってまで作るお酒なら、量作れないといけないから、今の畑の2.5倍は欲しいなぁ。あ、これは芋とサトウキビ畑も入れてだけどね。」

 「ももちゃん、お酒の量を増やすなら、その元になる天然酵母の量も増やさないとだから、お砂糖の量も増えるのでは?」

 「大丈夫。既に計算済~。」とももちゃんがちょっとドヤ顔気味に言葉を返す。

 「さすがももちゃんだ!」とめりるどんが煽てる。


 「今の畑の2.5倍となると、やっぱり男手は必要やねぇ~。」と変な関西弁でももちゃんがつぶやく。

 「やっぱ、そうすると、男の人3人くらいは必要かぁ。開墾した後の作業もあるしねぇ。妥当な人数じゃない?」

 「めりるどんもそう思う?じゃあ、畑は男性3名で、作業はここに書いてある開墾作業、種まきなどの植え付け、水やり、肥料作り、収穫作業までがこの3人の仕事かなぁ~。」

 昨晩作ったリストを見て、めりるどんも頭を縦に振る。

 

 「畑から繋がって酒造りの方だけど、収穫されたフルーツをカットして、ジュースにするのと、そのジュースを入れる樽の清掃、できたらカットつながりでサトウキビもどきのカットも担当してもらおう。」

 「んじゃあ、ここは男性・女性に関わらず1名だね。」とめりるどんが作業リストを指でなぞりながら確認した。

 「うんうん。それで行こう!」


 「じゃあ、次は作業小屋で火を使う作業ね。」とももちゃんが同じく作業リストを指さしながら言った。

 「砂糖と石鹸は一人の人でできると思う。砂糖は毎日作らなくていいしね。後、灰と、ココナッツオイル、花のエッセンスも一人でできると思う。こっちは同時進行で2種類の物作れると思うよ~。」といつも作業小屋で火を使う仕事をしてくれているめりるどんからの意見だ。

 「分かった~。火を使う作業は合計2名ね。」とももちゃんが作業リストに2人で話し合って決めた人数を書き込む。


 「出汁と水車小屋は今の人数でいいよね?」

 「うん。そうだね。めりるどんは出汁の方、ここのところ毎日様子見てて、人数もっと増やした方がいいとか、そういうのはない?」

 「う~~ん、作る量にもよるけど、たぶん作業に慣れてきたら人手が余るかもしれないねぇ。」

 「そっか。まぁ、とりあえずは今の人数にしておこうかぁ~。」

 「そうだね。もし余ったら畑でもお酒造りでも別の作業をしてもらってもいいしね。」


 「後は、人や物を運ぶための舟1艘と、その操作をしてもらう人1名だね。」とももちゃんが作業リストに書き込むと、めりるどんが遠慮がちに声を掛けた。

 めりるどんは意見を言う時、たまに遠慮がちに言う事がある。

 それは、相手がどう受け取るか自信がない時で、常に相手がどう感じるかを気にして発言をするめりるどんらしい配慮なのだ。

 「ねぇ、ももちゃん。いらない事かもしれないけど・・・・。あそこの作業場って村から離れているから、私たちはお弁当を持って行ってるでしょ?」

 「うん。」

 「村まで片道1時間だからね。どうしても食事はお弁当になっちゃうんだけど、もしかしたら会社で昼食出した方がいいのかなぁ~って。」


 「ああ、じゃないと昼に村まで帰るって言われるかもだねぇ。う~~ん。福利厚生にもう1名雇うのかぁ~。」

 ももちゃんは人件費が気になるみたいで、すぐに「うん。」とは言ってくれなかった。


 「舟があっても、私たちの誰かがグリュッグへ行く時はザンダルには舟はない訳だし、ここの気温と湿気は高いから、お弁当にしても知識のない人が作ったら、食中毒の危険性もあるしね。ここは現地で食事を作って出す方が、村に帰られて稼働できない時間が多くなるより、いいんじゃないかな?」


 「そうかぁ。食中毒の問題があったねぇ。」

 「畑と作業小屋で働く人は、その分、お給料を低くしちゃえばいいんだし、その昼食作るためだけに人を雇うのがもったいなければ、空いてる時間に酒場へ卸してる海老と芋のフライを作ってもらってもいいし、薪拾いとかは人手があればあるほどいいから薪拾いとかしてもらってもいいしね。」

 「おおお!そう考えれば食事係の人がいた方が安心だよね。」

 「そうそう。あっつ、それと、揚げ物用のラードも作ってもらえばいいしね~。」

 ようやく賛成してくれたももちゃんに、めりるどんは微笑んだ。


 「あ、そういえば、花とか薪とか、ココナッツや海藻を採集する人が必要だったね。これも1名必要だね。」と慌てた様にももちゃんが紙のリストに追加した。

 「だねだね。忘れるところだったね。」

 「後、竈だけど、今の3つで足りるかどうかそこも思案のしどころだね。」

 めりるどんがうんうんと頷きながらも、「そういえば、食事ができる様に作業小屋をもっと大きな物にして、農具なんかも保管できる所作らないとだね。」とたった今思いついた案を出した。

 「そっかぁ~。いろいろと面倒だね~。でも、必要だね~。もうね、小屋とかは結構丈夫な物作った方が良いかもだから、本職に頼んでもいいかもよ~。」


 その後も、手動のジューサーをもっと大きく効率の良い物にした方がいいだろうか、開墾に必要な農具などはグリュッグで購入した方が早いか?など、いろんな事を話し合って、みぃ君たちに見せるために紙に書き留めていった。


 水車小屋のドブレと新しく雇ったであろう従業員2人はグリュッグ領主が給与等を出してくれるので数に入れないとしても、結局2人で考えた従業員の人数は、ザンダル村と畑付近のみで12名と大所帯になりそうだ。

 会社を創るというのは、大変な事なのだと身に染みた2人であった。


先日、修理に出したPCの3つの不具合の内、解決されなかった1つの不具合解消のため、11/8から再度PCを修理に出すことになりました。今回も2週間くらい時間が係るそうです。PCが帰って来るまで、お休みさせて頂きます。戻って来たら、また続けますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。何度もPC修理で中断してしまい、すみません。

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