会社つくりプロジェクト その2
その夜、めりるどんとももちゃんは、夕食を摂りながらフツールをかなりの量、村へ持ち帰る事ができたと安堵の思いを分かち合っていた
「これからは2日に1度、今日の様に筏も使って2人で午後2往復してもらってもいい?」とももちゃんがオズオズとした様子でめりるどんに聞いた。
「うん、そうだね。ストックがある程度集まらないと死活問題だもんね~。」
「え?死活問題?お金は石鹸でまだ少し手元にあるよ~。」とももちゃんがきょとんとした顔になった。
「お金はあればある程安心だけど、それよりね、ルンバ達が抗議しに来ると思うよ。酒くれ~って。」
「ああ、そうかぁ。それは本当に死活問題になるね。」
「だしょ?お酒なかったら本気で暴れると思うよ~。」
「だねぇ~。」
「ところでさぁ。会社設立の事なんだけどね。」といつもの様にももちゃんが急に話題を変えて来た。
具沢山のスープを食べていためりるどんが「ん?」とももちゃんの方を見た。
「そろそろ、会社をつくる案をお互いに出しあって、もっと具体的な案を作らないといけないかなぁ~って。」
「そうかぁ。そう言えば、ごんさんやみぃ君が村へ戻って来るまでに2週間を切ってるからね~。」
「んだんだ。」とももちゃんが頷く。
「で、ももちゃんは具体的にはどんな風に案を詰めたいの?」
「税制についてはまだいろんな事が判明していないけど、それはモリンタ村長とガクゼンの領主様へ直談判することである程度解決すると思ってるのね。」
「うん。」
ザンダル村はガクゼン領に含まれるので、税についての相談は当然ガクゼン領の領主となるのだ。
「でも、まだ事業の規模とか決めてないでしょ?」
「それもそうだね~。」
「みぃ君たちにプレゼンするにも、領主に掛け合うにしても、事業の規模や、どの分野に従事するのかとか、雇う人の人数とか、所有する土地の大きさなんかもある程度見込みを付けてからでないと出来ないなぁ~って。」
「そっかぁ。よし、分かった!じゃあ、これからお互いの案を出し合おう!」
「うんうん。ありがとう~。」
ほぼほぼ夕食も終わりかけていた二人は、ささっと食事を終え、片付けをして、さっきまで食事をしていた木のテーブルを布巾で拭いた。
ももちゃんが壁側に置いてある長持ちの様な物から、以前グリュッグで購入した紙を数枚取り出して、テーブルに着くと、少し遅れてめりるどんも反対側に座った。
「よし!今やってる仕事を全部列挙しよう!」といつもの様にももちゃんが口火を切る。
結果、以下の仕事がももちゃんの手元の紙に書き出された。
農作業
酒造り
石鹸つくり
出汁作り
水車小屋
「これで全部かな?」と二人とも紙を覗き込んだ体勢で、ふいにももちゃんがめりるどんに尋ねた。
「多分そうだね。もしかしたら将来的にソープバスケットも入るかもだけどね。」
そこで、最後の行にカッコ付きでソープバスケット作りも書き加えられた。
「じゃあ、複雑になるから一旦ソープバスケットは項目として書き入れるだけで、詳細は将来考えるとして、これらの仕事を分解して、実際にどんな作業が必要なのか書き留めて行くね。」と、やはりももちゃんが仕切った。
農作業】栽培物:フルーツ、芋、さとうきびもどき
作業内容:種まき・苗つくり・接ぎ木作業から収穫作業及び肥料作りまで
※フルーツなどは、ジュースにしやすい様にカットし、殻や皮などは、
畑の横の肥料作りスペースにてコンポスト処理をする。
酒造り】砂糖作り、ジュース作り、樽の清掃、樽の保管
※天然酵母はももちゃんが引き続き作る。
石鹸作り】材料採取:海藻、ココナッツもどき、花
素材加工:海藻の灰、ココナッツオイル、花のエッセンス作り
石鹸加工作業(含む日々の攪拌作業)
出汁作り】材料:漁師から購入(代金/質の管理等も含む)
素材加工:煮干し、海老の殻外し、貝の下処理及び全ての材料の乾燥
※海老の身は海老と芋の揚げ物の為に下処理までを含む。/ラードはどうする?
水車小屋】操作及びメンテナンス
※集金作業及び営業は引き続き私たち4人で。
「こうして見ると、一つ一つの仕事に加工だけじゃなくて、素材採取なんかもまばらにあるよね?」とももちゃんが紙に書き込みをしているの見つめながら、めりるどんがポツリと言った。
「うん。そうだね。採集なんかは、まとめて1つのグループにしてもらうってのもありだよね?」
「そうだねぇ~。後、舟購入して運搬なんかの作業も必要になると思うし、畑も人を入れるなら、開墾も必要になってくると思う。そうしないとお酒の製造量が少ないままになるしね。せっかくの売れる商品をみすみす作らないっていうのはまずい手な気がするよ。」とめりるどんが忌憚のない意見をどんどん出した。
「じゃあ、今度は作業の種類によって分類してみる?」とももちゃんが新しい紙を出して新しく書き出した。
何度も書いて、「あ、これはこっちにした方がいいんじゃない?」とか話し合って、紙にはたくさんの訂正線と、いくつかの項目は丸で囲んで矢印を付けて分類の順番を変えて行った。
二人の作った分類表は、作業をする場所を基準に次の通りになった。
畑】 開墾作業(農地拡大のため)
種まき・苗つくり・接ぎ木作業
肥料や水撒き
収穫作業
フルーツ及びさとうきびもどきのカット作業(衛生に注意/作業小屋の方が良い?)
コンポスト作業
収穫物の運搬の為の梱包作業
作業小屋】
<火を使う作業>
砂糖作り
海藻の灰作り
ココナッツオイル作り
花のエッセンス作り
石鹸加工作業(含む日々の攪拌作業)
ラード作り(必要かも?/海老と芋の揚げ物用)
<その他の作業>
樽の清掃
ジュース作り
村】
<火を使う作業>
煮干し作り
貝の下処理
海老と芋の揚げ物作り
※粉状にするのは水車小屋で。配合はみぃ君が担当
<その他の作業>
素材購入(代金/質の管理等も含む)
海老の殻外し
出汁の全ての材料の乾燥
酒樽の保管・管理
水車小屋】操作及びメンテナンス
採集】薪、海藻、ココナッツもどき、花(ココナッツと花は栽培する?)
運搬】村⇒畑エリア:作業員
畑エリア⇒村:樽状のジュース、従業員
村⇔グリュッグ:水車小屋の集金・メンテの為の人員、石鹸、出汁の粉の材料または出汁の粉、小麦粉(揚げ物用)、将来的にはお酒も。
「火を扱う作業は、砂糖や石鹸加工作業なんかの火加減がシビアな物だけ専属の作業員にして、残りはまとめて作業してもらってもいいし、それぞれの作業に1人づつ配置してエキスパートになってもらうっていう手もあるね~。」とももちゃんが分類表を見ながら言った。
「一人しか作業ができない状況にしちゃうと、その人が辞めちゃうと二進も三進も行かなくなる可能性があるよ~。」
「そうだったね。その危険があるね。とりあえず、これくらい纏めておけば、どこにどれくらいの人が必要になるか、土地はどれくらい必要になるかは朧気だけど、浮かんで来るから、残りはごんさんたちが戻って来るまでに徐々に考えてみない?」と、その夜は遅くなってしまったので、一旦ここで切り上げた二人だった。




