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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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村に残った二人 その3

 めりるどんは出汁製造チームの小屋を作るために、従業員である奥様連中の意向をロミーを通して探った。

 結局、午後、あまり遅くならない時間までなら協力できるとの回答を全員からもらった。

 まぁ、小屋が出来れば自分たちが楽に仕事できる様になるので、そういう意味でも賛成してくれたのだろう。

 

 毎日午前中、従業員たちは各素材の加工と天日干しを行っており、加工した素材の重さを測って記録している。

 めりるどんは、従業員の作業を時々チェックしながら、村のすぐ横のジャングルで竹を切り出し、午後には従業員たちの小屋作りの作業を指示・監督して、夕方より若干早い時間に、朝から畑や作業小屋で作業しているももちゃんに合流すべく、移動する。

 ももちゃんと合流してからは、ももちゃんが用意していた砂糖やフルーツ等を一緒に家まで運ぶ。

 ももちゃんは帰宅してすぐに酒造りの作業に入った。



 めりるどんは荷物を家に置くと、その足で浜辺に向かった。

 従業員は午後になると、ジャングルで切り出し放置されている竹もどきを物置まで運んだり、小屋の基礎に使う平たい石やヤシの葉の採集や、めりるどんが切り出した竹を縦に割る作業などをする。ただ、夕方のスコール前に天日干ししていた材料を浜辺の物置に収納するのはロミーだけが行っている。


 「はぁ~。材料の試作については作ってから3週間までは毎日重さを測る予定なんだけどね、そっちはいいんだけどね~。小屋を作るのがやっぱり女手だけだと厳しいかな~。」と、ももちゃんと二人で夕食を食べながらめずらしくめりるどんの口から愚痴が零れる。


 「毎日、夕方に作業小屋まで来てもらって、荷物を運んでもらうのも、めりるどんには結構な負担になってるよね~。」とももちゃんがめりるどんの作業量の多さを労う。


 「それを言うなら、ももちゃんも石鹸の材料作りと酒つくりを一人でやってくれてるから、作業量としては私と同じくらいだと思うよ~。それに貝以外のソープバスケットの材料を探してくれてるしね。畑の世話をして、フルーツを収穫して、皮を剥いて、カットしてってだけでも、かなりの作業量だよ~。」


 「うん、私たち二人とも目一杯作業してるからねぇ~。でも、みぃ君やごんさんもグリュッグで頑張ってくれてるしね~。何にしても、究極の人手不足だよね。」


 「そうかぁ。これって人手不足が原因かぁ~。」

 「そうだよ、めりるどん。出汁作りと、水車小屋の運転だけは人を雇用しているけど、畑や、石鹸、砂糖、酒造りは私たちだけでやってるからねぇ~。」

 「人手・・・・・。」めりるどんは、ももちゃんの話を聞いて、なんか考え込んでいる様だ。


 その後夕食中に、ももちゃんが話しかけても、めりるどんは生返事ばかりだった。


 シャワーも浴びて、ようやく寝る段になって、めりるどんがももちゃんの方を見た。


 「あのね、ももちゃん。私、考えたんだけどね、私たちがやってる仕事っていうか、事業って多岐にわたるじゃん?」

 「うん、そうだね。」

 「でね、考えたんだけどね、人手不足が問題なら人を雇えばいいんじゃないかなぁって。」


 ももちゃんは、めりるどんの意見を聞いて考え込んだ。

 しばらく沈黙の時間が続いたが、徐にめりるどんを見た。

 「人手不足っていうのはそうだね。ただ、人を雇う事については、2つ問題点があると思う。」

 「どんな?」


 「えっとね、一つは、人を雇ってもちゃんとペイするかどうか。そしてもう一つは技術の流出にならないかどうかかなぁ~。もしかしたら、ごんさんやみぃ君に相談すればもっと問題点も、それを解決する案も出てくる可能性があるけど、私が考え得るのはこれくらいかなぁ。」


 「そっかぁ。その2点は確かに問題だね。特に技術流出はライバルを育てることにもなるしね。」

 「うんうん。」


 「それでね、今日の夕食の時、ももちゃんが言った、問題は人手不足っていうのを聞いて考えたんだよね~。会社みたいなの作れないかなって。」

 「おおおお!会社かぁ。」


 「そうそう。例えば、ザンダル村では、出汁作り、酒造り、石鹸作り、砂糖作り、塩つくり、ラード作り、酒屋に卸してる海老と芋のフライ作りもだし、畑の作業なんかをやってて、もし、ソープバスケットも上手くいけば、その材料集めも含めて作業が発生するでしょ?」

 「うんうん。」


 「それに加えて、グリュッグの町では、水車小屋の運営とメンテがあるし、石鹸の、もしかしたら出汁の粉の卸しなんかもあるよね?」

 「そうだよね。そうやって並べられると、結構な仕事量だよね。」


 「しかもね、ザンダル村とグリュッグ間の移動、つまり船も必要だよね?」

 「あっ、そうだね。」


 「それら全部を会社として人を雇って、ペイできる事業もそうでない事業もひっくるめて、最終的にペイできていればいいんじゃないかなぁ~って。」

 「なるほど!」とももちゃんは、また考え始めた。


 「めりるどん、それだと、畑仕事はそのまま人を雇って盗まれる技術はないし、出汁の粉は配分さえ分からなければ大丈夫だよね。お酒も砂糖さえ作ってもらえば、酵母つくりは私一人でできるし、ジュースは人に作ってもらっても大丈夫だしね。う~~~ん。石鹸つくりも、今私がしている様に、海藻の灰とココナッツオイルのみ作ってもらえば、混ぜて石鹸を作るのはめりるどんか、例えばグリュッグまで素材を運んで、別の人に作ってもらえば技術の流出はないねぇ。海老と芋のフライは、出汁つくりチーム?に作ってもらえばいいことだしね。うん!ありだね。会社作るの。」


 「本当?本当にももちゃんも会社作るの良いと思う?」

 「うん。思うよ~。特に、自分たちの船があるのは、めっちゃ助かるよね。しかも人手を増やせればお酒ももっとたくさん造れるしね。そうしたらその分、儲けも増えるしね。いいんじゃないかなぁ。」


 「これって、ごんさんやみぃ君が帰ってくるまでにいろいろ二人でアイデアを詰めてみない?」

 「いいねいいね~。なんか私たちって常に何か新しい事してるよね~。」

 「あはははは。本当にそうだね~。でも、結局、自分たちに必要な物を作ってるだけなのにね~。だんだん手を広げ過ぎて、圧迫されてきたしね~。」


 「それじゃあ、私はモリンタ村長に相談して、雇用に関する税金とか費用のこと確かめておくね。」

 「ももちゃんがそっちを調べてくれるなら、私は、ロミーたちに中古の船の値段とかいろいろ聞いてみるよ~。」

 「うんうん、お願い~。」

 

 この会社を作るというのも、今以上に作業量を増やすことになるのだが、その事に気づいていない二人であった。


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