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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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共通認識構築の夜

漸くPCが修理から戻って来ました。

3つあった不具合の内、2つしか直っていない不都合について・・・・。

とりあえず、遅くなりましたが、続きをアップ致します。

今後ともよろしくお願い致します。

 壺の中には以前みぃ君が作った出汁の粉が入っていた。

 ちょっと見には何が大変なのかわからなかったが、めりるどんが差し出した別の壺の中を見て、めりるどんが何を言いたいのか漸くわかった。


 もう一つの壺には、煮干しが入っていた。粉にして混ぜると苦みが出てしまう為に、少量しか使わない煮干しをもったいないからと、まんま煮干しとして使うために壺に入れて保管していたものだ。

 その煮干しにカビが生えていたのだ。


 この煮干しは出汁の粉を作った時に他の素材と同時に作っており、出汁の粉にも少量だが入っている。

 その煮干しにカビが生えているとなると、出汁の粉に混ざっている煮干しにもカビが生えていることだろう。

 出汁の粉の他の材料、貝やエビもカビが生えているかどうか、粉の状態だと見極めがむつかしい。


 「これは材料毎にしゃんと乾燥できたかどうか確認する作業をする必要があるなぁ。この粉はほるしかないなぁ・・・。」とみぃ君は思案しながらぽつりぽつりと言葉を発した。

 「みんなで貯めた資金をドブにほかすことになって申し訳ないが、ここまで進めとるから、今、出汁の粉作りを放棄するのは避けたいんだが・・・。伯爵やアンジャにせっつかれているのに、出汁作りを放り出すわけにはいかないし・・・・。」

 「結構な日数乾燥させたのに・・・・ジャングルやから湿気が高いのか・・・・2週間では足りへんのか・・・・重量は干す前の半分くらいにはなっとったのに・・・・。」等と独り言とも言える様な、他のメンバーに話しているとも取れるみぃ君のぼやきが続く。

 「もし、ジャングルの湿気が問題なら、乾燥装置とかオーブンとか作った方がええんかなぁ。」とそこまで独り言をこぼしたところで、はっとごんさんの方を見た。


 「ごんさん、石窯とか作へん?出汁の素材を乾燥させるのに使えるかな?」

 みぃ君が切羽詰まった様にごんさんに詰め寄ったが、ごんさんはのんびりとした口調で、「まぁ、まずは夕食にしようやぁ。食べながらグリュッグでの事も聞きたいし、出汁の粉の事も食べながら話そう。」とみぃ君を食卓に導いた。


 ここ数日、みぃ君とももちゃんがいつザンダル村に戻って来てもおかしくなかったので、夕食は毎日4人分作っており、時間も多少遅めにしていた。

 その甲斐あって今夜みぃ君たちが戻ってきても慌てることなく、4人で食卓を囲むことが出来た。


 「ごめんごめん。私が慌ててみぃ君に出汁の粉のことを言っちゃったから、帰るなりびっくりしちゃったよね。」とめりるどんがすまなそうにみぃ君に謝った。

 「いやいや、まだまだ試行錯誤を続けとる時期に、おっきな仕事を押し付けちゃって、こちらこそ悪かったよ。せやけど、助かった。」とみぃ君もめりるどんに感謝の念を表す事を忘れない。


 今夜は具沢山のスープと、ごんさんが獲ってきた肉のソテーというメニューだった。

 4人はすぐに食べ始め、まず、グリュッグと湖の療養地での出来事について話し始めた。


 「結局、湖の療養地で長い間待たされたけど、今の水車小屋を伯爵に差し出す代わりに、すぐ横の土地に、私たちの水車小屋を2軒立てられる土地を譲ってもらう事にしたの。」とももちゃんが説明すると、「それに、わてらの水車小屋2軒と伯爵に献上した水車小屋を操作・メンテする人員を水車小屋3軒共通で雇ってもらい、人件費は伯爵が全部持つってことになりよった。まぁ、その代わり、月に一度僕らの誰かが伯爵の水車小屋のメンテも請け負う事になったけどね。」とみぃ君からも補足の説明が入った。


 みぃ君は伯爵と交わした契約書をテーブルの上に乗せ、めりるどんとごんさんに見てもらった。

 「交渉の案はみぃ君が考えてくれて、めっちゃすごい内容だった。私たちが損をしない様に、でも同時に伯爵も何かを得られる様に、Win-Winになる様にうまい具合に考えてあって、やっぱり交渉事はみぃ君だね!」と、なぜかももちゃんがドヤ顔になった。


 「って事は、またみぃ君と俺とでグリュッグで建設作業かぁ。」とごんさんが言うと、「せやな。」と間髪入れずみぃ君が返事をした。

 ごんさんはみぃ君からある程度、どういう風に伯爵に話を持って行くかということを聞いていたので、うまくいけば水車小屋を新しく建てることになるとは予想していた。しかし、小屋1軒差し出して、2軒を得るとは思わなった。


 「パン屋たちも早期の再開を望んどるので、できるだけ早い内にグリュッグへ行って水車小屋2軒を建てるのと、ドブレの他に1名作業員を雇わへんとやな。」とみぃ君は続けた。


 ごんさんは、みぃ君たちが戻って来たら、壊した水車の補修もしなくてはいけないので、すぐにでもごんさんとみぃ君がグリュッグへ行かないといけない事が分かっていた。だから、ここ数日、肉の確保に走った。

 めりるどんは、できるだけたくさんの石鹸を作ることに腐心し、ごんさんが獲って来た肉を燻製にすることに力を注いでいた。

 石鹸づくりは時間がかかるので、すぐには完成しなくても、今はかなりの量の石鹸を作っている。これも、ごんさんとみぃ君がグリュッグへ行く時に持って行って、売ってもらう為だ。


 ごんさんは、グリュッグへ持って行くための水路用の竹を切り出し、乾燥作業をはじめていたが、水車小屋2軒になるとは思っていなかったので、もっと竹もどきを切り出さなければならなくなった。


 「まぁ、ルンバたちの予定にもよるけど、みぃ君と俺がグリュッグへ行くのは明後日くらいかな。竹の切り出しもしないとだしな。」

 「うん、それにわても出汁の粉について、今後どないすんのかについてめりるどんと相談したいから、出発までに1日時間があるのはありがたい。」


 ここまで話して、4人とも夕食は食べ終わったが、まだ出汁の粉について話すので、めりるどんがお茶を淹れてくれた。


 「さっきみぃ君が聞いてきた乾燥のための設備だが、俺も石窯でいいと思う。乾かすだけなら高い温度は必要ないから、多少原始的なもので良いと思う。燻製の箱に入れて乾燥できるかもしれないが、時間がかかりすぎるのと、燻製的な感じで匂いや味が付くと配合も変わってくる可能性があるからなぁ。」

 「さよかぁ。」

 「ただ、石窯って本当なら耐火性レンガとかいるんじゃないの?」とももちゃんが昔通訳した練炭製造の研修の時に得た知識を持ち出した。


 「うん、耐火レンガが手に入るなら本当はそれが一番だな。」とごんさんもうなずく。

 「ねぇねぇ、もしかしたら酒場の親仁さんに、いろいろ聞いてみたら?だってこの村でオーブン持ってるの酒場だけなんでしょ?」というめりるどんの一言に、みんなが頷いた。


「まぁ、まずはオーブンなしで何週間乾燥させれば、カビが生えへんのか確かめるのが先やな。」とみぃ君。

 「うんうん。オーブンありきで話を進めると、薪の確保とかも考えなくちゃいけないし、やっぱりシンプル イズ ザ ベストだね。乾かすなら天日干し!そこからだね。」とももちゃんが横から何故かどや顔をして言った。

 おそらく自分の一言がとっても良い一言だと思ったのだろう。それを見て3人は「ぷぷぷ」と笑った。


 ある程度話が固まったと思われたが、話を進めていくと、グリュッグの4人に与えられる新しい小屋2軒は、今の水車小屋の横にある倉庫を解体し、新たに建てるのだということが判明した。

 また、その2軒の小屋の位置や、形、大きさなどは、4人の誰かが大工に指示することになっていた。

 そうなると、出汁作りに専念したいみぃ君にはしばらく村に残ってもらい、ごんさんだけでグリュッグへ行くのはどうか?という案が出て来た。

 しかし、伯爵が雇う大工たちが小屋を作る横で、先行して水車作りを進める事も可能な事、また、天日干しで最適な乾燥期間を調べるには3週間以上の時間が必要なことから、みぃ君がグリュッグにしばらくいても、めりるどんだけで天日干しの作業と観察を監督できるし、結果が出るまではみぃ君が村に残ってもあまり意味がない事から、みぃ君もごんさんと一緒に明後日出発することになった。


 出汁作りに関しては、明日にでもみぃ君とめりるどんが話し合って、どんな試験をどの期間実施するか詳細に話し合い、ジャイブの奥さんのロミーたちに指示を出すそうだ。

 お互いの情報を交換しつつ、大筋での流れは4人でちゃんと共有できた様だったので、その晩はすぐに就寝することになった。

 結局、移動続きで疲れた2人を慮った形だ。

 明日からはみんな、いろいろと手分けをして作業を進めなくてはならないので、少しハイな気分だったが、みぃ君とももちゃんに限っては、体の疲れの方が勝った様で、ベッドに入るなり寝入っていた。


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