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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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水車小屋奪還作戦 その3

 ルンバとごんさんは朝方雨に降られた。

 寝ていたら突然雨に濡れて、飛び起きたルンバがベッグ村へ羊毛を買いに行った時に使った薄汚れた莚をそのまま船底から持ち出して、それを二人の上に掛けて寝た。

 これだとぱっと見にはどざえもんだなと思いながら、なんとか寝ようとごんさんは顔にだけは雨が掛からない様に位置取りをし、二度寝にチャレンジした。


 莚を掛けてもらってすぐは、なんとか寝れたのだけれど、莚で雨を除けれるはずもなく、徐々に雨水が服に沁み込んで来るに従って、寝ていることが難しくなってきた。

 服がずぶ濡れになったまま寝ていると、確実に風邪をひいてしまうからだ。

 ごんさんがふと横を見ると、ルンバは鼾をかきながら寝ていて、案外図太い奴だなと思いながら、うらやましそうにルンバを見つめた。

 ごんさんも野外で雨の降る中寝た事はある。だが、ビニールという文明の産物など、雨の中で寝ても大丈夫な様に作られた様々な用具や素材があり、ここまでぐっしょり濡れるということはない。

 服が濡れても化学繊維が混ぜられた服は早く乾き、濡れても体温をそんなには奪わない様になっている。

 しかし、莚にはその様な機能はない。


 以前、ももちゃんが、「ロシア語の通訳から聞いた話だけど、ロシア文学ではよく雪や雨に濡れたまま寝ても、ぴんぴんしている人がたくさん登場するが、現実味のない作品だなぁって思ってたんだって。でも、実際にロシアへ行ってみると、こいつら無駄に頑丈だなと思ったんだって。そして、あのロシア文学で書かれていることは大げさではなく、本当の事なんだと思ったんだって。」と言っていたが、ルンバもロシア人並みだなと、ごんさんは独り言ちした。


 ロシア人でも、ルンバでもないごんさんは、服を着たままだと表面積が広いから風邪をひきやるくなるので、服を全部脱いで莚の下にもぐった。筵を裸に直に被ると、当然チクチクと肌を刺し、不快感が高まるが、サバイバル等の訓練を受けているごんさんは、不快感、痛みを無視できる能力が備わっている。

 これで、雨の中寝ても風邪はひかないなと思い、そのまま寝た。


 ごんさんのこの痛みに臆さない状態を指して、以前ももちゃんが「痛みを感じない様にしているの?」って聞いてきたことがあったが、そうではなく、痛みはしっかり感じているのだ。

 だって、痛みそのものを感じないというのはかえって危ないのだ。

 人は痛みを感じることにより、自分の体が受け入れられる事なのか、そうでないのかを判断できるのだ。

 無闇矢鱈と痛みを遮断することはあまり良い事ではない。


 ただ、致命的な負傷ではないのに痛みを遮断できなければ、その場から動けず死ぬなんてこともあるので、その痛みを感じつつも痛みに体や気持ちが引きずられない様にする事が必要になる。

 ごんさんはアメリカでそんな訓練を受けていたので、痛みや不快に耐性があるのだ。


 その訓練とは、例えば、箪笥に足の指を思いっきりぶつける。普通なら足を抱えてうずくまり、痛みが引くまでとにかく悶えるのが普通だろうが、ぶつけた足でそのまま歩くという訓練だ。

 これを全身いろんな部位で繰り返し行う。

 そうすると、痛みは感じるが、痛みを切り離す事が出来る様になる。


 精神的な苦痛も、考えない様にすることで切り離したりする。

 悩みなどは、考える事から発生しているので切り離す事はできないが、精神的な苦痛、例えば虫しか食べるものがないので虫を食べる時など、本当は食べたくないという苦痛がある。しかし、考えない様にして食べ、その苦痛は切り離す様にすることが可能だ。

 ちなみにごんさんはこれらの訓練の中、いつでも好きな時に気絶するという特技も得たりもしている。


 

 朝になって、みぃ君とももちゃんは朝食を宿で済ませ、港にある食堂からごんさんとルンバの朝食を買ってルンバの舟まで歩いて来た。

 ごんさんも濡れてはいるが、下着とズボンだけは身に着けて彼らの来るのを待っていた。


 「「おはよう。」」

 「今朝、雨が降ったみたいだったけど、大丈夫だった?」とももちゃんが、現地の言葉でごんさんとルンバに話しかけた。


 「ああ、結構降ったな。」とごんさんが日本語で答えた。

 「この時期は雨がよく降るので、驚くことではないよ。」とルンバは、何でもないことの様に答えた。


 自分のアイデアからごんさんが天井のない舟の中で雑魚寝になり、朝方雨に降られて寝られなかっただろうと、申し訳ない気持ちになっているらしいももちゃんに、「朝までしっかり眠れたぞ。」とごんさんがボソっと言った。

 「ええええ?雨の中で寝れたの?すごい!」

 「慣れてるからな。」とごんさんが、またボソっと言った。


 「朝食を持って来たぞ。」とみぃ君が、二人の朝食を並べた。

 「私たちはもう食べてるから、どうぞはじめてちょうだい。」とももちゃんが、ルンバにも分かる様に現地語で言った。


 食べながら今日の予定について再度確認を行った。

 「決行はいつごろになるん?」とみぃ君は今日の日程の確認をした。

 「そうだなぁ。夜中だと舟を漕ぐ音が響くかもしれないが、見張りには見つかりにくいと思う。夕方は、音は響かないかもしれないが、舟で移動したり、水車の所で作業しているのを見かける人が出てくるかもしれん。」

 「となるとやっぱり夜の方がええんかな。」

 「そうだな・・・。ドブレの2人の兄もアリバイ工作に協力してもらえるから、ドブレの仕事が終わる18時過ぎが良いだろうなぁ・・・。ただ、それだと舟で移動しているところを誰かが見ている可能性はあるな。」


 ごんさんとみぃ君の会話を聞いていたももちゃんが、「それならいっそ営業時間ぎりぎりに舟で移動したらお客さんの一人と思ってもらえるのでは?夕方に小麦粉が出来た分を納入みたいな・・・。それと水車が動いている時は、音が多いから、多少の騒音では見張りに音を聞き咎められることはないと思うけどねぇ。」とアイデアを出す。

 「おっ!それはいい案かもしれない。」とごんさんもその案に気持ちが傾いた様だ。


 「ルンバに舟で18時前に連れて行ってもらって、俺たちを降ろしてもらって、水車の塀の中に隠れる。小屋の表側でドブレたちが見張りに話しかけたりして細工してくれるので、静かに作業すれば水車の円板や水受け板を外せると思う。」

 「わかった。」

 「それで、陽が落ちて暗くなってから、水車の円板を川まで運んで、水中で割る。割って、塀の中に入れたら、ルンバの舟で港まで戻る。」

 「わかった。」


 「一つだけ気を付けて欲しいのは、音を立ててしまったり、失敗することもあると思うが、何かが起こったら、とにかく自分の事だけを考えて隠れてくれ。隠れたら俺が良いと言うまでは安全な所で待機して欲しい。」

 「わかったでぇ。出来るだけのことはする。」


 ごんさんとみぃ君の打ち合わせが終わったら、ごんさんたち2人が作業している間、少し離れたところで舟ごと待機して欲しいということも含めて、ももちゃんがルンバに伝えた。


 ごんさんは、打ち合わせしながらの朝食が終わるとすぐに、ドブレの家へ急いだ。

 昨日の内に、決行はおそらく今夜になることは伝えていたが、実際に今日になったということを伝えなければ、パソやマンボの協力を得られないので、彼らが仕事へ行く前に伝えなければならないからだ。


 無事、今夜決行である事を3人に伝え終わり、ごんさんは舟に戻り、もうひと眠りして今夜に備えた。


 一方、みぃ君とももちゃんはグリュッガー領主がいる静養地までの移動のための準備に取り掛かった。

 移動そのものはアンジャの店の馬車に乗せてもらえるそうだが、移動の間に何が必要になるのか分からなかったので、アンジャの店まで行って、必要な物を揃えることにした。


 道中の食事は保存食になるそうなので、アンジャや御者、護衛の分までこちらで揃えた。

 本来は、アンジャにはみぃ君たち2人にこれ程骨を折る必要はないのだが、折角自分たちのために力を貸してくれるというのだから、最低限の感謝の念を形に表したくて、食事と道中の宿代くらいはこちらで持つ事にさせてもらったのだ。


 夜は宿に泊まれるところでは宿に泊まり、途中1晩は必ず野宿になるとのことで馬車の中で雑魚寝になると言われた。

 毛布を買うかどうか迷っていたら、使い古しの物でよければ貸してくれるとのことなので借りることにした。


PCの調子が悪くなり、今月25日から修理に出すことになりました。

2週間の予定ですが、もしかしたらもっと時間が掛かるかもしれません。

25日までに書き進められる部分を出来るだけアップしていきます。

少し夏休み?を頂きますが、修理が終わり次第再開しますので、どうぞこれからもよろしくお願い致します。

今日は後、もう1話書き溜めていたものをアップします。

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