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羊毛っておいくら?

 隣村の村長さんの家の居間は、モリンタの家と同じ様にザンダル村の一般の家より多少家具が多いかなという程度で、別段ぜいたく品がある訳でもなく、簡素なものだった。


 「そっちへ座んな。このベッグ村の村長のダマだ。今日は羊毛を買いたいと?」

 「そうなんです。」

 「量はどれくらい欲しいんだ?」

 「舟二艘分です。」

 ダマはルンバを知っている様で、ルンバに向かって頷いた。


 「なら、羊毛の倉庫までついて来な。」そう言って、三人を村はずれに3棟ある倉庫の一つまで案内してくれた。


 倉庫の扉を開けると、少しだが獣臭さの籠った臭いが襲ってきた。

 もともと動物の臭いがするだろうことは想像に難くなかったので、別段驚くことはなかったし、ごんさんは親戚が馬を飼っていることもあって、たまに厩舎へ行き、馬に乗ったりもしているので動物の臭いには耐性があるのだ。

 もちろん洗って乾燥されてる羊毛なのでほとんど臭いはないのだが、戸を開けた瞬間だけ、うっすらと臭ったのだ。

 これは洗った羊毛を買っても、陽にあてるなどして消臭も考えないとなと、ごんさんは頭の中で算段した。


 「これが、お前さんが買いたいという羊毛だな。」とダマが倉庫の土床の上にあいてある羊毛の塊を手で指す。

 「触っても?」

 「おう、いいぞ。」とダマのOKも出たので、2~3か所の羊毛を触ってみる。


 「舟2艘だと、ここからここくらいまでだな。」とダマは入口から部屋の半ばあたりを指す。かなりの量だ。少し圧縮してパッケージすれば、この量でも船2艘に乗せることができると思っている様だ。


 「この量でいくらになる?」

 少し悩んでいたダマだが、ごんさんの目を見て「銀貨4枚。」と指を4本立てて言う。

 おおよそ2万円くらいだ。生活費があまりかからない村での生活で、これだけの金額はかなりの金額と言っても良い。

 「だが・・・・、もし酒をこの村にも卸してくれるなら銀貨2枚でもいいぞ。」とダマはごんさんを見ながらニヤッと笑って続けた。

 「ザンダル村の酒は、ここでも有名なんだよ。俺は飲んだことはないがな。あんたたちなんだろう?あの酒を造っているのは。」


 ごんさんは、このベッグ村までお酒の事が知れ渡っているとは思いもよらなかったので、びっくりしてしまった。

 「申し訳ないが、今日はお酒を持ってきていないし、ザンダル村の中でも量が足りてないので、他所へ卸すことは、今はまだ考えていないんだ。で、この羊毛は洗ってあるが、もし、洗ってない羊毛を同じ量買うなら、いくらになる?」


 「ふっ。期待したんだがなぁ。俺もあのお酒は飲んでみたいと思ってたんが・・・。」とダマが残念そうな顔をし、しばらく考えた後に「洗っていない羊毛かい?そうだな、銀貨3枚と銅貨6枚といったところかな。」と回答した。


 銅貨4枚、つまり2千円分くらいの違いかぁ・・・。まぁ、そんなに違いがないなら、このまま洗った物を購入して、一旦裏庭で陽にあてればすぐにでもベッドで寝れそうだな。


 「じゃあ、こっちの洗った羊毛を。それと、もし羊の乳や乳で出来ている食材があったらそれも買いたいんだが。」と、ごんさんもダマの目を見て交渉を始めた。

 「乳はどれくらい欲しいんだ?」

 「そうだなぁ、どれくらいの量をいくらで売ってくれるんだ?基準の量がわからないので、そこら辺も教えて欲しい。」とごんさん。


 ダマは隣の倉庫へ皆を連れて行き、かなり大きめの革袋を取り出して見せて、「この入れ物にいっぱい入って、入れ物込みで銅貨2枚。後、乳でできた食材って、これかな?」と言いつつ、更に奥の部屋へ入った。

 そこは、半地下の様になっており、薄暗くはあるが壁にたくさんの棚が並んでいるのが見て取れた。その棚の上には果たしてチーズが並んでいた。

 「これはチーズという物だ。一つで銅貨5枚だな。」とダマが説明してくれる。


 う~~む。チーズ丸々一つで2千5百円かぁ。高いなぁ。いや、丸々一つでこの大きさなら順当か?などと考え込んでいたごんさんだが、女性陣たちがチーズを欲していることを考えると、購入もありかと思い、料金の交渉に入ろうとしたところ、ダマが別の入れ物を持ってきた。


 「これは、ヨーグルトという食材で、肉を柔らかく焼く時に使ってるものだ。こっちは、この入れ物込みで銅貨1枚だ。」と小さな壺に入ったヨーグルトを見せてきた。小さいと言っても2リットルくらいはある。周りにおいてある甕の大きさと比べて小さいだけだ。


 「ところで、乳を固形にした物はないか?」

 ごんさんは、バターを頭に浮かべ聞いてみたが、ダマは、固形になった乳はこのチーズしかないと言われた。


 「それじゃあ、さっきの羊毛とこの乳を1つ、チーズを1つとこのヨーグルトで銀貨4枚でどうだ?」とごんさんが値段交渉に入る。

 「銀貨4枚と銅貨8枚のところを銀貨4枚か?それはちょっと厳しいなぁ。」と、ダマも負けてはいない。


 「しかし、チーズはまだしも、乳は早く消費しないとすぐに痛むよな?それなら銀貨4枚と銅貨1枚でどうだ?」

 「う~~~ん。お前さん、なかなか痛いところを突いて来るなぁ。乳は安くできても、革袋が高いからなぁ・・・。」と、しばらく考えていた様だが、「わかった。銀貨4枚と銅貨3枚でどうだ?」とかなり譲歩してくれた。

 「よし、買った!」とごんさんは即決した。


 羊毛は、ズタ袋に入れられたものをルンバやチャチャに、村の若者たちと一緒に舟に運んでもらった。

 その間にごんさんはダマに銀貨4枚と銅貨3枚を渡す。


 ダマは「お酒が大量に作れる様になったら、是非ベッグ村へ卸してくれ。」と未だお酒に残心の様だった。

 大量に作れる目途などないのだが、そうなったら卸すことを考えてみると一言添えてごんさんはルンバたちと船上の人となった。


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