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シャワー室がやっと出来た~

==========<ごんさん視点>===========


 シャワーのタンクを早く作らないと、いつまでも竹で作った洗面器で水をすくって体を洗わないといけないので、今作り掛けの下から棒を押して水を落とす場合はずっと片手が塞がる訳で、滑車を使って紐一本を引くだけでシャワー水が上から降ってくる様にしたいなと思い試行錯誤を重ねていた。

 ルンバから釘をもらったことで、タンク製造にそんなに樹脂はいらないのではないかとハタと思い立った。

 なかなか量が溜まらない樹脂を待っていては作業が放置されたままだ。

 

「くそう!道具がないってことに囚われてた。なんちゃって滑車しか作れないから、滑車の数を少なくすることに拘りすぎていた。サバイバルの基本、ある物でなんとかするっていうのを忘れてたなぁ」と突然声に出した。


「ごんさん、どうしたの?」とももちゃん。

「いやぁ、なんですんなりと思いつかなかったのかって、自己嫌悪に陥ってたところだぁ」

「え?自己嫌悪?なんで?」ももちゃんが不思議そうな顔をしている。

「シャワーのタンク、ちょっと考えたら簡単に作れるなぁって思って、なんでシャワー室作る時に思いつかなかったのかなぁっていう自己嫌悪」

「おおお!なら、もっといい案があるの?」とももちゃんが身を乗り出して聞いてきた。


「うん。タンクの上部に、横に這わせた重り止めの板にプーリーを設置して、シャワー室の外側に重りを繋いだ紐を這わせ、明り取りの穴を壁に作って、その外側と内側にプーリーを設置すればタンクそのものに穴を開けることがないので、水漏れとか気にせず作れたなって。いつもの自分ならすぐに思いつく事なのに、なんであの時思いつかなかったのか・・・」


「いやいや、これだけ材料も工具も無い中で、いろんな物を作ってくれてめっちゃ助かってるよ。私が、父の竹細工では~って話をひっかき回したので、余計に別の方向へごんさんの思考を引っ張っちゃんだと思う。ごめんね」とももちゃん。


「いや、ももちゃんのせいじゃないよ。竹細工しやすくなるから、あの情報はとても有益だよ」

「はいはい!二人とも、そこまで~」とめりるどんが二人のやり取りを聞いて間に入って来た。

「ごんさん、新しい設計ありがとう。私も新しいアイデアの方が断然現実的だと思うから、今日作っちゃいましょう。ももちゃんのお父様のご経験は、是非今度使わせてもらいましょう。大事なのは、今日、シャワー室が完成することだよ。だから、この話はおしまい」とめずらしくめりるどんが話を仕切って来た。


 みぃ君が見つけて細々と採集してくれていた樹脂の方は、シャワー口として使う細い竹とタンクとして使う大きな竹のジョイント部に使われたので、十分活用されたと言っていい。おまけに少量で済んだので良かった。


 はやくシャワーを使いたくて4人ともウズウズしていたので、話はここまでとなり、早速なんちゃって滑車を2つ作った。

 重りは両方とも重り止めの板に取り付けた。一つは重りが上下に動く軌道の少し横に、もう一つはタンクの端に。

 今回、滑車を取り付ける前まではシャワー室の外壁に小窓など作られておらず、タンクを上に載せると室内が真っ暗になることに初めて気づいた。

 今までは天井なしで水浴びをしていたので気づかなかったのだ。


「結果オーライだね」とはめりるどんの評。

 タンクに水が貯まるようにスコールを待つこととなり、その夜のシャワーを期待しつつ、4人はいそいそとそれぞれの仕事に戻った。

 その夜、タンクの貯水量からシャワーを堪能できたのは2名のみだが、それでもシャワーが出来たことで、みんなの生活はとても過ごしやすいものに変わった。



 ここのところ、4人が毎日行っている仕事は、お酒造りである。

 2班に分かれて村に残って樽を洗い、熱湯消毒をし、出来ている材料で樽にお酒を造っている班が一つ。作業小屋の方へ行き、食糧調達とサトウキビもどきなどを採集しシロップを作る班が一つ。こちらの班は、畑での作業や石鹸作りなども含まれるので、人数の配分が、村での作業1名、作業小屋での作業3名に分かれている。


 村で言葉を覚えなければならなず、お酒も実際に作ったことのあるももちゃんが一人で村へ残り、残りの3人が作業小屋での担当となった。


 樽は大きいので、女性一人で清浄、消毒をする作業は難しいかと思ったが、なんとか熟してくれている様だ。

 樽を洗浄するには村の井戸から水を何度も汲まないといけないので、そう言った意味でもかなりキツイ作業だ。

 だが、ももちゃんは、井戸には村の主婦連中がよく集まるので、言葉の勉強になると喜んでいてキツイ樽洗いも楽しみながらやってくれている様だ。

 また、時間が空いている時は、暖簾などを作成し、村での小銭稼ぎに精を出していたり、暖簾と交換して手に入れた布を使って、4人の下着や着替えなどを縫ってくれている。ただ、ももちゃんはめりるどん程裁縫が得意ではないので、夜な夜なめりるどんに縫い方を教えてもらって縫っている。もちろん、早めに帰宅した日は、めりるどんも縫物を手伝ってくれているのがありがたい。出来る作品の質が全然違うからなぁ~。でも、これはももちゃんには言えないなぁ~。


「あ、ここは返し縫長めがいいよ~」

「纏り方もいろいろあるから・・・・。う~ん、ここはどうしようかねぇ」

「縫い目はある程度揃ってたらそこまで気にしなくていいよ。消耗品だしね」などと、夜な夜なめりるどんが指導している。


 既に、4人分の下着をそれぞれ3セットと、頭からダボっとかぶるタイプのシャツを1枚づつ仕上げてくれている。

 家の掃除や夕食の準備や、着る物の洗濯もももちゃんの担当となっている。


 残りの3人も最初の固形石鹸が出来上がったり、男手が2人分もあることで作業小屋そのものを丈夫な物に作り変える事ができたり、畑も広がったりと順調だ。めりるどんも石鹸づくりの他、作業広場を整えたり、煮炊きにかかわる作業を進めてくれたりと大活躍であった。


 何より俺らが持ち帰える大量の砂糖シロップやフルーツがなければお酒造りは始まらない。俺が、酒場から空樽を更に3つ購入したので、お酒の量も増えてきている。まだ空樽は2つあり、4人は、この最後の2つに酒を仕込めば、当面酒造りはしないでも良いと考えていた。

 しかし、その考えは甘く、酒場に卸せば卸すほど、ほどなくして空樽が戻ってくるのだ。

 酒造りは、今後エンドレスで続けなければならなくなりそうだ。ただ、同時にかなりの量の銀貨が俺たちの懐に入ってくる。

 問題は、酒の製造が、消費に追いついていかないことだ。

 もちろんお酒は、全部酒場に卸すのではなく、俺用の樽分(もちろん残りの3人も飲んではいるが、量的には俺が圧倒的に多い)は家に残しておかないといけないので、1樽分は常に家にある。


 まぁ、みぃ君と一緒にほぼ毎晩、情報収集や村での居場所確保の為に酒場へ通っているので、家の樽が空になっても酒場で飲めばよいだけのことなのだが、家に1樽あるのとないのでは心の余裕が違ってくるからな。


 この様にして、俺たち4人は村での生計手段を確立していった。

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