酒ができたどーー!
==========<めりるどん視点>===========
今朝のごんさんは朝から機嫌がいい。みぃ君もなんとはなしに機嫌がいい。
それもそのはず、昨日の夜ももちゃんから、そろそろお酒ができた様だとの発表があったのだ。
ごんさんは朝食そっちのけで酒が入っている入れ物を手に取った。
それを見てももちゃんが「ごんさん、まだ朝だよ?」と声を掛けたが、「味見だけだから、大丈夫!」といい顔でニカっと笑って返された。
ごんさんは、「お酒は飲みたい時が飲み時なので、別に朝でもいいぞぉ」と付け加えながら、小さなコップを2つ棚から取った。
ごんさんとみぃ君は少しだけお酒を注ぎ、口に含んだ。
「うん!」「ええね!」「エールより断然いい!」などと二人で嬉しそうだ。
「ももちゃん、これもっと作れないかな?もちろん、フルーツもたくさん採ってくるし、さとうきびもどきも山ほど採ってくるから」と、ごんさんは真剣な顔で前のめり気味に体を乗り出した。
「ももちゃん、私たちが作るのは砂糖じゃなくってシロップだから、もしかしたら砂糖より足が速い可能性があるかもしれないよ。お酒にしたなら保管期間も伸びるだろうし、自分たちも飲めるし、料理にも使えるし、なにより売れると思うからジャンジャン作った方がいいかも」とごんさんの援護射撃をしてみた。
「いいこと言うなぁ~!」とごんさんが感謝の眼差しを向けて来た。
「うん、売り物になるっていうのは心強いね。んじゃ、いっぱい作りますか」とのももちゃんの返事に、「「「おおおーーー!」」」と三人の歓声が上がる。
「なら、ごんさん、酒場で空の樽が手に入れられないかな?2つくらいあるといいんだけど。」とももちゃんが早くも大量生産を持ちかける。
今夜、ごんさん達が飲み屋に行く時に聞いてもらえることになった。
「お酒は時間がかかるけど、手間に比べて良い値段がつきそうなのがいいよね!」とももちゃんが「ふんすっ!」と肩に力を入れ鼻息荒く独り言ちしていたのが印象的だった。
樽の確保はまだだが樽が来る前にやっておかなければならない作業、酵母づくりがある。もっと言えば酵母を作るための、糖度の高いフルーツ採集と砂糖シロップ作りもある。
この日は、昼まで全員で作業小屋へ行き、全員でさとうきびとバナナの実の収穫をした。
今後の事もあるので、じゃがいも畑の近くに新しく畑を作り、さとうきびもどきを植え変え、バナナは接ぎ木をした。
ごんさんだけは先に罠の様子を見に行ったが、すぐにみんなに合流した。
「誰か一人残って、砂糖シロップ作りをするのなら、女性一人には厳しいやろうから、わてがこのまま小屋に残ってそのさとうきび全部カットして、火に掛けるよ。その間みんな採集を続けてなぁ。」と、小屋で昼食を食べ終わった時、みぃ君が提案してくれた。「ついでに川の罠とジャガイモ畑からある程度収穫しとくさかいに、夕食は問題ないと思うでぇ。もちろん、ごんさんが獲ってくれた魚と肉があるから今夜も豪華版の夕食になるなぁ。」といい笑顔をみんなに向ける。
みぃ君の提案に乗り、残りの3人でジャングルにさとうきびとバナナの実の収穫をしに行った。
夕方よりちょっと早い時間になるとももちゃんは言葉の勉強があるので、夕食の材料を持って先に村へ戻った。
残りの三人で日が暮れるぎりぎりまで作業を続けて、男手もあるので比較的重たい畑のじゃがいもをある程度村へ持って帰ることにした。
帰り道、いつもよりも多い量を作った砂糖シロップと熟したバナナを抱え、3人の表情も明るかった。
「おかえり~」語学の勉強を終えたももちゃんが、夕食を準備して3人を迎えてくれた。
今夜は、肉料理とじゃがいもの煮物とスープだった。
川魚の方は、みぃ君が後で干物にする為に下拵えをしてくれるとのことなので、今夜の食卓には上らないこととなった。みぃ君は干物まで作れるって器用だよね。
「ただいまぁ~。大量にシロップできたよ。これでお酒もたくさん造れるね、ももちゃん」と自然と明るい声になる。
「いいねいいね。じゃあ、夕食後、すぐに酵母作りに取り掛かるね」とももちゃん。
夕食中も話題はお酒だ。朝と違ってちゃんと木のコップに並々と注がれたお酒が今夜の夕食の供なのだ。お酒の話にならない訳がない。
ここで一つ提案してみようかな~。
「ねぇねぇ、少しこのお酒を酒場へ持って行って、オヤジさんに飲んでもらってお店で扱ってもらえる様に交渉できないかなぁ?そうなれば、空の樽だって分けてもらえやすいと思うしね」
「そうだね。それいい案だね」ごんさんも大きく頷く。
「もし、今夜にも空き樽をもらえたら何で支払う?」と、みぃ君ももう空き樽を交換してもらえるのが規定の事実かの様に考えているみたいだ。
「樽が手に入ったら、明日もまた砂糖シロップ作りとフルーツ採りだね」とももちゃんもノリノリだ。
==========<みぃ君視点>===========
ごんさんと煤けた飲み屋のスウィングドアを開けた。
ルンバたちはもう来とったさかい、二人して迷わずルンバたちのテーブルに向こた。
「やぁ」
「こんばんは」
挨拶くらいならわいらも現地の言葉で出来るようになっとる。
最初にごんさんに連れられてルンバ達のテーブルに座ってからは、二人とも毎回ルンバ達のテーブルに座っとる。
さっそく、ジェスチャーゲームが始まった。ほぼ毎晩、彼らと一緒に飲んどいても、まだ会話は成り立たへん。そこでこの前からやりはじめたジェスチャーが毎回行われる。
最近は意思を伝えるっちゅうよりも、わい達に単語を教えるためにやっとる感じなのやけど、惜しいかな、飲んだ翌朝まで教えてもろた単語を全部は覚えてはおらん。
わい達にとっては、勉強っちゅうよりも遊びでジェスチャーをしとんのやから、別段必死のパッチで単語を覚えんくてもええと思とる節がある。
言葉はももちゃんの領域やから、翌朝になっても覚えとる単語があれば伝えるが、忘れる単語があっても気にはしとれへん。
今夜は、ももちゃん作のお酒を持ってきとるので、まずは彼らの感想を聞いてみよ~と、オヤジからみんなの分のコップをもぉて少量だが酒を注いでいく。
ごんさんが、ジェスチャーで飲んで飲んでなとやると、ルンバたちがコップを傾ける。
「ごんさん、残り少ないから、全部飲まれる前にオヤジさんにも試飲してもろてくるな」とカウンターへ向こた。
「おう」
ごんさんはルンバ達を見守っとった。飲み終わった途端、みんなごんさんの手に、おかわりの酒はないか見回しとる。
全員がおっきな声でなんぞ言うとるが、ごんさんにそこまでの語学力はまだあれへん。
ごんさんも海外に住んどったさけ英語は流ちょうなのやけど、興奮して話す彼らの言葉は理解できひん。理解はできひんが、彼らが興奮して、この酒を気に入っとんのは分かる。
いや、気に入っとるっちゅう次元やあれへん、ごんさんの手におかわりがあったらひったくってでも飲みたい、そないな感じや。
カウンターではワイがオヤジと女将に少量づつ試飲をさせとる。
オヤジたちの様子もルンバたちとさして変わらん。
そこで徐にジェスチャーまじりでオヤジたちに商談を持ちかけとる。
「ニャック」と言うて、お金と自分が持っとる酒の入っとる入れもんを指さす。
オヤジは両手をいろんな幅に広げる事を繰り返した。量を示しやと言うとる様や。
やけど、ごんさんにもワイにも、まだ、それに答えるだけ語彙力はあれへんかった。
「ごんさん、わて、ももちゃんを呼んでくるわぁ」
「いや、酒場だから、女性を連れて来ていいものか・・・」とごんさんが口ごもっとる。いや、今この時に叩き込む様に営業せな、高こう売れるもんも売れんでぇ。わて、ちょっとひとっ走りして呼んでくるわぁ。」とももちゃんを呼びに店を飛び出した。
ももちゃんは酒場やからもしかしたら悪く見れるかもと説明したが、そんなん気にせぇへんみたいで直ぐにわてと一緒に来てくれはった。
彼女はまっすぐカウンターまで行き、女将と話し出した。
ももちゃんも流ちょうに話しは出来ひん様やけど、片言でも、必要な単語を並べてなんとか意思疎通を図っとる様や。
もちろん、ジェスチャーもめっちゃつこて話しを進めとる。
彼女を見守る様に彼女の斜め後ろに立ち、ごんさんはルンバ達のテーブルから様子を伺っとると、話がついたんか、ももちゃんがにっこりわろて頷いた。
女将も頷いとる。
「空の樽2つを売ってくれるそうだよ。2つで銅貨5つだそうだよ。それで、お酒はその樽一杯のお酒を銀貨8枚で買ってくれるそうだよ。」とももちゃんが日本語で説明してくれる。
「今夜家に戻る時に、銅貨5つはろて、樽2つ忘れんと持って帰ってね~。」と続けて、「ほなら、ウチは戻るね。」と店の中の人らになるべく目をやらへん様にして、わてと一緒に店を出てん。
結局この夜、わては一杯も飲まんといて、飲み屋から帰宅した。
銅貨1つは500円くらいの価値で、銅貨10枚で銀貨1枚になる。
わてらが店を出て直ぐオヤジがなんぞを言うたんで、ルンバたちが歓声を挙げる。
「たぶん、次に酒が出来たらここの店でさっきの酒を出すと言ったんじゃない?」とももちゃん。
もう酒を売る算段まで付けたんかい?
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