表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/143

環境づくり その6

==========<めりるどん視点>===========


 翌朝はみんないつも通り、陽が登ってすぐに起き出した。

 今日は、トイレの壁とシャワー室を作ろうということで、ごんさんはまず、朝食を食べてすぐに作業小屋まで行き、罠で取れた得物を持ち帰った。


 その間、DIYが好きな私は相変わらずすのこと格闘していた。

 排水を考えてすのこの木材同士の間は結構隙間が必要だ。

 だから高さの違う台となる木材の上に板を並べ板の幅ギリギリにノミを使って浅く彫る。

 できるだけ板の幅ギリギリにしているので、上から板をそのソケット部分に力いっぱい押せば嵌る、そんな仕組みだ。

 多少合わなくて一部に遊びが出ても、使用者が上に載ってひっくり返らなければ良いのだ。まぁ、所謂でっち上げ仕事だ。

 きちんとしたすのこは、将来釘やボンドに代わる物が手に入ってからゆっくり作り直せば良いんだものね。

 それでも最新の注意を払って作業する事に変わりはない。

 結構これが疲れるのだ。


「うがーーー!ふぅっ。よしっ!」とどこのおっさんかい?と言う様な声が口から洩れた。まぁ、それはしょうがないよね。

 両肩をぐるぐる回して凝りを取る動作をして、勇ましくすのこ作りを再開した。

 私の挙げた声を聞いて、みぃ君とももちゃんは心の中で、『めりるどん、ありがとうーーー!ごめんね。』と思ったのだろう、労わりの目をこちらにちらっと向け自分たちの抱えている仕事を熟すべく直ぐに自分たちの作業に戻った。


 みぃ君とももちゃんはトイレの壁を作るべく、竹と奮闘していた。釘がないのと、竹を縦に切ったものを壁材とするため、どうやって壁と柱、そして土台になる石と柱を繋ぐかが大きな課題となった。


 まず、柱だ。これが立たないと何も出来ない。

四っつの平たい石をトイレの床となる板の床面からの高さを測って、同じ高さになる様に四隅に並べている。

以前私が石と植物の外皮で作った簡易垂直測定が役に立っているのが嬉しい。

 一昨日、トイレの穴を補強する際、みぃ君とごんさんはこの原始的な垂直測定器で傾き度を測っているのでその便利さは証明済だ。

今日もみぃ君とももちゃんでトイレの柱を置く石を同じ高さにしてもらえると思う。


 一旦、石の高さを調整したら、その石の面にぴったり合う様に柱の底面を調整しなければならないんだけど、今はノミを私が使っているのでノミ無しでの作業は難しいと柱は後回しにすることにしたみたいだ。


 二人はお日様がある内は休まず作業をしたいので、ゴミ捨て場の穴の補強と同じで細く丸いままの竹を地面の上に横にした。そして端から端まで一直線に切り目を入れる。

 同じ物をもう一本作り、その二本の間に細く縦に切っておいた竹を一直線の切り目に挟む。

 細長いダブルクリップの黒い部分が上下にあり、その間に細い板を挟んで壁にしているのをイメージしてもらうと分かりやすいと思うと説明したから、みぃ君もももちゃんと直ぐに理解してくれて作業が進んでいる。

 釘がないので苦肉の策でこの様にしたが、意外と丈夫な壁になった。

 

 そうこうする内にごんさんが、作業小屋から戻って来た。今回も食材と暖簾の材料を持ち帰ってくれた。

 毎日のように肉や魚が口に入るのはごんさんのお陰だから、感謝しかないよ。


「トイレの壁と屋根に問題がなければ、俺はシャワーのタンク部分を作ろうと思う。どうかな?」とのごんさんの問いかけに、みぃ君とももちゃんはトイレは自分たちに任せてそしてタンクをお願いと答え、二人でトイレの作業を進めることにした様だ。

 私の方はすのこを作り終わったので、ノミを持ってトイレの柱と平らな石との接地面の調整をする事にした。

 はっきり言って体は悲鳴を上げているが、この作業を明日もと言われる方が嫌なので、今日仕上げるくらいの意気込みなのだ。


 みぃ君とももちゃんが作った竹の壁2枚と私が調整した柱は、柱に対して直角になる様に繋がないといけない。一つの柱に2面の竹壁がつくので、蔦2本を使い、柱と接触している竹壁の一番端っこの竹と柱を結ぶ。2枚の竹板の蔦が交互になる様に柱の上から下まで蔦でぐるぐるに巻き付けた。これで隙間ができない形で竹壁2枚を柱とつなぐことができた。L字状態の柱プラス壁2枚が1セットとI字状態の柱プラス壁1枚が出来上がったら、それらに柱2本を合わせて3つ壁状態に蔦で繋いで行く。


 また、みぃ君のアイデアで、竹壁は柱より数十センチ短くしており、床からは3センチくらい浮かせて、屋根がつくところとは15センチくらい間が空く様に作られている。

 これで日差しが中に入る様に工夫し、同時にトイレの中の臭い問題を緩和しようというのだ。もちろん、悪臭対策にはエアープランツも使うが、換気は大事だよねという話になった。


 壁をつくりつつ、入口をどうするか3人で話し合ったが、暖簾を掛け、更に暖簾より幅の広い塀をトイレから人が一人通れるだけの距離をあけ入口の手前に建てる事で、外から直に見えない様にすることに決まった。

 これはただの塀なので竹をかなりの太さになる様に縦に切り、そのまま地中へガンガンと打ち込んで塀にした。

 もちろん安全面を考えて要所要所に大きめの石を置き、塀が倒れない様にしている。


 目隠しの塀があることで、暖簾はいらないのでは?という意見も出たが、壁一面が空いたままと言うのは使用時に落ち着かないだろうし、斜め横から中が見えるので、やはり暖簾は必要だということになった。

 つまり壁1面分の暖簾が必要になるので結構な作業量だ。

 ももちゃん一人だと大変かもしれない。

 私もエアープランツの作業が終ったら出来るだけ手伝ってあげたいなぁ。


 柱と平たい石の接地面調整作業は、とても繊細で、何度も何度も柱の底面を石に充てて調整するのだが、工具がないので、普通より厳しい作業となっている。

 今日は朝からずっと細かな神経を使う作業を続けているので可成り疲れて来た。

 それをずっと傍で見ていたみぃ君が、「めりるどん、繊細な作業の繰り返しやから、むっちゃ神経使こうとるやろ。休み休みやればええんやでぇ~。何なら明日に伸ばしても誰も何も言わんへんでぇ」と声を掛けてくれる。


「ありがとう、みぃ君。ただ、今やめちゃうと、明日もこの作業かぁ・・・って、体から力が抜けちゃう気がして・・・。根気も持たなくなりそうで・・・」とひきつった笑顔を向けると、「いやいや、まだシャワー室の柱の作業があるんやけど・・・・」とみぃ君の小さな声がかえってきた。

「あうっ」地味な攻撃・・・・。


 漸くなんとか、トイレの壁が出来た。次は屋根だ。こちらは細く縦長に切った竹を大まかに編み柱の上に被せた。さらにその上に、以前採集しておいたヤシの葉を、雨が中に入り込まない程度に編んだ隙間に差し込んだ。屋根が風で飛ばない様、要所要所に中くらいの石を乗せてトイレの壁と屋根が完成した。


 ももちゃんは、そのままトイレの暖簾を作ることになり、一旦家の中へ。

 暖簾が出来たらもうトイレとして使えるからね。

 みんな早くトイレ作りの作業を終わらせたいから、ももちゃんの責任は重大だよ。

 長めに切ったパーツで良いから手早く暖簾を作って一つだけ空いている壁に掛けないとだね。

 まぁ、一番径の大きい植物で色など考えず作れば良いだけなので、考えずに手を動かせ!的な仕事なのだ。

 でも、長さも結構あるからね、大変なのに変わりはない。


 今日は疲れているので無理だけれど、別の余裕のある日にでもエアープランツのオブジェを作ろう。どうやらトイレの内壁にとりつけ、消臭対策にしたいらしい。でも今は、シャワー室の方を先に片付けないとね、いつまでも体を洗えない。


 みぃ君も一緒にシャワー室の床作りを手伝ってくれることになった。

 こっちの世界に来て4人共、お日様のある内に休むって事がなくなった。可成り過酷である。

 今日はまだお日様があるので折角トイレの建設がほぼほぼ終わったのに、すぐに次の作業に移る。

 今は、みぃ君と一緒に斜めになる様に敷き詰めた石の上にすのこを乗せて調整しているところだ。


「床はこのくらいの傾斜でええか?」

「うん。広さもそれくらいでいいね」と持って来たすのこを床の上に置いてみたが、結局「もうちょっと傾斜を付けた方がいいかなぁ~。本当はすのこの方を床に合わせるべきなんだろうけど、いかんせん工具が少ないので、床の方をすのこに合わせてもらった方が楽かも~」といいつつ微調整に入る。


 シャワー室の床の傾斜はすのこに合わせて何度も敷き直した。


 2人でトイレやシャワー室の床と格闘している頃、ごんさんは以前見つけて切り出しておいた、大きな竹もどきを、節を利用してタンクの様に加工しはじめた。

 節を利用して切った大きな径の竹のバケツの真ん中に細い径の竹を通す。

 細い竹の下部も節を利用しているので、そこへ穴をいくつか開けシャワーヘッドとして使うのだが、常に水が下に落ちて来ない様に細工が必要なのだ。

 真ん中の穴に棒を通し、その棒の上部にフロートになる様な物をくっつけて、その棒を押し上げないと水が落ちて来ないようにストッパーとして使うのだ。


 問題はたった3つの部品の接合部にある。

 だって密閉性が低いから、そこから水が零れてくる可能性大なのだ。

 折角スコールで溜めた水も少量でも常に漏れていたら、竹タンクの中に水は残らない。

 パッキンが欲しいよ。


 でも、それも、みぃ君のお陰で解決した。

「この前竹を切る時、トイレ横に植える木も探していたので匂いがするかどうかたまたま木の枝を折ったら粘っこい物が手についてきて、樹脂かなと思って気になってたんだ」

「おおお!さすが!助かった」とごんさんは両方の案を採用することにした。


「どの木から樹脂が採れるの?」とももちゃんが素朴な疑問をつぶやく。

「すぐそこの竹林の横にある黄色い木だよ。さっそく樹脂を貯める様に細工してくるわぁ」と、みぃ君はすぐに竹林の方へ行った。

 これで樹脂が必要な量貯まれば、シャワーも完成だねとみんな笑顔になった。


でも私はそれならなぜすのこ作りの時に言ってくれなかったのかとめっちゃ力が抜けちゃったよ。

 

 樹脂が手に入るなら木を板の幅に削る作業は割愛出来たのにぃぃぃ。うぎぃぃぃ。

 でも、樹脂を集めるのにどれくらいの時間が掛かるか分からないし、水に強い樹脂かどうか分からないから、まぁ、いいかぁ。でも水に強くないとシャワーで出来上がらないけどね。

 何とかすのこも出来たし、まぁいいか。


 ごんさんは細い竹を節に穴を開けるのに、村の鍛冶屋と交渉する事にした。

鍛冶屋なら鉄の棒もいっぱい転がっているだろうし、その棒を熱する火もあるだろう。

「石鹸がまだ少し残っていたら、それを材料に鍛冶屋に交渉してくる。ももちゃん、交渉は頼む」と二人で鍛冶屋へ。

みぃ君はもう黄色い木の所へ行って樹液採集の準備をしている。

私はちょっと休憩だ。

 休みなしでのぶっ通しは疲れるからね。

 でも地球での生活に比べれば、たかだか十数分の休憩なんて休憩の内に入らないよ。


 鍛冶屋との交渉は上手くいったのだろうももちゃんは直ぐに戻って来てトイレの暖簾作りに戻った。

 しばらくすると果たして無事シャワー口の穴を開ける事に成功したごんさんが戦利品を手に戻って来た。

 私はみぃ君と一緒にシャワー室の壁作りに勤しんでいる。

 途中、作業に飽きた時にトイレットペーパー代わりに使う木の葉を集めて、蔦で作った籠に入れてトイレ内に設置したりしつつも、シャワー室の壁は幅が狭いので比較的早く作れるのであともうちょっとで出来上がりだ。

後は、ももちゃんの作る暖簾ができればトイレは完成だ。

 もう日が暮れ始めたので、ももちゃんは、暖簾づくりは明日の朝一番で続きをすることにした。

 一方、残りの3人も、本日のシャワー室作りはここまでにして、夕食にすることになった。

 そして、夕食の後は、いよいよ待ちに待ったごんさんのお楽しみ!酒場へ行く時間となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ