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環境づくり その5

==========<ごんさん視点>===========


「ふぁ~。何かすっきり目が覚めた!」と自然に口から言葉が零れて、ハンモックから降りながら顔を洗うために台所へ向かう。

 すっきり爽快!なぜなら!今夜は村の酒場でお酒が飲める!!

 本日やらないといけない作業をサクサクと片付けて、夜に備えなければ!


 「くすくす」と笑いながらみぃ君が朝食の用意をしてくれた。


「いっただきまーーーす」

 塩や砂糖もどきが出来て、油もあるので、最近の食事は普通においしい。

 卵がないので肉とフルーツ中心になってしまうが、フルーツを肉の味付けに利用したりと、味の選択が広がって、みんな食事の時間を楽しみにしている。


「今日は、みんなでここに残ってトイレ作りをする!でいいね。トイレの基礎部分の仕上げと壁や屋根と、シャワールーム作成だけど、他の意見はある?」といつもの様にももちゃんが仕切る。


「俺は、まず小屋まで行って、魚と森の罠を確認して、暖簾の材料を少し持って帰るよ」

「おおお!ごんさん!是非お願い!中が空洞になってる植物、できたらいろんな色の奴を採ってきて。今の所、濃い茶色と薄い茶色、緑色のしか見たことないけど、少なくとも3色はあるから」とめりるどんがどんな物が必要なのか説明する。

「それなら細い蔦を中の芯にしなくちゃいけなくない?ほっそい蔦を長めに切った物もお願いしま~す」と横からももちゃんがお願いする。


「中が空洞って、あの先がすすきみたいなやつかな?」とみぃ君。

「なんとなく、どの植物か分かった。うん、3色持って帰るよ。で、小屋からは2時間もかからずに戻れるはずだから、それからシャワーづくりをするよ。この前、ももちゃんが気にしていたどうやってシャワーの様に水を出したり止めたりするかについて、一つ案があるんだ」


「おおおお!さすがごんさん!工作機械のプログラミングとかしてただけあって、仕組みとか強そう!とすると、ごんさんが小屋まで行って帰ってくるまでに、二人でトイレの壁と屋根を作っておいて、もう一人は靴を作るでいいかな?」とももちゃんが本日の予定を再確認する。


「う~~~ん。ももちゃんが言うのもいいと思うけど、靴よりも先にシャワー室を今日で作り上げた方が、明日からの作業の振り分けが簡単にならないかな?例えば、シャワー室とトイレができたら、明日から石鹸や砂糖シロップを作りに小屋に行けるし、その間に一人か二人残って靴を作ってもいいしね」とめりるどんが残りの三人の顔を見ながら遠慮がちに言う。


「どっちかって言うと、シャワー室の床の為にできるだけ平な石と、すのこ作りが必要になるから、そっちを先にしてもらった方がいいね」とDIY関係に関してはももちゃんよりはめりるどんの意見の方が賛成しやすい。これって俺から見て事だけどね。やっぱりDIYやりなれている人の方が流れとか抑えておかないといけないコツみたいな物が分かってるからな。


「それと、トイレは穴の補強をしないと壁は作れないから、やっぱり靴よりトイレやシャワー室の方が先かな」とみぃ君もめりるどんの意見に同意した。


「うんうん。そうだね。じゃあ、めりるどんが言う様に、ごんさんが戻るまではシャワー室優先で行こう。すのこはDIYが得意なめりるどんに頼んでもいいかな?石を集めてくるのは、みぃ君と私でやろう。トイレの壁と屋根を作るにも石が必要だから、4つ探すのも8つ探すのも同じだしね~。みぃ君には重い物運んでもらう様になって申し訳ないけど、よろしくです」


「ももちゃん、もしかして柱の下に敷く石だけを考えてる?」

 どうもももちゃんは考え違いをしているみたいで、口だけで説明できる自信がなかったから棒を持って家の前に来てもらった。土の上に図を描いた。「石は8つじゃ足りないんだよ」


「これ、シャワー室を横から見たところな。屋根がタンクになるように作るんだけど、タンクはひと際大きい竹もどきで、その真ん中にできるだけ小さな竹もどきをパイプ代わりにしてはめ込むんだ。この小さい竹の節を底にして、シャワーの様に小さな穴を開ける。で、ココナッツもどきの殻に砂とか入れて重りにし、長い棒を差し込む。これをシャワー口の蓋にする」と、描いた図のシャワー部を棒でさす。

 3人はふむふむと頷いている。


「それで、このココナッツに刺した棒が、小さい竹から外れることがない様にガイドの役をする。ココナッツの浮きが上がってもよい上限のところに細い板を取り付ける。で、こことここに・・・」と、タンク内の浮きの真上と、タンクの外の同じ高さのところを指しながら滑車を取り付ける位置を説明する。


「なるほど!シャワー口のところをココナッツの重りでふさぎ、ココナッツとつながっている紐をひっぱれば滑車の原理で楽に重りを持ち上げられて、水が落ちてくるってことね。ココナッツがシャワー口から大きく外れない様にココナッツ自体にガイドを取り付け、重りが上がってもシャワー口から外れない様に、高さの上限のところへ板を取り付けるってことね」とDIYが趣味のめりるどんが素早く俺の言いたいことを飲み込んでくれる。


「で、排水なんだが、床をすのこにして、排水がすのこの下に流れて、その下の石の上を滑って排水溝へ流れる仕組みにしたいんだ。石は若干斜めに設置して、排水しやすいようにするつもりだ。なので、すのこはその傾きに合わせて、右と左では高さを変える。その上に立つ人はまっすぐに立てるけど、実際には石床は斜めって感じだ」とごんさんが説明を締めくくった。


「おおおお!すごい!なんかしらんが、めっちゃすごい!」とももちゃんが興奮して声を挙げる。


「ということで、めりるどんには釘を使わないで木組みのすのこを作ってもらいたいけど、できるかな?」とごんさんが真剣な顔をしてめりるどんに尋ねた。


「うん、道具がないから難しいけど・・・う~~~ん、釘があればいいんだけど・・・材料をのこぎりで切って同じ幅・長さにするところまでは出来るとは思うけど、相欠け継ぎにするにしてもノミややすりがないときっちり嵌らないからねぇ・・・」


「わかった、私これからモリンタのところへ行って、釘かノミを交換できないか聞いてくる。交換がだめでも、ノミを貸し出してもらえないか聞いてみるね」

 寝室に元々打ってあった釘を利用して、ごんさんがみんなのハンモックをひっかけてくれてるので、この村にも釘があることは分かってるから、もしかしたら何かと交換してくれるかもしれないと思ったももちゃんが、できるだけ交換してもらえる様に頑張って来る!と息巻いている。

「のこぎりは、置いていくよ。じゃあ、頼んだ。すのこの大きさがシャワー室の大きさを決めるので、あまり大きすぎず、体を洗うのに狭くないくらいの大きさで作ってくれ」と、シャワー室は俺主導で作ることに決まり、食事が終わってすぐに皆が自分の作業に取り組んだ。


 みぃ君とももちゃんはまず平な大き目の石を探し、その後みぃ君は壁になる竹をカットしにジャングルの入り口へ行き、ももちゃんは近くのジャングルに屋根にするヤシの葉とシャワー室の床に敷き詰める石を採りに何回か往復する予定だ。

 竹は既にたくさん切り出してあったが、トイレとゴミ捨て場の屋根、シャワー室、その横の目隠しになる竹塀を作るには足りなくなるのが確実だからだ。

 

 めりるどんは、家の横でももちゃんがモリンタに頼んで貸し出してもらったノミも使ってすのこづくりを担当予定だ。工具が揃っていないので、かなり苦労するだろうが、なんとか形にしようと孤軍奮闘中してくれること間違いなしだ。


 今日のみんなの作業スケジュールを確認した後、俺は出来るだけ早く小屋や罠の所まで行き、各所点検と新しい罠を仕掛けると、川魚や罠にかかった獣を抱え、村までの帰路に買い物籠にいっぱいの暖簾の材料を採り、家へと帰ってきた。

 暖簾の材料は俺にとっては死活問題だからな。しっかりと採集しないとだ。


 帰宅した時、みぃ君とももちゃんの二人はゴミ捨て場の屋根を作っていた。屋根がついていたらスコールの時も穴が崩れづらいだろうとの配慮からだった。

 屋根はゴミ捨ての穴より心持大き目に作っている様だった。

 

 めりるどんはまだすのこに四苦八苦しているところだ。定規もなにもない状態での工作だ。とても大変そうだ。

 

 簡単にフルーツ中心の昼食を摂った後、みぃ君と一緒にトイレの穴堀と穴の補強作業に入った。穴の中で作業する俺たちを手伝うべく、みぃ君が前もって細く切った竹をももちゃんが地上から手渡してくれた。

 ただ材料を渡してくれているだけで他の3人と比べて作業量が軽く見えるが、材料を取りに一々穴から出る事を考えると十分役に立っている。


 男性二人の作業なので、午後いっぱいを使ってなんとか補強済みの穴の部分が出来た。

 真ん中に穴を開けた形の板を穴の周りに並べてある平べったい石の上に被せて、その板の上に乗って、飛び跳ねてみた。もろさを危惧していたが、ちゃんと飛び跳ねる男性の体重に耐えたトイレの土台に3人は安堵した。


「これで後は壁と屋根を付けるだけ?」と嬉しそうにももちゃんが二人に尋ねる。

「そうだなぁ。今朝暖簾の材料を集めながら、トイレの出入口の戸をどんな風にするかとかって考えてたんだ。個室に入った後の明り取りの問題もあるしな。何か良いアイデアがないか?」とのごんさんから問いが返ってきた。


「そうやねぇ。屋根と壁の間に隙間を作れば中に居ても日差しで昼間っから真っ暗ってことはないと思うでぇ。ただ、入口かぁ。暖簾だと風が吹いたら中が見えそうやしなぁ。かと言って、扉を作るには蝶番とか部品がないしなぁ」みぃ君も答えが見つからない様だ。


 3人ともすぐには答えが出ない様で、とりあえず夕食の時間にでも4人揃って考えようということになった。

 既に陽が傾き始めており、作業を続けると真っ暗になってから途中で作業を放置しなくてはならなくなりそうなので、本日の作業は終了ということになった。


 3人はすのこづくりで孤軍奮闘しているめりるどんのところまで戻った。今夜の夕食当番は俺だったが、めりるどんのすのこ作りを手伝うためにみぃ君に当番を変わってもらった。暖簾づくりは急遽めりるどんの代わりにももちゃんが担当してくれる事になり、めりるどんの簡単な説明を聞いて暖簾を作り始めた。


 ももちゃんは、真ん中が空洞になっている3色の植物を同じ長さになるように駒切れに切っていき、今度は外径が似たものをより分けていった。


 一旦外径を揃えた材料を今度は色を考慮して床の上に並べて模様を作っている。

 十分な幅ができたら、縦の一列を床に並べた順番に植物の外皮で作った紐に通していく。

 蔦だと直系が太過ぎた様で、結局植物の外皮を使う事にした様だ。

 材料が抜け落ちない様に端に3重の結び目を作り、端を10センチくらい残した。

 それを全ての縦の列で作り、最後に先の尖った鳥の骨で裾をフリンジな感じに仕上げていく。

 つまり外皮の結び目から下の繊維をバラバラにし、ふさふさにしたのだ。


 反対側の端は15センチくらいマクラメ編をし、レースの様な模様と上部に棒を通す輪を作り、みぃ君に切り出してもらった木の枝を通した。


「ああああ!すごい素敵!ももちゃんマクラメ編みとかできるんだぁ。すごい。これなら、全部をマクラメ編にしても素敵だと思うよ~」とめりるどんが走ってきた。


「いやいや、全部をマクラメ編みにしたら、こんな短時間ではできないよ。ほとんどの部分をこの植物で飾れたので、楽だった~」

 出来上がった暖簾は、茶色の濃淡で模様ができており、ところどころアクセントに緑が入っている。

 外皮は黒を選んで作ってあるため、全体的に落ち着いた雰囲気にできているが、マクラメやフリンジで上品な仕上がりになった。


「これなら、今夜たくさん飲めそうだな?」と思わず口元をほころんだ。


 夕食時、明日もみんなここに残ってシャワーとトイレづくりに専念しようという呼びかけたら、残りの3人は同意をしてくれた。

 そして酒を思ってソワソワしはじめた俺を見たももちゃんがにっこり笑った。

「ももちゃん、この暖簾もらっていっていんだよな?」とももちゃんが作った暖簾をわしづかみにした。

「うんうん、その為に作ったので、遠慮なく持って行って~。たくさんのお酒と交換してもらえるといいねぇ~」とももちゃん。

「時間は気にせず、二人とも楽しんで来てね~」というめりるどんの声に励まされ、みぃ君も飲みたいだろうと俺と一緒に送り出してくれた。この村唯一の飲み屋さんへ向かう俺たち二人の足取りは軽かった。

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