現実の自分 その8
「以後気をつけますので、それでは失礼いたしますー」
俺は電話越しに頭を下げつつ、通話を切った。
深いため息を吐きながら、俺はスマートフォンを持った手を膝の上に下ろした。
今、無断ですっぽかしてしまった内職の謝罪を先方に行った。
とても怒られたけれど初犯ということで、仕事は続けさせてもらえるらしい。本当によかった。
テーブル前の椅子に座っていた俺は、背もたれにしなだれかかった。
疲れた。この一週間はずっと大変だったけれど、今日もまた色々と大変であった。
アンナさんの帰還から始まり、そしてライカさんの登場、そしてその後の色々……。
まさか異世界では異性にネックレスを送ることが、告白や愛人宣言になるなんて、俺は夢にも思っていなかった。
アンナさんからその衝撃的な事実を聞いたその晩、俺はパソコンの前に座っていた。
パソコンの画面には、俺がアップしたミーヤの動画が映っている。
少し緊張した面持ちで、尻尾を揺らすミーヤ。
そういうシチュエーションの場面で、画面は制止していた。
俺の脳裏に先日のミーヤの姿が浮かぶ。
「ネックレスに答えます」、俺の目を真っ直ぐとみてそう言い切ったミーヤ。
頬は赤く染まり、まるで愛の告白のようなその面持ち。
それらの光景が何度も何度も頭に浮かんでは、それ以外の思考を阻害していた。
勘違いとはいえ、ミーヤは応えてくれた。つまり、ミーヤは俺のことが好きなのだろうか。
それとも、雇い主だから?
俺はどうすれば良いのだろうか。
俺は悩むばかりだった。




