第一章5-3 思い出と楽しみと出発 ◆
更新頑張りますね
――――キルア――――
久しぶりに両親の夢を見た。
あれは、まだ生まれて100年ほど過ぎたころの思い出だった。
我は、両親に尋ねた。
何故いつも人間の姿で遊んでいるのかを、黒竜の姿ではいけないのかと、尋ねた。
そんな、我の問いに対して、2人は口をそろえて、「こっちのほうが、温かいし、楽しいのよ」と本当に楽しそうに言っていた。
そのときの我は、人間や他の生物は全部虫けらだと思っていたので、両親が人間の姿でじゃれあっている姿は、好き嫌いではなく、ただ単によく分からなかった。
しかし、今、我の肌に伝わるナターシャの温かさを感じると、両親が黒竜の姿ではなく、人間の姿をよく使っていた理由がわかる。
黒竜の姿では、お互いの肌が漆黒の鱗に覆われているので、体温や感触は味わえない。
窓の外から、太陽の光が差込み、小鳥の囀りが聞こえるが、まだナターシャを感じた足りない。
「あのっ・・・んっ・・・キルア様っ・・・」
意識は覚醒しているが返事はしない。
今、我の口は、ナターシャの胸の先端を咥えているからだ。
「キルア様っ、そろそろ、おっ、起きましょう・・・?」
頭を優しく撫ぜてきた。仕方が無いか。また明日、楽しむか。
ベッドから起き上がり、ナターシャと朝の挨拶を行う。
「おはよう。ナターシャ」
「おはようございます。黒竜様」
「黒竜様はやめろ。キルアがいい」
「では、キルア様で呼ばせていただきます」
「うむ。そうだな」
起き上がったことで、ナターシャにかけてあったシーツが捲くりあがって、素肌を晒すが、ナターシャは気にしていないようだ。
「ユリアさんは、まだ寝ているようですね」
反対側の壁に置いてあるユリアが今、使っている、もう1つのベッドに視線を向けると、シーツの白い塊が規則正しく、上下していた。
「そうだな・・・昨日はいろいろと大変そうだったからな。もう少し寝かせてやろう」
「はい。ユリアのお説教には苦労しましたね」
「そのことは、もう思い出したくないな」
昨夜のユリアの二度目の乱入の際、ユリアは鬼そのものだった。問答無用で床に正座させられお説教をくらった。
ナターシャが誤解を解こうと話そうとするがユリアは「あなたは、黙っていなさい!」と一脚、ナターシャはユリアのあまりに激しい怒気に当てられ、黙ってしまい、永遠と説教を受けることになった。その間、ナターシャはずっと裸でベッドから説教が終わるのを見ていた。
説教が終わる頃には夜もだいぶ更けたころで、実はあまり寝ていない。
そう言えば、本当にユリアは怖かった。我が怯えるほどに・・・。
昨夜のユリアの形相を思い出し、少し怖くなった。
ナターシャに抱きつき、また胸の先端に吸いつく。
口に含んでいるだけで、安心する。
我が、まだ幼竜だからかな?
「ちょ、ちょっと・・・んっ、キルア様」
見上げるとナターシャは顔を赤らめ、目を細めていた。
「こうしていると、安心するな」
「あのっ、そろそろ着替えて出発の用意をしないと・・・」
「んー・・・それもそうだな。とりあえず着替えるか」
「はい。お手伝いしますね」
ベッドから出て、ナターシャに服を着替えさせてもらう。
ナターシャが自分の着替えをしている間にユリアを起こす。
「ユリア! 起きろ、朝だぞ?」
「はっ、はい! 今すぐ起きます」
ユリアは飛び起きた。
「おはよう。ユリア」
「お、おはようございます。キルア様」
「落ち着いたようだから話しておくが、ユリア。昨日のことは誤解だぞ」
「へっ? 誤解ですか?」
「ああ、我がなにもしていない僕に酷い仕打ちをすると思うのか?」
「・・・えーと、それはそうですね・・・」
今は、ユリアの怒りが収まっているから、話をきちんと理解してくれるだろう。
「誤解だと理解したか?」
「で、でも、なんでナターシャは泣いたんですか!?」
「それは、とても嬉しかったからですよ」
いつのまにか、着替えを済ませ侍女服となったナターシャが言った。
「私は、人間の奴隷になるか、それとも処分されると考えていたのに、黒竜様の僕に選ばれたのですから、嬉しさのあまり泣いてしまったんですよ」
「そ、そうだったんですか・・・」
「これで、誤解だとわかったか?」
「はい・・・すいませんでした・・・」
「うむ。それでいい。さて、それではお前も身支度を済ませろ。出発するぞ」
「はい」
ユリアは手早く着替えを済ませる。今日も変わらずの赤と白を基調とした服だ。
我洞窟にあった。人間の服には魔法がかけられていて、朽ちたり汚れることは無いので、着続けても新品のままだ。
「朝食はどうする? 荷馬車で食うか?」
「はい。荷馬車で移動しながら食べましょう」
「では、私が荷馬車を宿の入り口まで引いてきますね」
そう言って、ナターシャは部屋を出て行った。
「あの、キルア様」
「なんだ?」
ユリアがナターシャがいなくなった途端。すぐに話しかけてきた。
「あの、ナターシャという女は信用できるのでしょうか?」
「ん? 出来るに決まっているだろう? 我の僕だぞ?」
「それは、そうでしょうけども・・・ダークエルフですし、首輪や腕輪をすぐに外すのは・・・」
「我は、ナターシャが気に入った。それに、首輪や腕輪など最初から必要ない」
「でも、逃げられたり、反抗したりしてきたらどうするんですか?」
「さっきから、なにを言っている? ナターシャは我の僕だ。奴隷ではない。我は、人間のように逆らえないように首輪を着けて飼うつもりはないぞ? ナターシャは我の家族のようなものだからな」
「か、家族ですか?」
「ああ、我の僕になるからには家族と同じだ。もちろんお前もなユリア。主従の前に家族だからな」
「え、はい。ありがとうございますっ」
ん? さっき部屋の外でなにか物音がしたが・・・まあ、いいか他の客だろうな。
我は、またマントを纏う。今度は街を出ると言うことでユリアもマントを纏ってから、部屋に置いていた荷物を持ち、部屋を後にする。
宿屋の前に来ると丁度、ナターシャが荷馬車を引いて来たところだった。
「お待たせしました」
ナターシャの目元が少し赤かったが、寝不足だろうな。
とりあえず、出発するために荷馬車の荷台に乗り込む。
荷馬車の荷台は少々狭くなったが、窮屈で不快になるほどではない。
それよりも、食事を摂りたい。
「ユリア。食事の用意を頼む」
「はい。キルア様」
「では、馬車を進めますね」
「はい。このまままっすぐ進んで街から出てください」
「わかりました」
ナターシャが馬の手綱を操り、ゆっくりと歩かせていく。
「どうぞ、キルア様、ナターシャ」
「うん」
「ありがとうございます」
朝食は、白パンと、水だった。あまり腹は膨れないが、まあ、朝だからこんなものか。
荷馬車には屋根は無いので風が頬に当たる。
ナターシャを後ろから見ながら、今回の街ではいい事ずくめだったと思う。
前回の町が悪かったのだ。
人間の街には良し悪しがあるみたいだな。
王都は、ここよりも大きい街のはずだ。
どんな街なのか楽しみだな。
強く美しい女が多いといいな。
第一章の最後に人物設定を書きますね。
ちなみに身長は
キルア・170cm
ユリア・165cm
ナターシャ・180cm
です。




