第一章4-8 契約と、質問攻め ◆
――――キルア――――
奴隷商からダークエルフを買って宿屋で借りた部屋に戻った後、すぐにユリアに追加の買出しを命じた。
ダークエルフと2人で話したかったからだ。
ユリアには、もう一人分の食料と、ダークエルフの服を買うように命じた。
それと、夕方まで戻るなとも伝えた。
これは、ユリアがダークエルフになにか吹き込まないようにさせるためだ。
我の持ち物なんだから、我が一番に会話を楽しみたい。
僕のユリアは我の後ででいいだろう。
ユリアに有無を言わせずに、部屋から無理やり追い出し買出しに向わせる。
ユリアがきちんと買い物に行ったか窓から確認した後。ベッドに腰を下ろし、ダークエルフを部屋に備え付けられていた椅子に座らせる。
とりあえず自己紹介からいくか。
「我の名は、キルアだ。お前の名はなんという?」
「ナターシャ・エリエルドラです」
「うむ。いい名だ」
名前の意味などは分からないが、いい響きだ。
とりあえず今は、契約が先だな。
「これからお前は我の僕だ」
「はい。ご主人様」
「お前の生命は、すべて我がもらう。お前は寿命が完全に尽きるまで我の僕だ」
「はい。ご主人様」
「契約しろ、お前は我の僕で、我はお前の主人だ」
「はい。契約します」
ここで、泣き喚き、身を震わせ怯えるのであれば、我の見る目はなかったと言うことになるが、ナターシャの瞳には恐怖はない。
それどころか、毅然とした態度で返事をしていく。しかも、一度も瞳に恐怖を浮かばせることなくだ。最初から全てを受け入れる覚悟をしていたのだろう。
この態度だけ充分、買ってよかった、手に入れて良かったと思わせる。
「さてと、それじゃあ会話を楽しむか」
「??」
「とりあえず、生まれはどこだ?」
「はい。グラウストの森の小さな村です」
「どんなところだ?」
「ダークエルフとエルフが暮らす村で周りは森に囲まれています」
「周りが森か~。そこではどんなものを食べるんだ?」
「木の実や果実、そして、ときどき狩りをして肉を食べます」
「そうか、じゃ次は・・・」
コンコンッと部屋のドアをノックする音が聞こえ、ドアがガチャリと開く。
「ユリアです。帰りました」
「ああ、もうそんな時間か」
ユリアが追加分の買出しから帰ってきた。
ナターシャにいろいろ質問していたら、すでに日は沈みかけ夕方になっていた。
「おかえり。きちんと買ってきたか?」
「はい。言われた通り全て3人前に調整しました。服も市場で丈夫なものを3着ほど買いました」
「わかった。ありがとう」
ユリアは何か言いたげに、立ったまま、こちらをチラチラと見てくる。
「なんだ?」
「あのっ、ダークエルフと何をしていたんですか?」
「ん? こいつとか?」
「はい・・・」
「こいつの生まれたところやどうして奴隷商にいたか聞いたりしていた」
「・・・えっと、そういうことは、あまり聞かないほうがいいんじゃないですか?」
「なぜだ? こいつは我の僕だぞ」
「それは・・・そうなんですけど・・・」
「まあ、生まれは話したが、何故奴隷商にいたのかは、話したくないと言って話さなかったがな」
「そうなんですか」
「ああ、だが他のことはいろいろ教えてくれた」
「他のことですか・・・」
「まずは、名前はナターシャ。歳は20。好きな食べ物は、果物。あと家事などは得意だと言っている。他にも戦い方を知っているそうだ」
「そうなんですか・・・」
追加分の買出しをして疲れたのか、ユリアは大きなため息をついた。
そして、ナターシャを一度見て、問いかけてきた。
「そう言えば、どうしてこの奴隷を買ったんですか?」
「うん。ナターシャの強さと美しさが欲しくなった」
「強さと美しさ・・・ですか?」
「ああ、他の奴隷と明らかに違う雰囲気を放ち、堂々と我を見据えるナターシャのすべてが欲しくなった」
「欲しくなったって・・・」
「ああ。だから、ナターシャと契約した。ナターシャは、これから我だけの僕だ」
「はい。ご主人様」
「・・・」
「なんだ? まだ何か言いたいことでもあるのか?」
「いえっ、ああ! そうです明日の朝にはこの村から出ますので、今日はもう夕食を食べて、お風呂に入ったらすぐに寝ましょう」
「そうだな。とりあえず一階で何か頼むか、ユリア、ナターシャ貰ってきてくれ」
「はい。ご主人様」
「えっと、3つとも同じものですか?」
「当たり前だ。何を言っているユリア?」
「いえっ、すぐに持ってまいります」
ユリアの後ろに付き添うように、ナターシャは部屋を出て行った。
奴隷のナターシャ本格登場!
ですが、今回の話では、質問以外の会話は少なめ、次回以降はナターシャがどんな人かわりるかも
評価や感想をもらえれば嬉しいです。




