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第一章4-1 キルアとの出会いと私たちの計画の行方 ▲

ジーナ=▲


で表記しますね。



――――ジーナ――――



想定外の事態が起きた。


まさか、あんな人間がいるなんて考えもしなかった。


酒場で見かけたときからキルアという青年の放つ人間の枠を超えた膨大な魔力と黒髪で黄金の目という珍しい外見をしていた。


私は、キルアの素性を調べるために近づき、話しかけた。


膨大な魔力を持った人間のことはなるべく把握しといたほうが計画が進めやすかったからだ。



最初はギルド関係の人間かと思った。



ギルドは、さまざまな国や街の冒険者が仕事と金を求めて集まるから、他の国から流れてきた冒険者かと思ったが、違った。


この街からあまり離れていない小さな村から来たと言っていたから、他国の人間ではないだろう。


ギルドの酒場にいるのは、しもべが仕事の間ここで留守番してろと言われたからだそうだ。


僕がいるということは、貴族や身分の高い人間だろうに、酒場で一番安いメニューの食事を食べている理由は旅の路銀がなくなったからだろう。



私は、少しイジワルしようとして酒場で少し高い食事を店員に頼んだ。



見せびらかすように食べていると、涎を垂らしながら見てきたので、フォークにソーセージを突き刺して、食べるか聞いた。


最初は、「馬鹿にするな!」と怒ると思った。


プライドを傷つけてやろうとやった行動に対しキルアは、目を輝かせながら「いいのか?」と聞いてきた。


あげるつもりなど無かったが、あそこまで身を乗り出されてやらないなんて出来なかった。


ソーセージを食べたキルアは大喜びで抱きついてきた。


僕を持てるぐらいの金があればこれぐらいの食事は食べたことがあるだろうと思ったが、どうやら、違ったらしい。


キルアは生まれてからずっと、ライ麦パンとスープしか食べたことが無かったらしい。


肉を初めて食べたと感動していた。


イジワルで差し出した。ソーセージ一つに感動しているキルアを見ていると良心が痛んだ。




私は、人間が大嫌いだ。




人間は他の種族を差別する。特にエルフやダークエルフが高い魔力や長い寿命を持っているために危険視され、住処を侵略され森の片隅に追いやられた。


エルフやダークエルフというだけで敵視され、街では、ほとんどの人間がすれ違っただけで怯える。他の種族と普通に話のは商人ぐらいだ。


ギルドに所属しても、人間ではないだけで、なかなか仕事をもらえない。もらえたとしても、危険な仕事だ。



私がこの人間の街にいるのには理由がある。キルアを巻き込んでしまうだろう理由が。


ダークエルフの私とも差別せずに普通に会話してくれるキルアを私は殺すことになるだろう。


せめてもの償いをしようと、食事をおごることにした。


キルアは本当に喜んで食べてくれた。


私は、ほかに欲しいものは無いかと聞いたら、キルアは本が読みたいと言ったので、持っていた魔法の使い方に関する本を貸してあげた。


すぐに解らないと言って返してくるかと思ったが、キルアはきちんと本の内容を理解し読み終えた。


まだ、子供にもかかわらず、難しい魔法や魔力の理論を理解した。


子供の頃から魔法を習っている私でも、その本の内容を理解するのには長い月日がかかったというのに、だ。


しかも、そのことに対してキルアは自覚がないようだった。


私がキルアの知能の高さに驚いているとギルドの出入り口で大きな音が鳴った。


振り返るとすでに人だかりが出来ていた。


キルアと一緒に様子を見に行くと、老人が倒れていた。


大体の予想はついていた。


ベゼルリッターの毒だろうと。


体に黒い湿疹が浮かんでいることから、やはりベゼルリッターの毒だろう。




これが私がこの街にいる理由。




私たちエルフが半年前から行い始めたテロ行為だった。



ベゼルリッター二匹を街の近くに放し、ベゼルリッターの毒で街を滅ぼす。という計画だった。


ベゼルリッターのだすガスは人間にとって猛毒にあたる。


風に乗って毒は街へ広がり、感染し、発病すれば体から力が抜けていき、最後には死にいたる病気だ。


しかも、発病した人間に触るだけで感染する。


人間以外の種族にはあまり効果がないので、私たちは、街で生活し毒の感染状況を見ながら待つだけでよかった。


すぐに、街のほとんどの人間が感染し、発病を待つだけとなった。



貿易などをしていた村や他の街は毒の感染を恐れて街へ近づかなくなった。


王都にも毒の情報は伝わっているが、対応をする気配はなかった。


王族のほとんどが病気で政治にも影響が出ているのだ。


この街に構っている暇は無いだろうし、この病気は治療不可能。


高名な治療魔術師が来たとしても治療は出来ない。


街はどんどんすたれていった。


あと、半年で発病者は倍以上に膨れ上がり、街は死ぬだろう。



キルアもこの老人のように、感染し、発病し死ぬかもしれない。


人間たちに森を侵略された報復として行ったテロだったが、苦しんでいる人間を目の当たりにすると心が痛む。



私が老人を見ていると、キルアが言ってきた。



「治せば、お前は笑うか?」



私は、なにを言っているのか解らなかった・・・。



キルアは老人に近づくと手から光を放った。


キルアの手から出る光を浴びた老人の病気が治った。




私は、意味が分からなかった。今起きた出来事が理解できなかった。


キルアは私に「嬉しいか、恩を返せたか」と言ってきた。


私はまともに返せなかった。


なんとか、キルアの言葉に返事を返そうとしたが、キルアはすぐに人間たちに囲まれていた。


私は押し出され、キルアがどんどん遠くに連れて行かれた。




私は街で生活していた仲間をすぐに集め、会議を開いた。


仲間は全部で5人。全員がダークエルフの女だ。女なのは男より警戒されないからだ。



私たちは幾つかの案を出した。



まずは、暗殺だがこれは無理だった。


今は、周りに他の人間がたくさんいるし、キルアを暗殺すればこれがテロだと感ずかれる可能性もあるからだ。


私たちは、キルアが街を出るまで待つことにした。


キルアが街から去れば、また毒が蔓延まんえんするからだ。


発病していない感染者までは気づかないだろうし、まだベゼルリッターがいる。




私は監視しつつ、キルアが街から出て行くのを待った。




幸い、次の日には出て行ってくれたのでよかったのだが、最後にキルアは空に魔法陣を描き、街にいた全ての人間を完全に治してしまった。


もう、感染者も発病者も消えてしまった。


しかも、後日。仲間からベゼルリッターが死んでいるところを確認された。


キルアの僕とかいう金髪の女がギルドに依頼されて倒したそうだ。


もう、新しいベゼルリッターを買う余裕はない。


二匹手に入れるのにもかなり苦労した。




結局、私たちの永い年月をかけて計画したテロはたった二人の人間に一日で潰されてしまった・・・。


もう、私は笑うしか出来なかった。


他の仲間たちは計画を潰した。キルアたちに報復することに決めた。


今どこへ向ったか調べている。


キルアの魔法とベゼルリッターを倒した二人に私たちが適うわけがないからやめようと言っても、仲間は聞く耳も持たない。


会議に使ってる。宿屋では、どうやって報復するかの算段を始めていた。


私は不思議とそんな気分にはなれなかったから部屋を出た。


街には笑顔があふれ、人間達は幸せそうに生活していた。


今、キルアはどうしているのだろう・・・。


ジーナ視点が長くなりました。


次回からはきちんと進んで行きますので。


それでは、今日は更新終わりますね。


また明日、更新します。



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