第一章3-4 やっと開放・・・ ◆
――――キルア――――
疲れた。本当に疲れた・・・。
あれからマリーに連れられて小屋を一軒一軒まわるハメに・・・。
しかも・・・しかも、一人治すとそいつが「あっちにもいます」なんて言って来て、結局、街中をまわることに・・・。
治すこと自体には疲労はないんだが。なにせ、人が多い。
最初の村の何倍もの人間を見て、精神が疲れた。
もう当分、人間に会いたくない・・・。
もう、昼だ。ユリアも迎えに来てくれない・・・。お腹すいた。
「あのっ! キルア様!」
マリーが笑顔で擦りついてきた。夜通し一緒に歩き回ったというのに、こいつは元気だ・・・。
「・・・なんだ?」
「えっと・・・。ご飯・・・食べませんか?」
「ご、ご飯っ!?」
「あ、やっぱり・・・嫌・・・ですよね?」
「ご飯食べたいっ ご飯っ!!」
「えっ、は、はいっ。では、私の家に来てください」
「やったー!!」
ご飯だ ご飯だ ご飯だ!! やっと食える!
昨日、ジーナに食事を奢ってもらってから後。何も飲んでない! 何も食べてない!
やっと、小屋に着いた!
「マリー! ご飯!!」
「は、はい! すぐにご用意しますね」
マリーは、しばらくするとライ麦パンとシチューを持ってきてくれた。
「いただきまーす!!」
「は、はいっ、どうぞ! お口に合うかわかりませんが・・・?」
パンに嚙り付き、シチューを飲む。
シチューは初めて飲んだが美味かった!
「美味いっ 美味いっ 最高だっ!」
「・・・」
「食べないのか?」
こんなにあるのに勿体無いっ!
向かいの席に立っていた親子に聞いてみるが、何だろう? どうしたんだ?
そういえば、父親のほうも、もう起き上がって、マリーの隣に立っている。
気づいてなかった。すごく美味いから! このシチューていうのは最高だ!
「あのっ、キルア様・・・」
「ん? どうした? 食べないのかっ!? このシチューて言うのは、生まれて初めて食べたがすごく美味いぞ!!」
「えっ、気に入っていただけたんですかっ? もう一杯いかがですか?」
「いいのか!? もう一杯飲んでいいのか!?」
「あ、はいっ! すぐにお持ちしますね」
「ああ! 頼む!」
それから3杯ほどシチューを貰った。美味かったーー!
「キルア様?」
「なんだ?」
「あの失礼ですが、今までどういった暮らしをしていたんですか?」
マリーがおどおどしながら聞いてきた。
ん? 暮らしかーーー黒竜のことは言えないしなぁ・・・。
最初の村を出てからでいいかな。
「えーとな・・・・・・」
「・・・」
・・・・・・・・・なんだろう・・・またもや、失敗したかも知れない・・・。
親子は話が終わっても、話し出そうとしない・・・。
うわっ!? マリーが泣き出したっ!!
それも、泣き声まであげて・・・!?
「キルア様ぁ・・・キルア様ぁ・・・」
「あなたはっ・・・あなたはっ・・・」
父親まで泣いて、この2日で何度も見た。お祈りのポーズをとった。
なんなんだっ!? まったく・・・。
「キルア様はまるで慈愛の神ローザのようです・・・」
「慈愛の神ローザ?」
「はい、この本の方です」
マリーが小さくて薄い本を差し出してきた。
「・・・本!?」
「は、はい。本です」
「読ませてくれ!!」
「えっ、あっ、はいっどうぞ」
マリーが本を手渡してくる。
やった! 二冊目の本だ! 読みたい! 読みたいっ!
「あのっ、キルア様? その本をさしあげましょうか?」
本をくれる・・・!?
「貰っていいのか!?」
「はい、どうぞ。キルア様に読まれるほうがいいと思いますから」
「ありがとうっ!」
感動だ! なんて優しいんだろう!! よし、頭を撫ぜてやろう!
頭を撫ぜるとマリーは目を細めながら喜んでいるようだった。
さっそく本を読まないと!
「じゃあ、マリー。宿屋まで案内してくれるか?」
「はいっ!」
今日はなんていい日だっ!!
本を貰えた!!
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