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第一章2-5 ダメダメな私を変えよう! ◇

――――ユリアーナ――――



死の谷に一番近い村グルフェル村を出て、5日が経ちました。


今は、昼間で馬車を走らせています。と言っても私は荷台で睡眠を摂っていて、馬車の手綱を引いているのはキルア様だ・・・。


私は先のことを考えていたけど、私の体力を計算していませんでした。


グルフェル村を出発してから3日後に倒れました。


馬車の操作とキルア様の教育、夜の不寝番を同時にしていたら、倒れるに決まってますよね。


私のせいで、キルア様が今、馬車を操っています。主人に働かせる奴隷って・・・。


それから、役割分担をしてもらい。


夜の不寝番は私、昼間に馬車を進めるのはキルア様という役割です。


さらに、3日が経ち、予定より1日遅れで、次の街グラールに着きました。


着いたときは嬉しかったですが、予定より遅れたのが自分が倒れて、キルア様に馬車の操縦を教えるためと、なんとも情けない理由・・・。


急ぎましょう! なんて言っておいて言った本人のせいで遅れるとは・・・。


うう・・・。ほんとうに情けない・・・。いいところがありません。




グラールの街に着きました。




グラールには、黒竜退治の旅の際に補給に訪れていた街だったので、宿屋の位置も把握していました。


すぐに宿屋に入り、一番安い部屋を借ります。


一番安い部屋でも、銀貨2枚・・・。


所持金が金貨1枚と銅貨が数枚となってしまいました。


王都への道のりは、まだずっとあります。何とかしないといけません。


そう言えば、宿屋に一番安い部屋を頼んだ時に変な顔をされました。


それは、そうでしょうね。


今の私は赤い上等な生地の上着とシミひとつ無いすらっとした上品な作りの女物のズボン。キルア様は、上下黒色の貴族のような服装をしているのですから。意外だったのでしょう。


この服もキルア様からいただいたものでした・・・。




宿屋の主人から部屋の鍵を貰い二階に上り、教えられた部屋に鍵を使って入る。




キルア様は、久々のベッドに寝転がって喜んでいるようです。私も、椅子に腰掛けることにしました。


この部屋も、グルフェル村と変わらない、木作りの部屋で、安い木製品が備え付けてありました。


キルア様に呼ばれました・・・。


ああ、そう言えば。しゃべるなとお願いしていたんでした。




キルア様は本当に素直に言う事を聞いてしまわれます。


このあたりが世間知らずなんですかね? 言ったことをきちんと理解しようとなされます。


なんて、騙しやすい人・・・? いや、竜なんでしょう・・・。


森の中を馬車で走り抜けていたときに、ずっと、言葉遣いや口調を叩き込むように教え込みました。


キルア様は、多少ぼろが出る時がありますが、なんとか青年らしい口調になりました。


不思議なことに口調を直させると態度まで青年のように変わりました。


今はたぶん混乱しているのでしょう、たまに丁寧な口調になったり、いつものぶっきらぼうな口調になったりしています。


たぶん、精神が肉体に合わせてきているのでしょう。


後数日、他人との会話を進めていくうちに口調や態度が安定し始めるでしょう。


昔、王国の本で読みました。


精神は肉体に、肉体は精神に、影響するらしいですから、いまキルア様の人間として他人と触れ合うための処世術のようなものを学んでいるのでしょう。




あとキルア様は、我慢強いです・・・。宿屋の夕食はライ麦パンとスープでしたが文句を言わずに食べてくれています。


お金が本当に無かったのでキルア様は人間になってからずっと、それしか食べてないのに・・・。


グルフェル村を出てからはスープも出せずにライ麦パンだけしか食べれなかったというのに・・・。


文句一つ言わずに食べてくれています。


ああ、私はなんて情けないんでしょう・・・。伝説の黒竜のそれも王子にライ麦パンしか食べさせてあげられません。


街の庶民のほうがまだましな食事をしているというのに・・・。




明日、ギルドに行って魔物退治などをして、たくさんお金を稼いでキルア様にもっといいものを食べさせてあげたいです。


旅の路銀が稼げるまでに何日かかるか、わかりませんが危険な仕事でもしてたくさん稼ぎましょう!


幸い、王国の騎士でもトップを争うほどの実力者なんですから!


唯一の特技の武勇で、キルア様にもっとましな生活をさせてあげないと! 


これ以上、奴隷の身で、キルア様の足を引っ張ったり、迷惑はかけられません!!


明日は決戦となるでしょうから、早めに寝ることします。


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