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第一章2-4 泣かれて、拝まれて、また泣かれた ◆

――――キルア――――



我は、はやまった行動をしてしまったかもしれない・・・。ていうか、はやまった・・・。


今、我は街にある教会に連れてこられた。


ユリアとの約束を破ってしまったが仕方が無い・・・。




老人の病を治した後。誰が次に治してもらうかでもめた。


街中の家を一軒一軒回っていたら何時間かかるかわからなかったからだ。


そこで、ギルドで一番偉いというギルドマスターの老人が教会を使おうという話になり、教会に連れて行かれた。




教会の中に入らされた。




教会は赤い絨毯じゅうたんが道のように敷いてあり、その脇両脇に長いすが何列も並び、絨毯のその先。中央に位置するように大きな机が置いてあり、そして、その奥に大きな十字架が飾ってあった。


初めて入ったが本に描かれていたような作りだった。




奥の机に立たされた。




なぜか、人間達は、酒場のときのように、また跪いていた。



「どうか・・・どうか、グラールを民をお救い下さい・・・」


「みなさん? どうされたのですか?」



この教会の主、確か神父といったか? 黒くブカブカの服を着た男が驚きながら人間に詰め寄っていた。


神父と街の人間がなにかを話し合っている。



「ああ、救世主様っ・・・!」


「俺は、救世主様って名前じゃないんだが?」


「あなたは救世主様ですっ!!」


号泣しながら拝んできた!? なんだコイツ!?




「救世主様ーー!!」



ギルドの酒場にいた男が、女だろうか? 髪の長い人間の子供を背負ってやってきた。



「うちの娘を・・・うちの娘をどうかっ!!」



背中の人間は女か。凹凸がないとわからないな・・・。



「まだ、7歳なんですっ!! どうかっ、どうか助けてくださいっ!!」



うむ。男の号泣は別の意味で嫌いだな・・・。


まあ、酒場で治すと契約したし仕方が無いか。面倒だが治してやるか。




足もとに女の子が寝かされる。




さっきと同じように手をかざし治してやる。




黒い湿疹が消え呼吸が安定する。




「お、お父さん・・・」


「ああっ・・・!! ルイっ・・・!!」



親子は抱き合って喜んでいるようだ。



「ありがとうございますっ!ありがとうございますっ・・・!!」


「別によい」




ついでに男のほうにも治療の光を施す。




「救世主様!?」


「これは、触ったらうつるのだろう? せっかく治してやったのにまた病気になったら意味が無いではないか」


「救世主様っ・・・!!」


「もう泣くな・・・」 気持ちが悪いではないか。



そう言うと、男は泣き崩れて土下座してしまったっ!? 周りの人間達も号泣しながら土下座しているっ!?



「これはお礼です・・・」



土下座しながら両手で袋を差し出してきた。



「これは? 金か?」


「はいっ、お礼でございます」


「いらん。とっておけ」


「へっ??」


「俺は治すと契約しただけだ。対価は契約に入っていない」


「「「「救世主様っ・・・!!」」」



なっ、なんだ!? 人間達がいっせいに胸の中央で手を組み拝んできた。




それからが大変だった。人間達がどんどん教会に押し寄せてきた。


もう何人来たかわからない。教会は埋まり外まで人が溢れている。


我は次々に人間を治していった。


さまざまな年齢の人間がやってきた。さまざまな身分の人間がやってきた。


我はそんなこと、おかまいなしに治療しまくった。




全員の治療を終える頃には、深夜になっていた。




ユリアはどうしているだろう。すっかり忘れていた。




全員の治療が終わっても人間達は我を拝み続けている。


人間達の視線が集中するのは本当に怖い。数えきれない数の人間が拝んでいた。


神父が大きな袋を持って我のところへやってきた。



「救世主様これをどうかお受け取りください」


「これはお金? さっきも言ったが、対価は契約に入ってないが?」


「これは、私どものせめてもの気持ちですっ! どうかお受け取りくださいお願いします!!」


「うっ、わかったよ・・・じゃ、ありがたく貰うよ」



あまりの必死の形相に袋を受け取ってしまった・・・。


袋を受け取ると街中に鳴り響くような歓声が生まれた。


お、驚いたっ・・・!!




「キルア様!!」


「ユリア!!」



よかった。ユリアが帰って来た。



「どうしたんですか!? キルア様これはいったい??」


「ユリア! 無事に仕事は終わったのか??」


「はい。きちんと終わらせてきましたよ! ホラ見てください!」



ユリアが小さな袋を見せてきた。服から出ている肌には切り傷や擦り傷が目立っていたが大きな怪我はないようだ。よかった。



「そういえば、キルア様? 手に持っているその大きな袋はなんですか?」


「ん? さっきこの神父から街の人間の気持ちですって言われて貰った」


「まったく、他人から物をあまり貰ってはいけませんって教えたじゃないですか? もうっ、パンでも貰ったんですか? お祭りみたいですし」



ユリアに袋を渡す。まあ、俺が持っているよりユリアに渡したほうがいいな。



「まったく、ギルドの酒場からも出てしまってこんなところにいますし、遅くなったのは謝りますが勝手に出歩かれると心配するじゃないですか?」



ユリアが文句を言いながら袋を紐を解きはじめた。



「こんなにたくさんパンを貰って・・・・パンッをっ!!?? ・・・ふぇっ!!!!???」




ユリアが固まった。




いつものことだが本当に突然固まるなぁ。



「キ、キ、キ、キル、キルア様っ!? こ、こ、このお金はっ・・・!!!???」


「こいつらの病気治したら貰った。いらないって言ったのに押し付けられた」


「は、はは、はははは・・・・」



どうしたのだろう? またユリアが固まった。しかも、乾いた笑い声を薄く開いた口から漏らしながら。


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