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清廉な令嬢は悪女になりたい  作者: エイ
番外編

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37/40

エマの恋4




朝、エマはうっかり寝過ごしてしまい、起きてきた時にはもうマリーは居なかった。




『手紙を出してくる』という置手紙を見て、ずいぶんと早くに出たのだなと思いながら朝食を食べいつも通り洗濯をし、簡単に部屋の掃除をした。


そして昼過ぎになってもまだマリーが帰ってこないので、リリアさんちにでも行っているのかなと思ったその時、ふと嫌な予感がした。


(マリーは頭に血が上ると周りが見えなくなるのよね・・まさか昨日の私の話を聞いて、ノアさんに苦情の手紙でも出す気だったんじゃ・・)


普段、エマが『それはダメ』と言ったことを無視することはないし、マリーは基本的にエマの意志をちゃんと尊重してくれる。そうやって何でも話し合ってこれまでやってきたので、ノアの事も正直に話したのだが、マリーには衝撃が強すぎたようだ。

何もしないでとエマは言ったが、怒りのあまりエマに内緒で抗議しようとしているのかもしれない。


そうだったらまずいと思ったエマは立ち上がり、自分も王都の郵便屋に行こうと支度を始めた。朝出したものならまだ回収できるかもしれない。


帽子を手に取り家を出ようと扉を開いたその時、扉を外から引っ張られ誰かが部屋に押し入ってきた。

強盗だ!と思ったエマは叫びだしそうになったが、その口を男の手が塞ぐ。


「さ、叫ばないでくれ!俺だよ・・話がしたいんだが、外で誰かに見られると困るんだ。中に入れてくれないか?」


突然押し入ってきた男はノアだったと気付いたエマはホッとすると同時に、彼がここにこのタイミングで訪れたことに嫌な予感がする。


「何で来たのよ・・まさかと思うけど・・マリーが・・王宮に押しかけて大騒ぎしたとかじゃないわよね?」


「大騒ぎはしていないけど、マリーさんがいきなり執務室に入ってきてメチャクチャ驚いたよ。見張りの衛兵らには顔を見られてしまっただろうな。それはこっちでどうにかしておくから気にしなくていい。

それよりも・・マリーさんが、アンタが妊娠しているかもって言うから・・」


そう言われてエマは自分を見つめるノアから逃れるように顔を逸らす。


「・・・マリーが何を言ったか知らないけど、ノアさんには関係ないから。あなたはもう領地に帰って結婚するんでしょ?別に愛人になりたいわけじゃないし、何かを要求する気も無いからあの時の事は忘れていいわ」


「忘れられるわけないだろ!むしろ何かを要求してくれよ!

それともやっぱり酷い事をした俺の顔なんかもう見たくもないし忘れたいってことか?

怖い思いをさせて悪かった・・ア、アンタの初めてをあんな形で穢した事は許されることじゃないだろうけど・・できれば償いくらいはさせて欲しい・・なあ、妊娠したかもって本当か?それならちゃん責任取らせてくれよ」


「そんな事言ってないでしょ・・別に合意の上だったんだし責める気なんてないし、そもそもこれから結婚するって言う人がどうやって責任とるのよ!

お金もらってもみじめなだけだし、愛人になんてなりたくないからね!いくら好きでも、私とあなたじゃ未来はないでしょ!お願いだからもう放っておいて!」


「えっ?!好き?」


「あっ」



エマは自分の失言に気づき、慌てて逃げようと背を向けた。だがノアはそれを許さず後ろからエマを抱きすくめた。


「・・なあ、好きって俺のことだよね?本当に?アンタが俺を?」


「・・・女の口から言わせようとするなんてサイテーね」


誤魔化すようにエマが言うとノアは彼女に前を向かせ、その足元に跪いた。


「ごめん、俺は領地に帰るつもりも兄貴の言うとおりに結婚する気も無い。ただ、それを言ったらアンタは何ていうか知りたかっただけなんだ。

この前の事は・・本当に悪かったと思っているけど、好きな女に煽られて理性が飛んだって言うか・・酷い事をした自覚はあるけど、後悔はしていないよ。

順番が逆になってしまったけど・・・俺と結婚してほしい。アンタから見たら頼りなくて馬鹿な男かもしれないが、きっと大切にするから」


そういってエマの手の甲に口づけをする。エマは信じられないものでも見るような目でノアを見つめ、涙を浮かべて首を振る。


「無理・・でしょう?そんな事。こんなにも身分が釣り合わないのに許されるわけないわ・・夢を見させるのは止めてよ・・後が辛いだけだわ・・」


「なんで無理って決めつけるんだよ?俺は別に家を継いだわけじゃないし、今はただの城勤めの文官に過ぎない。殿下の許可さえもらえれば誰に口出しされる事も無いよ。なあ?反対する人が居なかったら結婚してもいいってこと?」



ノアに問いかけられエマは黙ったままだったが、やがて小さく頷いた。


それを見たノアは嬉しそうに破顔して立ち上がってエマを抱きしめた。


「あー・・よかったー・・エマに嫌われたと思って・・あれから生きた心地もしなかったよ・・」


ノアが独り言のようにつぶやくとエマが『ええっ・・』と呻いて顔をリンゴのように真っ赤に染めた。


「へっ?なんでこのタイミングで真っ赤になってんだよエマは。そういうのはプロポーズの時に・・」


「だっ・・だって、ノアさんが急に名前を呼び捨てにするから・・っ」


そう言って赤い顔で俯くエマを見て、ノアも一気に赤面した。


「はあ?!それだけで?名前を呼んだからって赤くなるとか・・普段とギャップ有りすぎだろ・・はあ・・俺を殺す気か・・」


「何を訳の分からないこと言ってるのよ・・ノアさん仕事はいいの?早く戻った方がいいんじゃないの?」


「イヤ、無理。こんな状態で戻れないわ、エマの部屋行こう。メチャクチャ抱きたい」


「・・・今ものすごく早まった気がしてきたわ。さっきの結婚の話だけどもう一度考えさせて」


「えええええ?!ちょっと待って!!!エマ!エマさーん!!」



エマは冷めた目をノアに向け、腕の中からスルッと逃げた。


『ちょっと待って、今のナシ!』と追いすがるノアと逃げるエマとの攻防は、たっぷり時間をかけて木の実集めをしてきたマリーが帰ってくるまで続いた。




***




それからノアは領地に居る兄と隠居した父親に『好きな女と結婚する。仕事は辞めない』と告げ、王太子であるクリストファーを味方につけやや強引に婚姻の許可をもぎ取った。





結果としてエマは妊娠していなかった。

ノアと和解して緊張の糸が切れたのか、あの後エマは熱を出して寝込んでしまったので、知らせを受けたノアが付き合いのある医師を連れてきた。


医師は、恐らく妊娠ではなく、過度のストレスで月のものが遅れているのだろうと告げた。発熱も疲れからくるものだから心配ないと診断して帰って行った。



妊娠していないと告げられエマは申し訳なさそうにしていたが、ノアは『こんなきっかけが無けりゃすれ違ったままだったかもしれないのだからむしろ僥倖だ』と言ってエマを慰めていた。




二人はすぐにでも結婚して二人で暮らすのだろうと思っていたマリーだったが、ふたを開けてみれば『今は婚約期間』と言って未だにエマはマリーとともにパン屋で働き暮らしている。




影が言っていたように今は非常に難しい時期らしく、結婚どころか会いに来ることもままならないだろうとノアが宣言して、あれからエマの元に訪れていない。



ただ、時々手紙がエマの元に届いているようだった。


手紙は郵便屋を経由せずいつの間にか玄関のドアの内側に手紙が届いている。

王太子の側近であるノアとのつながりを徹底的に隠す意図があるようで、郵便屋を通すことも出来ないということらしい。

そんな有様で、次に会えるのは何時になるか分からない状態だった。






その日もドアの内側に落ちていた手紙をエマに手渡しながら問いかける。



「一緒に暮らせるようになるのは何時の頃かしらね・・寂しい?エマ」


「何言ってるのよ、マリーをひとりになんて出来ないわ。もし結婚しても通い婚にしてもらうから、私はマリーが結婚でもしないかぎりここにいるわよ」



エマは本気でそう考えているようで、マリーが『そんなのおかしい』といくら言っても聞く耳を持たない様子だった。

マリーの侍女であった頃から、こうして一緒に暮らして店を切り盛りする間柄になっても、エマは変わらずマリーの事をなによりも優先してくれる。


それが嬉しくもあるが、エマの幸せを自分が邪魔しているのではないかと不安になってしまう。





いつも通りの冷めた物言いをしながらも、嬉しそうに頬を染めてノアからの手紙を読むエマを見て、マリーは自分も変わって行かなくてはいけない、と漠然としながらも決意するのだった。











最後までお読みくださってありがとうございました!

終わった話なのにたくさんのブクマと評価をいただき感謝感謝です!

また続きを期待してくださる方がまだいらっしゃることにとても驚きました。

なんかまた前振り色々してるので第二章で回収していきたいと思います!(いつかなー)


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― 新着の感想 ―
[一言] てっきりエマは影さんルートだと思ってたんだがなぁ…(笑) 面白いです! 続きお待ちしてま〜す!
[一言] 面白かったです! 続き待ってます(☆▽☆)
[気になる点] ノアとエマの続きが気になります モモンガさんの出番が少ないです!(`;ω;´) [一言] 衛兵さんたちや、影さんが好きです おもしろかったので、続きを楽しみにしております
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