工藤真は勇者か?
俺の名は工藤真
高校一年生だ
俺はいじめられるということがなかった
何回か突っかかれたことがあったが
やり返してやった
世の中弱肉強食
強いやつだけが生き残るのだ
俺はその中で強い部類だ
「今日もつまんない一日だったな」
俺は家へ帰ると不貞寝する
最近はヤンキーすら俺に絡まなくなった
絡んでくれる方が俺的には面白いのに
俺はそのまま眠りに落ちた
「ん?ここは?」
俺は神殿のような場所に突っ立っていた
「夢か?」
「夢じゃないわ」
その声が聞こえた途端目の前に少女が現れた
肩まで伸びたウェーブがかった茶髪に
青い瞳
そして白いワンピースを着ていた
「お前は誰だ?」
「私はアリサ・レイニード、あなたを勇者へと導くわ」
「俺が勇者!?」
「ええ」
これは楽しみだ
普段の日常に飽きがきたところだ
勇者として生きるのも悪くない
「早速だけどあなたには試練を乗り越えてもらうわ」
「試練かあ、俺にかかれば余裕だよ」
「余裕かどうかはやってみれば分かるわ」
アリサがそう言うと
彼女の隣に木で出来た人形が出てきた
右手に木刀をもっている
「ん?」
俺も右手に感触を感じた
見るといつの間にか木刀が握られていた
「ほう、そういうことか、要はこの人形をぶちのめせばいいんだろう」
「察しがいいのね、その通りよ」
少女がそう言った途端
人形が俺に接近してきた
俺は人形の木刀を木刀で受け止める
「ほうらよっと」
俺は力の限り木刀を振りかざした
人形は吹っ飛ばされていった
そしてまた立ち上がる
「こんな程度か?」
「まだよ」
彼女がそう言った途端人形の左手から木刀が出てきた
二刀流だ
「ほう」
人形は二刀流になったと同時にスピードも上がっていた
しかし、俺にとって難易度が一段階上がった程度で大したことなかった
俺は吹っ飛ばして倒れた人形に追い討ちをかけた
しばらくすると人形が消えた
「おめでとう、第一関門クリアよ」
アリサが祝福をあげるかのような声を出す
「さて、次の試練よ」
彼女がそう言った途端景色ががらりと変わった
どこかの村みたいなところだった
「娘を助けなさい」
「娘?」
俺は辺りを見渡した
すると手綱を付けられて連行されている娘を発見した
「あの子を助けるのよ」
「嫌だね」
「え?」
俺はあっさり断った
「これも試練なのよ」
「これが試練? アハハ」
「何がおかしいの?」
「お願いします勇者様!あの子を助けてください」
一人の男性が俺に土下座してきた
「あの子は私のたったひとりの娘なんです!お願いします!!」
「嫌だね」
「そんなあ」
「自分のことだろ、自分でなんとかしろよ」
「わ、分かりました」
男性はそう言うと”私の娘を返せ!!”と娘を連行している連中に叫んだ
しかし、男性はすぐ取り押さえられた
「畜生! 俺がもっと強ければ!!」
男性が悔しがってる様子で叫んだ
その通り、強くなくてはならない
弱いものは淘汰されるのがこの世の摂理だ
「残念ね」
アリサがそう言った途端景色が変わった
最初に俺がいた神殿の中だ
「さっきも言ったけど何がおかしいの?」
アリサが俺に話しかける
「だって俺にあの娘を助ける義理はないし」
「……」
「それに勇者の試練ってさらに強い敵と戦うとかそういうもんだろ?」
「あなたは勇者を勘違いしているようね」
「勘違いじゃないさ強ければ勇者、ほらよく言うだろ、一人殺せば殺人鬼でも千人殺せば英雄と」
「勇者は強ければいいってもんじゃないわ」
「それはお前の価値観だろ、俺にとって勇者は強ければいいんだよ!」
「そう、残念ね」
アリサはそう言うと俺に近づいてきた
「何をするつもりだ」
「あなたを元の世界に戻すの」
そう言って少女は俺の額に手を置いた
俺の意識が遠のく
その前に声が聞こえた
「あなたは”勇者失格”よ」
「ん? んんん」
いつの間にか昼寝しちゃったな
辺りは夕暮れだった
それにしても妙な夢を見たな
「勇者かあ、面白い夢だ」
「真、ご飯よ」
母さんが俺を呼びかける
「今行くよ」
俺は食卓へと向かうのだった
工藤真
「 勇 者 失 格 」
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