表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14少女漂流記  作者: shiori


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/266

第十一章後編「夏色ホームパーティー」5

 やがて、日が沈む始めると賑やかに盛り上がっていたホームパーティーもついに解散となった。凛音の優しい気持ちを受け取って、茜たちは清々しい表情を浮かべ、リフレッシュした様子で家路へと向けて帰っていく。

 私もこれだけ大勢の人を家に招き入れるのは初めてということもあり、一緒に見送った。


 人に呪いを巻き散らす危険なゴーストはいつどこに出現するか分からない。


 今回のリリスのような危険な上位種のゴーストが出現すれば危険と隣り合わせの戦いになる。

 

 そう考えると安心することは出来ないのが現実だった。


 それに偽りのアリスの存在も気がかりだ。

 あれを生み出し運用している謎の組織がこの舞原市にまだいるのは確かだ。

 私たちの戦いはこれからも続いていくと、思った方がいいだろう。


 茜たちが帰り、途端に静かになった我が家で私は自室に戻った。夕食はもういらないほど凛音の料理やお菓子、デザートまで食べたので空腹は感じず、お腹は膨れたままだった。


 自室に戻った私は今回の報告も兼ねて、夫と話すことにした。


 十歳年上の夫は国家間で調整を進める極秘プロジェクト『アリスプロジェクト』の協力者で次世代ネットワークシステム『生体ネットワーク』の研究をしている。 


 話しを聞く限り、生体ネットワークの開発は順調で、視覚や聴覚を通じて得た情報記録を、記憶のバックアップとして保存するメインとなる機能に問題はないらしい。

 既存のネットワークシステムに依存しない、人体と人体を繋ぐネットワーク機構。それは現在のネットワークシステムがハッキングやAIを作った精巧なフェイクニュース、コンピューターウィルスや情報漏洩などの危険に常にさらされていることもあり、様々な国家が関心を持っている。

 情報を保存するクラウドサービスへの依存やネットワーク上でのコミュニケーションやサービス自体、一度リセットしなければならないという機運はどこの国の中枢にもある。

 それだけ、今のネットワークは穴だらけで危険なものだと言わざるおえない。

 SNSや巨大プラットフォーム、ビッグデータによる多国籍企業による国家の枠組みを超えた間接支配。諸問題を上げればキリがないほど、個人に限らず各々の国家を悩ませている。

 

 共同開発者の夫ほど詳しい事情を私が知ってるわけではないが、人体に埋め込むマイクロチップによる情報管理システムは様々な国ですでに利用され、今回の開発もそれらを踏襲したものであるそうだ。


 様々なテクノロジーの力も借りながら新たに構築される新しいネットワークシステム。そこでは対面コミュニケーションの円滑な社会を目指しており、ビッグデータを介さない、依存しない形で新時代に向けて再構築されたネットワークであるという。


 夫によれば開発が急がれているのはアリスプロジェクトへの利用が本格的に検討されているからということだが、アリスプロジェクト自体がまだ極秘裏に進められているものだ。

 その概要はまだ表面的な理想でしかない。時代にそぐわなければ表に出ることなく消えてなくなるものだろう。


 生体ネットワークで集めた情報データによって作り上げた人工知能AIアリス。

 人々の行動を欠けることなく裏で監査し、あらゆるケースを想定して最善の対策を打っていく。

 生体ネットワークから繋がる人体を通じて、世界を監視するアリスシステム。

 それは、戦争や紛争を失くす大きな可能性を秘めていると言われている。


 私もこうした理想に賛同する一人、アリスの神託を得た魔女の一人。

 それはやがて、アリスが危険視する不穏分子を未然に排除する代行者として歴史の裏で奔走することになることを指し示している。


 憂鬱にもなれば、責任を感じる時もある。

 だが、平和な世界を創り上げるために必要な力になれるなら、生涯を賭けることになっても迷いは必要ないと思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ