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14少女漂流記  作者: shiori


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第十章「平和な世界のために」4

 早朝の神代神社(かみしろじんじゃ)、片桐茜の救出劇から一夜明けばかりだったがゆっくりできる時間はなく、私はリリス討伐のために集合を掛けた。


 今日は休日ということもあり、学園で集まるわけにはいかず、麻里江に連絡をして彼女のご厚意で広い敷地を誇る人目の避けられる神代神社で集まることになった。


 私が凛音に出掛けることを告げ、白のセダンで神代神社まで到着すると既に境内に麻里江とその妹の千尋が待ってくれていた。


 千尋は霊感はあるが超能力者として茜たちと一緒に戦えるわけではないが魔法戦士として戦う姉が心配だったのだろう。早朝にも関わらず、眠たい顔一つせず麻里江の横に巫女装束姿で立っていた。


 その後、可憐に静枝とひなつがやってきて、最後に雨音が茜を連れてやってきた。


 ひなつを除けば、部活のメンバーが勢ぞろいしているということになり、こうして集まると壮観さを覚える。


 人類の敵であるゴーストが”視える”人間。そして、人知れずそれと戦うものを知っている人間がこれだけ多くここに集まっている。それも同世代の女子高生が揃いも揃ってだ。


 これは今までの自分の人生を振り返ると想像のつかないことだった。


 可憐が茜の姿を確認すると早速駆け寄って話しを始めた。


 何度も頭を下げて謝罪の言葉を掛けていた。


 茜はその姿を見てトントンと肩を叩いて「気にしなくていいよ、ゴーストと戦うと決めた以上、覚悟してたことだから」と心配させないよう先輩らしく声を掛けていた。


 可憐は強がる茜の姿を見てさらに声が詰まった様子で茜に抱き着いていた。


 遠目に見ていても胸が苦しくなる。なぜ、彼女たちだけがゴーストと戦い傷つかなくてはならないのか、納得できるだけの答えが思い浮かぶわけがなかった。


「茜は後輩が出来て凄く喜んでいました。だから、今は茜の好きなようにやらせてあげてください。それが、茜によっての(さいわ)いでもありますから」


 隣に立つ麻里江が背筋を伸ばして私にそう言った。その表情は母性に溢れた母のように穏やかで、朝日を浴びてとても絵になるほどに麗しく嫣然(えんぜん)と映って見えた。


 二人が抱き合う光景を情緒的に見つめる姿は、仲間としてこれからも守り続けることに対して、決意の揺るぎないものだった。


「……本当に、貴方達って見ているだけで飽きないわね。

 眩しくて、強くて、誰にも渡したくないくらい」


「ふふふふっ……ちょっと変な褒め言葉ですね。先生らしいですけど。

 ですが、私は先生のことも好いていますよ。容姿端麗に才色兼備、教師としてで出なくても惹かれてしまいます」


「ふふっ……やめなさいよ、もう高校生になった娘がいるのに」


 私の遠回しに言った気持ちが通じたのか、麻里江は実に嬉しそうだった。

 お世辞だと思うが、そこまで褒められるほど既に人妻となって長い私は魅力的な女性とはいかないが、麻里江のような奥ゆかしく綺麗な少女に面と向かって言われると嬉しくなって甘美に聞いてしまう自分がいた。


 まだ本題を告げていないとはいえ、これから始まることに恐れる様子のない麻里江の姿は実に頼もしかった。


「先生、おはようございます! 昨日はお騒がせしました」


 涙を浮かべる感傷的な可憐の手を握ったままやってきた茜が私に挨拶をする。初めて顔を合わせた時が朝の朝礼で、寝起きの表情だったとは思えないほど、今の茜は頼りになるジャンヌダルクのように聖人な女性だった。


「少しは元気が戻ったようでよかったわ。貴方に言っても仕方ないかもしれないけど今日は無理をしないで。あまり雨音や可憐の悲しむ姿は見たくないですからね」


 教師らしく私は茜に言った。本当は言いたいことは山ほどある。だが、心配を始めるとキリがないのも事実だ。まだ傷が残っていても、彼女が戦うことを望む以上、私は私にできる支え方をするのがベストな選択だった。


 私は改めて、全員が集まったところで説明に入った。


「早朝にも関わらず集まってくれて感謝するわ。昨日はお疲れ様。早速だけど、リリスの動向が判明したわ。早急に作戦行動に移るから、聞いてちょうだい」


 話しをそうして切り出した私は集まってくれたメンバーに状況を話した。

 

 守代連から先ほどあった連絡によれば、今回起きたスクールバス爆破事件の一連の犯人である爆弾犯が見つかり今朝に起きるはずだった犯行は未然に防ぐことが出来たという。


 自力で爆弾を製造し、仕掛ける役目を担っていた爆弾犯は彼の推測通りリリスによって買収されており、いいように手のひらで踊らされ、悪事に加担していたようだ。

 特にサイコパスなどの精神疾患のある患者ではなく、罪の意識がなかったわけではないが、リリスの女の魅力に魅了され、性的な行為の見返りとして犯行を重ねることを半ば脅されやらされていたようだ。


 どこまでが真実かは分かりかねるが、リリスが裏で手を引いていたことには変わりなく、リリスはそれによって犠牲者達から魔力や生命エネルギーであるマナを吸収して強力な魔力を維持したまま現世で生き永らえるために利用していたようだ。


 そして、リリスは爆弾犯を失ったことを知らずに現在、次の犯行場所である市バスの停留所へと向かう予定だと考えられ、既にその想定で守代蓮率いる二人の魔法使いが交戦準備に入っているという。


 リリスは強敵だ、二人が善戦してくれたとしても倒せる保証はない。

 だから私は皆を集め、協撃を狙って現場に急行することに考えたのだった。

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