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14少女漂流記  作者: shiori


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第五章「偽りのアリス」4

 浮気静枝、他校から転校生とやってきた二年生。


 三年前に交通事故に遭い頭部の一部を損壊、意識不明の重体となった。

 数日後、状況は芳しいものではなかったが懸命な治療により搬送された病院内にて意識を取り戻す。


 それから長期間、頭部の損傷による影響か、重度の睡眠障害の症状が続き、ナルコレプシーと診断される。


 入院は長期に至り、薬物療法やカウンセリングなどの治療が続き、幻覚症状や睡眠麻痺などが繰り返し起こった。

 当時の患者が話した証言によれば、金縛りのような状況に陥り、不安に駆られる自覚症状があったという。


 また、幻覚症状については”ずっと夜の住宅街を歩きながら誰かに付けられている感覚”や、”異形な動物にのしかかられ身動きが出来ない体験”、レイプや虐待に至るまで多岐に渡った。

 これらのほとんどは睡眠時に発生したと証言しており、起床中にはあまりに起きることがなかったという。

 しかし、ナルコレプシーとして特徴的な症状、過剰な眠気に襲われることが多く、その度に悪夢にうなされることで結果的に不眠症となり、精神的負担は相当であったとのことが分かった。


 大きな変化が訪れたのは約半年前、原因は不明だが突如としてナルコレプシーの症状が改善し、悪夢を見たという証言や過剰な眠気がなくなり、生活リズムに改善の兆しが見え始めたようだ。


 症状が改善したことは前向きな方向に向き、本人の希望もあり学校に通うことができるまでに回復したと書かれている。


 しかし、一つ不審な点が残った。


 診断を繰り返したきた医師の報告によれば人格の変異が見られるとのこと。

 これまでと異なる人格の形成。それが何を意味するのか医師の見解も明確には分かっていないという。


 さらに記憶の齟齬(そご)も見られ別人のような振る舞いを見せることもあったと記載されていることは驚きに値した。


 とはいえ、健康面での大きな改善が見られたことで、今回、環境を変えての新生活に向けて引っ越しを進め、転校手続きを行い再スタートへと向かったと見られる。



 資料に目を通し終えると、静かに私は気持ちを整理した。

 再び煙草に火を付け、金網フェンスに囲われた屋上で空を仰ぎながら白い煙を吐く。

 

 補足としてナルコレプシーの症状はかなり改善されたものの、時折眠気が身体を突然襲うことはあるようで、そのせいもあって保健室には時々訪れることがあるという。


 人格の変異、性格が変わったとみていいのだろうが、考えていた以上にかなり気になる内容が多かった。


 当面は今まで通りの接し方に変わりはないが、浮気静枝にゴーストが視える原因は何となく見えてきた気がした。


「さて……彼女は味方なのか、それとも敵なのか……」


 魔法使いを抱える部活に入ってきてしまった以上、茜たちに面倒は掛けられない。私が彼女を見極めるほかない。


 彼女がこの街に出没するゴーストに危険を覚えているから私たちと行動を共にするのは行動心理として理解できる。


 何が正解かはまだ不明瞭だが、今は静観して様子を見るしかなさそうだった。

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