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14少女漂流記  作者: shiori


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あとがき解説③

 では長くなってきましたので、最終決戦について話していきましょう。(第二十八章~)


 厄災の終わりまでの一連の流れはドラマチックでありながら悲劇の連鎖が引き起こされ、胸が苦しくなるシーンの連続であったかと思います。

 クライマックスに相応しいと言えばその通りですが、ここまで大掛かりな終盤になるとは私自身も驚きでした。


 流れとしてはまず、浮気静枝が暮らしていた洋館へと向かう稗田黒江側と地下水道の奥へと向かう守代蓮側に分かれます。


 黒江は多くの魔法使いを失い、茜が負傷し雨音は内藤医院にいるため、羽佐奈と友梨を頼って三人で向かいます。


 守代蓮はもちろんアンナマリーと奈月を引き連れて三人で向かいます。


 ここで今まで隠されていた厄災の真相が続々明かされていきます。

 敵側に裏切っていた市長。 

 洋館ごと地下研究所を爆破させ再び牙を向けるファントム。

 黒江達はもぬけの殻になっている研究所の姿を見て外れを引いてしまったこと、蓮達が危険であることを察します。

 

 一方、地下水道の奥でメフィストフェレスを発見した蓮は彼の言っていたグレートリセットの真相を知ります。


 さらに、この戦いでアンナマリーは宿敵であるアリスと対峙し、命を落とすことになります。


 黒江たちがメインで活躍する場面が多いため、こちらの三人は霞んでしまいがちですが、私にとっては引けを取らず、同程度重要な位置づけとして三人を描いてきました。


 三人の変わらない関係性が好きで、第十八章「太陽のような君と」で奈月が内藤邸の庭園に行きアンナマリーとの出会いを回想するシーンなどは大好きなシーンです。


 そんな三人が過酷な厄災の中を生き抜いていこうとする、だからこそ蓮と奈月が抱き合う場面が生まれました。

 あのシーンはこれまでの想いを全て懸けているというくらい甘く切ないシーンで、アンナマリーのぶつけようのない感情まで伝わっていてくれたら嬉しいです。


 三人については当初、蓮が生き残り沙耶を目覚めさせるというお話にするつもりで書いていました。

 ですが、書いていく中で苦渋の決断として奈月が生き残るという道を選びました。もちろん、全員生き残るのが本当はいいのでしょうが、それでは物語として不十分なものになってしまうため、奈月一人が生き残るという事になりました。

 

 一番明るくて前向きで、一途に蓮を想いアンナマリーを心配する奈月が生き残るのがしっくりくるのではないか、そういう感覚に囚われたのです。

 沙耶を目覚めさせるための力も宝石を受け取った奈月にあると感じたり、奈月の身に危機が訪れると、蓮が身を挺して助けようとするのではないか、そんな想いがこういった結末に向かわせました。


 さて、最終章に触れていきましょう。

 プロローグの時点で決まっていた茜の死。

 そこに至るまでの経緯とその後の結末が最終章では描かれました。

 本当にやっとここまで来たというのが正直な気持ちでしたが、やり遂げた達成感は人一倍ありましたね。


 一緒に暮らす中で親しくなっていった茜と凛音。

 ヒーローとヒロインのような二人はとても愛情を感じられる関係になりました。このような厄災がなければこれほど距離が縮まることはなかったかもしれません。そういった意味では蓮と奈月に似ています。


 凛音に別れを告げ、巨大なゴーストへと立ち向かう茜。

 そんな茜を出迎えたのは雨音でした。

 この公園のシーンは前回、麻里江と雨音の時は秋桜が見える公園として登場した場所と同じなので、今度は雪桜が舞っているという演出にしました。

 こういう綺麗な情景をイメージさせるシーンづくりは好きです。

 頭の中で、二人の感情の高ぶりと一緒にこの風景を思い描いてもらえたら嬉しいです。


 願望器、悪魔の壺の力によって巨大なゴーストと化した魔法使い、前田郁恵。

 上位種のゴースト、サマエルに意思を乗っ取られた郁恵と二人は全力で立ち向かいます。


 しかし、ようやくマギカドライブを使いこなせるようになった雨音でしたが命を落とすことになってしまいます。

 雨音がここで退場するのは必然ではあったのですが凄く切ないシーンになりましたね…。

 巨人が出るとなると、進撃の巨人を想像してしまうわけですが、こういう必死に守ろうとして死んでいくのはとても書いていて辛かった記憶が残っています。


 そして、考えに考え抜いて生まれた茜の戦闘シーン。

 最後の最後なので派手さも大事にしながら、特攻していくという茜らしさを大切に書き切った場面でした。


 上手にプロローグの場面まで繋いでいく、最初にプロローグを読んだ時と全く重みが違う。そんな風に愛着のある人物として茜のことや、看取る黒江の心情に感情移入して寄り添ってもらえたなら、私はこの物語を書いた甲斐があったと思えます。


 ではここまで最終章までの流れを解説してきましたが、最後に前田郁恵に関してと、二本立てとなったエピローグについて語っていきましょう。


 Tips8「前田郁恵」で敵サイドの計画を含めた事の始まりが説明されています。

 読んでもあまり伝わらないかもしれないですが、書くことが誠意かなと思い書きました。

 実際のところ、手記自体が稗田黒江が残したものである以上、敵側の思惑を丁寧に書くことは出来ませんでした。

 そのため、Tipsという形に残させて頂いています。


 実はここで書かれている羽佐奈や沙耶にとって災難となる一連の事件は今後長編小説化を予定しています。

 かなり先の事になると思うので、ここでは簡単なあらすじのような形でしか説明できていませんが、様々な人物がここで関わっているので、今後本気で取り組んでいきたいなと思います。

 主人公は羽佐奈かなと思っていますが、複数人になるかもしれません。

 そういったことも含め、まだ計画段階ですので今後、ご期待頂ければ嬉しいです。

 

 それでは清水沙耶を目覚めさせるべく海辺の病院へと向かうエピローグ①のお話しをします。


 沙耶は『ドッペルゲンガーと記憶の欠片』という短編小説の主人公でした。

 その作品内で幽霊である自分と瓜二つの少女と出会うことになるので、元々霊感が備わっているという設定を引き継いでいます。

 また、沙耶の時系列は違和感がないように修正しました。

 凛翔学園を卒業してから東京で暮らしている期間、事件に巻き込まれた後の期間を自然な形に直しました。


 さて、道中の車内では稗田黒江がアリスプロジェクトのメンバーを脱退する話が出てきます。

 アリスプロジェクトが当初の理想からずれ始めるきっかけが厄災であり、ゴーストの危険性が再認識されたため、計画が前倒しになっていきます。

 これがまた、今後反アリス派を増長させていく事になるのですが、それはまた魔法使いと繋がる世界で描いていければと思います。


 実のところ、本当はその後の黒江をもっと描きたかった想いがあります。

 再会できるはずの夫が出てきていないため察するところがあるかもしれませんが、厄災後、生体ネットワークの正式稼働を巡って夫は暗殺されてしまいます。

 それが黒江の心をさらにアリスプロジェクトから離してしまう…そういった裏話があります。


 そんなことがありつつ、生き残った沢城奈月は宝石の力に頼りつつ沙耶を目覚めさせます。

 奈月は罪の意識に苛まれて一人消えてしまいます。

 魔法使いと繋がる世界で真奈は奈月の霊体を取り込んで魔法使いとなるため、奈月は30年後には死んでしまっているわけですが、死後も内藤邸の庭園に留まっていました。

 

 この辺りは本当に切なくて、こんなことになるとは当時の私自身も思わなかったという気持ちでいっぱいです。

 ちなみに三人の関係があまりに大切になったため、奈月の夢の中で描かれた卒業式のシーンのイラスト依頼も行い、三人のエピソードを抜粋した短編小説も作ることになりました。

 愛の成せる業ですかね…ちょっと三人の事を考えると今でも胸が苦しいです。


 では、もう一つのエピローグ、魔法使いと繋がる世界の主人公である稗田知枝の誕生です。

 ここで物語を締めるのが、最終的にいいのではないかという結論になり、これが最後になりました。


 二つの宝石を使ったマギカドライブの影響で記憶喪失になってしまった凛音。それは強い精神的打撃を受けると再発する、継続的に続く呪いとなってしまう。

 厄災を終わらせるほどの力を行使した反動…辛いことですが、これも魔法使いと繋がる世界EP3本編の方で先に書いていたことですので、私は割り切って書き上げました。

 もう少し詳しく、凛音と隆二郎の関係に関しては書きたいなという気持ちがあるので、今後書けるとより深みが増していいかもしれないですね。


 ということで長々と書いてきましたが、厄災編を中心に語らせて頂きました。

 

 世界に向けて本作を提供した時点で私一人の作品ではないので、皆様も印象的なシーン、感動した場面、好きな登場人物など、ありましたら教えてくださると嬉しいです。


 また、本作品の感想やレビューも是非送って頂けるとこれからの創作の励みになります。心に響くものが少しでもありましたら、よろしくお願いします。


 それでは、毎日連載という形で、2023年12月から長い旅路を共に歩き続けてくださって誠にありがとうございました。

 

 また、『魔法使いと繋がる世界EP4~アリスの導きの先で~』でお会いしましょう!

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