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14少女漂流記  作者: shiori


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あとがき解説①

 ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 この『14少女漂流記』は想定外にもスケールが大きくなり、50万文字を超える大作となりました(当初はEP3と同程度を想定していた)。


 ”2人の教師と14人の少女を巡る厄災の物語”。多くの刹那的なドラマを描き切った本作品は作者である私にとっても思い出深い一作となりました。


 『魔法使いと繋がる世界シリーズ』の中では前日譚として位置づけられ、特に”伝奇アクションノベル”方向を向いている本作ですが、ここでは本作品が生まれるまでの道のり、そして私の想いを熱く語っていきたいと思います。よろしけばお付き合いくださいませ。


 本作品が生まれるきっかけとなる始まりは『魔法使いと繋がる世界EP1~三つ子の魂編~』の最終話に遡ります。改訂版を書く前から、基本的なベースとなる骨子は提示しています。


 舞原市で巻き起こった未曽有の厄災から30年を経て、孫である稗田知枝が発見した祖母、稗田黒江の手記、14少女漂流記。その概要が書かれた本文を一部引用します。


「彼らにはあらゆる兵器が通用しませんでした、それは今までの歴史が証明していることです、その歴史自体がすべて秘匿され機密とされている以上、ほとんどの人が知りえないことで、理解のできないであろうことですが。


 しかし、その“敵”は現に存在し、影となって見えないところで大きな力を蓄え、人智を超えた現象を用いて、多くの災厄を引き起こし、大勢の人が犠牲となっています。


 それに対抗できるのが魔法使いだけ持つ、干渉力と呼称している特殊な能力によるものです。


 歴史の裏でこれまで魔法使いはこの干渉力を使いこなし、“人類の敵”と戦いを繰り広げてきました。


 この手記はその魔法使いと絡めた、舞原市で起きた2029年の災厄の記録です。


 記録は手記として、主に私の視点で記録しています。


 これは隠された歴史の謎を紐解くために重要なことです。

 何故隠されなければならなかったのか、その理由もすべてを読み解くことで見えてくることでしょう。


 さて、本当の事実を知る覚悟が出来たのなら、この手記を解読してください。

 14人の少女を中心に繰り広げられた、“本当の敵”との14日間の戦争の歴史を。


 この記録が未来に繋がるものであることを願っています」


 この頃からいつか物語(歴史の1ページ)であると自分の中で定め、その後もEP3までシリーズを書き続けながら胸に秘めてきました。


 想定ではもっと早くこの作品は誕生する予定でしたが最終的にEP3を書き終えた後の執筆となります。


 ですが、完成した今となってはこれで正解だったと感じています。

 魔法使いと繋がる世界本編の中で先んじてバトルシーンを書けたこと、魔法使いやゴースト、アリスプロジェクトや生体ネットワークなど、大事な世界観設定を明確に出来たことで迷いがなくなったこと。それらは良い形で本作に活かされています。


 さて、前置きは以上にして、ここからはメインストーリーである厄災編について振り返っていきましょう。


 厄災のアイディアについては過去に印象的だった作品を参考にしています。

 その一つが古い同人ノベルゲームの『睡蓮』です。

 この作品では不思議な結界のようなものに覆われ町から外に出られなくなる、眠り病に街の人々がかかってしまうことが描かれていました。

 これが良質なBGMと合わさって重たく印象的に今でも残っており、一種の終末感を感じさせられました。

 

 本作では厄災が生体ネットワークの正式サービスの開始、アリスプロジェクトの始動に繋がっていくという設定がありました。


 そのため、外との繋がりを断つ分厚い雲と電波障害に始まり、テロリズムのような形で異変が引き起こされていくことになりました。

 その後、時計の停止(現時刻が確認不能になる)、急速な気候変動に伴う季節の変化、眠り病の蔓延へと繋がっていきます。

 こうした過程を経ていくことで、より終末感を感じられる様相になったかと思います。


 重要なこととして厄災編では主に超能力を持った魔法使いと上位種のゴーストとの戦いが描かれていきました。

 戦闘描写はリリス編までで一通り描いていることもあり、厄災編からより苛烈に緊迫感のある本格的な戦闘描写を重視ししています。

 黒江がマギカドライブ発動の鍵である宝石を渡しているのもより戦闘を盛り上げるための重要なピースです。


 それに、ドラマ部分では畳みかけるような物語展開を意識しています。

 つまりはよりゾクゾクした先の見えない恐怖感を重視しており、緩急を感じられるよう物語を組み立てました。

 これは多くの魔法使いが命を落としたという歴史に基づき思惑通りに作られたかと思います。

 

 ついでに付け加えると、本作ではグロテスクな表現はかなり抑えています。

 私が行き過ぎた表現が苦手であることもありますが、その辺りは読み易さを重視して違和感のない形で表現を制限しています。

 


 それでは、厄災編一つ目の山場である内藤医院での戦いについて触れていきます。(第十四章~第十五章参照)


 『導かれし魔法使いの14少女たち』の中で、立花可憐(たちばなかれん)が最初の犠牲者になることは当初から決まっていました。

 幸せな二人がヴァンパイアの残忍な攻撃によってが最初に消されてしまう。予定調和のようでありつつも、ドラマとしてしっかり描くと、思っていた通り心に響いて来るものがありました。

 その後には茜の両親が何者かに殺されてしまいます。


 ここで起こる死とは単純な命の喪失でなく、残される者たちにとって、痛みを伴って引きずるものでなければならないと考えていたので、茜の両親の死は決定的に厄災の重みを感じさせるものに出来たかと思います。


 また、片桐茜(かたぎりあかね)が黒江の家に泊まることになり、稗田凛音(ひえだりんね)と親しくなっていき、後の展開にも大きく影響されることになりました。


 この辺りを書いている頃は、そこまで茜と凛音が親しくなることを想定していなかったですが、二人の関係を大切に描くきっかけになっていきました。

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