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14少女漂流記  作者: shiori


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第四章「花ざかりに祝福を」2

「最近はゴーストの出現が活発化してるんですよね……」


 茜が困った顔をしながら私を見て言う。

 普段から三人で行動しているとはいえ、日頃溜まった心労は想像以上に大きく彼女を蝕んでいるようだ。


 しかし、普段学校ではジャージ姿をして地味なスポーツ少女の茜が、こうして夜の見回りをしているときは黒のコートの下に自家製の魔法少女が着るようなゴスロリ衣装を着て歩いている。

 彼女は正装だと堂々と言ってのけるが、私から見れば戦闘向きではない趣味の産物だ。

 これでモチベーションを高く維持できるのだから、否定すべきことではないが、こうして夜道でなかなか人と出くわさないとはいえ、一緒に歩くのは複雑な気持ちだった。


「今日は先生の察知力に期待していますので」


 今度は上品な話しぶりで巫女服姿の麻里江が私に言う。表情は柔らかな微笑みを浮かべていて、早速私は信用されているらしい。不審者のように目立つ格好をしている三人を連れて歩く私は何とも憂鬱だ。

 


 今日は三人がしている夜の巡回を私も含めてすることになった。

 安全な街を守るための見回りといえば聞こえはいいが、もし問題が発生すれば全責任は私が負うことになる。私が気乗りしないのは当然のことだった。


「先生は付いていくだけだからね……」


 関わりすぎはよくないと私は予防線を張る意味で三人に告げる。だが、私の主張は三人の耳に入らないようで、いつも以上に張り切っている様子だった。


「こういう魔法少女ものって大人の味方は貴重なんですよ。先生はご理解頂けますか? 

 あたしの見方だと大人の女性だったら悪の女幹部とかが定石ですけど、味方だったら魔法少女の能力を強化してくれる研究者ポジションが多いんですよ。

 だ・か・ら――先生の存在には期待してます。

 戦闘はあたし達に任せてもらっていいですから、しっかり見守っていてください。

 あたし達の頑張りを見守ってくれている人がいるってだけで、心強いんですから」


 いかにもなことを茜は言った調子だったが、所々妄想の類が多く、彼女の魔法少女好きは今更否定しないが緊張感を損なうという意味で懸念しておきたいところだった。


「期待という言葉は出来れば使わないでほしいのだけど……。

 そうは言っても仕方ないわね。貴方達って信じられないくらい正義の塊のようだから」


 おめでたいとも言えるが、三人が懸命にこれまで戦ってきたことはもう十分に分かった。

 だから、それを否定するような言葉をかけることだけは私は控えた。


 夜の街を歩くこと三十分。四人で話しながら歩いている分、短く感じたが、唐突に思わず足が止まるほどの強い気配を神社の方角から感じ取った。


「先生……?」


 茜の足が止まり、表情の凍った私を見つめる。

 鳥肌が立っていた、ゴーストを近くに感じるときの嫌な反応だ。


「茜、神代神社の方角、数は多いわよ」


 麻里江の察知力は正確だった。私も同じように感じたこともあり、ゴーストの出現という危険が発生しているのは間違いなかった。


「……見つけてしまった以上、無視はできないのよね?」


 私はすぐさま三人を凝視し確認をとった。空気が重たくなっていくのを自然と感じ取っていた。


「先生にも感じられたんですね……。二人まで一緒に感じたのなら急いで向かいましょう。

 あたし達はこの舞原市を守る魔法戦士なんですから」


 真剣の表情に切り替わった茜がそう言葉にする。今の自分に誇りをもっている彼女らしい言葉だった。

 今のところゴーストの気配を感じ取れたのは麻里江と私だけのようだ。これはパラメータの違いの差だろう。麻里江はファイアウォールも使いこなす補助系、霊感も強く神職をしている特性というのが発揮されているのだろう。


 一気に緊張感に包まれた場の空気。

 茜が持ち前の運動神経で先導し、神社のある方角へと向かって駆け出していく。私たちもそれに倣って坂を上った。


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