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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十八章「ホワイトサンクチュアリー」5

 私達はファントムが潜む場所を探るため、豪華絢爛な館内の捜索を始めた。

 広い館の中を捜し回るのは骨が折れるが、今はそうするしかなかった。


 一階にはファントムの姿はなく、怪しい場所はこれといってなかった。

 二階に上がり、図書室の本棚を探っていると隠し扉があり、そこから狭い部屋に続いていた。

 秘密の研究室だろうか。他は丁寧に掃除が行き届いているが、この部屋は埃が溜まり、不衛生で電気も通っていないようだった。

 

 私達は三人でその部屋を捜索し、絨毯の下に隠れた床を外し、地下へと続く梯子を発見した。

 入念に隠されたまだ見ぬ地下へと道。

 待ち受けるものを追い求めて私達は慎重に梯子を下りて行った。


 先の見えない狭い梯子を下りて、ようやく足を地面に着けることの出来た私達は、薄暗い道を歩いて怪しげな扉を開くと、照明の付いた研究所へと辿り着いた。


 もしかしたら他にも出入り口があったのかもしれない。

 そう思わせてくるほどに、設備が充実した広い研究所だった。

 これだけの規模の研究所を作るには相当の時間と費用が必要になる。

 それだけ秘密裏に価値のある研究所であるということは、恐ろしい企みをしていると想像できた。


「アリスプロジェクトの研究所と構造が似ているわね。


 ここで模造品を生産していたのは間違いないでしょうね」


 中身が空になった生体カプセルの並ぶ綺麗な研究所。至る所に機械が並び、未来的な設備をしている研究施設には羽佐奈さんも私も見覚えがあった。


 偽りのアリスを生み出した場所、この街に来てから探しても探しても見つけることが出来なかったが、こんな場所に建設していたとは。


 いよいよ真相に辿り着きつつ予感に、湧き上がって来る焦燥感。

 ここまで知ってしまった以上、簡単に変えることが許されないことは間違いない。

 敵にとってどれだけここが重要な施設であるか、よく分かるものだった。


「この館の禍々しい魔力の反応は危険そのものです。

 待ち構えているはずです、標的となる悪魔が」


 三浦さんが脅かしているのかと思うほど真剣に警告した。

 倒さなければならない敵がこの先にいる。

 それも激しい戦闘になれば、建物そのものが崩れかねない戦場でだ。

 引き返すわけにはいかないが、簡単には切り抜けられないと覚悟するしかない。


 既に放棄されているのかと感じるほどに誰一人出会う事のないままさらに奥へと進み、私達は驚くべき光景に立ち会うことになった。


「よくここまで辿り着けましたな。歓迎しますよ、アリスに導かれし魔法使い諸君」


 博物館の展示品でしか見たことがないような大鎌を手に持ち、この地下奥で待ち構えていたのは白い仮面をしたファントムだった。

 さらに、その隣には行方不明となっている市長が椅子に両腕を縛られ身動きが取れない状態で座らさせられていた。


「市長……どうしてここに。街で何が起こっているのか御存じなのですか?」


 私は我慢しきれず市長に第一声を問い掛けた。

 多くの死者が発生し、取り返しのつかない災厄となってしまったからこそ衝動的に出てしまった言葉。

 拘束されている身であるとはいえ、耐え切れない思いで私の気持ちはいっぱいだった。


「私はずっと身体を拘束され軟禁されていたのだ。

 早く助けてくれ!」


「抵抗するのなら市長の首が飛びます。どうか動かないでください」


 大鎌を首元に突き付けられ、怯えた表情で救助を訴えかけてくる市長。まともに食事も出来ていないのか大の大人がやせ細っているその様子は可哀想ではあった。

 だが、例え利用するためにこの時まで生かされていたとしても、厄災が始まってからゴーストに監禁させられ殺害されることなく生きているという事実は不思議でならなかった。

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