第二十七章後編「決戦前夜~この愛に意味があるとするならば~」3
教師として許されざる罪な事であると自覚しつつも、湧き出る肉体的な衝動を抑え続けることはとても出来なかった。
それほどに、沢城奈月という少女は清水沙耶に似て魅力に溢れていた。
献身的なまでにただ一人の男だけを想い続け、時に大人のような演技も見せる、傍に寄り添い共に戦い続けた奈月。
奈月は毛布を手に握りしめ、蓮は白衣を脱ぎ捨て、美術準備室よりも広い、隣の美術室へと向かった。
夕日が差し込む美術室は、急速に近づいていく冬の季節のせいで床も冷たく、広く冷たい空気が漂うせいで、じっとしていると身体が震えるほどだった。
寒さに震えながらも、興奮を抑えられない奈月が理性でもって毛布を敷き蓮をそこに座らせる。
もう退くつもりはない、一つになりたいという長年夢見てきた願いを叶えるため、慣れない手探り状態のまま、奈月はこの身を捧げる覚悟を持った。
「先生……勇気をください。先生にとってあたしは大切だって、必要な存在なんだって信じさせてください。抱き締めてちゃんと愛してくれるなら、あたしは先生に精一杯応えることを誓います」
それが奈月にとって今、全てを捧げる意思を固めた理由となった。
蓮は”無理をするな”と口に出したい気持ちを抑え、ただ迫る奈月を払い除ける意思を止め、欲望に負けて力を抜いた。
息を荒くする奈月は蓮の黒いワイシャツのボタンを外すと、制服姿のまま胸板に顔をうずめた。
愛おしく頬擦りして、大きな蓮の身体の感触をマーキングするように確かめる。
「寒くないですか? 先生……」
「あぁ……」
柔らかく子犬のように懐いてくる奈月の感触。
ほのかに甘さの感じられる柑橘系の香りが漂い、自然と心地よさに包まれていくようだった。
「先生……あたしのも、脱がしてください」
一瞬で性器を反応させるほどの甘い囁きが身体を疼かせる。
奈月の意のままにされた蓮は陶酔して誘われるように、奈月のセーラー服を脱がしていく。
声を零すことも憚られるほどの、白く綺麗な肌が露出されていき、蓮は惹かれるままに、慣れた手つきでブラまで外した。
窓の外から注がれる夕陽が弱まり、闇に包まれていく美術室。
蓮は初めて奈月の乳房を目にすると、この暗闇の中で初めて沙耶とは違う生き物であることを明確に感じ、安堵した。
ホクロの位置を探らなくても分かる、その隠されていた体の一部。
沙耶とは違うという事に安心した蓮は、奈月の突起した乳首に口を付け、刺激を与えた。
敏感な部位を責める蓮に電気が走るような感覚を覚えた奈月は飛び上がるように甘く熱っぽい声を上げ、必死に刺激を堪えるようにギュッと蓮に抱きついた。
甘い吐息が零れ、突き跳ねるように甲高い喘ぎ声を上げる奈月。
無垢な少年に戻っていくように、夢中で奈月の身体を求める蓮。
教師と生徒という関係性で押さえつけてきた理性を破壊していくような、獣欲に委ねた行為に激しく変わっていく二人。
気付けばスカートも下着も脱がれ、一糸まとわぬ姿となった奈月。
感じたことない恥辱と興奮に息を荒くさせ、蜜に濡れた女性器を晒していた。
「先生……あたしの身体、変じゃないですか?」
「あぁ、変じゃないさ、綺麗だよ」
「ありがとう…ございます。あたしの事、初めて綺麗だって…褒めてくれましたね」
「そんなに嬉しいのか?」
「もちろんです。先生はあたしの事を直視しようとしてこなかったじゃないですか……」
「そう……かもしれないな。だけどそれは、奈月の美しさを自覚するのが怖かったからだ。綺麗すぎて抑えられない衝動があるからな」
「そうですか……思った通りですね、よかったです……これならあたしの身体も喜んで先生の事を受け入れてくれます」
準備の整った奈月は、本番へと差し掛かろうと蓮のズボンに手を伸ばす。
そうして二人だけの世界へと夢中になって陶酔していく中、隣の美術準備室の扉が開かれ、二人の気配に釣られて何も知らないアンナマリーがやってきた。
昨日よりさらに寒くなったなと思いながら、いつものように遠慮なく中に入っていくアンナマリーは二人がそこにいないことと、床に落ちている白衣に気が付いた。
大きな違和感を感じた直後、甘く蕩けるような喘ぎ声を上げる奈月の声が隣の美術室から響いてくるのを聞き、身体を硬直させた。
「……そっか、こんな時だからか」
二人の邪魔をしないように小さな声でアンナマリーは呟いた。
アンナマリーが隣の部屋に来たことにも気づかず情事に溺れる二人。詳しい知識がなくてもアンナマリーには二人が何をしているか嫌でも分からされた。
「どうしてこんなに胸が苦しくなるんだ……奈月……教えてくれよ」
脱力して美術準備室から立ち去る力を失うと、蓮の白衣を強く掴み、その場に座って両膝を抱え、身体を丸くするアンナマリー。
いつも隣にいて笑って元気づけてくれた奈月が男相手に甘い喘ぎ声を零している。感情の整理の付かないまま、訳も分からず心が締め付けられる感覚に襲われ、アンナマリーは身体を震わせた。




