第二十六章「君の知らない私のこと」1
私は最初から戦いたくなどありませんでした。
新しい出会いは嬉しくて日常は楽しくても、痛いのも苦しいのも、大切な人を失ってしまうのも耐えがたいほどに辛いことでした。
醜い人の欲望を知り罰することも、正義を振りかざして悪を討ち払うのも、それが本当に正しいことなのか、私には分かりません。
私は誰かが正しいと言ったことを信じ、便乗していたに過ぎないのですから。
戦うことは明らかに私には不向きだったのです。
自分が魔法使いとして戦いを続けることはいつ命を落とすのか、いつ誰に恨まれ、追われる立場になるのか、それに怯えるばかりで、考えれば考えるほど恐ろしかったのです。
私は普通の女性であればよくて、それ以上を望んでいるわけではなかった。
でも、私は友達の事が大切だった。
茜と麻里江はいつしか私にとってかけがえない親友となって、私の生活を構成する一部になっていた。
だから……導かれるしかなかった。
私は望まずして魔法使いに覚醒を果たし、いつしか自ら戦うことをやめて、支援する側に回った。
いつも無茶をして怪我をする茜を治療して、やれやれだと言いながら今日も生き残ってくれたと安堵した。
麻里江はこれが自分の役目なのだと、家の責務も背負って状況を受け入れて、ゴーストを退治していた。
戦いに終わりはなかった、それがまた私を不安にさせた。
普通の青春もそこにあるのに、なぜ戦いを続けるのか? どうして、普通の青春を送ってはならないのか。なぜ、誰かに頼まれたわけでもないのに、人助けをしなければならないのか。全ての人が善人であるわけでも、心から感謝してくれる良い人ではないのに。
私にはよく分からなかった。何故私が魔法使いに選ばれたのかも分からなかった。
軍人でも警察官でもない私には戦う理由も義務も、戦いたい意思もないというのに。
ただ、私は友達を失いたくないだけだったのに……。




